トップ > 投資・開発 > 高知県ホテル投資マップ2026|香美市21,900円・高知市7,900円・四万十市6,900円、25市町村の単価階層

高知県ホテル投資マップ2026|香美市21,900円・高知市7,900円・四万十市6,900円、25市町村の単価階層

投稿日 : 2026.09.24

高知県

投資・開発

高知県ホテル投資マップ2026|香美市21,900円・高知市7,900円・四万十市6,900円、25市町村の単価階層

高知県の宿泊ストックは県都・高知市に客室の6割強が集まる一方、物部川・仁淀川の流域や県東部・西部の沿岸には、客室数が少なく単価の高い宿が点在している。本稿では、メトロエンジンリサーチ&コンサルティングが集計した推定成約ADRを確定12ヶ月(2025年9月〜2026年8月)で市町村別に平均し、25市町村の単価階層を業態構成・供給・需給・立地条件と重ねて、県内のどの価格帯とエリアに投資の空白があるかを特定する。

本稿は当社の県別投資マップ系列(大分石川・長崎・奈良など)の高知版にあたる。県都どうしを横並びにする四国比較とは異なり、対象は高知県内の市町村階層である。ブランド転換の事例は既刊「リブランド型進出の投資構造 — ANAクラウンプラザ高知・知立・浜松の事例から読む」を参照いただきたい。また南海トラフ地震の津波リスクは、本稿では立地評価表の1列として扱うにとどめ、主題にはしない(災害リスクの定量化は「ホテル立地評価の第4軸「災害リスク」を定量化する」で扱っている)。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)で、本稿の「12ヶ月平均」は月次値の単純平均です。推定の対象業態はビジネス・シティ・リゾート・旅館・カプセルで、貸別荘・民宿・ゲストハウス等は含みません。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA等で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
  • LT(リードタイム):宿泊日までの日数。本稿のブッキングカーブはLT45〜LT1で描画しています。
  • 早期完売の判定:残室数(室ベース)が初めて0室に到達したリードタイムで判定。OTA等での公開枠が総客室の30%以上の施設のみを集計対象としています。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(調査時点:2026年9月15日)
県全体 推定成約ADR
¥7,900
確定12ヶ月平均・前年同期比+4.7%
高知市の客室シェア
63.5%
県内274施設・9,028室のうち5,732室
郡部の9千〜1.3万円帯
239室
郡部の推定対象客室の9.7%
推定OCC(2026年8月)
89.7%
対象89施設/客室4,959
高知市中心5km圏の客室
+7.6%
2017年5,350室→2026年5,757室
Key Takeaways
  • 推定成約ADR 7,900円・前年同期比+4.7%:高知県の確定12ヶ月平均(2025年9月〜2026年8月)。前年同期は7,600円で、月次の振れ幅は7,000〜9,400円と緩やか。
  • 25市町村は4層:流域・沿岸の小規模高単価(香美市21,900円ほか)、中単価(室戸市8,600円・土佐清水市8,100円)、県都(高知市7,900円)、価格訴求型(四万十市6,900円・安芸市4,700円)。
  • 客室の63.5%が高知市:県内274施設・9,028室のうち5,732室。ビジネスホテル4,376室が中核で、1.3万円以上の帯は759室(13.7%)と薄い。
  • 郡部の9千〜1.3万円帯は8施設・239室:よさこい期間は94%の日程が宿泊日の30日以上前に完売し、GW期間も53%が完売に到達した。
  • 推定OCC 89.7%(2026年8月・N=89施設)は四国4県で最高。高知市は取得・改装型、郡部は10〜30室規模の新築小規模型がデータと整合する。

県全体の推定成約ADRは7,900円、前年同期比+4.7%

まず県全体の水準を押さえる。推定成約ADRの確定12ヶ月(2025年9月〜2026年8月)平均は7,900円で、その前の12ヶ月(2024年9月〜2025年8月)の7,600円から+4.7%上昇した。月次の対象施設数は116〜124施設で推移しており、系列の途中で母集団が大きく入れ替わった月はない。

