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延べ宿泊者数とは?2025年は外国人1億7,992万人泊で過去最高|観光庁 宿泊旅行統計2025の確定値まとめ

投稿日 : 2026.04.24 更新日 : 2026.10.31

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インバウンド

観光庁2025年通年統計の構造変化分析

延べ宿泊者数とは、宿泊した人数に泊数を掛け合わせた「人泊」単位の指標で、観光庁「宿泊旅行統計調査」の中心となる数値である。観光庁が2026年7月6日に公表した同調査の2025年年間値(確定値)によると、2025年の延べ宿泊者数は6億6,111万人泊(前年比+0.3%)、うち外国人延べ宿泊者数は1億7,992万人泊(+9.4%)で過去最高を更新し、日本人は4億8,118万人泊(-2.7%)と2年連続のマイナスとなった。一見すると全体横ばいの地味な結果に映るが、その内訳は業界の地殻変動を物語っている。本稿では、同統計のミクロデータと主要ホテルREITの運営実績を突き合わせ、「全体横ばいだが外国人増・日本人減」という構造変化が運営現場で何を意味するのかを定量的に解剖する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):OTA等で公開されている販売価格の平均値。実際の成約価格とは異なります。2名1室利用時の1室あたり料金(税込)・全プラン平均(素泊まり〜食事付きプランを含む)。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ

更新情報(2026年10月30日):本記事は2026年2月27日公表の速報値をもとに執筆し、2026年7月6日に観光庁が公表した2025年年間値(確定値)で本文・表・グラフの数値を更新した。速報値から確定値への改定幅は「速報値→確定値の改定幅」の表で分けて示している。

延べ宿泊者数とは — 定義と2025年の確定値(全体・日本人・外国人)

延べ宿泊者数とは、観光庁の用語解説によれば「各月における宿泊者(寝具を使用して施設を利用するもの。子供や乳幼児を含む)の延べ人数」をいう。単位は「人泊」で、1人が3泊すれば3人泊、2人が2泊すれば4人泊と数える。つまり延べ宿泊者数=宿泊者数×泊数であり、宿泊手続きをした人数(チェックイン人数)を数える「実宿泊者数」とは区別される。同じ100人の来訪でも、平均滞在が長い地域ほど延べ宿泊者数は大きくなるため、宿泊需要の総量(客室の消費量)を測る指標として使われる。

外国人延べ宿泊者数は「日本国内に住所を有しない者」の延べ人数で、入国者数(実人数)を数える日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数とは別の統計である。訪日外客数が入国者1人を1回だけ数えるのに対し、延べ宿泊者数は同じ人が泊数分だけ加算されるため、外国人延べ宿泊者数(1億7,992万人泊)は訪日外客数よりはるかに大きな値になる。

区分 2025年 延べ宿泊者数(確定値) 前年比 2019年比 構成比
全体 6億6,111万人泊(661,105,480人泊) +0.3% +10.9% 100.0%
日本人 4億8,118万人泊(481,183,350人泊) -2.7% +0.2% 72.8%
外国人 1億7,992万人泊(179,922,130人泊) +9.4% +55.6% 27.2%

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)・2026年7月6日公表(報道発表)。構成比はホテルバンク編集部が算出

外国人延べ宿泊者数の1億7,992万人泊は2019年(1億1,566万人泊)比で+55.6%、統計開始以来の最高値である。一方、日本人延べ宿泊者数は2019年水準(4億8,027万人泊)とほぼ同じ(+0.2%)にとどまり、2023年のピーク(4億9,972万人泊)から2年連続で減少した。宿泊旅行統計調査は、全国の宿泊施設を対象に観光庁が毎月実施する基幹的な調査で、月次の第1次・第2次速報の後、翌年夏に年間値(確定値)が公表される。調査対象・公表スケジュール・速報値の見方の詳細は宿泊旅行統計調査とは?観光庁の公表日・見方と速報値の改定幅で解説しているため、本記事では2025年の結果と延べ宿泊者数の読み方に集中する。

速報値→確定値の改定幅:延べ宿泊者数は+763万人泊、前年比の符号が-0.8%から+0.3%に反転

2026年2月27日公表の速報値と、7月6日公表の確定値を同じ指標で並べたのが下表である。観光庁は、速報値の公表後に回収した調査票情報を反映して再集計したと説明している。延べ宿泊者数は全体・日本人・外国人のいずれも約1.2%上方改定され、全体の前年比は-0.8%から+0.3%へと符号が反転した。すなわち、速報値段階の「2025年は微減」という評価は、確定値では「微増」に変わっている。一方、客室稼働率は全体で0.2ポイントの小幅な下方改定にとどまった。

