トップ > 新規開業・供給 > 札幌『秋の開業』と客室供給2026-2029 ― ハイアットが拓く高単価帯

札幌『秋の開業』と客室供給2026-2029 ― ハイアットが拓く高単価帯

投稿日 : 2026.08.01 更新日 : 2026.09.02

北海道

新規開業・供給

札幌『秋の開業』と客室供給2026-2029 ― ハイアットが拓く高単価帯

札幌の都心ホテル市場が、供給と単価の両面で節目を迎えている。2025年に外資・ライフスタイルブランドの開業が相次いだ道都・札幌市中央区では、2026年にハイアット セントリック 札幌(216室)が開業を予定し、さらに2029年にはパーク ハイアット 札幌(157室)という高単価帯が控える。本稿では、主要OTA掲載データと公表済みの建築計画の範囲で札幌市中央区の供給パイプライン2026〜2029を整理し、既存の道都ホテル群とのADR(推定成約単価)の階層差を定量的に可視化する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • 掲載価格(全プラン平均・税込)=OTAに公開されている素泊まり〜食事付きを含む全プランの平均。価格帯の広がりを見る用途で用い、成約ADRとは別物です。
  • データ出典=メトロエンジンリサーチ(OTA公開価格の集計)、国土交通省「建築物動態統計調査」、日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」。
Key Takeaways
  • — 札幌のホテル供給は中央区(182施設)に一極集中し、ADR¥25,000超のアッパー〜ラグジュアリー帯は現状わずか3施設にとどまる。
  • — 大型・外資の開業が集中しても中央区ADRは2026年上期に前年比+約10%で推移し、供給増下でも単価は崩れていない。
  • — 2025〜2026年の新規供給は外資・ハイグレードが牽引(2026年 約440室)し、既存の中価格帯ではなく上位帯の「余白」を埋める方向に働いている。
  • ハイアット セントリック 札幌(216室・2026年秋)パーク ハイアット 札幌(157室・2029年)が、道都の価格天井を段階的に引き上げる。

道都・札幌の都心は中央区に一極集中している

札幌市は政令指定都市として10区に分かれるが、ホテルの供給は中央区に集中している。メトロエンジンリサーチが把握する範囲で、札幌市の区別に稼働が確認できる施設数と直近のADRを整理すると、中央区が突出して施設数が多い。大通公園・すすきの・札幌駅前を抱える中央区は、いわば道都のホテル需要を一手に受ける中枢である。

確認施設数 掲載価格(全プラン平均・税込) ADR(推定成約・税抜相当)
中央区182¥15,900¥8,600
南区(定山渓温泉ほか)35¥53,500¥20,800
北区25¥14,800¥8,200
豊平区9¥15,500¥11,400
西区8¥16,200¥7,100

2026年4月時点。南区は定山渓温泉のリゾート施設を含むため単価が高く出る。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

単価の高い南区は定山渓温泉のリゾート施設を含むため、都心のビジネス・シティ需要とは性格が異なる。純粋な「道都の都心市場」として見るべきは、182施設・分析対象134施設が集積する中央区である。以降の分析は中央区の都心ホテル群を対象とする。

中央区のADRは2026年上期に前年比+約10%で推移

中央区のADR(推定成約単価)は、明確な季節性を伴いながら緩やかに水準を切り上げている。とりわけ2月は「さっぽろ雪まつり」の需要でADRが跳ね上がる構造が毎年繰り返される。2026年2月の中央区ADRは約¥20,600と、前年同月(約¥19,500)から+約6%上昇した。上期(1〜6月)平均で見ると、2026年は約¥13,900と前年同期(約¥12,700)を+約9.9%上回っている。札幌のビジネス宿泊単価を仙台・広島・福岡と並べて25ヶ月の推移で捉えた分析は、出張都市の宿泊単価2026でも掘り下げている。

札幌市中央区・月次ADR(推定成約単価)。N≈130〜137施設。2026年7〜12月は調査時点の掲載水準に基づく推定。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

