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大阪・本町ホテル計画2028|117室の新築を1km圏1.76万室・中央区ADR1.06万円で評価する

投稿日 : 2026.11.04

大阪府

投資・開発

大阪・本町ホテル計画2028|117室の新築を1km圏1.76万室・中央区ADR1.06万円で評価する

霞ヶ関キャピタル株式会社を建築主とする大阪市中央区本町1丁目7番1の新築ホテル計画(地上13階・117室)が、2025年12月に着工し、建築計画上は2028年8月31日の完成予定で動いている。同社が2026年8月25日に公表した開発予定案件一覧では「大阪本町ホテルプロジェクト」として開業時期2028年夏・延床5,615㎡・117室と記載されており、ブランドと運営会社は公表されていない。本稿では、この117室を受け止める商圏の客室ストック(計画地から半径1km圏で稼働中102施設・17,584室)、万博会期を抜けて前々年水準に戻った中央区の推定成約ADR(2026年9月10,578円)、就業30万人の業務地としての需要基盤を順に確かめ、2028年の開業を評価する基準となる単価と必要ADRを試算する。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)

本記事の客室ストックは、本町1-7-1計画地から半径1,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月28日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。 名称が異なる同一施設は名寄せして集計した。メトロエンジンリサーチは国内約168,000施設を追跡し、うちOTA上で稼働が確認できる約27,000施設・約126万室を分析対象としている。

計画規模
117室
地上13階・延床5,615㎡
2028年夏 開業予定
1km圏 稼働中ストック
17,584室
102施設(名寄せ後)
500m圏 23施設・3,449室
117室の供給増加率
+0.7%
1km圏稼働ストック比
2026年12月開業分を含め +1.8%
中央区 推定成約ADR
¥10,578
2026年9月・N=193
前年同月比−34.0%/前々年比−1.8%
中央区ビジネス 推定OCC
82.3%
2026年9月平均
対象100施設/客室16,317(主要予約サイト掲載ベース)
Key Takeaways
  • — 117室は1km圏稼働ストックの+0.7%。17,584室(102施設・2026年10月28日時点)に対し、2026年12月開業の202室を含めても+1.8%にとどまる。
  • — 中央区の推定成約ADRは10,578円(2026年9月・N=193)。前年同月比−34.0%だが前々年比は−1.8%で、万博前の水準への回帰と読める。
  • — 需要基盤は厚い。1km圏の従業者は300,558人、中央区ビジネスホテルの推定OCCは82.3%(2026年9月平均・対象100施設)。
  • — 必要ADRは中位ケースで¥17,600。総投資54.0億円(1室46.1百万円)・GOP利回り5.0%・GOP率45%・稼働率80%の試算で、悲観¥23,200〜楽観¥14,900。
  • — 論点は単価帯の選択。1km圏中央値9,056円の密集帯ではなく、上位4分の1〜1割の12,000〜17,000円帯で商品を組めるかが分かれ目になる。

計画の概要 — 建築計画データと建築主の開示が一致する117室・2028年夏

まずは計画の輪郭を、建築計画データと建築主の公表資料の2系統で確かめておきたい。国土交通省「建築物動態統計調査」をもとにメトロエンジンリサーチ&コンサルティングが整理した建築計画データでは、所在地が大阪府大阪市中央区本町1-7-1、主用途ホテル、新築、地上13階、延床面積5,737.56㎡、117室、着工2025年12月1日、完成予定2028年8月31日、建築主欄は「霞ヶ関キャピタル株式会社」となっている。一方で霞ヶ関キャピタルが2026年8月25日に公表した「販売用不動産(ホテル開発用地)の売却に関するお知らせ」に付随するホテル開発予定案件一覧には、No.22「大阪本町ホテルプロジェクト」として開業時期2028年夏・延床面積5,615㎡・117室が掲載されている。2024年12月23日時点の同一覧では同プロジェクトは「計画中」とだけ記され、延床と客室数は未記載だったので、この1年半で設計が固まり着工に至ったと読める。

ただし、ブランド名と運営会社はいずれの資料にも記載がない。同社はFAVやBASE LAYERなど複数ブランドを展開しているが、本件がどのブランドで開業するかは公表されておらず、本稿も推定しない。延床5,615㎡を117室で割ると1室あたり約48㎡(共用部込み)で、同社一覧にある博多駅南(3,229㎡・74室、約44㎡)や名古屋錦三丁目(3,706㎡・110室、約34㎡)と比べるとやや余裕のある床配分になっている。

