大阪府で2026年に開業した(または年内に開業予定の)宿泊施設を、2026年10月30日時点のホテルバンク編集部の開業施設データで数えると、53施設・3,566室に達する。業態別にはビジネスホテルが24施設・1,876室、シティホテルが7施設・845室と、両業態で全体の76%にあたる2,721室を占め、開業時期は4〜6月の3か月に1,915室(53.7%)が集中していた。一方、同じ大阪府の推定成約ADRは確定した2026年9月でビジネスホテル¥8,872(N=504)と前年同月比−34.0%、シティホテル¥13,077(N=97)で−21.8%となったが、前年9月は大阪・関西万博の会期中であり、比較の基準そのものが特需を含む点に注意が要る。本稿は、供給が「いつ・どの規模で」積み上がったのかを開業月と客室規模で整理し、万博前の2024年を含む3年重ねで推定成約ADRの着地を確かめたうえで、11〜12月のブッキングカーブを足場に、供給増局面のレベニューマネジメント実務を考える。
対象: 大阪府の2026年開業施設 N=53施設(うちビジネスホテル24・シティホテル7)、推定成約ADRは大阪府ビジネスホテル N=504施設・シティホテル N=97施設(2026年9月確定値)。本記事の価格指標は推定成約ADR(OTA等の販売データから推定される成約価格水準・税抜相当)、稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値。いずれも定義は記事末尾。データ時点: 2026年10月30日。
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
- — 53施設・3,566室:大阪府の2026年開業は既存ストック113,417室の3.1%。うち53.7%(1,915室)が4〜6月に集中し、供給の山は下期ではなく春に来た。
- — 確定9月の推定成約ADRはビジネス¥8,872(前年比−34.0%)・シティ¥13,077(−21.8%)。万博前の2024年比ではビジネス+1.0%・シティ+15.4%。
- — 推定OCC(OTA掲載在庫ベース)は2026年10月にビジネス88.8%・シティ92.1%。新規在庫を含む母集団でも需要期の消化は進んでいる。
- — 12月前半の土曜は11月より約10ポイント低い位置から出発。11月並みに+12〜+15ポイント積み上がってもビジネスの着地は71〜78%にとどまる。
- — 2027年1〜3月の価格下限は、ビジネスなら2024年同月×(−5.5%〜+6.5%)が目安。シティは振れ幅が¥2,300〜¥2,600と広く、月ごとに置き直したい。
2026年の新規開業53施設・3,566室 — 下期集中ではなく、4〜6月に前倒しで開いた
まず供給の量と時期を押さえたい。ホテルバンク編集部が把握する大阪府の2026年開業施設は53施設・3,566室で、開業日は2026年1月1日から12月17日まで広がる(12月の予定分1施設・202室を含む)。年前半(1〜6月)に32施設・2,357室が開業し、これは年間客室数の66.1%にあたる。年後半(7〜12月)は21施設・1,209室にとどまり、「秋以降に供給が積み上がる」というよりも、万博閉幕から半年を経た2026年春に開業が前倒しで集中した形だと読める。
月別に見ると、4月が8施設・947室と突出し、6月が8施設・636室、5月が4施設・332室と続く。この3か月で1,915室が市場に加わった計算になり、年間の53.7%を占める。7月は施設数こそ10施設と最多だが客室数は309室で、40室以下の小規模施設が9施設を占める月だった。8月は4施設・382室で、このうち1施設が302室の大型ビジネスホテルである。10月以降は10月に2施設・181室が開業し、12月に1施設・202室が予定されるのみで、11月の開業は現時点では確認できなかった(OTA掲載確認ベースのため、今後の掲載で軒数が増える可能性がある)。
本グラフはOTA掲載確認ベースの集計です。OTA事前掲載は全体の約19%にとどまり、半数以上が開業後の掲載のため、直近以降の月・年は今後の掲載で軒数が増加する可能性があります。確認申請ベースの建築計画パイプライン(国土交通省「建築物動態統計調査」)と併せて参照することを推奨します。
