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【2025年11月最新】函館市のシティー・リゾートホテルを徹底分析!観光需要の回復とリゾート需要拡大が押し上げる宿泊市場の変化

投稿日 : 2025.11.29

北海道

函館市のシティー・リゾートホテル、分布状況

メトロエンジンリサーチによると、函館市のシティー・リゾートホテルの分布状況は以下の通り。

出典:メトロエンジンリサーチ

出典:メトロエンジンリサーチ

メトロエンジンリサーチによると、函館市のシティー・リゾートホテルは「函館駅〜ベイエリア〜元町」へと連続する観光動線上に高密度で集積している。特に函館駅周辺は、JR・路面電車、フェリー、空港連絡バスなど多様な交通機能を備えた結節点であり、利便性の高さから中〜大規模のホテルが最も集中する中心エリアを形成している。

地図からも確認できるように、主要エリアは以下の三つに大別できる。

1.  函館駅〜朝市・大門エリア
観光の起点となる場所で、チェーン系ホテルや大規模宿泊施設が連続的に立地。
観光・ビジネス双方の需要を取り込み、年間を通して安定した宿泊需要を支えている。

2.  ベイエリア(赤レンガ倉庫周辺)
ウォーターフロント再開発が進んだ象徴的エリアで、眺望価値と滞在性を重視したリゾート型ホテルが増加。夜景需要や観光連泊ニーズに応える高付加価値型の宿泊が中心となっている。

3.  元町・函館山ロープウェイ周辺
教会群や歴史的建造物が密集する観光核心部。小規模ブティックホテル、デザイン性の高い宿泊施設が点在し、体験価値を求める旅行者向けの独自性ある市場を形成している。

さらに、湯の川温泉エリアでは温泉観光地としての独立したホテル群が広がり、シティー・リゾート市場と補完関係を築いており、空港アクセスの良さも背景に、観光需要の受け皿として重要な役割を担っている。

このように、函館市のシティー・リゾートホテルは「函館駅〜ベイエリア〜元町」を核とする観光動線中心型と、「湯の川温泉エリア」に広がるリゾート補完型という二層構造が特徴であり、都市観光と滞在型リゾートが共存する独自の分布形態を形成していると言えるだろう。

函館市のシティー・リゾートホテル、施設数の推移

リゾート型が牽引|観光需要回復で二極化が進む函館市場

函館市のシティー・リゾートホテル・施設数の推移には以下の傾向が見られた。

出典:メトロエンジンリサーチ

グラフから読み取れるように、函館市ではリゾートホテルの増加が顕著となっている。一方で、シティホテルは横ばい〜微減の安定推移を続けており、宿泊市場内での役割分担と需要の二極化が進んでいるようだ。

具体的には、シティホテルは2020年初時点で7施設からスタートした後、2021年に6施設へ減少し、2022年には5施設まで縮小。その後は2023〜2025年にかけて5施設前後で横ばい状態を維持している。

一方、リゾートホテルは2020年時点で6施設から始まり、観光需要回復と再整備の進展により2021〜2022年にかけて7〜8施設へ増加。その後も増勢が続き、2024年に9施設、2025年にはほぼ10施設に到達する水準まで拡大している。

考察

函館市のシティー・リゾートホテル市場は、量的競争から質的選別へシフトしているといえるだろう。特に、増加を主導しているリゾート型施設は、眺望やロケーションを重視した高付加価値型コンセプトが中心で、ベイエリアや函館山周辺の景観価値を最大限に活かした滞在型ホテルが急伸している点が特徴となっている。

一方、シティホテルの横ばい推移は、以下の要因が背景にあると推察される。

・ コロナ禍によるビジネス需要の縮小
・ 既存施設の統合・ブランド再編
・ ニーズが「滞在体験」へとシフトしている市場環境

結果として、函館市場は「都市型=安定供給」「リゾート型=成長ドライバー」という構造が顕著にうかがえる。
今後は、観光消費の価値向上や連泊需要取り込みが競争軸となり、リゾート型を中心とした高単価市場の構築が進む可能性が高く、また、ロケーション別に強みを持つ施設が増えているため、差別化・体験性・ブランド表現力が市場優位性を決めるポイントになるだろう。

函館市のシティー・リゾートホテル、部屋数の推移

総供給量の構造転換|リゾート型客室増加が市場全体を押し上げる

函館市のシティー・リゾートホテル・部屋数の推移には以下の傾向が見られた。

出典:メトロエンジンリサーチ

グラフから読み取れるように、客室数の動きは施設数の推移と同様に二極構造が顕著にうかがえる。
シティホテルは緩やかな減少から横ばいへと移行する一方、リゾートホテルは顕著な拡大基調を示し、総供給量の増加を主導している。

具体的には、シティホテルの部屋数は2020年時点で約1,150室からスタートし、2021〜2022年にかけて1,100室前後へ緩やかに減少、その後は、2023年以降1,080〜1,100室の範囲で安定推移しており、供給面ではほぼ横ばいの状態に入っている。

一方、リゾートホテルの部屋数は2020年時点で約720室であったが、2021年に750室→2022年には一気に950室へ増加。
さらに2024年には1,200室台へ到達し、2025年時点ではシティホテルを逆転する水準まで拡大している。

考察

函館市の宿泊供給構造は、「シティ型の安定」と「リゾート型の成長」という二層構造へ明確に移行している。
特にリゾートホテルの客室増加ペースは、単なる施設数増加ではなく、中〜大規模の新規建設や大規模改修による客室拡張が進んでいる点が特徴的だ。