計画の概要(建築計画データと建築主の公表資料の比較)
項目建築計画データ建築主の公表資料(2026年8月25日)
所在地大阪府大阪市中央区本町1-7-1「大阪本町ホテルプロジェクト」(所在地の記載なし)
規模地上13階・延床5,737.56㎡・117室延床5,615㎡・117室
工程着工2025年12月1日/完成予定2028年8月31日開業時期 2028年夏
建築主霞ヶ関キャピタル株式会社同社のホテル開発予定案件 No.22
ブランド・運営会社記載なし未公表
出典: 国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成/霞ヶ関キャピタル株式会社「販売用不動産(ホテル開発用地)の売却に関するお知らせ」(2026年8月25日)

立地評価 — 商業地域・容積率800%、公示地価は3年連続2桁上昇

計画地の敷地条件は、国土交通省 不動産情報ライブラリの各レイヤーで確かめられる。用途地域は商業地域で容積率800%・建蔽率80%、市街化区域に属し、延床5,615㎡を容積率一杯で組めば敷地は約700㎡で足りる計算になる。地価は計画地から約240mの地価公示地点「大阪中央5-8」(備後町1丁目12番1)が2024年142万円/㎡、2025年163万円/㎡、2026年188万円/㎡と3年連続で2桁の上昇率を記録しており、2026年の前年比は+15.3%だった。約430mの基準地「中央5-5」(北久宝寺町1丁目12番3外、2026年7月1日時点)も154万円/㎡・+15.8%と同じ傾斜で、船場一帯の商業地価がホテル・オフィス双方の需要で押し上げられていることがわかる。

計画地近傍の地価推移(円/㎡・地価公示=1月1日時点、地価調査=7月1日時点)
出典: 国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示・都道府県地価調査)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
敷地の立地条件(計画地点)
用途地域商業地域(容積率800%/建蔽率80%)
区域区分市街化区域
最寄り公示地点大阪中央5-8 188万円/㎡(+15.3%)
液状化傾向(地形分類)砂州・砂礫州(やや液状化しやすい)
洪水浸水想定(想定最大規模)該当区域なし
高潮浸水想定0.5m以上3m未満
津波浸水想定区域外
土砂災害警戒区域該当なし
出典: 国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域・区域区分・地形分類・浸水想定区域)
堺筋本町駅(Osaka Metro中央線)乗降客数
2019年度112,553人/日
2020年度94,776人/日
2023年度102,225人/日
出典: 国土交通省 国土数値情報(駅別乗降客数)

災害関連では、地形分類が砂州・砂礫州で「やや液状化しやすい」区分にあたり、大阪府の高潮浸水想定(2020年公表)では0.5m以上3m未満の区域に含まれる。洪水浸水想定区域(想定最大規模)と津波浸水想定区域には該当せず、土砂災害警戒区域の指定もない。船場の低地に共通する条件であり、新築の商業ビルであれば基礎・設備階の設計で織り込める範囲といえる。交通面では堺筋本町駅(中央線分)の乗降客数が2019年度の112,553人/日から2020年度に94,776人/日へ下がった後、2023年度には102,225人/日まで戻っており、業務需要の回復がうかがえる。

商圏の需要基盤 — 1km圏に事業所19,068・従業者30万人、居住人口も2040年まで増える

本町は大阪の中心業務地区であり、計画地から半径1km圏の事業所数は19,068、従業者数は300,558人、うちオフィス系従業者は100,211人(33.3%)に達する(総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」2021年)。平日のビジネス需要の厚みを示す数字であり、中央区のビジネスホテル推定OCCが9月の平日に8〜9割で推移する背景でもある。加えて居住人口も薄くない。半径1.5km圏の居住人口は2020年の99,407人から2025年に109,578人へ増え、2040年推計は110,866人(2020年比+11.5%)と都心回帰が続く見通しである(国土交通省 国土数値情報 250mメッシュ別将来推計人口)。2025年の年齢構成は生産年齢人口が77.6%、65歳以上は12.6%にとどまり、オフィスと住宅が混在する街として若い構成を保っている。なお、この居住人口は国勢調査ベースの常住人口であり、滞在人口や通過人口ではない。

