トップ > 季節・イベント > 秋の温泉地・旅館価格2026 — 箱根・草津・由布院を前年比で読む紅葉シーズンの実勢

秋の温泉地・旅館価格2026 — 箱根・草津・由布院を前年比で読む紅葉シーズンの実勢

投稿日 : 2026.07.13

大分県

神奈川県

季節・イベント

秋の温泉地・旅館価格2026 — 箱根・草津・由布院を前年比で読む

紅葉シーズンは温泉旅館にとって年間で最も需要が集まる時期のひとつである。夏の避暑需要が一段落した後、9月から11月にかけて緩やかに価格が立ち上がり、11月にピークを迎えるのが例年のパターンだ。本稿では、東西の代表的な温泉地である箱根(神奈川県箱根町)・草津(群馬県草津町)・由布院(大分県由布市)の3エリアを取り上げ、旅館カテゴリの推定成約ADRを前年同月比で読み解き、2026年秋の実勢を定量化する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • 集計対象施設数(N):各月の推定成約ADRを算出した旅館の施設数。本記事では各数値にN=として併記します。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ。REIT開示の成約ADRは消費税抜き表示であり、本記事の推定成約ADRも税抜相当の水準です。

3温泉地とも秋の価格は前年を上回る

まず全体像を押さえたい。3エリアの旅館カテゴリについて、9月〜11月(秋・紅葉シーズン)の推定成約ADRを前年同月比で見ると、いずれのエリアも2026年は2025年を上回っている。秋3ヶ月の平均で見た前年比は、箱根が約+8.6%、草津が約+12.6%、由布院が約+4.1%であった。上昇幅には差があるものの、温泉旅館の価格が需要の回復と原価上昇を背景に一段と切り上がっている構図は共通している。

とりわけ10月の伸びが目立つ。箱根の10月の推定成約ADRは前年同月の約25,200円から約29,100円へと前年同月比+15.5%、草津は約16,800円から約20,200円へと+19.8%と大きく上昇した。紅葉の見頃と行楽需要が重なる10月は、旅館側が最も強気に価格を設定できる月であることがうかがえる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

箱根 — 11月に3万円台へ、季節の山が明確

首都圏からの日帰り・一泊需要を最も安定して集める箱根は、3エリアの中で推定成約ADRの水準が最も高い。2026年秋の推移を見ると、9月が約25,600円(N=140)、10月が約29,100円(N=128)、11月が約30,000円(N=113)と月を追うごとに立ち上がり、紅葉ピークの11月には3万円台に到達している。

年間の季節性を通年で重ねると、箱根の旅館価格が春(3〜5月)と秋(10〜11月)に二つの山を持つことが確認できる。一方で梅雨明け前の6〜7月は相対的に緩む谷となっており、この谷と秋のピークの差が、紅葉シーズンの価格プレミアムの大きさを物語っている。2026年は前年比で秋の山がさらに一段高くなった格好だ。紅葉ピークに向けた予約の進み方については、勤労感謝の日3連休×紅葉ピーク 京都・日光・箱根 旅館の予約進度を読むも参考になる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

草津 — 前年比の伸びは最大、ただし秋の観測はまだ途中

草津は3エリアの中で価格水準こそ最も低いものの、前年同月比の伸び率では最も大きい。9月が約18,200円、10月が約20,200円、11月が約20,600円と、秋にかけて2万円台に乗せている。前年からの伸びは9月+10.9%、10月+19.8%、11月+7.6%と、いずれの月も二桁前後の上昇を示す。

ただし注意が必要なのは、2026年秋の草津の集計対象施設数(N)が他エリアより少なく、しかも先の月ほど薄くなっている点だ。9月はN=65だが、10月はN=48、11月はN=42と、系列全体の中央値(N=81)の6割を下回る月がある。これは草津の旅館がまだ秋の販売プランをOTA上に出し切っていない段階であることを反映している。草津エリアの供給側の動きについては、草津温泉エリアの需給ショック2026夏で湯畑5km圏の在庫構造を詳しく分析している。推定成約ADRの水準そのものは今後の在庫追加で変動しうるため、10月・11月の数値は「現時点での観測途中の値」として幅を持って読むのが妥当である。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

