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外国人宿泊-13.4%でも旅館・リゾート稼働は上昇 内需が支える構造転換

投稿日 : 2026.07.29
外国人宿泊-13.4%でも旅館・リゾート稼働は上昇 内需が支える構造転換

観光庁が2026年7月に公表した宿泊旅行統計調査(2026年5月・第1次速報)は、一見すると弱含みの数字が並ぶ。外国人延べ宿泊者数は1,382万人泊と前年同月比13.4%減、全体の客室稼働率も60.6%(前年同月比-1.1ポイント)にとどまった。しかし業態別に分解すると、まったく異なる景色が浮かび上がる。旅館とリゾートホテルの稼働が前年を明確に上回り、代わりに都市型のビジネス・シティホテルが前年を下回ったのだ。本稿では、この「非都市業態の稼働改善」という構造転換を、公式統計とメトロエンジンリサーチの独自データの両面から読み解く。

本記事における指標の定義

  • 客室稼働率(公式):観光庁「宿泊旅行統計調査」が公表する調査ベースの実稼働率。業態別(旅館・リゾートホテル・ビジネスホテル・シティホテル)の値を用いる。
  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値。
  • 推定稼働率(OTA掲載在庫ベース):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。公式の客室稼働率とは定義が異なり、高めに出る傾向があります。
  • データ出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」、メトロエンジンリサーチ

統計の連続性に関する注記:観光庁は統計精度向上のため、2026年1月分調査から標本の層化基準を「従業者数」から「客室数」へ変更しました。このため、前年同月比・前年同月差には見直しの影響が含まれている可能性があります。本稿の前年比較はこの点に留意してお読みください。

Key Takeaways
  • — 外国人延べ宿泊-13.4%・全体客室稼働率60.6%(2026年5月・前年同月比-1.1pt)と一見弱含みだが、旅館・リゾートホテルは前年超え、都市型(ビジネス・シティ)が反落する業態の二極化が進行している。
  • — 日本人宿泊は-1.4%にとどまり、減少の「質」は都市型インバウンド依存業態に偏在。内需が地方レジャー需要を下支えする構造が鮮明になった。
  • — 推定成約ADRは沖縄リゾート+20.0%・北海道旅館+8.9%と地方レジャー業態が先行する一方、大阪ビジネス-27.5%など都市型は失速。単価面でも地方分散が進む。

稼働率の二極化 — 旅館・リゾートが上昇、都市型が反落

2026年5月の客室稼働率を業態別に見ると、全体の-1.1ポイントという控えめな数字の内側で、明確な二極化が進んでいる。旅館は41.7%(前年同月比+3.2ポイント)、リゾートホテルは59.3%(同+5.0ポイント)と、いずれも前年を大きく上回った。一方、都市部の主力であるビジネスホテルは74.1%(同-1.6ポイント)、シティホテルは72.6%(同-2.4ポイント)と、水準そのものは高いものの前年からは反落している。

注目すべきは、上昇幅の大きさである。リゾートホテルの+5.0ポイントは、季節要因では説明しきれない構造的な需要のシフトを示唆する。稼働率の絶対水準では依然として都市型ホテルが上回るが、変化の方向性は明確に逆を向いた。都市に集中していた宿泊需要が、地方のリゾート・旅館へと配分を移し始めていると読み取れる。もっとも、地方旅館では人手不足が「売れるのに売れない」稼働上限を生み、上昇余地を制約する面もある。この構造は人手不足で全室稼働できない地方旅館の稼働上限とADR分析で定量的に検証している。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年5月・第1次速報)よりホテルバンク編集部作成

減少の「質」が違う — 外国人-13.4%、日本人-1.4%

この二極化を生んでいる背景は、需要の担い手の交代にある。2026年5月の延べ宿泊者数は5,339万人泊(前年同月比-4.8%)。その内訳を見ると、外国人が1,382万人泊で-13.4%と大きく落ち込む一方、日本人は3,957万人泊で-1.4%と、下げ幅は限定的だった。全体の減少は、そのほとんどが外国人宿泊の減少で説明できる。

ここで重要なのは、外国人宿泊と日本人宿泊では、地理的な集中度がまったく異なるという点だ。訪日客の宿泊は三大都市圏に厚く偏っており、その反動が都市型ホテルの稼働を直撃する。実際、2026年4月(第2次速報)の外国人延べ宿泊者数は、三大都市圏が前年同月比-14.6%だったのに対し、地方部は-2.3%にとどまった。インバウンドの調整局面においても、地方部の落ち込みは相対的に浅い。訪日需要そのものの地方分散が進んでいることの表れといえる。非中国市場がこの地方分散をどこまで牽引しているのかは、中国-58%の穴は非中国インバウンドで埋まったか(2026年4月宿泊統計の再検証)が掘り下げている。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年5月・第1次速報)よりホテルバンク編集部作成