計画地から半径1.5km圏の居住人口メッシュ(250m・2020年)
出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)
半径1km圏の就業基盤
事業所数19,068
従業者数300,558人
うちオフィス系従業者100,211人(33.3%)
出典: 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年)
半径1.5km圏の居住人口(推計)
2020年99,407人
2025年109,578人
2040年(推計)110,866人(2020年比+11.5%)
出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)

客室ストックの推移 — 1km圏は9年で8,751室から18,645室へ、2020年以降は年360室前後の緩やかな積み増し

供給側はどうか。計画地から半径1km圏(客室数10室以上、レジャーホテルを除く)には2026年10月28日時点で151軒・24,134室が掲載されているが、このうち直近3か月に主要予約サイトで販売価格が確認できた稼働中の施設は104軒・17,920室で、名称が異なる同一施設を名寄せすると102施設・17,584室になる。本稿の吸収余地はこの名寄せ後の値を分母にする。半径500m圏に絞ると23施設・3,449室で、計画地の至近には100〜300室級のビジネスホテルが密に並ぶ。

年次でさかのぼると、開業年が確認できる施設の累計は2017年の59軒・8,751室から2019年に97軒・15,581室へ急増し、2020年100軒・16,505室、2023年111軒・18,199室、2026年115軒・18,645室と推移した(開業年が確認できない7軒・520室は不算入)。9年間の純増は9,894室、年平均では約1,100室だが、その大半は2017〜2019年の3年間(+6,830室)に集中しており、2020年以降の6年間は年平均で約360室の積み増しにとどまる。つまり船場・本町の供給は「一気に積み上がった後、緩やかに補充されている」局面にあり、117室は2020年以降の年平均増加分の3分の1、ストック全体の0.7%に相当する。

計画地から半径1km圏の客室ストック推移(開業年ベース累計・2017〜2026年)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(客室数10室以上・レジャーホテル除く、開業年不明7軒・520室は不算入、2026年10月28日時点)
半径1km圏 稼働中ストックのカテゴリ別構成(2026年10月28日時点)
カテゴリ(稼働中)施設客室構成比
ビジネスホテル7613,62177.5%
シティホテル92,13212.1%
デラックスホテル51,0986.2%
リゾートホテル12561.5%
ホステル72651.5%
カプセルホテル11530.9%
ゲストハウス2370.2%
ドミトリー1220.1%
合計10217,584100%
半径1km圏 稼働中ストックの規模階級別構成(2026年10月28日時点)
規模階級(稼働中)施設客室構成比
50室以下174862.8%
51〜100室108304.7%
101〜200室477,24241.2%
201室以上289,02651.3%
合計10217,584100%
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(半径1km圏・稼働中・名寄せ後、2026年10月28日時点)

カテゴリ別にはビジネスホテルが76施設・13,621室で客室の77%を占め、シティホテル9施設・2,132室、デラックスホテル5施設・1,098室が続く。規模階級では101〜200室が47施設と最も多く、117室の本計画はこの最多階級のど真ん中に入る。既存ストックと同じ土俵で競う規模である一方、1室あたりの床が広めという設計面の違いを、どの客層に向けた商品で表現するかが2028年の論点になるだろう。

直近の新規供給も確認しておく。1km圏では2025年9月に503室の大型ビジネスホテル(南本町4丁目)が開業したほか、2026年4月には既存ホテルのリブランドで256室のライフスタイル系ブランドが心斎橋側に加わった。2026年12月18日には御堂筋線本町駅直結で202室の鉄道系ブランドホテルが開業を予定しており、これは計画地から約600mの圏内にある。1km圏のすぐ外側では2026年6月15日に心斎橋駅直結の223室(南船場3丁目)が開業済みで、建築主の一覧にある大阪日本橋ホテルプロジェクト(54室・2027年秋)も中央区内に控える。