出典:メトロエンジンリサーチ(OTA掲載確認ベース、N=53施設)、ホテルバンク編集部より作成(大阪府・2026年開業施設、開業月別の客室数。12月は開業予定分を含む)
業態別の内訳を表にまとめた。客室数ベースではビジネスホテルが1,876室(52.6%)、シティホテルが845室(23.7%)、ホステルが490室(13.7%)、リゾートホテルが265室(7.4%)と続き、貸別荘・町家・ゲストハウスは9施設以上を数えるものの客室数は合計90室にとどまる。施設数の多さと客室数の多さが一致しない点が、今年の大阪の供給の特徴だといえる。
| 業態 | 施設数 | 客室数 | 客室数構成比 | 1施設あたり平均室数 |
|---|---|---|---|---|
| ビジネスホテル | 24 | 1,876 | 52.6% | 78 |
| シティホテル | 7 | 845 | 23.7% | 121 |
| ホステル | 8 | 490 | 13.7% | 61 |
| リゾートホテル | 2 | 265 | 7.4% | 133 |
| 貸別荘・町家・ゲストハウス等 | 12 | 90 | 2.5% | 8 |
| 合計 | 53 | 3,566 | 100% | 67 |
出典:メトロエンジンリサーチ(OTA掲載確認ベース、N=53施設)、ホテルバンク編集部より作成(大阪府・2026年開業施設。客室数0で登録の1施設を含む)
次に規模の偏りである。客室100室以上の開業は12施設で合計2,335室と、施設数では全体の23%にすぎないが客室数では65.5%を占める。200室以上に絞ると7施設・1,688室となり、その顔ぶれと開業時期を下表に示した。ここで注意したいのは、開業施設データには既存建物の改装やリブランドによる「再開業」も新規として含まれる点である。公開情報で確認できる範囲では、スガタ ホテル 大阪心斎橋(256室・4月)は既存ホテルのリブランドとして、トラベロッジ大阪心斎橋(302室・8月)は全面改装を経ての開業として発表されており、両施設の558室(年間の15.6%)は厳密な意味での純増とは性格が異なる。これを除いた純増ベースでも3,008室が加わったことになる。
| 施設名 | 客室数 | 開業日 | 業態 | 備考(公開情報) |
|---|---|---|---|---|
| トラベロッジ大阪心斎橋 | 302 | 2026-08-01 | ビジネスホテル | 既存建物を全面改装して開業 |
| センタラライフなんばホテル大阪 | 300 | 2026-04-01 | ビジネスホテル | 公式発表の開業日は4月6日 |
| スガタ ホテル 大阪心斎橋 シリーズ byマリオット | 256 | 2026-04-01 | リゾートホテル | 既存ホテルのリブランド |
| ザ・ゲートホテル大阪 by HULIC | 223 | 2026-06-15 | シティホテル | 心斎橋駅直結の新築 |
| GRAND HOSTEL LDK大阪新世界 | 205 | 2026-06-18 | ホステル | — |
| ソラリア西鉄ホテル大阪本町 | 202 | 2026-12-17 | ビジネスホテル | 開業予定(公式発表は12月18日開業) |
| アンカード・バイ・リーガ 大阪なんば | 200 | 2026-04-03 | シティホテル | 新ブランド1号店 |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(開業日・客室数はOTA掲載確認ベースの編集部データ。備考は各社公表資料・報道に基づく。参考資料は記事末尾)
既存ストックとの対比も添えておきたい。主要予約サイトに掲載される大阪府の宿泊施設は745施設・113,417室(2026年10月30日時点)で、2026年の開業3,566室はその3.1%、ビジネス・シティの2,721室に限れば2.4%に相当する。年率3%前後の客室増は一見穏やかだが、その5割超が春の3か月に集中し、しかも100室超の大型施設が客室数の3分の2を占めたことで、2026年の夏以降の市場は「新しい大型在庫がそろった状態」で推移してきたことになる。新規供給と単価の関係を心斎橋を含む4市場で検証した新規開業はADRを下げない — 供給+21%の呉は+6.5%、心斎橋-36%は万博反動|2026年夏4市場も、同じ問いを別の角度から扱っている。この供給の形を頭に置いて、価格の着地を見ていく。
