首都圏及び関西圏に続く、日本の経済圏の中心都市である愛知県名古屋市と福岡県福岡市。自動車などの工業都市の色彩が強い名古屋市とクルーズ船など海外からの訪日客も多い福岡市。性格が異なる両市のホテル展開について、メトロエンジンリサーチより比較分析した。
愛知県 v 福岡県 既存のホテル展開ードロー
まず、名古屋市が所在する愛知県と福岡市が所在する福岡県の県同士の既存の施設数・部屋数を比較したのが以下の値である。
・愛知県ー1,130施設、部屋数67,316室
・福岡県ー1,145施設、部屋数60,442室
施設数では福岡県が愛知県を僅差で上回り、部屋数では愛知県が福岡県を僅差で上回ったものの、いずれも拮抗した。
名古屋市 v 福岡市 既存のホテル展開ー福岡市に軍配
続いて、中京経済圏の中核都市であり、愛知県の県庁所在地でもある名古屋市と福岡空港や博多港が立地する「アジアの玄関」福岡市の既存の施設展開をしてみよう。
・名古屋市ー358施設、部屋数37,080室
・福岡市ー550施設、部屋数38,105室
施設数では福岡市が1.5倍以上の差をつけて名古屋市を圧倒、部屋数も福岡市が上回ったものの、名古屋市のホテルが比較的に大規模な施設が多いことから部屋数では僅差となった(名古屋市平均104室、福岡市平均69室)。
名古屋市ホテル展開マップは以下の通り。(緑青のサークルは既存の施設で大小は客室数規模を示す。紫色のハウスマークは新規開業予定。)
出典:メトロエンジンリサーチ
福岡市ホテル展開マップは以下の通り。
出典:メトロエンジンリサーチ
両市ともに中心部の名古屋市中区・中村区、福岡市博多区・中央区にホテル展開と新規開発が集中しているのがわかる。
両都市の性格の違いをより顕著に示すのが小規模施設の数である。
カテゴリー別で分析すると、ゲストハウスでは、名古屋市が10施設に過ぎないのに対して、福岡市は38。ホステルでは、福岡市が157施設と数多く展開しているのに対して、名古屋市では10施設となった。
さらに、民泊物件数でも、福岡市には民泊物件が910確認されたが、それに対して、名古屋市では231と福岡市の4分1ほどとなった。
一般的にビジネス客がゲストハウスやホステル、民泊に宿泊することはなく、多人数の訪日客が好んでこれらを使用するケースが多いことから、このような数値の差異が出ているものと考えられる。
名古屋市中区 v 福岡市博多区ー博多に軍配
さらに、両市の中心街の行政区である名古屋市中区と福岡市博多区におけるホテル展開を比較したのが以下の値である。
・名古屋市中区ー128施設、部屋数19,335室
・福岡市博多区ー313施設、部屋数24,194室
福岡市博多区が名古屋市中区を施設数で約2.5倍と圧倒した。部屋数でも福岡市博多区が名古屋市中区を上回ったが、部屋数は2割ほどの差にとどまった。このことから、名古屋市中区が大規模な施設の展開が多く、福岡市博多区にはより小規模な施設が多いことがわかり、その差は市全体より大きかった(名古屋市中区平均151室、福岡市博多区平均77室)。
新規開業予定では、福岡市博多区は12施設、部屋数にして1,909室で、名古屋市中区の9施設、部屋数1,447室をやや上回った。
リニアの開業を2027年に控える名古屋市ではさらに首都圏からの移動が便利になる。また、2037年には大阪までの全線開通が見込まれている。
他方で、工事計画が順調通りに進むかどうかは予断を許さず、計画いかんによって名古屋の都市計画にも大きな影響が出そうだ。
また、福岡市では地理的要因もあり韓国や中国、東南アジアとの結びつきが歴史的にも強く、観光客として多くの訪日客が空と海を経由して来訪しており、インバウンド需要の増加は福岡市のホテル開発を大きく後押ししている。
他方で、訪日韓国人が本年夏以降急激に減少していることから、今後の日韓関係の行方はインバウンドにより大きく依存する福岡市にとっては死活的な懸念材料と言えるだろう。
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