計画地周辺の新規開業・計画(2026〜2028年)
計画・開業所在客室時期計画地との関係
大阪本町ホテルプロジェクト(本稿の計画)中央区本町1-7-11172028年夏(開業予定)計画地
ソラリア西鉄ホテル大阪本町中央区本町4丁目(本町駅直結)2022026年12月18日 開業予定1km圏内(約600m)
THE GATE HOTEL 大阪 by HULIC中央区南船場3-12-14(心斎橋駅直結)2232026年6月15日 開業済み1km圏外(約1.1km)
大阪日本橋ホテルプロジェクト(霞ヶ関キャピタル)中央区日本橋542027年秋(開業予定)1km圏外
北区堂島浜二丁目 複合計画(住宅・ホテル・事務所)北区堂島浜2-1-92202027年2月 完成予定1km圏外(北区)
出典: 国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(確認申請ベース・客室数10室以上の大阪市内計画)/各社公表資料。※建築計画データは調査時点での確認申請ベースであり、今後の申請追加で件数・客室数は増加する見込み。現時点での確定パイプラインの下限値として参照

これらを合わせると、2026年12月の202室と2028年夏の117室で1km圏の稼働ストックは17,584室から17,903室へ+1.8%となる。2017〜2019年に3年で+6,830室(+78%)を受け止めた商圏の履歴に照らせば、2年で+319室は十分に小さい。ただし、建築計画データは確認申請ベースの下限値であり、2027年以降に追加される計画で数字は増える前提で読む必要がある。大阪市全体で夢洲IRを含む2030年までの供給パイプラインがどう積み上がるかは、大阪の客室16.7万室、夢洲IRで+2,500室 — 2027〜2030年の供給パイプラインで整理している。

半径1km圏の稼働中ホテル分布(円の大きさ=客室数、色=カテゴリ、★=計画地)
ビジネスホテル シティホテル デラックスホテル その他(ホステル・カプセル等) 破線=500m/1km
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(稼働中102施設)
半径500m圏の稼働中施設(23施設・距離順)
#半径500m圏の稼働中施設(距離順)客室カテゴリ開業年距離
1THE LIVELY 大阪本町174ビジネスホテル2019105m
2ダイワロイネットホテル大阪堺筋本町 PREMIER272ビジネスホテル2021115m
3くれたけイン大阪堺筋本町110ビジネスホテル2018129m
4コートヤード・バイ・マリオット大阪本町193シティホテル2019161m
5ABホテル大阪堺筋本町181ビジネスホテル2019199m
6東急ステイ大阪本町256ビジネスホテル2020260m
7モクシー大阪本町155ビジネスホテル2017290m
8TAKUTO STAY 堺筋本町13ホステル2018330m
9アパホテル〈御堂筋本町駅東〉160ビジネスホテル2017339m
10トラベロッジ本町大阪138ビジネスホテル2022357m
11ホテルマイステイズ御堂筋本町108ビジネスホテル2017363m
12都シティ 大阪本町308ビジネスホテル2020376m
13シティプラザ大阪~HOTEL & SPA~199シティホテル2006386m
14ホテルマイステイズ堺筋本町190ビジネスホテル2008401m
15ホテルリブマックス大阪本町104ビジネスホテル2019417m
16東横INN大阪本町196ビジネスホテル2002421m
17花築·大阪堺筋本町ホテル45ビジネスホテル2018429m
18MERBABU STAY OSAKA23ビジネスホテル2023448m
19ホテルリブマックス大阪淀屋橋184ビジネスホテル2019452m
20ワンワールド大阪セントラル21ゲストハウス2016457m
21大阪グランベルホテル191ビジネスホテル2021458m
22セントレジスホテル大阪160デラックスホテル2010469m
23ガーナーホテル大阪本町北船場168シティホテル2025470m
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(半径500m圏・稼働中・名寄せ後23施設、2026年10月28日時点)

単価と稼働 — 中央区の推定成約ADRは万博会期の1.6万円から1.06万円へ、前々年比では−1.8%の平常化

次に、2028年の開業を評価する基準となる単価を確かめる。中央区の推定成約ADR(対象施設の中央値)は、2024年9月が10,773円(N=190)、万博会期中の2025年9月が16,018円(N=188)、2026年9月が10,578円(N=193)だった。前年同月比では−34.0%だが、前々年同月比では−1.8%であり、万博前の水準への回帰として読むのが正確である。ビジネスホテルに限っても10,786円→16,144円→10,578円(N=155)と同じ形で、北区は9,593円→15,629円→10,360円(N=74)と前々年比+8.0%、大阪府全体は9,030円→13,764円→9,310円(N=655)と+3.1%で、いずれも「万博前の水準に戻り、北区と府全体はやや上回る」という平常化のパターンに収れんしている。万博会期の反動で心斎橋の単価が前年比−36%となった構図は、新規開業はADRを下げない — 供給+21%の呉は+6.5%、心斎橋-36%は万博反動|2026年夏4市場でも確認している。