つまり、都市型ホテルの稼働反落はインバウンドの一時的な調整を映したものである一方、旅館・リゾートの稼働上昇は、底堅い国内レジャー需要と、地方へ広がりつつある訪日需要という二本の柱に支えられている。減少局面のなかでこそ、需要構造の変化がくっきりと見える。

足元の夏需要でも地方レジャー圏が先行

この構造は、足元の予約状況にも表れている。メトロエンジンリサーチが集計した、お盆のピークにあたる2026年8月13日(木)チェックインの推定稼働率(OTA掲載在庫ベース、リードタイム24日時点)を都道府県別に見ると、地方のレジャー圏が都市部を上回った。長野県は89.1%、北海道は88.5%と高水準で、沖縄県(81.7%)、静岡県(81.1%)が続く。対して東京都は77.8%、京都府は77.6%、大阪府は75.6%と、都市部は一段低い位置にある。

業態を絞るとさらに鮮明だ。同じお盆ピーク日で、沖縄県のリゾートホテルは87.9%(N=234施設)、北海道のリゾートホテルは86.4%(N=134施設)、長野県の旅館は87.0%(N=392施設)と、いずれも高い消化ペースを示す。夏のレジャーピークに向けて、非都市業態の在庫が先行して埋まっている。公式統計が示した5月の稼働改善が一過性ではなく、夏に向けても継続していることを裏付ける動きといえる。お盆期にどの温泉旅館が最速で完売していくかは、お盆2026・最速完売の温泉旅館ランキングの希少性マップが具体的に示している。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年8月13日チェックイン・LT24時点、N=700〜1,320施設/エリア)

単価にも見える地方業態の伸びしろ

稼働の改善は、価格面にも少しずつ波及している。メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(2026年5月、前年同月比)をエリア×業態別に見ると、地方リゾート・旅館の一部で明確な上昇が確認できる。沖縄県のリゾートホテルは¥16,400(前年同月比+20.0%、N=273施設)、北海道の旅館は¥9,300(同+8.9%、N=295施設)、長野県の旅館は¥13,200(同+3.9%、N=526施設)と、稼働の底堅さを単価に転嫁できている。

一方で、同じ地方でも北海道のリゾートホテルは-6.1%、静岡県の旅館は-0.7%と、単価はエリア・業態によってばらつく。稼働改善がすべて単価上昇に結びついているわけではなく、ここにこそ価格設計の伸びしろが残されている。都市部では、東京都のビジネスホテルが¥14,900(同+5.7%、N=923施設)と堅調な一方、大阪府のビジネスホテルは¥9,700(同-27.5%、N=499施設)。大阪は前年に大型国際イベントで需要が集中した反動局面にあり、その分だけ前年比のハードルが高い。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADR・2026年5月 前年同月比)

エリア × 業態 2026年5月 ADR 前年同月比 対象施設数
沖縄県・リゾートホテル¥16,421+20.0%N=273
北海道・旅館¥9,292+8.9%N=295
東京都・ビジネスホテル¥14,890+5.7%N=923
長野県・旅館¥13,184+3.9%N=526
静岡県・旅館¥18,287-0.7%N=451
東京都・シティホテル¥26,298-3.8%N=107
北海道・リゾートホテル¥14,752-6.1%N=144
大阪府・ビジネスホテル¥9,699-27.5%N=499

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

まとめ — 内需と地方分散が担う次の成長軸

2026年5月の宿泊統計は、ヘッドラインの数字だけを追えば「外国人減・稼働微減」の弱い月に見える。だが業態別・地域別に解像度を上げると、旅館+3.2ポイント、リゾート+5.0ポイントという非都市業態の稼働上昇という、明確なアップサイドの芽が見えてくる。減少の主因は三大都市圏に偏在する外国人宿泊であり、底堅い国内レジャー需要と地方へ広がる訪日需要が、旅館・リゾートの稼働を押し上げている。

メトロエンジンリサーチのデータでも、夏のお盆ピークに向けて地方レジャー圏の在庫消化が都市部を先行し、沖縄リゾートや北海道旅館では単価上昇も始まっている。稼働の改善がまだ単価に十分反映されていないエリア・業態も多く、そこには段階的なプライシングによって収益を伸ばす余地が残る。都市集中から地方分散へ——需要構造の重心が移りつつある今、非都市業態にとっては、稼働と単価の双方でポテンシャルを引き出せる好機が広がっている。

⚠ 将来日程の稼働率・ADRに関する注意:本記事の8月お盆ピークの推定稼働率、および推定成約ADRの将来月分は、調査時点でOTAに公開されている販売在庫・価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。新規プランの追加や価格調整により、現時点の水準から動く可能性がある点にご留意ください。

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参考資料・出典一覧

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