推定成約ADRの着地 — 前年比の大幅マイナスは万博の反動、2024年比では横ばい圏
価格面では、確定値がそろう2026年9月までの推定成約ADRを、万博前の2024年、万博会期(2025年4月13日〜10月13日)を含む2025年、そして2026年の3年で重ねて見る。ビジネスホテル(N=504)の2026年9月は¥8,872で、前年同月の¥13,450(N=498)に対し−34.0%と大きく下げた。ただし2024年9月の¥8,784(N=494)と比べると+1.0%で、万博前の水準にほぼ戻ったと読むのが実態に近い。4〜8月も同じ構図で、前年比は4月−23.8%、5月−27.5%、6月−32.8%、7月−31.9%、8月−33.6%と会期が進むほどマイナス幅が広がる一方、2024年比では4月+3.3%、5月+6.5%、6月−5.5%、7月−3.1%、8月−5.1%と、プラスマイナス数%の範囲に収まっている。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(大阪府ビジネスホテル・推定成約ADR。2024年N=484〜499、2025年N=487〜503、2026年N=493〜504。2026年10月以降の点線は現時点の販売状況に基づく推定値で変動し得る)
シティホテル(N=97)は少し様子が異なる。2026年9月は¥13,077で、前年同月の¥16,733(N=91)に対し−21.8%と、ビジネスホテルよりマイナス幅は小さい。2024年9月の¥11,336(N=88)と比べると+15.4%であり、万博前と比較すれば単価は一段高い位置で着地している。月別の2024年比は4月+7.2%、5月+7.2%、6月−6.0%、7月+1.6%、8月−0.9%で、9月の+15.4%が目立つ。なお対象施設数が2024年の88施設から2026年の97施設へ増えており、この間に加わった新規開業施設が中央値を動かしている可能性には留意したい。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(大阪府シティホテル・推定成約ADR。2024年N=83〜88、2025年N=89〜91、2026年N=91〜97。2026年10月以降の点線は現時点の販売状況に基づく推定値で変動し得る)
| 月(確定値) | ビジネス 2026年 | 前年比 | 2024年比 | シティ 2026年 | 前年比 | 2024年比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 4月 | ¥9,845 | −23.8% | +3.3% | ¥13,091 | −18.1% | +7.2% |
| 5月 | ¥9,699 | −27.5% | +6.5% | ¥12,878 | −16.6% | +7.2% |
| 6月 | ¥7,884 | −32.8% | −5.5% | ¥10,769 | −26.3% | −6.0% |
| 7月 | ¥8,429 | −31.9% | −3.1% | ¥12,582 | −25.1% | +1.6% |
| 8月 | ¥8,772 | −33.6% | −5.1% | ¥13,078 | −24.4% | −0.9% |
| 9月 | ¥8,872 | −34.0% | +1.0% | ¥13,077 | −21.8% | +15.4% |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(大阪府・推定成約ADR確定値。ビジネス N=495〜504、シティ N=94〜97。前年は万博会期を含む)