指標(2025年1〜12月) 速報値
(2026年2月27日公表)
確定値
(2026年7月6日公表)
改定幅
延べ宿泊者数(全体)6億5,348万人泊6億6,111万人泊+763万人泊(+1.2%)
 前年比(全体)-0.8%+0.3%+1.1pt
日本人延べ宿泊者数4億7,561万人泊4億8,118万人泊+557万人泊(+1.2%)
 前年比(日本人)-3.8%-2.7%+1.1pt
外国人延べ宿泊者数1億7,787万人泊1億7,992万人泊+205万人泊(+1.2%)
 前年比(外国人)+8.2%+9.4%+1.2pt
外国人構成比27.2%27.2%±0.0pt
客室稼働率(全体)61.8%61.6%-0.2pt
 旅館38.4%38.2%-0.2pt
 リゾートホテル56.9%56.9%±0.0pt
 ビジネスホテル75.3%75.3%±0.0pt
 シティホテル74.2%74.1%-0.1pt
 簡易宿所29.6%29.6%±0.0pt

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(速報値・2026年2月27日公表)および同(確定値・2026年7月6日公表)。改定幅はホテルバンク編集部が算出

改定の影響は年計だけでなく月次にも及ぶ。速報値では2025年7〜12月の延べ宿泊者数が全月で前年同月比マイナスと見えていたが、確定値では8月(+1.4%)と10月(+0.3%)がプラスに転じた(詳細は「月次推移」の節)。速報値で傾向を判断する際には、1%前後の上方改定が通例として入りうることを前提に読む必要がある。以下の各節の数値・表・グラフはすべて確定値に統一している。

1. 2025年通年のヘッドライン:日本人-2.7%、外国人+9.4%、外国人構成比は過去最高27.2%

はじめに全体像を確認する。2025年通年の延べ宿泊者数は6億6,111万人泊(確定値)で、前年比+0.3%とほぼ横ばいであった。表面的には横ばいに見える数値であるが、内訳を見ると様相は一変する。日本人延べ宿泊者数は4億8,118万人泊(前年比-2.7%)と2年連続で縮小し、外国人延べ宿泊者数は1億7,992万人泊(前年比+9.4%、2019年比+55.6%)と過去最高を更新した。つまり、2025年の市場は「外国人需要が日本人需要の減少を相殺し、全体を微増に押し上げた年」と定義できる。

延べ宿泊者全体に占める外国人の構成比は27.2%に達し、2019年の19.4%、2023年の19.1%を大きく上回った。すなわち、全国のホテル・旅館にチェックインした4人に1人以上が外国人という時代に突入したのである。この構造変化は、単なるインバウンド回復の延長線上ではなく、日本人需要の明確な後退という対角の動きが同時進行している点に留意すべきである。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値・2026年7月6日公表)よりホテルバンク編集部作成

2. 都道府県別ドリルダウン:日本人-10.8%の東京、外国人+32.8%の沖縄

全国平均の裏には、都道府県ごとに大きな温度差が存在する。特に顕著なのは東京都であり、日本人延べ宿泊者数は前年比-10.8%と2桁マイナスを記録した。一方で東京都の外国人延べ宿泊者数は+5.8%と小幅な伸びにとどまり、全体では-2.2%となっている。つまり東京は「日本人離れが急速に進んだ都市」という評価が妥当である。背景には宿泊単価の高止まりと、国内旅行者の価格忌避が挙げられよう。

他方、北海道は日本人-3.3%に対し外国人+29.0%と大きく伸び、全体では+4.2%のプラスを確保した。沖縄県は日本人+1.3%、外国人+32.8%で全体+8.3%と、主要観光地の中では日本人・外国人がともに増えた数少ない例である。このように「外国人需要が日本人需要の減少を上回って補った地域」と「補いきれなかった都市圏」のコントラストが鮮明である。京都府では日本人が-13.9%と東京を上回る落ち込みを見せ、外国人+8.0%では補いきれず全体-3.1%となった。

注目すべきは、対前年比で外国人宿泊者数の伸び率が最も大きかったのは、意外にも鳥取県(+72.0%)、新潟県(+60.6%)、三重県(+57.7%)といった地方部であった点である。観光庁の発表でも三大都市圏(東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・大阪・京都・兵庫)は+5.1%にとどまる一方、地方部は+19.1%と大きく上回っており、インバウンド需要の地方分散が加速していることが裏付けられる。