月別に見ると、ピークは8月で2026年8月は9,400円(前年同月比+3.1%)、次いで11月が高い。2025年11月は8,800円と前年同月(8,100円)を+8.7%上回った。一方で6月は例年の底で、2026年6月は7,000円(前年同月比−1.0%)にとどまる。つまり高知県の単価は「夏と秋の行楽期に上振れし、梅雨期に落ち着く」という季節性を持つが、その振れ幅は月次で7,000〜9,400円程度と、県全体でならせば緩やかである。

高知県 推定成約ADRの月次推移(年別オーバーレイ)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(月次対象114〜124施設)

25市町村の単価階層 — 香美市21,900円から安芸市4,700円まで

それでは市町村別に分解する。推定成約ADRが算出できた25市町村を12ヶ月平均で並べると、県内の単価は大きく4つの層に分かれる。ただし郡部の多くは推定対象が1〜2施設であり、1軒の構成で値が大きく振れる。そのため下表では推定対象が2施設以下、または12ヶ月そろわない市町村を「参考値」として区別した。

市町村別 推定成約ADR(確定12ヶ月平均)— 紺=小規模高単価、薄青=中単価、青=県都、灰=価格訴求型。枠線のみの棒は施設数が少なく参考値
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(25市町村、推定対象は各市町村1〜60施設)
市町村階層推定成約ADR
12ヶ月平均
月次の最小〜最大推定対象
施設数
掲載
施設数
備考
土佐市小規模高単価¥24,164¥20,923〜¥30,93225参考値(施設数が少ない)
仁淀川町小規模高単価¥23,564¥12,694〜¥32,29623参考値(施設数が少ない)
中土佐町小規模高単価¥23,131¥15,869〜¥30,71413参考値(施設数が少ない)・8ヶ月のみ
香美市小規模高単価¥21,876¥19,442〜¥23,76048
津野町小規模高単価¥19,133¥12,776〜¥26,44213参考値(施設数が少ない)
馬路村小規模高単価¥14,109¥12,381〜¥18,11811参考値(施設数が少ない)
四万十町小規模高単価¥12,227¥8,306〜¥20,25015参考値(施設数が少ない)
香南市中単価¥10,846¥8,514〜¥14,30027参考値(施設数が少ない)
いの町中単価¥10,385¥8,088〜¥14,81927参考値(施設数が少ない)
奈半利町中単価¥10,337¥7,098〜¥19,26813参考値(施設数が少ない)
芸西村中単価¥10,315¥7,629〜¥14,11525参考値(施設数が少ない)
檮原町中単価¥9,629¥7,528〜¥11,60614参考値(施設数が少ない)
北川村中単価¥9,587¥8,129〜¥12,32211参考値(施設数が少ない)
室戸市中単価¥8,635¥6,757〜¥10,969311
土佐清水市中単価¥8,114¥6,722〜¥10,105914
南国市中単価¥8,047¥6,133〜¥11,69934
高知市県都¥7,878¥6,938〜¥9,5756087
黒潮町価格訴求型¥7,663¥5,295〜¥10,54527参考値(施設数が少ない)
土佐町価格訴求型¥7,097¥7,097〜¥7,09712参考値(施設数が少ない)・1ヶ月のみ
四万十市価格訴求型¥6,942¥5,850〜¥9,1941029
須崎市価格訴求型¥6,067¥5,708〜¥6,86946
東洋町価格訴求型¥5,450¥4,051〜¥6,64729参考値(施設数が少ない)
宿毛市価格訴求型¥4,852¥4,320〜¥5,387615
安芸市価格訴求型¥4,661¥3,972〜¥6,36239
大月町価格訴求型¥4,417¥3,015〜¥11,72414参考値(施設数が少ない)・7ヶ月のみ
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。推定対象施設数・掲載施設数は各月の最大値。参考値=推定対象2施設以下、または12ヶ月そろわない市町村