ここまでを整理すると、2026年の大阪は「前年比で見れば2〜3割のマイナス、万博前の2024年比で見ればビジネスは横ばい圏、シティは−6%〜+15%の幅で振れつつ9月は大きくプラス」という二重の姿になる。春に1,915室が加わった供給増は、2024年比で6〜8月のビジネスホテルが−3〜−5%台とわずかに水面下に沈んだ局面と時期が重なっており、新規在庫が立ち上がる数か月は単価の押し下げ要因として働いた可能性がある。ただし9月には2024年比でプラスに戻っており、供給を吸収しながら価格が万博前の水準に収れんしていく過程にあると見るのが妥当だろう。10〜12月については現時点の販売状況に基づく推定値としてビジネス¥11,111(N=499)・¥11,100(N=496)・¥10,225(N=493)、シティ¥15,844・¥15,131・¥14,282(いずれもN=97)が観測されるが、確定値との単純比較は月末の確定を待ちたい。確定9月の値を2024年を基準線に読み替える考え方は、大阪の確定9月、推定成約ADRはビジネス−34.0%・シティ−21.8% — 万博会期の前年ではなく2024年を基準線に読むで掘り下げている。
足元の稼働と11〜12月のブッキングカーブ — 新規在庫を含めても10月の土曜は9割超、11月も積み上がる
供給が増えた市場で在庫が消化されているかを、推定OCC(OTA掲載在庫ベース)で確認する。大阪府ビジネスホテル(対象285〜300施設/客室47,820〜49,130、主要予約サイト掲載ベース)の2026年9月の月平均は80.0%、シティホテル(34〜40施設/7,905〜9,042室)は82.0%だった。10月(10月1日〜10月30日の宿泊日)はビジネス88.8%(289〜304施設)、シティ92.1%(40〜43施設)と秋の需要期らしい水準に上がっている。9月の最高は5連休中の9月20日(日)で両業態とも100.0%、翌21日(月・祝)もビジネス98.3%・シティ98.8%と、連休が月の形を決めた。逆に最も低かったのは9月6日(日)のビジネス65.4%、連休最終日の9月23日(水・祝)の66.2%で、連休中のピークとは35ポイント近い開きが出ている。
| 曜日別平均・推定OCC | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ビジネス 2026年9月 | 80.9% | 80.0% | 78.2% | 80.6% | 78.3% | 86.3% | 76.0% |
| ビジネス 2026年10月(〜30日) | 83.0% | 89.2% | 91.2% | 92.2% | 88.8% | 93.5% | 82.8% |
| シティ 2026年9月 | 83.2% | 79.9% | 78.6% | 80.5% | 83.0% | 88.9% | 81.2% |
| シティ 2026年10月(〜30日) | 88.2% | 91.1% | 93.4% | 93.6% | 92.0% | 96.7% | 89.6% |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(大阪府・推定OCC(OTA掲載在庫ベース)の曜日別平均。ビジネス285〜304施設、シティ34〜43施設。10月は10月1日〜30日の宿泊日)
曜日別では両業態とも土曜が最も高く、9月のビジネスで86.3%、10月は93.5%に達する一方、日曜は9月76.0%・10月82.8%と週の底になる。10月は火〜木の平日がビジネス89〜92%、シティ91〜94%と土曜に迫る水準で、秋の平日需要の厚みがうかがえる。曜日の山谷はあるものの、新規在庫を含んだ母集団でこの水準が出ている点は、供給増が足元の稼働を大きく崩してはいないことを示す。
この先の11〜12月についてはブッキングカーブ(宿泊日の45日前から直近までの観測)で進捗を追う。下表は代表的な土曜と水曜の宿泊日について、45日前・30日前・直近観測の推定OCCを並べたものである。ビジネスホテルの11月7日(土)は45日前71.6%から30日前77.5%、宿泊9日前で86.4%と14.8ポイント積み上がり、11月14日(土)は45日前の時点で80.8%、16日前で92.6%に達している。平日の11月11日(水)は45日前50.4%、13日前69.6%と、直近観測で前週の土曜(11月7日)を17ポイント下回る位置で推移する。12月に入ると12月5日(土)が37日前で62.8%、12月12日(土)が44日前で59.4%と、11月の土曜が同じリードタイムで示した水準(11月7日は37日前74.3%・44日前71.9%、11月21日は37日前75.3%・44日前70.7%)を10ポイント強下回る。