都道府県 全体前年比 日本人前年比 外国人前年比 外国人構成比
東京都 -2.2% -10.8% +5.8% 55.7%
大阪府 +2.3% +6.9% -3.5% 41.7%
京都府 -3.1% -13.9% +8.0% 55.2%
北海道 +4.2% -3.3% +29.0% 28.6%
沖縄県 +8.3% +1.3% +32.8% 27.2%
福岡県 +6.4% +3.0% +14.0% 33.0%
長野県 -5.3% -6.9% +7.2% 13.2%
石川県 -17.2% -20.6% -2.6% 22.5%
全国 +0.3% -2.7% +9.4% 27.2%

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値・2026年7月6日公表)よりホテルバンク編集部作成

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値・2026年7月6日公表)よりホテルバンク編集部作成

3. 月次推移:2025年下半期は6か月中4か月がマイナス、日本人は8月を除き全月減

月別データ(確定値)を2024年と並べて観察すると、2025年は上半期と下半期で異なる表情を見せる。上半期(1-6月)は1月が+6.9%と好調であったが、2月以降は-1.6%〜+3.1%のゾーンで推移した。下半期は7月-1.0%、9月-1.5%、11月-1.9%、12月-1.7%と6か月中4か月がマイナスとなり、プラスだった8月(+1.4%)と10月(+0.3%)も小幅にとどまった。速報値段階では下半期が全月マイナスと見えていたが、確定値では8月・10月がプラスに転じており、速報値と確定値の改定幅がトレンドの読み方を変えうる一例である。

この弱含みの主因は、日本人延べ宿泊者数の減速である。日本人は8月(+0.4%)を除く11か月で前年同月比マイナスとなり、特に2月-7.4%、4月-5.4%、3月-4.3%の落ち込みが大きかった。一方、外国人延べ宿泊者数は上半期に+5.9%から+36.0%という高い伸びを見せたものの、下半期には-2.4%から+6.1%へと急減速している。これは前年(2024年)の高ベース効果による。つまり、インバウンドの絶対水準は依然高いが成長率は鈍化局面に入ったと解釈すべきである。

2025年8月は全体で+1.4%、日本人+0.4%、外国人+5.6%と、お盆期を含む夏休みの日本人需要が通年で唯一プラスを確保した月となった。ただし伸び幅は1%未満にとどまり、9月以降は再び日本人のマイナスが続いているため、国内旅行の裾野が回復に転じたとまでは言えない。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値・2026年7月6日公表)の月次データよりホテルバンク編集部作成

4. 施設タイプ別稼働率:ビジネスホテル75.3%、旅館38.2%の二極化

次に、運営現場の実態を稼働率ベースで見てみよう。2025年通年の客室稼働率は全体で61.6%(確定値)と前年比+2.0ポイント改善したが、施設タイプ別のコントラストは依然大きい。ビジネスホテルが75.3%(前年比+1.6pt)、シティホテルが74.1%(+1.8pt)で高稼働を維持している一方、旅館は38.2%(+2.1pt)と40%を切る水準にとどまった。リゾートホテルは56.9%(+2.8pt)、簡易宿所は29.6%(+0.6pt)である。

注目すべき点は、全体稼働率で大阪府が78.6%と全国で最も高い水準を維持したことである。大阪府のビジネスホテル稼働率は82.9%、シティホテル79.4%とほぼフル稼働の状態であり、2025年の大阪・関西万博の反動を控える中でも、依然として需給は逼迫している。これに対し、長野県(39.0%)や山梨県(43.8%)、新潟県(46.1%)など観光地・温泉地を含む地方県では、稼働率が平均を下回る状況が続いている。

ここから読み取れるのは、「インバウンド需要を集客できるチャネルを持つ都市型ビジネスホテル/シティホテル」と「国内旅行需要に依存する地方旅館・リゾート」との間で、稼働率ギャップが拡大している構図である。2019年の旅館稼働率は39.6%であり、2025年は38.2%と6年経っても改善していない。この事実は、単なる需要回復ではなく、構造問題として捉える必要がある。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値・2026年7月6日公表)よりホテルバンク編集部作成

データの切り替わりに関する注意:本記事ではOTA公開価格データ(販売価格ベース)とREIT月次運営データ(成約価格ベース)を併用しています。両者には構造的な水準差があるため、絶対値の直接比較ではなくYoY(前年比)の変化率に注目してお読みください。

