西九州新幹線の開業から4年が経った諫早駅の周辺で、2026年にスーパーホテル長崎・諫早天然温泉(152室・3月14日開業)とホテル&マンスリー諫早公園(64室・2月開業)の2軒が営業を始め、駅2km圏の客室ストックは926室から1,142室へと一年で23%増えた。メトロエンジンリサーチが集計する諫早市の推定成約ADRは2025年10月〜2026年9月の12か月平均で6,600円、月ごとの振れ幅は6,300〜7,300円に収まり、観光地型の長崎市(7,700〜12,500円)とは対照的に平らな値動きを示している。本稿では、新幹線開業後の駅前供給の推移、近隣2市との単価比較、駅周辺の就業・居住データ、地価・用途地域・洪水浸水想定、そして宿泊特化型150室の簡易GOP試算を通じて、増えた客室を受け止める需要の性格と、新規開発が成立する単価の線を読み解く。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
- OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。本稿では「稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)」と表記し、OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
- LT(リードタイム)=チェックイン日までの日数。ブッキングカーブは LT45→LT1 の範囲のみを用いる。
- 客室ストック(駅2km圏)=諫早駅(北緯32.8518・東経130.0430)から半径2km。営業中かつ客室数が確認できる施設を対象とした、名称が異なる同一施設は名寄せして集計した。開業年が確認できない9施設(129室)は2019年以前から営業する既存施設として扱い、各年の客室数には現在の客室数を当てはめているため増築は反映されない。
- GOP(営業総利益)=売上から運営に直接かかる費用(人件費・清掃・水道光熱・OTA手数料等)を差し引いた利益。本稿のGOP利回りは「GOP÷総投資額(建設費+用地費)」で、賃料・公租公課・保険・減価償却・金利を差し引く前の粗い指標である。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ(OTA掲載情報)、国土交通省 不動産情報ライブラリ・国土数値情報、総務省・経済産業省 経済センサス、観光庁、JR九州。
- — +216室・1,142室:諫早駅2km圏の客室ストックは2019年857室→2021年914室→2026年1,142室。新幹線開業直後ではなく、2021年と2026年の二段で増えた(施設マスター再集計・N=25施設)。
- — 推定成約ADR 6,623円・振れ幅1.16倍:2025年10月〜2026年9月の12か月平均。月次の変動係数は3.9%で長崎市(14.1%)のおよそ4分の1、前年同期比+1.7%と新規供給下でも崩れていない。
- — 平日85.5%・通常土曜57.5%:2026年9月のブッキングカーブ(LT1時点・OTA掲載在庫ベースの推定、対象15〜16施設)。工場・事業所への業務需要が主の「平日型」市場。
- — 駅前商業地7〜8万円/㎡・浸水0.5〜3.0m:150室級が建つのは容積率400%の商業地域に限られ、想定最大規模の浸水深を前提に客室を2階以上に置く設計が投資判断の条件になる。
- — GOP利回り3.9〜5.2%:宿泊特化型150室を推定成約6,623円±10%で試算。建設費上昇後に5%を確保するにはADR約7,600円が必要で、付帯価値で市中央値+1,000円を取れるかが成立の分かれ目。
駅2km圏の客室ストック — 2021年と2026年の二段階で857室から1,142室へ
まずは供給の推移を押さえたい。諫早駅から半径2km圏の客室ストックは、2019年末時点で21施設857室だった。2020年に駅前の45室が閉館して812室へ減ったあと、2021年3月に駅から約280mの位置にSHIN-HOTEL(102室)が開業して914室へ戻り、西九州新幹線が開業した2022年9月の前後では供給が動かず、2024年末まで914室のまま横ばいが続いた。2025年に小規模な2件(計12室)が加わって926室となり、2026年に152室と64室の2軒が開業して1,142室に達した。2019年からの7年で+285室(+33%)、うち2026年の一年だけで+216室(+23.3%)という二段階の階段が、このエリアの供給曲線の形である。
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース・施設マスターより再集計、2026年10月7日時点・N=25施設)
新幹線開業の直後に供給が増えなかった点は、郡山や長岡といった他の新幹線駅都市と比べても特徴的である(郡山の2027年2棟441室、長岡駅前の+435室については、それぞれ既存ストックに対する吸収力を別稿で検証している)。背景にあるのは、諫早が県都・長崎市(在来線の快速で約30分、西九州新幹線で約9分)と長崎空港のある大村市に挟まれた乗換駅の都市であり、観光客の宿泊地としては長崎市に、空港前泊の受け皿としては大村市に需要が流れやすい地理条件だろう。だからこそ、2026年の2軒が「温泉・朝食付きの宿泊特化型」と「全室キッチン付きの長期滞在型」という、観光客ではなく業務客に照準を合わせた業態で入ってきたことに意味がある。