第1層は、施設数が一定ある中で最も高い香美市の21,900円(推定対象4施設・掲載8施設)である。物部川流域の温泉旅館や小規模なリゾート型の宿が中心で、月次の最小〜最大は19,400〜23,800円と振れ幅が1.22倍に収まる。この層には土佐市24,200円(推定対象2施設)、仁淀川町23,600円(同2施設)、中土佐町23,100円(同1施設)、津野町19,100円(同1施設)も並ぶが、いずれも1〜2軒の単価がそのまま市町村値になっている点に注意したい。つまり「流域・沿岸の小規模高単価」は、エリア全体の相場というより、個々の宿が作る点在型の高単価である。

第2層は8,000〜11,000円台の沿岸・近郊で、施設数のある市町村では室戸市8,600円(推定対象3施設)、土佐清水市8,100円(同9施設)、南国市8,000円(同3施設)が該当する。第3層が県都の高知市7,900円(同60施設)で、推定対象施設の厚みは県内で突出している。そして第4層が、四万十市6,900円(同10施設)、須崎市6,100円(同4施設)、宿毛市4,900円(同6施設)、安芸市4,700円(同3施設)といった県西部・東部の拠点都市である。これらの都市では推定対象がビジネスホテル中心で、価格訴求型の業務・周遊需要の受け皿になっている。

推定対象3施設以上の9市町村 — 月次の最小〜最大(棒)と12ヶ月平均(点)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2025年9月〜2026年8月)

季節性の強弱も層によって異なる。高知市は月次6,900〜9,600円(最大÷最小=1.38倍)で、業務需要が底を支えるため振れ幅は小さい。これに対して室戸市は6,800〜11,000円(1.62倍)、四万十市は5,900〜9,200円(1.57倍)、土佐清水市は6,700〜10,100円(1.50倍)と、観光地型の沿岸都市ほど繁閑差が大きい。宿毛市(1.25倍)と須崎市(1.20倍)は単価水準こそ控えめだが、年間を通じて水準が安定している点が特徴といえる。

業態で分解する — 高知市はビジネス4,376室、郡部は旅館と一棟貸しの小規模分散

単価階層の背景には業態構成の違いがある。直近12ヶ月にOTA等で価格が確認できた県内274施設・9,028室を業態別に集計すると、ビジネスホテルが69施設・5,771室で客室の63.9%を占める。そのうち46施設・4,376室が高知市に集中しており、高知市の単価が県平均とほぼ同水準になるのは、この厚い業務ストックが中央値を形成しているためである。

客室数上位12市町村の業態構成(客室数に占める比率)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、N=274施設・9,028室)

郡部(高知市以外)は185施設・3,296室で、構成はまったく異なる。旅館が35施設・561室、リゾートホテルが7施設・386室あるほか、貸別荘・コテージが46施設ながら客室は84室(1施設あたり平均1.8室)にとどまる。施設数で見れば郡部は一棟貸しや民宿の比重が大きく、客室数で見れば旅館と数軒のリゾートが単価の高い層を担っている構図だ。

次に、推定成約ADRが算出できる130施設・8,019室を価格帯×業態で整理した。ここでの価格帯は各施設の12ヶ月平均の推定成約ADRで区分している。

価格帯高知市
施設/客室
高知市の主な業態郡部
施設/客室
郡部の主な業態
〜6千円9/499室ビジネス9施設・499室14/556室ビジネス6施設・456室、旅館7施設・72室
6〜9千円31/2,577室ビジネス24施設・2,320室、旅館5施設・182室27/1,066室ビジネス12施設・751室、旅館11施設・153室
9千〜1.3万円14/1,716室ビジネス10施設・1,308室、シティ3施設・368室8/239室ビジネス4施設・171室、旅館3施設・53室、リゾート1施設・15室
1.3〜2万円5/635室ビジネス2施設・248室、旅館2施設・196室、リゾート1施設・191室10/493室旅館8施設・204室、リゾート2施設・289室
2万円〜4/124室旅館3施設・123室8/114室旅館6施設・79室、リゾート1施設・18室
合計63/5,551室67/2,468室
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADRが算出できた130施設・8,019室。貸別荘・民宿・ゲストハウス等は含まない)