5. ホテルREITデータで見る運営実態:85%超の高稼働と、価格戦略の分岐

ここからは、上場ホテルREIT各社の月次運営実績を使って、運営現場の実態をさらに解像度高く見ていく。いちごホテルリート投資法人(3463)、インヴィンシブル投資法人(8963)、日本ホテル&レジデンシャル投資法人(3472)、ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)、星野リゾート・リート投資法人(3287)、森トラストリート投資法人(8961)、霞ヶ関ホテルリート投資法人(401A)の7法人を対象とした。

2026年2月時点の各REITの稼働率は、日本ホテル&レジデンシャル86.8%、いちごホテルリート86.7%、インヴィンシブル86.6%、ジャパン・ホテル・リート85.2%と、ビジネスホテル/ミッドスケールを主軸とする4法人がいずれも85%超の高稼働を維持している。一方、リゾート/ラグジュアリー寄りの星野リゾート・リートと霞ヶ関ホテルリートは76.5%、大型リゾート物件比率の高い森トラストリートは71.1%にとどまる。

しかし、ADRで見ると序列は逆転する。森トラストリートが31,102円、霞ヶ関ホテルリートが26,304円、日本ホテル&レジデンシャルが25,001円、星野リゾート・リートが20,771円と、リゾート/ラグジュアリー系の単価優位が明確である。これに対しビジネスホテル中心のいちごホテルリートは10,650円、インヴィンシブルは13,473円となっている。RevPAR(客室収益)ベースでは森トラストリート22,339円、日本ホテル&レジデンシャル21,239円、霞ヶ関ホテルリート20,100円がトップ集団となり、単価戦略がRevPAR上位に直結することがわかる。

重要な示唆は、外国人比率が高いセグメントではADRの上昇余地があり、国内客比率の高いセグメントでは稼働率維持が最優先戦略となっている点である。ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)は2025年12月期の通期業績予想でRevPARが前期比+8.9%の伸びを見込み、1口当たり分配金は上場来最高水準となる見通しを示している。

出典:各社REIT月次運営データよりホテルバンク編集部作成

6. なぜ日本人旅行者は減っているのか:物価・賃金・人口の三重圧

日本人宿泊者数の減少は単年の偶発的な現象ではなく、構造的な要因が絡み合った結果である。第一の要因は宿泊単価の高騰である。日本総研の分析によれば、足元の宿泊費はコロナ禍前の1.3倍近い水準にあり、価格上昇が国内需要を押し下げている可能性が指摘されている。実質賃金が伸び悩む中での宿泊費上昇は、日本人旅行者にとって実質的な「旅行の高根の花化」を意味する。

第二の要因は、インバウンド需要との価格競合である。特に東京・京都のような主要観光都市では、外国人需要の支払い意思額が日本人を上回り、ホテル側も高単価のインバウンド客向けに在庫配分と価格設定を最適化している。結果、東京都の日本人延べ宿泊者数は前年比-10.8%と急減した。京都府は-13.9%の減少である。都市部で日本人が宿泊先として「選ばれる」よりも「選ばなくなっている」構図といえる。

第三の要因は、人口動態である。旅行需要の中核である50-60代の人口が減少局面に入り、若年層の可処分所得も伸び悩んでいる。JTB総合研究所の2025年見通しでは旅行人数は対前年102.7%とされていたが、通年実績の宿泊統計(日本人延べ宿泊者数・確定値)は-2.7%となり、当初見通しを大きく下回った。これは物価要因が想定を超えて旅行需要を削ったことを示唆する。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」、内閣府「消費者物価指数」等よりホテルバンク編集部作成

7. 2026年の論点:調査方法変更の影響と、統計の非連続性

ここで業界関係者が注意すべきは、2026年1月分調査から観光庁が調査の層化基準を「従業者数」から「客室数」に変更した点である。これまで調査票は従業者数規模で3区分されていたが、2026年以降は客室数に基づく区分(第1号様式:1-19室、第2号様式:20-199室、第3号様式:200室以上)に切り替わる。観光庁自身が「対前年(同月)比、対前年(同月)差については、見直しの影響が含まれている可能性がある」と明記しており、2026年の数値解釈には構造的なノイズが入ることを前提にすべきである。実際、2025年確定値と同時に公表された2026年4月(第2次速報)・5月(第1次速報)の延べ宿泊者数は前年同月比-7.2%・-4.8%と示されているが、この前年比にも層化基準見直しの影響が含まれる可能性があると注記されている。

特に影響が大きいと想定されるのは、従業者数が少なくても客室数が多い施設(省人化運営のビジネスホテル等)や、逆に客室数が少なくても従業者数が多い施設(高級旅館等)である。これらのウェイト変更により、施設タイプ別稼働率や地域別データの前年比に断層が生じる可能性がある。実務面では、2026年通年の数値を2025年以前と直接比較する際には、観光庁の補正値や試算値が公表されるかを確認する必要があろう。