由布院 — 伸びは穏やか、通年で高い水準を維持

由布院は九州随一の人気温泉地で、訪日外国人からの支持も厚い。2026年秋の推定成約ADRは9月が約23,300円(N=124)、10月が約25,400円(N=118)、11月が約26,600円(N=114)。前年比は9月+7.3%、10月+2.9%、11月+2.6%と、箱根・草津に比べると秋の伸びは穏やかである。

もっとも、由布院は年間を通じて水準が比較的フラットに高く保たれる特徴を持つ。夏(8月)も冬(12月)も2万円台半ば前後で安定しており、他の2エリアのように紅葉シーズンだけが突出するというより、通年で高稼働・高単価を維持する需要構造にあると読める。前年比の伸びが穏やかなのは、すでに高い水準に達しているエリアで価格を積み上げる余地が相対的に小さいことの裏返しともいえる。

上場REITの温泉・リゾート運営実績と整合的な上昇基調

個別エリアのOTA価格データが示す上昇基調は、上場ホテルREITが開示する運営実績とも方向感が一致している。温泉・リゾート運営を主力とする星野リゾート・リート投資法人(3287)の2026年5月の月次運営実績(ポートフォリオ全体)は、客室稼働率80.1%(前年同月比+1.1pt)、ADR22,950円(同+2.4%)、RevPAR18,373円(同+3.8%)であった。稼働率・単価がともに前年を上回り、RevPARが単価の伸びを上回って改善している点は、需要が量・単価の両面で底堅いことを示している。

本記事の推定成約ADRは、こうしたREITが開示する成約ベースのADR(消費税抜き表示)と同じ基準で照合しており、絶対水準の比較が可能な設計としている。本記事のADRは推定値(REIT開示実績との照合で誤差中央値約7%)である点には留意が必要だが、温泉・リゾート領域で単価が緩やかに切り上がっているという大きな流れは、独立した2つのデータソースで共通して確認できる。こうした単価上昇がエリア別の投資妙味にどう効くかは、温泉旅館の買収上限価格を逆算で草津を含む4エリアのADR×OCC×利回りから掘り下げている。なお、この照合に用いた星野リゾート・リートを含む主要REITは、いちごホテルリート投資法人(3463)、インヴィンシブル投資法人(8963)、日本ホテル&レジデンシャル投資法人(3472)、ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)、星野リゾート・リート投資法人(3287)、森トラストリート投資法人(8961)、霞ヶ関ホテルリート投資法人(401A)である。

出典:星野リゾート・リート投資法人 月次運営状況(2026年5月)よりホテルバンク編集部作成

まとめ — 紅葉需要は3温泉地で価格に反映、宿の値付けにアップサイド

2026年秋の温泉旅館市場は、箱根・草津・由布院のいずれでも推定成約ADRが前年を上回り、紅葉シーズンの需要が価格にしっかり反映されつつあることが確認できた。上昇幅は箱根・草津で二桁に迫る月がある一方、すでに高水準の由布院では穏やかにとどまるなど、エリアの需要成熟度によって伸びしろに差がある点が特徴的だ。

紅葉ピークの10〜11月は、旅館が段階的なプライシングによって収益を最大化できる好機である。実際に3エリアとも10月にかけて価格が立ち上がる季節パターンが明確であり、リードタイムに応じた価格の階段設計や、紅葉見頃に合わせたプラン投入によって、さらなる収益拡大の余地があると考えられる。次の紅葉シーズンに向けては、こうした季節の山を前提とした早めの価格設計が、宿にとって有効な打ち手となるだろう。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年9〜11月の推定成約ADRは、調査時点でOTAに公開されている販売価格に基づく推定値(将来日程の価格スナップショット)であり、チェックイン日に近づくにつれて新規プランの追加や価格調整により変動します。特に草津の10〜11月は集計対象施設数が系列中央値の6割を下回る薄いカバレッジ状態にあり、今後の在庫追加で数値が動きやすい点にご留意ください。

あわせて読みたい

参考資料・出典一覧

関連記事