2026年8月3日時点、兵庫県のブッキングカーブをカテゴリ別に並べると、同じ宿泊日でも「どこまで積み上がっているか」だけでなく「これから何ポイント積めるか」がまったく違う。宿泊日45日前(T-45)の推定OCCはシティ80.8%(2026年8月時点)・ビジネス75.0%・リゾート67.7%・旅館65.8%(いずれも5宿泊日平均・OTA掲載在庫ベース)。そこから直近観測までの上積み幅はリゾート+11.2pt、ビジネス+6.8pt、旅館+4.7pt、シティ+3.1ptと、最大3.6倍の開きがある。さらに直近観測では、旅館の推定OCCが70.5%(2026年8月時点・5宿泊日平均)と4カテゴリ最下位である一方、完売施設率は28.4%とシティ(8.3%)の3.4倍に達する。稼働が最も低いカテゴリで完売施設が最も多いという逆転は、1施設あたり平均客室数が旅館19.3室・シティ187.0室という在庫構造の差から説明できる。本記事では兵庫県の4カテゴリについて、T-45/T-30/直近観測の3定点でブッキングカーブを突き合わせ、レベニューマネジメント上の読み替え方を整理する。
対象: 兵庫県のシティホテル N=46施設・ビジネスホテル N=149施設・旅館 N=253施設・リゾートホテル N=47施設(いずれも直近観測断面)。本記事の価格指標は推定成約ADR(OTA等の販売データから推定される成約価格水準・税抜相当)、稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値。いずれも定義は記事末尾。データ時点: 2026年8月3日。
- — T-45の推定OCCはシティ80.8%・ビジネス75.0%・リゾート67.7%・旅館65.8%(2026年8月時点・5宿泊日平均)。水準の順位は業態規模とほぼ一致する。
- — 上積み幅は最大3.6倍。T-45→直近観測でリゾート+11.2pt、ビジネス+6.8pt、旅館+4.7pt、シティ+3.1pt。巻き返しに使える残り時間はカテゴリで違う。
- — 旅館は推定OCC 70.5%(2026年8月時点)で最下位ながら完売施設率28.4%は最高で、シティ(8.3%)の3.4倍。稼働と逼迫度が逆転する。
- — 逆転の要因は在庫規模。1施設あたり平均客室数は旅館19.3室・シティ187.0室と約9.7倍の開きがあり、客室数加重のOCCが施設単位の逼迫を覆い隠す。
- — 価格の方向はカテゴリで分岐。推定成約ADRの確定月前年同月比はシティ2026年6月-12.4%・7月-7.5%、ビジネス-0.4%・+1.5%。
T-45からの上積み幅は、カテゴリで3.6倍の差がつく
まず、2026年8月中の5つの宿泊日(8月15日・19日・22日・26日・29日)を対象に、T-45/T-30/直近観測の3定点で推定OCC(OTA掲載在庫ベース)を平均したものが下表である。5日とも観測窓は宿泊日の45日前から直近(2026年8月2日観測)までに収まっており、直近観測時点の残り日数は13〜27日である。
| カテゴリ | 45日前 | 30日前 | 直近観測 | 上積み (45日前→直近) |
観測施設数レンジ (45日前/30日前/直近) |
|---|---|---|---|---|---|
| シティホテル | 80.8% | 83.3% | 83.9% | +3.1pt | 42-44/43-46/46 |
| ビジネスホテル | 75.0% | 78.7% | 81.8% | +6.8pt | 137-141/139-146/147-149 |
| リゾートホテル | 67.7% | 72.7% | 78.8% | +11.2pt | 41-45/43-45/46 |
| 旅館 | 65.8% | 68.8% | 70.5% | +4.7pt | 175-206/175-221/246-249 |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。上積み幅は丸め前の値で算出しているため、表示値の差分と最大0.1pt異なる場合がある
ここで最も重要なのは、水準の順位と上積み幅の順位が一致していないことである。T-45の水準はシティ(80.8%)が最も高く旅館(65.8%)が最も低いが、上積み幅で見るとリゾート(+11.2pt)が突出し、シティ(+3.1pt)が最も小さい。つまりシティホテルは早い段階でほぼ積み終わっており、直前需要に依存する割合が小さい。逆にリゾートホテルはT-45時点では4カテゴリ中3番目の水準にとどまりながら、直近観測ではビジネスホテルに肉薄する78.8%まで到達している。同じ「稼働が伸びていない」という状態でも、シティホテルとリゾートホテルではその意味がまったく異なる。カテゴリごとに上積み幅が大きく分かれる構造は兵庫県に限った話ではなく、東京のブッキングカーブは3類型でも業態ごとに別々のカーブとして現れている。