この表から読み取れるのは、郡部の価格分布が「6〜9千円」と「1.3万円〜」の二つに割れ、その中間の9千〜1.3万円帯が8施設・239室と極端に薄いことである。郡部の高単価は旅館とリゾートが担い、低中価格帯はビジネスホテルが担うため、中間価格帯の宿泊特化型やカジュアルな旅館が層として形成されていない。高知市側は逆に、1.3万円以上が9施設・759室(推定対象客室の13.7%)と上位帯が薄い。

供給の性格 — 高知市中心5km圏は9年で+7.6%、2026年の新規は大型1件と小規模10件

供給側の動きは緩やかである。はりまや橋を中心とする半径5km圏の客室数は、2017年の68施設・5,350室から2026年は82施設・5,757室へ、9年で+7.6%増えた。2020年に5,689室まで増えた後は2024年に5,541室まで減少し、2026年に再び増加に転じている。

高知市中心(はりまや橋)5km圏の客室数・施設数(各年末時点)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、2026年は調査時点の値、N=82施設)

2026年の増加をけん引したのは、2月に高知市で開業した209室のビジネスホテルである。県内の既存ビジネスホテル64施設・5,116室に対して4.1%の上乗せにあたる。2026年の県内開業(10月の開業予定1件を含む)は11件・223室あるが、209室の1件を除く10件は1〜3室の小規模施設で、合計14室にすぎない。

2026年の県内開業(業態)件数客室数1件あたり
ビジネスホテル1209室209室
貸別荘78室1〜2室
旅館13室3室
グランピング12室2室
キャンプ場11室1室
合計11223室
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、N=11施設)。※掲載は開業の数ヶ月前から出るため、2026年後半以降は今後の掲載で増加する可能性がある

つまり2026年の新規供給は「県都の大型ビジネスホテル1件」と「郡部の一棟貸し・小規模宿の積み上げ」に二極化しており、郡部で10〜30室規模の宿を新設する動きは観測されていない。2025年も同様で、9月に須崎市で158室のビジネスホテルが開業したほかは、1〜6室のゲストハウスや貸別荘が中心だった。なお当社が参照する建築計画(国土交通省「建築物動態統計調査」)には、調査時点で高知県内の宿泊施設の大型計画は見当たらない。ただし同データは確認申請ベースで、収録は一定規模以上の案件に偏るため、小規模案件や申請前の計画は含まれない点に留意が必要である。

供給増の影響を価格面から確認しておく。高知市の推定成約ADRは、2025年9月〜2026年1月に前年同月比+7.4〜+15.6%と高い伸びを示したが、209室が加わった2026年2月以降は−0.3〜+6.7%へ伸びが緩やかになった。ただし前年の2025年春〜夏は朝の連続テレビ小説「あんぱん」の放送で県内観光が底上げされた時期であり、比較基準の高さも伸び率の鈍化に効いていると考えられる。高知県の県外観光客は2025年に457万人(前年比+3%)と、現行の推計方法で過去2番目の水準だった。

需給 — 2026年8月の推定OCCは89.7%、四国4県で最も高い

需給の締まり具合を推定OCCで比べる。2026年8月の高知県は89.7%(対象89施設/客室4,959、主要予約サイト掲載ベース)で、徳島県87.4%、愛媛県85.0%、香川県83.9%を上回った。6月・7月も高知県は四国4県の中で最も高い水準にある。業態別では、8月のビジネスホテルが88.3%(対象30施設/客室3,192)、旅館が88.3%(対象22施設/客室656)と、両業態がそろって高い。