| 宿泊日 | ビジネス 45日前 | 30日前 | 直近観測 | シティ 45日前 | 30日前 | 直近観測 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 11月7日(土) | 71.6% | 77.5% | 86.4%(9日前) | 85.8% | 88.3% | 93.3%(9日前) |
| 11月11日(水) | 50.4% | 57.8% | 69.6%(13日前) | 75.8% | 78.0% | 83.6%(13日前) |
| 11月14日(土) | 80.8% | 88.1% | 92.6%(16日前) | 90.2% | 94.0% | 97.5%(16日前) |
| 11月21日(土) | 70.4% | 80.1% | 84.4%(23日前) | 91.7% | 96.7% | 97.5%(23日前) |
| 11月25日(水) | 52.6% | 59.6% | 61.7%(27日前) | 72.6% | 77.1% | 79.6%(27日前) |
| 11月28日(土) | 65.1% | 72.9% | 72.9%(30日前) | 81.2% | 87.1% | 87.1%(30日前) |
| 12月5日(土) | 58.9% | — | 62.8%(37日前) | 75.2% | — | 78.1%(37日前) |
| 12月9日(水) | 46.6% | — | 48.6%(41日前) | 67.6% | — | 68.9%(41日前) |
| 12月12日(土) | 59.1% | — | 59.4%(44日前) | 76.1% | — | 76.6%(44日前) |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(大阪府・推定OCC(OTA掲載在庫ベース)。ビジネス296〜299施設/48,682〜48,937室、シティ40施設/9,232室。宿泊日の45日前から直近までの観測。「—」は当該リードタイム未到達)
シティホテルは全般にカーブの位置が高く、11月14日(土)と21日(土)は宿泊2〜3週間前で97.5%に達している。11月の大阪は紅葉と秋の催事で需要が厚い時期であり、新規開業施設を含む母集団でもカーブが上方に張り付いていることは、供給増が需要期の稼働を直ちに損なってはいないことを物語る。一方、12月の土曜が同じリードタイムで11月より10ポイント前後低い位置から出発している点は、年末に向けた「積み上げ幅」をどう確保するかという来月の課題を示唆している。ビジネスとシティでカーブの形が異なる点は、10月の三連休を扱った大阪の10月三連休を業態別ブッキングカーブで読む — ビジネスとシティの差は「出遅れ」か「消化の速さ」かでも確認できる。
感度分析 — 1〜3月の価格下限と12月前半の土曜の着地をレンジで置く
アクションプランに入る前に、本文の数値から2つの感度表を組んでおく。いずれも新たな需要予測ではなく、記事中の実績値と観測値を組み合わせた算術上のレンジである。
1つ目は、閑散期(2027年1〜3月)の価格下限の置き方である。2024年同月の確定値を基準線とし、供給増が重なった2026年4〜9月に実際に観測された「2024年比」の最小・中央値・最大をそのまま当てはめると、下表のレンジになる。2026年4〜9月の2024年比は、ビジネスホテルが−5.5%〜+6.5%(中央値−1.1%)、シティホテルが−6.0%〜+15.4%(中央値+4.4%)であった。
| 月・業態 | 2024年確定値(基準線) | 悲観(最小) | 中位(中央値) | 楽観(最大) | 参考:2026年同月確定値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1月・ビジネス | ¥8,188 | ¥7,740 | ¥8,100 | ¥8,720 | ¥9,144 |
| 2月・ビジネス | ¥8,871 | ¥8,390 | ¥8,780 | ¥9,450 | ¥8,430 |