下のチャートは、2026年8月29日(土)泊を対象に、残り日数45日から直近観測(残り27日)までの推定OCCの推移を4カテゴリで重ねたものである。線の高さではなく、傾きの違いに注目してほしい。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
8月29日(土)泊単独で見ると、シティホテルは残り45日で83.6%(観測施設数43施設)、残り27日で86.2%(同46施設)と+2.6ptの上積みにとどまる一方、リゾートホテルは72.1%(同45施設)から79.2%(同46施設)へ+7.1pt動いている。ビジネスホテルは77.9%(同139施設)から81.8%(同147施設)で+3.9pt、旅館は65.0%(同206施設)から67.6%(同246施設)で+2.6ptである。旅館は水準が低いまま、カーブの傾きもほぼ寝ている。これは「まだ売れる余地が大きい」という単純な読み方ができないことを意味しており、次節以降で構造面から確認する。
曜日で開く差もカテゴリごとに別物 — 旅館は土曜と平日が同水準
次に、観測条件を揃えるためにT-45の断面だけを取り出し、宿泊日ごとに並べる。すべて同じ残り日数45日での比較なので、進捗段階の違いを気にせず曜日パターンだけを見ることができる。
| 宿泊日 | シティ | ビジネス | リゾート | 旅館 |
|---|---|---|---|---|
| 8月15日(土) | 79.5%(N=42) | 75.8%(N=137) | 73.6%(N=41) | 66.7%(N=185) |
| 8月19日(水) | 78.8%(N=44) | 75.2%(N=139) | 59.6%(N=45) | 64.8%(N=175) |
| 8月22日(土) | 84.7%(N=44) | 75.9%(N=138) | 73.9%(N=43) | 67.4%(N=202) |
| 8月26日(水) | 77.5%(N=42) | 70.2%(N=141) | 59.1%(N=44) | 65.0%(N=180) |
| 8月29日(土) | 83.6%(N=43) | 77.9%(N=139) | 72.1%(N=45) | 65.0%(N=206) |
| 9月1日(火) | 75.8%(N=42) | 67.1%(N=139) | 58.2%(N=38) | 67.0%(N=157) |
| 9月5日(土) | 87.8%(N=43) | 79.7%(N=140) | 68.3%(N=44) | 65.2%(N=193) |
| 9月8日(火) | 76.9%(N=45) | 70.5%(N=143) | 65.8%(N=42) | 63.7%(N=189) |
| 9月12日(土) | 85.2%(N=46) | 78.4%(N=138) | 70.8%(N=47) | 63.8%(N=246) |
| 9月16日(水) | 75.7%(N=46) | 68.6%(N=145) | 59.2%(N=46) | 67.4%(N=237) |
| 土曜5日平均 | 84.2% | 77.5% | 71.7% | 65.6% |
| 平日5日平均 | 76.9% | 70.3% | 60.4% | 65.6% |
| 土曜-平日 | +7.2pt | +7.2pt | +11.4pt | +0.0pt |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。すべて宿泊日の45日前時点の推定OCC(OTA掲載在庫ベース)
T-45という早い段階ですでに、土曜と平日の差はカテゴリごとにはっきり分かれている。リゾートホテルは+11.4ptと最も週末に偏り、シティホテルとビジネスホテルはともに+7.2pt。これに対して旅館は土曜5日平均65.6%・平日5日平均65.6%で、差が実質ゼロである。
旅館の曜日フラットさは、2つの読み方ができる。ひとつは、週末の在庫がT-45よりさらに前の段階ですでに埋まりきっており、45日前の断面では週末も平日も「残っている在庫の質が揃ってしまっている」状態。もうひとつは、週末に集中する需要を受け止めるだけの在庫が最初から1施設あたりに存在しない、という構造的な制約である。兵庫県の旅館カテゴリは城崎や有馬をはじめとする温泉地の小規模施設が中心で、後者の要因が効きやすい。いずれにせよ、旅館カテゴリでは「週末に価格を張り、平日を埋める」という一般的な曜日戦略が、T-45の断面ではすでに機能しにくい状態にあることが読み取れる。曜日ごとの稼働の形をカテゴリを絞ってさらに細かく分解した例としては、愛知・広島のビジネスホテル 曜日別稼働の形も参考になる。