2026年6月2026年7月2026年8月8月の対象
高知県79.7%84.5%89.7%89施設/客室4,959
徳島県79.6%79.7%87.4%77施設/客室3,585
愛媛県76.6%80.7%85.0%149施設/客室8,072
香川県73.4%77.5%83.9%133施設/客室5,694
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(稼働率はOTA等の掲載在庫ベースの推定値、全業態。6月・7月の対象は高知県81施設/客室4,518・87施設/客室4,921)

ピーク日と平日の差はブッキングカーブで確認できる。よさこい祭り本祭2日目の8月11日(火・祝)は、LT45の時点で推定OCCが95.2%に達し、LT1で99.6%とほぼ満室のまま推移した。一方、平日の8月26日(水)はLT45で56.3%から始まり、LT7で73.8%、LT1で87.9%と直前にかけて積み上がる。土曜の8月22日はその中間で、LT45の70.2%からLT1の98.2%へ上昇した。

高知県 ブッキングカーブ(推定OCC、LT45→LT1)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(対象:8/11=61施設/客室2,691、8/22=93施設/客室5,022、8/26=87施設/客室4,923、主要予約サイト掲載ベース)

祭りや連休のピーク日は45日前の時点でほぼ埋まっているため、この日程で単価を伸ばす余地は「どの価格帯の在庫を先に厚く持つか」で決まる。次節ではこの点を、価格帯別の完売の早さと室数を重ねて検証する。

空白帯の特定 — 郡部の9千〜1.3万円帯は239室、よさこい期間は94%が30日以上前に完売

ここではピーク期間の在庫推移から、完売が早いのに室数が限られている価格帯を探す。対象はよさこい祭り期間(2026年8月9日〜12日の4泊)とGW(2026年5月2日〜5日の4泊)の2つで、いずれも宿泊日が過ぎて結果が確定している。在庫データのある施設のうち、OTA等での公開枠が総客室の30%以上の施設(よさこい期間65施設、GW期間105施設のうち上位100施設)を、推定成約ADRの価格帯で区分した。

郡部の価格帯別 客室数(棒)と、ピーク期間の完売の早さ(線)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。客室数=推定成約ADRが算出できた郡部67施設・2,468室。よさこい=観測した宿泊日のうち宿泊日の30日以上前に残室0に到達した日の割合。GW=観測した宿泊日のうち完売に到達した日の割合
エリア×価格帯供給(推定対象)よさこい期間
30日以上前に完売
うち45日以上前
から完売
GW期間
完売に到達
郡部 〜6千円14施設・556室10/13日程(77%)8日程4/18日程(22%)
郡部 6〜9千円27施設・1,066室22/44日程(50%)20日程13/57日程(23%)
郡部 9千〜1.3万円8施設・239室15/16日程(94%)14日程8/15日程(53%)
郡部 1.3万円〜18施設・607室20/24日程(83%)18日程6/23日程(26%)
高知市 6〜9千円31施設・2,577室9/16日程(56%)4日程35/73日程(48%)
高知市 9千〜1.3万円14施設・1,716室1施設のみ20/33日程(61%)
高知市 1.3万円〜9施設・759室該当なし4/7日程(57%)・2施設
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。よさこい期間:在庫データのある181施設のうち公開枠30%以上の65施設を集計。GW期間:同161施設のうち公開枠30%以上の105施設から上位100施設を集計。日程数=施設×宿泊日の観測数。宿泊日の45日超前の観測は掲載枠が積まれる前の状態を含むため、日数は示さず「45日以上前から完売」とのみ表記