大阪市中央区 推定成約ADR 月次推移(2024〜2026年・年別重ね描き)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(市区町村別 推定成約ADR・対象施設の中央値、N=183〜194施設/月。2026年10〜12月は調査時点の掲載水準に基づく推定)
推定成約ADR(9月)のエリア比較(2024〜2026年)
推定成約ADR(9月)2024年2025年(万博会期)2026年前年同月比前々年比N(2026年)
大阪市中央区(全カテゴリ)¥10,773¥16,018¥10,578−34.0%−1.8%193
大阪市中央区(ビジネスホテル)¥10,786¥16,144¥10,578−34.5%−1.9%155
大阪市北区(全カテゴリ)¥9,593¥15,629¥10,360−33.7%+8.0%74
大阪府(全カテゴリ)¥9,030¥13,764¥9,310−32.4%+3.1%655
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR・各エリアの対象施設中央値・税抜相当)

月次の形も平常化を裏づける。2026年の中央区は1月11,250円、4月12,853円と2024年と同じ水準で春まで進み、6月に9,290円まで下がった後、7月9,791円、8月10,292円、9月10,578円と夏場から秋にかけて階段状に戻している。10月は調査時点の掲載水準で12,729円(N=189)と秋の需要期らしい上向きだが、確定前の推定値なので変動する前提で見ておきたい。参考までに、総務省「消費者物価指数」の宿泊料(全国・2020年=100)は2026年9月が172.1と2025年9月の162.9を5.6%上回っており、全国では宿泊料の水準切り上げが続いている。その中で大阪都心が万博前に戻ったという事実は、2028年の単価を考える際に「上積みの余地が残っている」と読むこともできる。

稼働はどうか。中央区のビジネスホテルの推定OCC(OTA掲載在庫ベース・推定)は2026年9月の月平均で82.3%(対象100施設/客室16,317、主要予約サイト掲載ベース。日別の対象は99〜103施設)、全カテゴリでは82.9%(対象130施設/客室19,720)、シティホテルは86.1%(対象11施設/客室2,397)だった。日別に見ると、火〜木曜はおおむね8〜9割(74〜92%)で推移し、日曜は67.9%(9月6日)〜71.2%と谷になる。9月19〜22日の連休は94.8%→100%→99.1%→90.3%と満室圏に達しており、平日の業務需要に週末・連休のレジャー需要が重なる、都心業務地らしい稼働の形である。

大阪市中央区 ビジネスホテル 推定OCC 日別(2026年9月・対象100施設/客室16,317)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(稼働率はOTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります)

予約の積み上がり方も見ておく。9月の中央区ビジネスホテルでは、宿泊日の45日前の時点で残室率が60.9%(稼働39.1%)、30日前で53.5%、14日前で41.5%、7日前で34.6%、前日で17.7%と、直前2週間で約24ポイントが埋まる。平日(9月9日・16日)は45日前の残室率が63〜65%から前日13〜17%へ、連休初日の9月19日は45日前時点ですでに41.2%まで消化が進み前日5.2%で終えた。つまり業務需要は直前の短期予約が主体で、連休は早期に埋まるという二層構造があり、117室の新規施設も平日は直前帯の需要を取りに行く価格運用が前提になる。

ブッキングカーブ(残室率・LT45→LT1)— 大阪市中央区 ビジネスホテル、2026年9月
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(対象約101施設/客室約16,400、主要予約サイト掲載ベース。LT=宿泊日までの日数)

ポジショニング — 1km圏87施設の推定成約ADRは中央値9,056円、上位1割は1.7万円超

個別施設の単価分布に落とすと、計画の立ち位置が見えてくる。1km圏の稼働中施設のうち推定成約ADRが算出できる87施設について、2026年7〜9月の平均を取ると中央値は9,056円、下位4分の1が7,697円、上位4分の1が12,877円、上位1割が16,889円で、最も高い施設は28,981円(107室のシティホテル)だった。客室数で加重した平均は10,661円で、300〜900室級の大型ビジネスホテルの多くが7,000〜10,000円前後に集まるため、ストックの重心はこの帯にある。一方で100〜200室級の中では、2019〜2022年に開業したシティ・ライフスタイル系の施設が18,000〜24,000円帯に位置しており、規模が近い施設でも商品設計で単価が2倍以上開く市場だとわかる。