旅館の「稼働は最下位、完売施設率は最高」は在庫構造で説明できる
ここが本記事の核心である。直近観測(残り13〜27日、2026年8月の5宿泊日平均)の推定OCCは旅館が70.5%(2026年8月時点)と4カテゴリで最も低い。ところが同じ断面での完売施設率は旅館が28.4%と最も高く、シティホテル(8.3%)の3.4倍に達する。稼働が最も低いカテゴリで、掲載在庫が確認できなくなる施設が最も多いという逆転が起きている。
| カテゴリ | 2026年7月 確定 平均推定OCC |
直近観測 推定OCC |
直近観測 完売施設率 |
1施設あたり 平均客室数 |
|---|---|---|---|---|
| シティホテル | 89.3%(N=42-46) | 83.9% | 8.3% | 187.0室 |
| ビジネスホテル | 90.9%(N=142-149) | 81.8% | 13.4% | 114.5室 |
| リゾートホテル | 83.7%(N=39-47) | 78.8% | 18.3% | 49.4室 |
| 旅館 | 82.7%(N=189-256) | 70.5% | 28.4% | 19.3室 |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。1施設あたり平均客室数は2026年8月29日泊断面の総客室数÷施設数で、同断面の内訳はシティ46施設・8,601室/ビジネス147施設・16,829室/リゾート47施設・2,320室/旅館253施設・4,879室
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
チャートが示す通り、完売施設率は1施設あたり平均客室数と逆向きにきれいに並ぶ。旅館19.3室に対しシティホテル187.0室と、施設規模には約9.7倍の開きがある。この差が推定OCCと完売施設率の逆転を生む。
仕組みはこうである。推定OCCは客室数で加重した指標であり、県全体の総客室数に対して掲載在庫がどれだけ消化されたかを表す。一方、完売施設率は施設を1件ずつ数えた比率である。旅館カテゴリは2026年8月29日泊断面で253施設・総客室数4,879室。1施設が持つ在庫が20室に満たないため、少数の予約が入るだけで掲載在庫が確認できなくなる施設が続出する。ところが1施設が4,879室全体に占める重みはごくわずかなので、施設単位で完売が積み上がっても、県全体の推定OCCはなかなか押し上がらない。逆にシティホテルは46施設で8,601室。1施設が持つ在庫が大きいため、施設単位の完売は起きにくい代わりに、1施設が動くと県全体の推定OCCへの寄与が大きい。
この非対称性は、旅館カテゴリのレベニューマネジメントに直接効いてくる。県全体の推定OCC 70.5%(2026年8月時点)という数字を「まだ3割空いている市場」と読むと判断を誤る。実際には、観測対象246〜249施設のうち3割近くはすでに掲載在庫が確認できない状態にあり、残りの在庫は特定の施設・特定の客室タイプに偏って存在している。市場全体の平均稼働と、自館が置かれた競合環境の逼迫度は、旅館カテゴリでは特に乖離しやすい。旅館カテゴリで市場OCCと完売施設率が食い違う現象は兵庫県に固有のものではなく、長野県の夏終盤ブッキングカーブ2026でも9月第1週の完売施設率25.9%として同じ構図が確認できる。
価格軸で確認できるのはシティとビジネス — 2026年6月・7月の前年同月比
価格については、推定成約ADRの検証が済んでいるシティホテルとビジネスホテルの2カテゴリで確定月の前年同月比を確認する。兵庫県の推定成約ADR(税抜相当)は、シティホテルが2026年6月 ¥11,473(N=47施設)で前年同月 ¥13,098(N=47施設)に対し-12.4%、2026年7月 ¥12,131(N=47施設)で前年同月 ¥13,120(N=47施設)に対し-7.5%。一方ビジネスホテルは2026年6月 ¥7,260(N=166施設)で前年同月 ¥7,290(N=167施設)に対し-0.4%、2026年7月 ¥7,673(N=166施設)で前年同月 ¥7,559(N=168施設)に対し+1.5%と、ほぼ横ばいで推移している。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。2025年11月はシティ N=10施設・ビジネス N=22施設と他月と対象施設数が異なるため比較対象から除外