| 3月・ビジネス | ¥9,404 | ¥8,890 | ¥9,310 | ¥10,010 | ¥9,324 |
| 1月・シティ | ¥10,968 | ¥10,310 | ¥11,450 | ¥12,650 | ¥14,015 |
| 2月・シティ | ¥11,294 | ¥10,610 | ¥11,790 | ¥13,030 | ¥11,421 |
| 3月・シティ | ¥11,937 | ¥11,220 | ¥12,460 | ¥13,770 | ¥12,792 |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(大阪府・推定成約ADR確定値、ビジネスN=484〜504、シティN=83〜97。シナリオ値は2024年同月×(1+2026年4〜9月の2024年比の最小/中央値/最大)で¥10単位に丸めた試算値)
ビジネスホテルは3シナリオの幅が月あたり¥1,000前後(1月で¥7,740〜¥8,720)に収まり、2026年の2月(¥8,430)と3月(¥9,324)の確定値もこのレンジの中にある。一方で2026年1月(¥9,144)は楽観シナリオを上回っており、2024年同月の水準は「下限の目安」として使い、上値を縛る基準にはしないのが妥当だろう。シティホテルは悲観と楽観の差が¥2,300〜¥2,600と広く、2026年1月の¥14,015は楽観(¥12,650)も上回っていた。シティの下限は2024年同月の一本線で決めず、月ごとに置き直す余地が大きい。
2つ目は、12月前半の土曜がどこまで積み上がるかである。現時点の観測値に今後の積み上げ幅を+3〜+15ポイントで足し合わせた着地を下表に示す。参考として、11月の土曜(7日・14日・21日)は45日前から直近観測(9〜23日前)までに、ビジネスで+11.8〜+14.8ポイント、シティで+5.8〜+7.5ポイント伸びている。
| 宿泊日・業態 | 現時点の観測値 | +3pt | +6pt | +9pt | +12pt | +15pt |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 12月5日(土)・ビジネス | 62.8%(37日前) | 65.8% | 68.8% | 71.8% | 74.8% | 77.8% |
| 12月12日(土)・ビジネス | 59.4%(44日前) | 62.4% | 65.4% | 68.4% | 71.4% | 74.4% |
| 12月5日(土)・シティ | 78.1%(37日前) | 81.1% | 84.1% | 87.1% | 90.1% | 93.1% |
| 12月12日(土)・シティ | 76.6%(44日前) | 79.6% | 82.6% | 85.6% | 88.6% | 91.6% |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(大阪府・推定OCC(OTA掲載在庫ベース)、ビジネス296〜299施設、シティ40施設。積み上げ幅は仮定値で、着地は観測値への単純加算。需要予測ではない)
ビジネスホテルは11月の土曜並みに+12〜+15ポイント積み上がっても着地は71.4〜77.8%で、11月の土曜が直近観測で示した84.4〜92.6%には届かない。12月前半のビジネスの土曜を11月並みに乗せるには、12月5日で+22ポイント、12月12日で+25ポイント程度の積み上げが要る計算になる。シティホテルは+12ポイントで88.6〜90.1%に乗るが、11月の土曜の直近観測(93.3〜97.5%)に並ぶには+15〜+17ポイントが必要である。次節のアクションプラン4で示す「直前の積み上げを待つ枠と早めに確保する枠を分ける」判断は、この差の大きさを前提に置きたい。
大阪のビジネス・シティホテルを運営するレベニューマネジャーへ — 示唆とアクションプラン
1. 前年比の物差しを「2024年比」に掛け替える。 2026年9月のビジネス−34.0%・シティ−21.8%は、万博会期だった前年との比較である。自館の前年比が同程度のマイナスでも、2024年同月との比較でビジネスが+1.0%、シティが+15.4%という市場の着地に照らして位置を確かめたい。前年比だけで予算の未達を論じると、万博特需の剥落と供給増の影響を切り分けられないまま、価格下限を必要以上に下げてしまう余地がある。