客室規模 × 推定成約ADR ポジショニング(半径1km圏・87施設・2026年7〜9月平均)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=87施設。推定成約ADRは施設ごとの最安プラン水準×業態別補正係数、税抜相当)

密集帯:¥7,000〜¥10,000 × 100〜900室

大型ビジネスホテルの主戦場。稼働中客室の過半がここにあり、規模と運営効率で競う。

中間帯:¥12,000〜¥16,000 × 100〜300室

上位4分の1から1割にあたる帯。温泉大浴場や朝食で差をつける施設が点在し、117室×1室48㎡の床配分が活きやすい。

上位帯:¥18,000超 × 100〜200室

2019年以降開業のシティ・ライフスタイル系が占める。必要ADRの試算値(次節)はこの帯の下端に重なる。

参考として、同じ1km圏にはJ-REITが保有する物件が6件ある。保有関係マスター(2026年10月26日時点、国内のみ)によると、インヴィンシブル投資法人が3物件(堺筋本町190室・2,514百万円、大手前98室・1,192百万円、御堂筋本町108室・5,039百万円)、星野リゾート・リート投資法人が1物件(103室・4,238百万円、2018年4月取得)、いちごホテルリート投資法人が1物件(130室・1,630百万円、2015年11月取得)、ジャパン・ホテル・リート投資法人が1物件(124室・2,738百万円。同法人はポートフォリオ一覧で物件別の取得日を公表していない)を保有する。取得価格を客室数で割ると1室あたり12〜47百万円の幅があり、2018年取得の2物件が41〜47百万円と高い。次節の試算で本計画の総投資を1室46百万円と置くのは、この圏内の近年取得水準と整合する。

必要ADRの試算 — 建設費坪218万円・土地は公示ベースで、総投資54億円なら1室46百万円

最後に、2028年の開業時にどの単価が求められるかを簡易試算する。前提はすべて公開情報から置く。延床5,615㎡は1,699坪で、建設費は国土交通省「建築着工統計」の2025年全国「ホテル又は旅館」の工事費予定額から求めた坪単価217.8万円(2024年の宿泊業用は195.5万円、2019年は120.3万円)を当てて37.0億円、建設期間中の上昇を2026年・2027年に各+5%で織り込むと40.8億円になる。土地は敷地面積が公表されていないため、延床÷容積率800%=約702㎡と仮定し、最寄り公示地点の188万円/㎡を掛けて13.2億円とした(公示地価ベースの下限値で、実勢はこれを上回りうる)。合計は54.0億円、1室あたり46.1百万円である。実際の取得・設計条件は非公表であり、以下は商圏の相場感を示す簡易試算にとどまる。同じ中央区の新築計画で必要ADRを逆算した例としては、道頓堀に三菱地所の1万㎡ホテル — 必要ADRは1.9万〜3.4万円、1km圏は10年で2.1倍も参考になる。

この総投資に対してGOP利回り(GOP÷総投資)を4.5〜5.5%、GOP率を40〜50%、稼働率を80%(2026年9月の中央区ビジネス推定OCC82.3%より保守的に設定)と置くと、必要ADRは次の表になる。中央のケース(GOP利回り5.0%・GOP率45%)で¥17,600、低めのケース(4.5%・50%)でも¥14,200であり、2026年9月の中央区ビジネス推定成約ADR10,578円や1km圏の客室加重平均10,661円を上回る。言い換えれば、本計画は大型ビジネスホテルの密集帯ではなく、1km圏で上位4分の1〜1割にあたる12,000〜17,000円帯で商品を組み立てる前提の投資といえる。前節で見たとおりこの帯には100〜300室級の施設が実在し、2028年までに全国の宿泊料指数が年5%前後で切り上がる基調が続けば、求められる水準は相対的に近づく。

必要ADRの感度表(GOP利回り×GOP率・稼働率80%)
必要ADR(税抜相当)
GOP利回り \ GOP率
GOP率 40%GOP率 45%GOP率 50%
4.5%¥17,800¥15,800¥14,200
5.0%¥19,800¥17,600¥15,800
5.5%¥21,700¥19,300¥17,400
前提: 総投資54.0億円(建設費40.8億円=1,699坪×217.8万円×1.05²、土地13.2億円=約702㎡×188万円/㎡)、117室、稼働率80%(試算前提・通年)、365日。出典: 国土交通省「建築着工統計」(2025年計・ホテル又は旅館)、不動産情報ライブラリ(地価公示)、メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算