年重ねで見ると、シティホテルは2025年の同月水準を6月・7月とも下回っている。ビジネスホテルは前年と重なる形で推移しており、カテゴリ間で価格の方向が分かれていることが分かる。2026年8月以降は現時点の販売状況に基づく推定値(シティ 8月 ¥14,955・N=47施設、9月 ¥14,001・N=47施設/ビジネス 8月 ¥10,758・N=163施設、9月 ¥10,493・N=159施設)であり、販売状況の変化に応じて月末まで変動し得る。確定月の値が検証済み履歴基準で算出されるのに対し、当月・翌月の推定値は掲載スナップショット基準で算出されるため、算出基準そのものが異なる点に注意したい。2026年8月・9月の推定値が7月確定値より高く出ているのはこの基準差と繁忙期の販売構成を反映したものであり、確定値との単純比較は月末の確定を待つ必要がある。なお本節は検証済みカテゴリのみを対象としており、旅館・リゾートの価格水準には踏み込まない。
兵庫県のホテル・旅館を運営するレベニューマネージャーへ — 示唆とアクションプラン
(1) 自館のカーブは「市場平均」ではなく「同カテゴリの上積み幅」と照合したい。T-45から直近観測までの上積みは、シティ+3.1pt・ビジネス+6.8pt・リゾート+11.2pt・旅館+4.7ptと大きく異なる。シティホテルを運営していてT-45で市場並みの80.8%に届いていない場合、残りの期間で市場が積む幅は+3.1pt程度しかない。同じ「T-45で市場を下回る」でも、リゾートホテルなら+11.2pt分の巻き返し余地が市場側に残っているのに対し、シティホテルではT-45が実質的な最終確認点に近い。カテゴリごとに「巻き返しに使える残り時間」の長さが違うと捉え直したい。
(2) 曜日戦略の効き方はカテゴリで反転する。T-45断面での土曜と平日の差は、リゾート+11.4pt、シティ・ビジネスともに+7.2pt。一方で旅館は+0.0ptと差がない。リゾート・シティ・ビジネスでは週末プレミアムを取りにいく設計が市場の形状と整合するが、旅館では土曜と平日を同じ強度で扱う前提で在庫と価格を組む余地がある。自館の曜日別設定が、この市場形状と逆向きになっていないかを確認したい。
(3) 旅館は「市場OCC」より「完売施設率」を先に見たい。直近観測で旅館の推定OCCは70.5%(2026年8月時点)と最も低いが、完売施設率は28.4%と最も高い。1施設あたり平均客室数19.3室という構造から、市場平均の空き具合と実際の競合逼迫度が乖離しやすい。市場OCCが70%台(2026年8月時点)だからと価格を緩めると、実際には掲載在庫が薄い環境で自館だけ安く出す形になりかねない。旅館カテゴリでは完売施設率を主たる逼迫度の指標として、市場OCCは補助線に置く運用を検討したい。
(4) 価格の方向はカテゴリで分かれている。推定成約ADRの確定月前年同月比は、シティが2026年6月-12.4%・7月-7.5%、ビジネスが6月-0.4%・7月+1.5%。シティホテルでは市場全体が前年より低い価格帯で稼働を作っている一方、ビジネスホテルは前年水準を維持している。自館の価格改定カレンダーが、どちらの動きを前提に組まれているかを点検したい。
| 時間軸 | 打ち手 | 判断トリガー | 狙い |
|---|---|---|---|
| 今日〜今週 | 8月下旬〜9月前半の自館ブッキングカーブを、同カテゴリの3定点(45日前/30日前/直近観測)に重ねて確認する | 自館の残り30日以内の宿泊日が、同カテゴリの直近観測水準(シティ83.9%・ビジネス81.8%・リゾート78.8%・旅館70.5%)を下回っているなら | 遅れの有無を、カテゴリの標準形状に対する差として把握する |
| 今日〜今週 | 週末(土曜)と平日の設定強度の差を、自館カテゴリの市場形状と突き合わせる | リゾート運営で土曜と平日をほぼ同一設定にしている場合(市場のT-45差は+11.4pt)、または旅館運営で土曜に大きな差を付けている場合(市場のT-45差は+0.0pt) | 曜日設計を市場形状と同じ向きに揃える |
| 2週間以内 | 旅館運営の場合、競合セットの完売施設率を逼迫度の主指標に据え、市場OCCを補助線に降格する | 自館周辺の完売施設率が旅館カテゴリ平均28.4%を上回っている一方、市場OCCが70.5%(2026年8月時点)前後にとどまっているなら | 見かけの空室感に引きずられた値下げを避ける |
| 2週間以内 | シティホテル運営の場合、T-45を最終確認点として扱う運用に切り替え、それ以降の在庫調整は限定的な範囲に絞る | 市場の上積み幅が+3.1ptにとどまる中、自館がT-45で市場水準80.8%を大きく下回っているなら | 巻き返し余地の小さい期間での過剰な値引きを抑える |
| 来月に向けて | シティホテル運営の場合、自館の10月以降の価格帯を市場の確定月推移と並べて点検する | 自館の設定が、市場の確定推定成約ADR(2026年7月 ¥12,131)と前年同月比-7.5%という方向感に対して逆向きに動いているなら | 市場の価格方向とのズレを早期に把握する |