ここで集計の中身を確認しておく。25施設1,142室のうち、直近3か月(2026年7月7日〜10月6日)に主要予約サイトで販売価格が観測されたホテルは16施設1,062室で、残りは長期滞在専用の別館(30室)、小規模な旅館7軒(計49室)、1室の簡易宿所である。以下の表はこの16施設を客室数順に並べ、駅からの距離と用途地域を付した。16施設のうち12施設が容積率400%の商業地域に立ち、駅から1km以内に12施設が集まる。
| 施設名 | 客室数 | 開業 | 駅からの距離 | 用途地域 |
|---|---|---|---|---|
| スーパーホテル長崎・諫早天然温泉 2026年開業 | 152 | 2026年3月 | 1,750m | 準工業地域(容積率200%) |
| SHIN-HOTEL | 102 | 2021年 | 279m | 商業地域(容積率400%) |
| ニューステーションホテルプレミア | 95 | 2008年 | 427m | 第2種住居地域(容積率200%) |
| 諫早グリーンホテル | 91 | 1983年 | 445m | 商業地域(容積率400%) |
| 諫早ターミナルホテル | 89 | 1978年 | 86m | 商業地域(容積率400%) |
| ホテルニューグローバル | 72 | 1991年 | 1,330m | 商業地域(容積率400%) |
| ニューステーションホテル | 72 | 2005年 | 294m | 商業地域(容積率400%) |
| 諫早シティーホテル | 70 | 1989年 | 1,537m | 商業地域(容積率400%) |
| ホテル&マンスリー諫早公園 2026年開業 | 64 | 2026年2月 | 723m | 商業地域(容積率400%) |
| ホテルフラッグス諫早 | 49 | 1928年 | 981m | 商業地域(容積率400%) |
| 諫早第一ホテル | 48 | — | 591m | 第1種住居地域(容積率200%) |
| ホテルグランドパレス諫早 | 42 | 1997年 | 673m | 第2種住居地域(容積率200%) |
| グローバルホテル | 41 | 1988年 | 141m | 商業地域(容積率400%) |
| ビジネスホテル大石 | 32 | — | 1,917m | 商業地域(容積率400%) |
| L&L ホテルセンリュウ | 32 | 1958年 | 69m | 商業地域(容積率400%) |
| 階 -HASHIGO- グローバルホテル離れ | 11 | 2025年11月 | 110m | 商業地域(容積率400%) |
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(直近3か月に販売観測のある16施設・1,062室)/用途地域は国土交通省 不動産情報ライブラリ。開業年「—」は登録情報で確認できない施設
2026年開業の2軒 — 温泉付き宿泊特化型と全室キッチン付き長期滞在型
次に、新規2軒の性格を見ていく。スーパーホテル長崎・諫早天然温泉は諫早市福田町282-1、島原鉄道・東諫早駅から徒歩約10分、諫早駅からは直線で約1.75kmの位置に2026年3月14日(土)に開業した152室の宿泊特化型ホテルである。運営会社の発表によれば、天然温泉「虹橋の湯」(入浴15時〜翌9時)、長崎のご当地メニューを並べた無料の健康朝食ビュッフェ、17〜21時のウェルカムバーを備え、広めのデスクを置いたエクストラルームや最大4名のハリウッドツインルームを用意している。立地は準工業地域(容積率200%)で、国土数値情報の洪水浸水想定区域(想定最大規模)の区域外にあたる。メトロエンジンリサーチの推定成約ADRを見ると、開業後の2026年4〜9月は7,200〜8,100円で推移し、同じ期間の諫早市中央値(6,400〜6,800円)を1,000円前後上回る価格帯で販売を続けている。温泉と朝食の付帯で市の標準より一段上の単価を取る、という設計が開業半年で機能しているといえる。
ホテル&マンスリー諫早公園は諫早市宇都町2-28、諫早駅から徒歩約12分(直線で約720m)、64室すべてがシングルタイプ(約23㎡)で、ミニキッチン・洗濯乾燥機・電子レンジを全室に備える長期滞在型である。公開されている施設情報では2026年2月の開業で、推定成約ADRは2026年5〜8月に6,000〜6,100円の狭い帯で安定し、9月に8,000円へ上がった。駐車場30台(1室1台無料)という仕様も含めて、車で現場へ通う技術者やプロジェクト要員の数週間〜数か月の滞在を受け止める商品設計であり、観光客向けではない。
2軒に共通するのは「平日の業務客」を主顧客に据えていることで、これは後述する諫早市の単価の安定性と、週末より平日のほうが埋まるブッキングカーブと整合する。
推定成約ADRの比較 — 諫早の振れ幅は長崎の4分の1