この必要ADRは、稼働率と総投資の置き方でも動く。稼働率を80%に固定した上の表に対し、悲観ケースとして土地の実勢が公示ベースを上回るなどで総投資が1割増える(59.4億円)、GOP率40%、稼働率75%の組み合わせを置くと必要ADRは¥23,200に上がる。楽観ケースとしてGOP率50%、稼働率85%(2026年9月の中央区ビジネス推定OCC82.3%を上回る水準)を置くと¥14,900まで下がり、1km圏の上位4分の1(12,877円)に近づく。下の2つ目の表は向きを逆にして、総投資54.0億円・GOP率45%のもとでADRと稼働率の組み合わせごとに得られるGOP利回りを示したもので、GOP利回り5%に届くのはADR16,000円なら稼働率90%、18,000円なら80%、20,000円なら70%前後からになる。

必要ADRのシナリオ比較(GOP利回り5.0%で固定、編集部試算)
ケース総投資GOP率稼働率必要ADR(税抜相当)
悲観59.4億円(+10%)40%75%¥23,200
中位54.0億円45%80%¥17,600
楽観54.0億円50%85%¥14,900
ADR×稼働率別のGOP利回り(総投資54.0億円・GOP率45%・117室、編集部試算)
ADR \ 稼働率70%75%80%85%90%
¥12,0003.0%3.2%3.4%3.6%3.8%
¥14,0003.5%3.7%4.0%4.2%4.5%
¥16,0004.0%4.3%4.6%4.8%5.1%
¥18,0004.5%4.8%5.1%5.4%5.8%
¥20,0005.0%5.3%5.7%6.0%6.4%
前提: GOP利回り=ADR×稼働率×365日×117室×GOP率÷総投資。稼働率は試算上の通年前提であり、実績値ではない。網掛けが濃いほどGOP利回りが高い(5.0%以上を最濃色)。出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算

GOP率の置き方には根拠がある。インヴィンシブル投資法人が開示する運営91物件のGOP率は38.9%(2024年12月期)である。新規開業の初年度を含む保守値として40〜50%を幅で置いた。建設費は2022年の138.6万円/坪から2024年に195.5万円、2025年に217.8万円へ上がっており、大阪府の宿泊業用着工は2024年に18棟・143,401㎡と2023年(14棟・54,152㎡)から床面積が2.6倍に増えた一方、2019年(99棟・259,913㎡)の半分強にとどまる。建設費の上昇は新規供給の抑制要因でもあり、既存ストックと2028年の新規施設の双方にとって、単価面の追い風になりうる。

建築着工統計 宿泊業用 坪単価(全国・万円/坪)と大阪府の着工床面積
出典: e-Stat「建築着工統計調査」(統計表ID 0003114547、2025年は「ホテル又は旅館」区分の年計表)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

投資判断の視点 — 吸収余地は十分、論点は「どの帯で売るか」に絞られる

ここまでを整理すると、三つの結論になる。第一に、供給面の吸収余地は十分である。117室は1km圏の稼働ストック17,584室の0.7%、2026年12月の202室を含めても+1.8%で、2017〜2019年に+78%を受け止めた商圏の履歴に比べれば小さい。第二に、需要基盤は厚い。1km圏に従業者30万人、1.5km圏に居住11万人を抱え、2026年9月のビジネスホテル推定OCCは82.3%、平日はおおむね8〜9割で推移している。第三に、単価は万博前の水準に戻った。中央区の推定成約ADRは2026年9月に10,578円と前々年比−1.8%で、万博会期の特需が剥落した後の平常値が確定した。2028年の計画を評価する基準年として、この2026年の数字が使える。

残る論点は単価帯の選択に尽きる。必要ADRの試算値(中央ケース¥17,600)は商圏の中央値9,056円の約2倍であり、大型ビジネスホテルの密集帯と同じ商品では届かない。一方で、同じ1km圏には100〜300室級で12,000〜24,000円帯を取る施設が実在し、1室48㎡の床配分はその帯の商品設計に向く。ブランドと運営会社が公表されていない現時点では、建築主の既存ブランドの価格帯から本件を推定することはできないが、2028年夏の開業までに商圏の単価が全国の宿泊料指数並みに年5%で切り上がれば、2026年基準の必要ADRとの距離は縮まる。大阪都心の新築計画を見る用地担当者や投資家にとって、本件は「供給過多かどうか」ではなく「どの帯の需要を誰が取りにいくか」を問う案件だといえる。