季節性のピークは2月(雪まつり)と7〜8月(夏の観光ハイシーズン)に現れ、端境期の4月・11月に底を打つ。この波形自体は2024年から一貫しているが、各月の水準が年を追って持ち上がっている点が、供給が増えてもなお需要が単価を支えている札幌市場の底堅さを示している。裏を返せば、既存の中価格帯が厚みを増すなかで、上位価格帯に明確な「余白」が残っているということでもある。

アッパー〜ラグジュアリー帯は現状わずか3施設に限られる

中央区の主要ホテルを「客室規模×ADR」で並べると、道都の価格構造がはっきり見える。500〜600室級の大型館が多数を占めるが、その大半はADRが¥12,000〜¥21,000のミドル〜アッパーミドル帯に密集している。ADRが¥25,000を超える「アッパー〜ラグジュアリー帯」に位置するのは、都心のなかでも SAPPORO STREAM HOTEL(約¥31,600)コートヤード・バイ・マリオット札幌(約¥26,500)JRタワーホテル日航札幌(約¥25,700)の3施設にとどまる。

札幌市中央区の主要ホテル(N=27施設、2026年3〜6月平均)。円の大きさ=客室数。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

つまり札幌都心は、豊富な中価格帯の在庫を持ちながら、高単価帯の担い手が限られてきた市場である。ここに外資ブランドが上位帯から参入する余地が生まれる。次章で見るように、2025年以降の開業ラッシュは、まさにこの上位帯を厚くする方向に動いている。

2025〜2026年の開業ラッシュと外資・ハイグレードのシェア上昇

札幌市中央区では、2025年に大型・外資系の開業が集中した。605室の大型館「札幌ホテル by グランベル」に加え、外資・ハイグレードでは インターコンチネンタル札幌(149室)ザ・ゲートホテル札幌 by HULIC(172室)などが相次いで開業。2026年も、ハイアット セントリック 札幌(216室)を筆頭に、ホリデイ・イン エクスプレス札幌すすきの(223室)、KOKO HOTEL 札幌すすきの 2nd(212室)などが続く。年ごとの新規客室数(100室以上の主要開業)を、外資・ハイグレードブランドとその他に分けて示す。

札幌市中央区・100室以上の主要開業(OTA掲載確認ベース)。2029年はパーク ハイアット 札幌(公表計画)。出典:メトロエンジンリサーチ(OTA掲載確認ベース)/国土交通省「建築物動態統計調査」

特徴は、単なる客室数の増加ではなく「価格帯の上方拡張」である。2025年は外資・ハイグレードが約320室、2026年は約440室と、新規供給に占める外資・上位ブランドの比重が高まっている。これらは既存の中価格帯とは異なるレンジを狙う施設群であり、前章で見た「上位帯の余白」を埋めにいく動きと整合する。なお、2026年に全国で開業が集中することによる需給と単価への影響については、2026年9月開業ホテル34軒の供給ショックが広域の視点から背景を補完する。

なお、OTA掲載確認ベースの開業データは、掲載が開業の数ヶ月前からしか出ないため、2027〜2028年の都心開業はまだ十分に可視化されていない。同様に、公表計画(確認申請ベース)も申請が開業の1〜2年前に行われるため、将来年の件数は現時点での確定パイプラインの下限値として捉える必要がある。したがって、下図の2027・2028年が「空白」に見えることは供給が途絶えることを意味せず、今後の掲載・申請追加で増える可能性が高い。

ハイアット セントリック 札幌 ― 道都への高単価帯参入の象徴

この上位帯拡張を象徴するのが、ハイアットの札幌初進出である。日本ハイアットによれば、国内では9ブランド・22ホテル(計5,066室)を運営しており、加えて2026年以降に10ホテルの新規開業を予定している。そのうち北海道の都心案件が、ハイアット セントリック 札幌(2026年開業予定・216室)とパーク ハイアット 札幌(2029年開業予定・157室)の2件である。