郡部の9千〜1.3万円帯は、よさこい期間に観測した16日程のうち15日程(94%)が宿泊日の30日以上前に完売し、うち14日程は宿泊日の45日以上前から完売していた。GW期間でも完売に到達した日程の割合が53%と、郡部の他の価格帯(22〜26%)の2倍を超える。それにもかかわらず、この価格帯の推定対象客室は郡部全体の9.7%にあたる239室しかない。サンプルは4〜5施設と小さいものの、2つの確定ピークで同じ傾向が出ている点は、需要に対して受け皿の室数が限られていることを示すシグナルとして読める。

高知市では、GW期間に9千〜1.3万円帯の61%、1.3万円以上の57%の日程が完売に到達し、主力の6〜9千円帯(48%)を上回った。高知市の1.3万円以上は9施設・759室(推定対象客室の13.7%)で、上位帯の室数は厚くない。ただし1.3万円以上の観測は2施設にとどまるため、郡部ほど強い結論は置けず、あくまで候補として扱う。

厚い埋まっている領域

高知市 6〜9千円のビジネス
24施設・2,320室。月次の単価変動が小さく、業務需要が底を支える県内最大のストック。

空白①郡部の中価格帯

9千〜1.3万円 × 旅館・小規模リゾート
8施設・239室。よさこい期間は94%の日程が30日以上前に完売。10〜30室規模の新設が観測されていない層。

空白②高知市の上位帯

1.3万円〜 × 旅館・上質な宿泊特化
9施設・759室(13.7%)。GWは57%の日程で完売。業務ストックの改装で単価帯を引き上げる余地。

立地評価 — 居住・就業・地価・津波浸水想定で4地点を比べる

空白帯がどの立地で成立しやすいかを、県都の中心(はりまや橋)と、県西部の四万十市中村・土佐清水、県東部の室戸の4地点で比べる。居住人口は半径1,500m、就業人口は半径1,000mで集計し、地価は最寄りの商業系の地価公示地点、津波・洪水は代表地点が国土交通省の公表データ上で想定区域に含まれるかを確認した。

高知県内の宿泊施設分布(円の大きさ=客室数、色=推定成約ADRの価格帯)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=274施設)
項目高知市中心
(はりまや橋)
四万十市
(中村)
土佐清水市
(市役所周辺)
室戸市
(市役所周辺)
居住人口(半径1,500m・2025年)34,828人10,810人3,800人3,185人
2040年の人口変化(2020年比)−19.7%−22.3%−39.0%−48.9%
高齢者比率(2025年)34.3%35.2%48.1%52.1%
従業者数(半径1,000m)25,911人4,848人1,874人1,227人
事業所数/オフィス系比率2,881/21.1%808/11.1%348/4.9%241/5.8%
地価公示(2026年・商業系)171,000円/㎡
本町5丁目・+0.6%
47,100円/㎡
中村天神橋・−0.4%
32,000円/㎡
天神町・−1.2%
34,200円/㎡
浮津・−1.4%
津波浸水想定(代表地点)区域外(約60m先に0.3〜1m未満の区域)区域外3m以上〜5m未満1m以上〜2m未満
洪水浸水想定(想定最大規模)区域に該当(鏡川)区域に該当(四万十川・後川)代表地点は該当なし代表地点は該当なし
立地タイプ業務・観光の複合拠点県西部の業務・周遊拠点観光地型(海岸・岬)観光地型(ジオパーク・海岸)
出典:国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)、総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年)、国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示・津波浸水想定・洪水浸水想定区域)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。津波浸水想定は高知県設定の最大クラス。県内商業地の最高価格地点は本町1丁目の273,000円/㎡(前年比+3.0%)

数字の差は明瞭である。高知市中心は半径1,000mに従業者25,911人・事業所2,881が集まり、オフィス系の比率も21.1%と県内の他地点を大きく上回る。平日の業務需要がビジネスホテルの稼働を下支えしていることが、月次単価の振れ幅の小ささにも表れている。四万十市中村は従業者4,848人で、県西部の業務・周遊拠点としての厚みを持つ。これに対し土佐清水と室戸は従業者1,200〜1,900人、オフィス系比率5%前後と業務需要は限られ、宿泊需要は観光の季節性に沿って動く。