投資判断の観点別評価
観点評価根拠
供給吸収余地あり117室=1km圏稼働ストックの0.7%。2026〜28年の既知パイプラインを含め+1.8%
需要基盤厚い1km圏従業者300,558人、1.5km圏居住人口は2040年まで増加推計。9月のビジネス推定OCC82.3%
単価環境平常化中央区推定成約ADRは2026年9月10,578円(前々年比−1.8%)。万博会期比較は参考値にとどめる
建設費上昇局面全国坪単価は2022年138.6万円→2025年217.8万円。工期中の上昇を+5%/年で織り込む
立地・災害設計で対応可商業地域800%。高潮0.5〜3m・液状化やや高、洪水・津波区域外
地価上昇継続最寄り公示地点は3年連続2桁上昇(2026年+15.3%)。出口の土地値を支える一方、取得コストは上がる
出典: 本稿各節のデータよりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年10〜12月のADRは調査時点でOTAに公開されている販売価格の水準にもとづく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前値下げで下落する可能性がある点にご留意ください。必要ADRの試算は公開情報にもとづく簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチの客室ストック(本町1-7-1計画地から半径1,000m・500m圏、客室数10室以上・レジャーホテル除く、2026年10月28日時点)、市区町村別の推定成約ADR(対象施設の中央値)、推定OCCとブッキングカーブ(OTA販売在庫ベース、2026年9月)、施設別の推定成約ADR(2026年7〜9月平均、N=87)。計画概要は建築計画データと建築主の公表資料、敷地条件・地価・人口・就業・建設費は国土交通省・総務省等の公的統計による。

■ 試算前提

総投資54.0億円=建設費40.8億円(延床5,615㎡=1,699坪×建築着工統計2025年「ホテル又は旅館」坪単価217.8万円×工期中上昇1.05²)+土地13.2億円(延床÷容積率800%=約702㎡×最寄り公示地点188万円/㎡)。必要ADR=総投資×GOP利回り÷(GOP率×117室×365日×稼働率)。中位ケースはGOP利回り5.0%・GOP率45%・稼働率80%、悲観は総投資+10%・GOP率40%・稼働率75%、楽観はGOP率50%・稼働率85%。

■ 限界・留意点

敷地面積・取得価格・設計仕様・ブランド・運営会社は公表されておらず、土地は公示地価ベースの下限値として置いた。推定成約ADRは最安プラン水準に業態別の補正係数を適用した推定値、OCCはOTA販売在庫に基づく推定値で、いずれも各施設の実績値とは異なる。2026年10〜12月の値は調査時点の掲載水準に基づく。建築計画データは確認申請ベースで、今後追加される計画は含まない。試算は商圏の相場感を示すもので、投資判断には個別のフィージビリティ・スタディが必要である。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 半径圏の客室ストック(稼働中102施設・17,584室、2026年10月28日時点)、市区町村別 推定成約ADR(中央区N=193、北区N=74、大阪府N=655)、推定OCC・ブッキングカーブ(中央区ビジネス 対象100施設/客室16,317)、施設別推定成約ADR(N=87)、J-REIT保有関係マスター(2026年10月26日時点・国内のみ)

■ 政府統計・公的データ

  • 国土交通省「建築物動態統計調査」(建築計画データ:大阪市中央区本町1-7-1・117室・地上13階・完成予定2028年8月31日)
  • 国土交通省 不動産情報ライブラリ — 用途地域・区域区分・地価公示(大阪中央5-8ほか)・都道府県地価調査(中央5-5)・地形分類(液状化傾向)・洪水/高潮/津波浸水想定区域・土砂災害警戒区域・駅別乗降客数
  • 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)
  • 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年)
  • e-Stat「建築着工統計調査」(統計表ID 0003114547:用途別・構造別 建築物の数・床面積・工事費予定額。2025年計は「ホテル又は旅館」区分の年計表)
  • e-Stat「消費者物価指数」(統計表ID 0003427113:宿泊料・全国・2020年=100)

■ 企業開示・プレスリリース

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