もう一つの論点は、2025年通年の有効回収率である。調査施設数は2025年1月の22,347施設から12月には20,395施設に漸減し、有効回収率は47.9%〜51.8%の範囲で推移した。従業者数10人未満の施設の回収率は34.6%〜39.4%と相対的に低く、小規模施設の実態把握には依然として課題が残る。2026年の調査方法変更は、この課題への対応という側面も持つと考えられる。

8. 運営現場への示唆:セグメント別戦略の再設計

以上の分析から、業界関係者への具体的な示唆として以下の3点を提示したい。第一に、都市型ビジネスホテル/シティホテルは、稼働率が天井圏(75%超)にあるためADR改善が主戦場となる。日本人需要の価格感応度を見極めつつ、インバウンド比率の高い在庫でのレベニュー最適化が鍵となる。

第二に、地方旅館・リゾートホテルは、日本人需要の構造的後退を前提とし、外国人誘客のチャネル再設計が必須である。国籍別で二桁増を記録した米国(+18.9%)、中国(+20.5%)、インド(+41.2%)、ロシア(+104.4%)などのロングホール市場(確定値・従業者数10人以上の施設ベース)は、地方分散と親和性が高く、OTA等の販売経路や言語対応の強化が有効と考えられる。

第三に、REITや投資家目線では、稼働率90%近傍のミッドスケールとADR 3万円超のラグジュアリー/リゾートという、異なる収益モデルの共存が今後も続くと見られる。特にジャパン・ホテル・リートや星野リゾート・リートのように分配金ガイダンスを上方修正する動きが続く中、運営会社の価格決定力(プライシングパワー)が銘柄選好の決定要因となるだろう。

まとめ:数字が語る「二つの宿泊市場」

2025年通年の観光庁統計が示すのは、「日本の宿泊市場が単一の需要ではなく、インバウンド需要と国内需要の二つの独立した市場に分化しつつある」という事実である。全体の+0.3%という数字はこの分化を覆い隠すが、日本人-2.7%と外国人+9.4%という対角の動きは、業界戦略の再設計を迫るには十分な大きさである。

さらに、2026年の調査方法変更により統計データの連続性が一時的に不鮮明となる局面に入る。レベニューマネージャー、運営会社、投資家は、公的統計だけでなくOTA等の実勢価格、REITの月次開示、国籍別インバウンドデータなど複数ソースを組み合わせて市場を解像度高く把握する必要がある。2025年は「数字で見れば横ばい、構造で見れば転換点」であったといえよう。

将来日程のADRに関する注意:本記事のADRは調査時点でOTAに公開されている販売価格の平均であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前値下げで下落する可能性がある点にご留意ください。

よくある質問

Q. 延べ宿泊者数とは何か?実宿泊者数との違いは?

A. 延べ宿泊者数とは、宿泊した人数に泊数を掛けた「人泊」単位の指標で、観光庁の用語解説では「各月における宿泊者(寝具を使用して施設を利用するもの。子供や乳幼児を含む)の延べ人数」と定義される。1人が3泊すれば3人泊と数える。これに対し実宿泊者数は宿泊手続きをした人数(チェックイン人数)で、泊数を掛けない。

Q. 2025年の外国人延べ宿泊者数(確定値)は何人泊か?

A. 観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)では、外国人延べ宿泊者数は1億7,992万人泊(前年比+9.4%、2019年比+55.6%)で過去最高となった。全体は6億6,111万人泊(+0.3%)、日本人は4億8,118万人泊(-2.7%)で、延べ宿泊者全体に占める外国人の構成比は27.2%である。

Q. 2025年の宿泊旅行統計調査の確定値はいつ公表されたか?

A. 2026年7月6日に観光庁が報道発表した。2025年年間値の速報値は2026年2月27日に公表されており、確定値は速報値公表後に回収した調査票情報を反映して再集計したものである。年間値(確定値)は例年、翌年の夏に公表される。

Q. 速報値と確定値はどれだけ違うか?

A. 2025年年間値では、延べ宿泊者数(全体)が速報値6億5,348万人泊から確定値6億6,111万人泊へ+763万人泊(+1.2%)上方改定され、前年比は-0.8%から+0.3%に符号が反転した。日本人は4億7,561万→4億8,118万人泊(前年比-3.8%→-2.7%)、外国人は1億7,787万→1億7,992万人泊(+8.2%→+9.4%)。客室稼働率(全体)は61.8%から61.6%へ0.2ポイントの下方改定にとどまった。

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