2. 供給増は「春に起きたこと」であり、秋の需要期はすでに新規在庫込みの市場である。 4〜6月に1,915室が加わったあと、ビジネスホテルの推定成約ADRは6〜8月に2024年比でわずかに水面下に沈んだ。しかし9月には2024年比でプラスに戻り、10月の推定OCCはビジネス88.8%・シティ92.1%まで上がった。足元の市場カーブは新しい大型在庫を含めたうえでこの水準にあるので、自館のペースが市場より遅れている場合、その差を供給のせいだけにせず、自館固有の要因(価格帯・プランの見せ方・販売チャネルの配分)を点検する価値がある。
3. 曜日の山谷では日曜の底が深い。 9月のビジネスは土曜86.3%に対し日曜76.0%、10月も土曜93.5%に対し日曜82.8%と、日曜は土曜より10ポイント強低い。新規開業施設が増えた市場では、日曜・連休明けのような弱い日に価格だけで勝負すると消耗しやすい。連泊や日曜イン限定の特典など、価格以外の設計で日曜を埋める工夫を検討したい。
4. 12月の土曜は11月より低い位置から始まっている。 12月5日(土)37日前62.8%、12月12日(土)44日前59.4%は、11月の土曜が同じリードタイムで示した70%前後より低い。11月7日(土)が45日前から9日前までに14.8ポイント積み上がった実績を踏まえると、12月前半の土曜も直前で伸びる余地はあるが、その伸びを待つか先に取りにいくかは自館の残室と価格帯次第になる。
| 時間軸 | 打ち手 | 判断トリガー(記事中の数値) | 狙い |
|---|---|---|---|
| 今日〜今週 | 11月の土曜(7日・14日・21日)の残室と現在の設定価格を市場カーブと突き合わせる | 市場は11月14日(土)がビジネス92.6%・シティ97.5%(16日前)。自館がこれを大きく下回っているなら価格帯、上回っているなら残室の出し方を見直す | 需要期の土曜で取りこぼしも安売りもしない |
| 今日〜今週 | 自館の2026年4〜9月の確定ADRを「2024年同月比」で並べ直し、予算の基準を再確認する | 市場はビジネス9月+1.0%、シティ9月+15.4%(いずれも2024年比)。この範囲から大きく外れる月があれば原因を切り分ける | 万博反動と供給増の影響を分けて捉える |
| 2週間以内 | 11月の水曜(11日・25日)向けに、平日の法人・連泊プランの露出を整える | 市場の水曜は45日前50〜53%、直近でも62〜70%(ビジネス)と前後の土曜より11〜23ポイント低い | 平日の底上げを価格以外で図る |
| 2週間以内 | 日曜イン・連休明けの弱い日に向けた連泊特典やレイトチェックアウトなどの非価格施策を用意する | 9月の日曜はビジネス76.0%、連休最終日の9月23日(水・祝)は66.2%で月の底に近かった | 弱い曜日を値下げだけで埋めない |
| 来月に向けて | 12月前半の土曜(5日・12日)について、直前の積み上げを待つ枠と早めに確保する枠を分けて在庫を設計する | 市場は12月5日(土)37日前62.8%、12月12日(土)44日前59.4%。11月7日(土)は45日前から9日前で+14.8ポイント伸びた | 年末需要の立ち上がりを逃さず、下限も守る |
| 来月に向けて | 12月の新規開業(202室)と年明けの市場推定値を踏まえ、1〜3月の価格下限を2024年同月の確定値を基準に置き直す | 2024年1〜3月の確定値はビジネス¥8,188〜¥9,404、シティ¥10,968〜¥11,937 | 閑散期の価格下限を特需前の実績に合わせる |
出典:ホテルバンク編集部作成(判断トリガーの数値は本文の推定成約ADR・推定OCCを参照)
まとめ — 供給増局面を読む3つの物差し