高知市中心(はりまや橋)半径1,500m圏の居住人口メッシュ
出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)。地図内の人数は2020年値

高知市中心の居住人口は2025年の34,828人から2040年に29,645人(2020年の36,912人比−19.7%)へ減る見込みだが、郡部の沿岸2地点は−39.0%(土佐清水)、−48.9%(室戸)と減少幅がはるかに大きい。小規模な新設を郡部で検討する場合、需要側より運営側、すなわち人材の確保と運営形態(無人化・近隣施設との共同運営など)が収益計画の前提を左右する。

地価公示(商業系・同一地点)の推移 — 2021年=100
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示:高知5-14 本町5丁目、四万十5-1 中村天神橋、土佐清水5-1 天神町、室戸5-2 浮津)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

地価は投資の入口の違いを示す。高知市本町5丁目の商業地は2021年の168,000円/㎡から2026年は171,000円/㎡(2021年比+1.8%)と小幅に上昇し、県内最高地点の本町1丁目は273,000円/㎡(前年比+3.0%)である。一方、郡部の3地点は5年間で−2.5〜−6.4%と緩やかに下落しており、土佐清水・室戸は3万円台前半にある。用地費の比重が小さい郡部では、総投資額の大半が建物・内装に向かうため、建設費の見積もりと客室単価の設計が採算の中心になる。

災害面では、沿岸の土佐清水(3m以上〜5m未満)と室戸(1m以上〜2m未満)の代表地点が津波浸水想定区域に含まれる。高知市中心と四万十市中村は代表地点が津波の想定区域外だが、いずれも想定最大規模の洪水浸水想定区域に該当する。立地ごとに想定されるハザードの種類が異なるため、電気設備の上階配置や避難計画など、建物仕様とBCPに織り込む項目を立地で変えることが実務上の要点になる。

投資示唆 — 高知市は取得・改装型、郡部は新築小規模型

ここまでの分析を投資手法に接続する。高知市の厚い業務ストックと、郡部の小規模高単価は性格がまったく異なり、向く手法も分かれる。

項目取得・改装型(高知市)新築小規模型(郡部の流域・沿岸)
対象ストックビジネスホテル46施設・4,376室(県内ビジネス客室の75.8%)郡部185施設・3,296室。貸別荘・コテージは46施設で84室
狙う価格帯6〜9千円帯(2,577室)から1.3万円以上への引き上げ9千〜1.3万円帯(現状8施設・239室)
需要の根拠従業者25,911人(1km圏)、GWに9千円以上の帯で57〜61%の日程が完売よさこい期間に94%の日程が30日以上前に完売、GWも53%が完売に到達
単価の安定性月次6,900〜9,600円(1.38倍)土佐清水1.50倍、室戸1.62倍、四万十市1.57倍
用地・入口価格商業地171,000円/㎡(本町5丁目、+0.6%)32,000〜47,100円/㎡(前年比−0.4〜−1.4%)
立地の留意点洪水浸水想定区域(鏡川)、津波区域が近接沿岸の代表地点は津波浸水想定1〜5m未満、2040年人口−39〜−49%
成立のポイント既存の業務需要を維持しつつ、上位客室の新設で週末・イベント日の単価を伸ばす10〜30室規模で繁忙期の在庫を確保し、閑散期は食・体験との組み合わせで単価を維持
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、国土交通省 不動産情報ライブラリ、国土交通省 国土数値情報、総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」

高知市では、平日を支える業務需要が既に厚く、月次単価の振れ幅も小さい。したがって新築で室数を積むよりも、既存のビジネスホテルを取得し、一部客室を上位グレードへ改装して9千〜1.3万円帯から1.3万円以上へ単価帯を広げる手法が、需要の実績と整合しやすい。よさこい祭りやGWのように45日前の時点でほぼ満室になる日程が年に複数あり、上位客室はこうした日程で単価を伸ばす役割を担える。