| 来月に向けて | ビジネスホテル運営の場合、前年水準の維持を基準線として自館の年間カレンダーを組み直す | 市場の確定推定成約ADRが2026年6月-0.4%・7月+1.5%と前年並みで推移する中、自館だけが前年を大きく下回る設定になっているなら | 価格の据え置き余地を確認する |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
まとめ — 兵庫県で持ち帰る3つの物差し
物差し1:カテゴリごとの「上積み余地」を先に確定させる。兵庫県のT-45から直近観測までの上積み幅はシティ+3.1pt・ビジネス+6.8pt・リゾート+11.2pt・旅館+4.7pt。自館の進捗を評価する前に、自館カテゴリが残り期間でどれだけ積む市場なのかを固定値として持っておく。同じ「T-45で市場を下回る」でも、意味と打ち手の緊急度は3倍以上違う。
物差し2:曜日の効き方はカテゴリの属性である。T-45断面の土曜-平日差はリゾート+11.4pt、シティ・ビジネス+7.2pt、旅館+0.0pt。曜日戦略は業界標準ではなく、自館カテゴリの市場形状に合わせて設計する。特に旅館では、週末と平日を同じ強度で扱う前提が市場の形状と整合する。
物差し3:規模が小さいカテゴリほど、市場OCCは逼迫度を過小に見せる。1施設あたり平均客室数が旅館19.3室・シティ187.0室と約9.7倍違うため、旅館では推定OCC 70.5%(2026年8月時点・最下位)と完売施設率28.4%(最高)が同時に成立する。施設規模が小さいカテゴリでは、客室数加重の市場OCCではなく施設単位の完売施設率を主指標に置く。この使い分けを持っておくと、市場データを自館の判断に翻訳する精度が上がる。
データについて
■ データソース
・推定OCC(OTA掲載在庫ベース)の定義:OTA掲載在庫ベース稼働率 = 100 − 100 × OTA掲載残室数 ÷ 総客室数。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、実客室稼働率とは定義が異なる(高めに出る)。対象は兵庫県、対象月は2026年7月(確定実績)および2026年8月15日〜9月16日の各宿泊日(進捗断面)。
・ブッキングカーブ:宿泊日の45日前から直近までの観測に基づく。直近の観測日は2026年8月2日。出典はメトロエンジンリサーチ&コンサルティング集計データ(ホテルバンク編集部が再集計)。
・対象Nの内訳:ブッキングカーブの対象は兵庫県のシティホテル N=46施設(総客室数8,601室)、ビジネスホテル N=149施設(同17,116室)、旅館 N=253施設(同4,879室)、リゾートホテル N=47施設(同2,320室)。各観測点の実際の観測施設数は本文の表に記載のレンジの通り。
■ 試算前提
・3定点(45日前/30日前/直近観測)は、2026年8月15日・19日・22日・26日・29日の5宿泊日について各断面の推定OCCを単純平均した値。上積み幅は丸め前の値で算出しており、表示値の差分と最大0.1pt異なる場合がある。
・完売施設率:OTA等で掲載在庫が確認できない施設の割合・推定。施設を1件ずつ数えた比率であり、客室数で加重する推定OCCとは分母の取り方が異なる。同一断面の対象施設を分母とし、本記事では残り日数13〜27日の観測点および観測施設数の分布に基づく。稼働率と完売施設率が逆方向に動くのは、この母数の取り方の違いによる。
・推定成約ADRの定義:OTA等の販売データ(最安プラン水準×業態別係数・複数チャネルのアンサンブル)から推定した成約価格水準(税抜相当)。過去月は検証済み履歴基準の確定値、現在・未来月は掲載スナップショット基準の推定値であり、両者は算出基準が異なる。公表運営実績との照合で誤差中央値6.6%。対象は検証済みカテゴリであるシティホテル(N=47施設)とビジネスホテル(N=166施設、いずれも2026年7月確定月)。
■ 限界・留意点
・2025年11月はシティ N=10施設・ビジネス N=22施設と他月と対象施設数が大きく異なる薄カバレッジ月のため、価格比較から除外している。
・観測施設数は断面ごとに変動する(旅館では45日前175〜206施設に対し直近観測246〜249施設)。断面間の差分には母集団の厚みの違いが含まれ得るため、水準の絶対値そのものより、同一カテゴリ内での形状の比較に用いるのが妥当である。
・旅館・リゾートは推定成約ADRの検証済みカテゴリに含まれないため、本記事では価格水準に踏み込んでいない。
・データ時点: 2026年8月3日。販売状況・在庫は日々変動するため、本記事の数値は取得時点のスナップショットである。
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