第一に「量と時期」である。大阪府の2026年開業は53施設・3,566室で、既存ストック113,417室の3.1%にあたり、その66.1%が年前半、53.7%が4〜6月に集中した。供給ショックは下期ではなく春に起きており、秋の市場はすでにその在庫を含んでいる。第二に「比較の基準」である。確定9月の推定成約ADRは前年比でビジネス−34.0%・シティ−21.8%だが、万博前の2024年比ではビジネス+1.0%・シティ+15.4%で、特需の剥落と供給増の影響を分けて見る必要がある。第三に「カーブの位置」である。推定OCCは10月にビジネス88.8%・シティ92.1%、11月の土曜は直近観測でビジネス73〜93%・シティ87〜98%に達し、新規在庫を含めても需要期の消化は進んでいる。12月の土曜が11月より低い位置から出発している点を、来月の積み上げ設計の出発点にしたい。
データについて
| 推定OCC | OTA掲載在庫ベース稼働率 = 100 − 100 × OTA掲載残室数 ÷ 総客室数。対象は総客室の30%以上をOTAに掲載する施設で構成した固定コホート(各宿泊日で同じ施設集合。本文に記した施設数がその数)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、実客室稼働率とは定義が異なる(掲載外の客室を消化済み側に数えるため高めに出る)。対象月は2026年9月(9月1日〜30日)および2026年10月(10月1日〜30日の宿泊日)、対象はビジネスホテル285〜304施設/客室47,472〜49,245、シティホテル34〜43施設/客室7,905〜10,388(主要予約サイト掲載ベース)。 |
| ブッキングカーブ | 宿泊日の45日前から直近までの観測に基づく。対象はビジネスホテル296〜299施設/48,682〜48,937室、シティホテル40施設/9,232室。 |
| 推定成約ADR | OTA等の販売データ(最安プラン水準×業態別係数・複数チャネルのアンサンブル)から推定した成約価格水準(税抜相当)。過去月は確定値、現在・未来月は現時点の販売状況に基づく推定値。公表運営実績との照合で誤差中央値6.6%。対象は大阪府ビジネスホテル(2024年N=484〜499、2025年N=487〜503、2026年N=493〜504)、シティホテル(2024年N=83〜88、2025年N=89〜91、2026年N=91〜97)。前年比は確定月同士の比較のみ。 |
| 開業施設 | ホテルバンク編集部が把握する大阪府の2026年開業施設 N=53(OTA掲載確認ベース。開業日2026-01-01〜2026-12-17、12月の開業予定分を含む)。OTA掲載は開業の数か月前から開業後にかけて確認されるため、直近以降の月の軒数は今後の掲載で増加する可能性がある。既存建物の改装・リブランドによる再開業を含む。業態区分は編集部の分類による。既存ストックは主要予約サイト掲載ベースの745施設・113,417室。 |
| データ時点 | データ時点: 2026年10月30日。販売状況・在庫は日々変動するため、本記事の数値は取得時点のスナップショットである。 |
参考資料・出典一覧
■ データソース
メトロエンジンリサーチ(国内のOTA公開価格・在庫を継続追跡)の大阪府データから、2026年開業施設53施設(OTA掲載確認ベース)、推定成約ADR(ビジネスホテルN=484〜504、シティホテルN=83〜97、2024年1月〜2026年12月)、推定OCC(2026年9月・10月)とブッキングカーブ(2026年11〜12月の9宿泊日)を集計した。開業施設の備考は各社の公表資料・報道(下記)に基づく。
■ 試算前提
前年比・2024年比は確定月同士の比較。表6の下限シナリオは、2024年同月の確定値に2026年4〜9月の2024年比の最小(ビジネス−5.5%・シティ−6.0%)、中央値(−1.1%・+4.4%)、最大(+6.5%・+15.4%)を乗じ¥10単位で丸めた値。表7の着地は現時点の観測値に積み上げ幅+3〜+15ポイントを単純加算した値。
■ 限界・留意点
推定成約ADR・推定OCCはOTA販売データに基づく推定値で、各施設の実際の成約価格・客室稼働率とは異なる。2026年10月以降の推定成約ADRと11〜12月の推定OCCは取得時点(2026年10月30日)のスナップショットで日々変動する。開業施設数はOTA掲載確認ベースのため今後増える可能性があり、改装・リブランドによる再開業を含む。表6・表7は算術上のレンジで、需要予測ではない。
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