郡部では、既存の高単価層が旅館とリゾートの少数施設に限られ、2025〜2026年の新規は1〜3室の一棟貸しに偏っている。その間にある10〜30室規模・9千〜1.3万円帯の宿は、ピーク期間の完売の早さに対して室数が限られており、新築小規模型の投資機会として最も明確に数字が出た層である。ただし繁閑差が1.5〜1.6倍と大きく、人口減少も急なため、繁忙期の在庫確保と閑散期の需要づくり、少人数で回せる運営設計をセットで組み立てることが前提になる。

まとめ

高知県の宿泊単価は、流域・沿岸の小規模高単価(香美市21,900円ほか)、沿岸・近郊の中単価(室戸市8,600円、土佐清水市8,100円)、県都の業務・観光中核(高知市7,900円)、県西部・東部の価格訴求型の拠点(四万十市6,900円、宿毛市4,900円、安芸市4,700円)の4層に分かれる。高知市は県内客室の63.5%を占め、そのうちビジネスホテルが4,376室と中心をなす。

業態×価格帯で見ると、郡部では9千〜1.3万円帯が8施設・239室と薄く、よさこい期間には94%の日程が宿泊日の30日以上前に完売した。高知市では1.3万円以上が759室(13.7%)と上位帯が薄い。2026年8月の推定OCCは89.7%と四国4県で最も高く、需給は締まっている。投資手法としては、高知市では業務ストックの取得・改装による単価帯の引き上げ、郡部では10〜30室規模の新築小規模型が、それぞれのデータと整合する。

データに関する注記:本記事の推定成約ADRは確定済みの月(2025年9月〜2026年8月)の値で、調査時点(2026年9月15日)のデータに基づきます。郡部の市町村値は推定対象が1〜2施設の場合があり、1施設の構成で値が大きく変わります。推定OCC・ブッキングカーブ・完売判定はOTA等の販売在庫に基づく推定であり、施設全体の実稼働率とは異なります。完売判定はOTA等での公開枠が総客室の30%以上の施設に限って集計しています。新規開業はOTA等の掲載確認ベースで、掲載前の施設は含みません。

関連記事

参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチ&コンサルティングの集計データ(推定成約ADR:高知県25市町村・確定12ヶ月〈2025年9月〜2026年8月〉、業態構成:N=274施設・9,028室、推定OCC:2026年6〜8月・四国4県、ピーク期間の在庫推移、新規開業のOTA掲載確認)。立地評価は国土交通省 国土数値情報・不動産情報ライブラリと総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年)。調査時点は2026年9月15日。

■ 試算前提

市町村の推定成約ADRは、各月の対象施設の中央値を確定12ヶ月で単純平均した値。価格帯(〜6千円/6〜9千円/9千〜1.3万円/1.3万円〜)は各施設の12ヶ月平均で区分した。完売判定は残室が初めて0室に到達したリードタイムで行い、OTA等での公開枠が総客室の30%以上の施設に限定。居住人口は半径1,500m、従業者数は半径1,000mで集計した。本稿では利回り・IRR等の収益試算は行っていない。

■ 限界・留意点

推定成約ADR・推定OCCはOTA等の販売在庫に基づく推定値で、各施設の実際の成約価格・実稼働率とは異なる。郡部の市町村値は推定対象が1〜2施設の場合があり参考値として扱う。新規開業は掲載前の施設を含まない。津波・洪水浸水想定は代表地点での判定で、個別敷地の評価ではない。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(高知県25市町村・確定12ヶ月)、業態構成(N=274施設・9,028室)、推定稼働率(OCC)、ブッキングカーブ、ピーク期間の在庫推移、新規開業(OTA掲載確認ベース)

■ 政府統計・公的データ

■ ニュース・イベント情報

関連記事