【2026年8月追記】「にごり湯の宿 湯守 木村屋」を経営していた木村屋旅館は2020年3月23日付で廃業した。その後2020年に沖縄県のホテル運営会社へ事業が譲渡され、2026年4月には引き継ぎ先による営業開始予定日が報じられたが、2026年8月時点で同屋号での宿泊営業再開は主要予約サイト上で確認できていない。経緯と現在の状況は記事後半の追記にまとめた。
1688(元禄元)年創業の温泉旅館、(株)木村屋旅館(宮城県白石市福岡蔵本字鎌先1-51、34室、設立1964年4月)が廃業した。鎌先温泉の老舗旅館「にごり湯の宿 湯守 木村屋」を経営。新型コロナ感染拡大を受け、外出自粛による宿泊客の著しい減少や先行きの見通し難から、事業継続を断念した。

出典:木村屋(楽天トラベル)
同社は3月23日付で廃業した。
鎌先温泉では唯一2本の本流温泉源泉を有し、源泉掛け流しの濁り湯の露天風呂をはじめ、7つの多彩な浴場を備えていた。当地区での知名度は高く、1990年代前半には年間売上高約4億5,000万円を計上していた。
しかし、2007年7月期には市況の低迷から売上高約2億9,000万円にとどまり、経費削減に努めるなど経営合理化を図ってきたが、2008年8月に約10億5,200万円の負債を抱え、仙台地裁へ民事再生法の適用を申請した。
2012年9月に民事再生手続が終結し、以降は東日本大震災後の被災地支援による特需から客足は堅調で、年間売上高は2億円台の半ば前後での推移が続いていた。
他方で、近年は震災特需の剥げ落ちなどで業績は低迷。また、新型コロナウイルス感染拡大を受け、外出自粛による宿泊客の著しい減少や先行きの見通し難から、事業継続を断念した。
TSRが報じた。
宮城県白石市では、メトロエンジンリサーチによると、宿泊施設が17、部屋数にして523室が提供されている。旅館が10施設と多く展開しているエリア。

出典:木村屋(楽天トラベル)
木村屋旅館が廃業した理由(2020年3月)
信用調査会社・東京商工リサーチ(TSR)の公表情報によると、(株)木村屋旅館が2020年3月23日付で廃業した直接の引き金は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛による宿泊客の著しい減少と、先行きの見通し難だった(出典:TSRデータインサイト)。
ただし、廃業はコロナ禍だけが原因ではなく、以下のような長期の構造要因が重なっていた。
- 売上の長期減少:1990年代前半に約4億5,000万円あった年間売上高は、2007年7月期には約2億9,000万円まで縮小
- 過去の民事再生:2008年8月、約10億5,200万円の負債を抱え仙台地裁へ民事再生法の適用を申請(2012年9月に手続終結)
- 震災特需の剥落:再生手続終結後は東日本大震災の被災地支援特需で年間売上高2億円台半ばを維持していたが、特需の剥げ落ちで近年は業績が低迷
TSRによれば、廃業時点では弁護士と協議中だったものの、債務処理に関する正式な委任はなされていなかったという。
その後 — 「にごり湯の宿 湯守 木村屋」の事業譲渡と現在の状況
廃業から約3カ月後の2020年6月7日、臨時株主総会で発行済み株式1万6,000株のうち1万5,000株を、沖縄県のホテル運営会社・南風見(はえみ)観光の斎藤工社長が取得した(出典:河北新報 2020年7月7日)。南風見観光は青森県十和田市の谷地温泉や沖縄県のホテル2施設を運営する事業者で、当時の報道では「9月にも日帰り利用での営業再開を目指す」とされていた。
その後の動きとして、河北新報は2026年4月27日、「1688年創業の温泉旅館を引き継ぐホテルの営業開始予定日が判明」と報道した。2026年4月時点でも旧木村屋旅館の施設は営業開始前で、引き継ぎ先による開業は「予定」段階にあったことになる(営業開始予定日の詳細は同紙の有料記事を参照)。
2026年8月時点で当サイトが確認した範囲では、楽天トラベルの旧施設ページは掲載を終了しており、白石市の公式観光サイト「しろいし旅カタログ」の宿泊・入浴施設一覧にも木村屋は掲載されていない。屋号「にごり湯の宿 湯守 木村屋」としての宿泊予約受け付けは主要OTA上で確認できなかった。事業譲渡から約6年を経て、鎌先温泉で唯一2本の自家源泉を持つ同施設の再開業が引き続き注目される。
鎌先温泉・白石市の宿泊市場への影響
木村屋旅館(34室・廃業時点)の離脱後、鎌先温泉で営業を続ける宿は限られている。白石市公式の宿泊施設一覧(2026年8月確認)には、鎌先温泉の宿として「THE YUKAWA 一條支店」「時音の宿 湯主一條」「最上屋旅館」「すゞきや旅館」「四季の宿 みちのく庵」の5施設が掲載されており、木村屋は含まれていない。
HotelBankが集計するOTA公開価格(1室2名利用・1室あたり・税込)によると、白石市の平均掲載料金は2026年8月時点で29,428円と、前年同月の24,999円から17.7%上昇した(観測施設数N=6、対象期間2025年8月〜2026年8月)。廃業を報じた2020年4月時点の白石市は17施設・523室だったのに対し、現在OTA上で価格を観測できる施設数は6にとどまり、供給が限られるなかで掲載単価は上昇傾向にある。旧木村屋旅館が再開業すれば、エリアの供給と価格形成に一定の影響を与える規模となる。
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