ハイアット セントリック 札幌は、NTT都市開発が札幌市中央区北一条西5丁目で開発する複合タワー「アーバンネット札幌リンクタワー」の高層部(17〜26階)に入る。当初計画から施工上の事情で開業時期は後ろ倒しとなったが、2026年秋の開業と総支配人就任が公表されている。JR札幌駅から徒歩約10分、地下歩道からアクセスできる立地で、全216室のうち9室はスイートとされる。ライフスタイル寄りの「セントリック」ブランドは、前章で見たアッパー〜ラグジュアリー帯(現状3施設)にもう一つの選択肢を加える位置づけになる。

札幌市中央区の主要既存ホテルとハイアット セントリック 札幌の予定地。円の大きさ=客室数。出典:メトロエンジンリサーチ、日本ハイアット報道資料 2026年4月より作成

さらに2029年に予定されるパーク ハイアット 札幌(157室)は、ハイアットのラグジュアリー・ポートフォリオに属する最上位ブランドである。国内のパーク ハイアットは東京・京都・ニセコHANAZONOの3拠点にとどまり、都市型としては札幌が4例目となる。客室数を157室に絞る設計は、規模を追わず単価と体験価値で勝負するラグジュアリーの典型であり、道都の価格天井を一段引き上げる可能性を持つ。既存の都心アッパー帯の天井が推定成約ADRで約¥31,600である現状に対し、パーク ハイアットはその上のレンジを新たに開くことになる。地方都市への外資ラグジュアリー参入を新設型とリブランド型に分けて比較したリブランド型 vs 新設型の2スキーム比較の視点も参考になる。

開業(予定) 施設名 客室数 位置づけ
2025年3月札幌ホテル by グランベル605大型ライフスタイル
2025年10月インターコンチネンタル札幌149外資ラグジュアリー
2025年12月ザ・ゲートホテル札幌 by HULIC172アッパー・ライフスタイル
2026年(秋)ハイアット セントリック 札幌216外資アッパー・ライフスタイル
2026年7月ホリデイ・イン エクスプレス札幌すすきの223外資ミドル
2026年7月KOKO HOTEL 札幌すすきの 2nd212ミドル
2029年(予定)パーク ハイアット 札幌157外資ラグジュアリー(最上位)

ハイアット2施設の客室数・開業年は日本ハイアット報道資料 2026年4月に基づく。出典:メトロエンジンリサーチ、国土交通省「建築物動態統計調査」、日本ハイアット報道資料 2026年4月より作成

まとめ ― 供給増と単価上昇が併走する道都

札幌市中央区の都心ホテル市場は、2025〜2026年に大型・外資系の開業が集中し、客室供給が着実に積み上がった。それでもADR(推定成約単価)は2026年上期に前年比+約10%で推移し、季節性のピークを保ったまま水準を切り上げている。供給が増えても単価が崩れないのは、需要の底堅さに加え、新規供給が既存の中価格帯ではなく上位帯を厚くする方向に働いているためと考えられる。

その象徴が、2026年のハイアット セントリック 札幌(216室)と2029年のパーク ハイアット 札幌(157室)である。現状わずか3施設に限られるアッパー〜ラグジュアリー帯に、外資ブランドが上位から段階的に参入することで、道都の価格構造は「中価格帯の厚み」から「上位帯を含む階層の広がり」へと移行していく。2027〜2028年の都心パイプラインはまだ十分に可視化されていないものの、価格帯の上方拡張という流れは、今後の札幌市場を読むうえで中心的な論点であり続けるだろう。

⚠ 将来日程・将来供給に関する注意:本記事のADRのうち2026年7〜12月分は、調査時点でOTAに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。また新規開業の客室数・供給件数は、OTA掲載確認ベースおよび公表済みの確認申請ベースで、将来年ほど過少に見える構造的特性があります。今後の掲載・申請追加により増加する見込みで、現時点での確定パイプラインの下限値としてご参照ください。

あわせて読みたい

参考資料・出典一覧

出典: 日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」

関連記事