背景としては以下が挙げられ、これらが単価上昇と滞在価値競争へ直結していると推察される。

・ 観光回復と連泊需要の増大
・ ベイエリア・函館山周辺など眺望価値の高い立地の強化
・ 体験型・高単価リゾートの市場拡大

一方で、シティホテルの供給横ばいは、出張需要の縮小や用途転換、ブランド再編による調整の影響が大きいと推測される。
結果として、従来のビジネス利用中心の構造から、観光主体かつ体験価値を核とした宿泊市場へ重心が移りつつあるのではないか。

今後も、「客室規模での差別化」「眺望・空間価値の競争」「観光動線との連動」が市場形成の中心となり、リゾート型の成長が函館宿泊市場全体の平均単価を押し上げる展開が見込まれるだろう。

函館市のシティー・リゾートホテル、稼働率の推移

急落からの回復と需要の再構築|リゾート型が牽引する回復基調

函館市のシティー・リゾートホテルの稼働率の推移を全国平均と比較して分析すると、以下のような傾向が見られた。

出典:メトロエンジンリサーチ

出典:メトロエンジンリサーチ

シティーホテル

シティホテルの稼働率は、全国平均と北海道平均の動きとほぼ連動しながら推移しており、2020年前半はコロナ禍の影響を強く受け、20%前後まで急落。2021年も変動幅の大きい状態が続き、25〜45%帯で推移した。

しかし、2022年以降は観光需要回復と出張機会の増加を背景に回復ペースが加速。2023年には60%前後の回復ラインまで上昇し、直近では全国平均と同水準の70%前後で推移し、繁忙期には75〜80%に迫る局面も見られ、底堅い推移が確認できる。

特徴的なのは、北海道平均と比較すると、旅行シーズンの山型ピークがより大きく、その変動幅が全国より顕著である点だ。
これは、観光目的の集中度が高い都市型市場の特色を示しているといえる。

リゾートホテル

リゾートホテルの稼働率は、シティホテルよりも大きな変動幅を示し、2020年〜2021年は、10〜20%台の低位で推移し、特に冬季には10%を下回る水準まで落ち込む局面が見られた。

一方で、回復局面への転換スピードはシティホテルよりも速く、2022年後半から2023年にかけて40〜60%台へ急回復。
さらに2024年以降は、全国平均を追い越す形で上昇し、60〜70%台の安定帯に到達、直近では繁忙期に75%を超える月も確認でき、完全な回復フェーズに入ったといえるのではないか。

特に、北海道全体よりも全国平均に近い動きを見せている点が注目され、函館が国内外観光の受け皿として独立した市場性を獲得しつつあることを示唆しているという見方もできる。

考察

稼働率の推移からは、函館市のシティー・リゾートホテル市場が「コロナ禍の急落 → 回復期 → 安定成長期」へと移行したことが読み取れる。

・ シティホテルは全国平均と同水準の回復と安定
・ リゾートホテルは需要回復のドライバーとして市場全体を牽引
・ 季節変動の強さが市場特性として継続
・ 連泊需要・高付加価値型滞在の増加が回復を後押し

特にリゾート型が全国平均を上回る水準で推移している点は、眺望・温泉・景観といった地域資源を活かしたブランド価値が強く作用していると考えられ、今後は、MICE誘致や夜景観光、クルーズ船需要、国際線の回復など外部要因の影響が重要であり、稼働率のさらなる上ぶれ余地が残されている。

函館市のシティー・リゾートホテル市場の今後の展望

観光資源の再価値化と体験競争の深化|“選ばれる滞在都市”への進化

データからは、函館市の宿泊市場が量的拡大から質的転換のフェーズへ確実に移行しつつある姿が浮かび上がっている。
施設数はリゾート型が成長を牽引し、客室供給は拡大基調へ転じた。稼働率はシティ・リゾート双方で力強く回復し、全国平均に並ぶ、あるいは上回るシーンも確認できた。

その裏側には、滞在目的の変化に合わせたホテルの再定義が進行しているのではないかと推察される。
単なる「宿泊場所」としての機能にとどまらず、夜景・港湾景観・歴史文化・温泉といった地域資源を体験として統合するホテルが増えており、ベイエリアや元町周辺におけるデザインホテルの増加、眺望を活かした高付加価値型リゾート、リニューアルによる価値創造など、供給は明確に“体験型競争”へとシフトし始めている兆しを感じることができる。

・ 国際線需要回復とクルーズ船寄港の増加
・ 夜間観光(ナイトタイムエコノミー)の強化
・ 観光DXと多言語対応の進展
・ 連泊需要を見越した滞在プログラムの整備

さらに、上記の外部環境の追い風が、函館市場の成長余地を大きく広げていく可能性が残されている。

展望

函館市のシティー・リゾートホテル市場は、“量の拡大”よりも“体験の質”を競うステージへ進みつつあるようだ。
海と夜景、歴史と文化、温泉と港町の情緒——これらの価値が再統合されることで、函館は“滞在そのものが旅の目的となる都市”へと深化していくのではないだろうか。

今後は、ホテルが都市体験のハブとなり、回遊性の高い観光動線、長期滞在、季節価値、ウェルネス、文化体験といった新しい需要を拡大、さらに供給の安定と需要の回復が重なることで、函館市場は持続的な成長局面に入り、国内外から“選ばれる滞在都市”としての存在感を強めていくことが期待される。



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