単価の水準と動き方を近隣2市と並べると、諫早市の市場の性格がはっきりする。2025年10月〜2026年9月の12か月で、諫早市の推定成約ADRは平均¥6,600、最安月¥6,300(2025年10月)、最高月¥7,300(2026年1月)で、最高月は最安月の1.16倍にとどまる。大村市は平均¥5,800(¥5,400〜¥6,100、1.12倍)とさらに低位で平らである。一方で長崎市は平均¥9,900に対し、長崎くんちの10月(11,600円)から紅葉・修学旅行期の11月には¥12,500まで上がり、梅雨の6月には¥7,700まで下がるため、最高月は最安月の1.62倍に達する。月次値の変動係数で見ると諫早市3.9%・大村市4.0%に対して長崎市は14.1%であり、諫早の振れ幅は長崎のおよそ4分の1といえる。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(算定対象16〜21施設/月。2026年10月以降は掲載スナップショットに基づく推定のため除外)
前年同月比で見ても諫早市は穏やかである。12か月平均は前年の同じ12か月(2024年10月〜2025年9月)の¥6,500から+1.7%、直近の2026年9月は前年同月比+4.0%で、新規2軒が加わった2026年春以降も中央値は崩れていない。大村市は+1.1%、長崎市は-8.4%(2026年3〜8月の6か月のうち5か月で前年を1,600〜2,300円下回ったことによる)である。なお、諫早市で掲載が観測された施設数は2025年10月の20軒から2026年9月には32軒へ、推定成約ADRの算定対象も17軒から21軒へ増えており、系列は同じ施設集合ではない。中央値ベースのため1〜2軒の出入りで水準が大きく動くことはないが、2026年の値には新規2軒を含む構成の変化が入っている点は読み手として織り込んでおきたい。県全体でも2026年は23軒・521室(2026年8月3日時点の集計)の新規開業が重なりながらビジネスホテルの推定成約ADRが前年を上回り続けており、その構図は長崎県の新規供給2026とビジネスホテル単価の分析で詳しく追っている。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(諫早市N=17〜21、大村市N=15〜16、長崎市N=62〜63施設/月)
この「平らな単価」は弱さではなく市場の型である。季節や曜日で価格を大きく振れる観光地型の長崎市に対し、諫早市は平日の出張・現場滞在が土台にあり、価格は年間を通じて6,300〜7,300円の帯に収まる。宿泊特化型の運営者にとっては、繁忙期の高値を取りにいくより、平日の稼働を高く保ち、連休や催事の限られた日に上乗せする運用が収益の中心になる市場だと読める。
需要の性格 — 就業1.7万人・居住3.9万人の商圏で、埋まるのは週末より平日
単価の安定性を需要側から確かめる。総務省・経済産業省の経済センサス(2021年活動調査)を国勢調査2020の小地域境界で切り出すと、諫早駅から半径1kmには742事業所・従業者6,449人、半径2kmには2,207事業所・従業者17,063人が集まる。ただし従業者のうち事務所系(オフィス勤務)の比率は1km圏で13.1%、2km圏で11.0%にとどまり、医療・小売・製造・運輸といった現場系の職場が大半を占める構成である。出張者の訪問先が「本社機能」ではなく「工場・事業所・病院」であることを示唆しており、経済産業省が2024年3月に整理した半導体関連の立地動向でも、諫早市のソニーセミコンダクタマニュファクチャリング長崎テクノロジーセンター(津久葉町)のCMOSイメージセンサー量産棟の増設が挙げられている。駅2km圏の外にあるこうした大規模事業所への通い滞在が、諫早駅周辺の平日需要の土台だと考えられる。
居住側では、国土交通省の国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)によると、駅2km圏の居住人口は2020年の40,123人から2025年には38,832人(170メッシュ)へ減り、2040年には33,399人(2020年比−16.8%)まで減少する推計である。生産年齢(15〜64歳)比率は56.4%、65歳以上は30.4%で、2020年時点では人口の約6割(23,632人)が駅の南側、本明川両岸の市街地に集まり、北側は約4割(16,470人)である。居住人口は宿泊需要の直接の源ではないが、冠婚葬祭や帰省といった地元発の需要が中長期で細ることは、業務需要への依存度がさらに高まることを意味する。
出典:国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
では、増えた客室は実際にどう埋まっているのか。メトロエンジンリサーチの固定コホート(総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する施設で構成)で諫早市のブッキングカーブを見ると、2026年9月16日(水)は対象15施設・784室でLT45時点の稼働率(推定)46.3%からLT1で85.5%まで埋まった。5連休初日の9月19日(土)はLT45時点ですでに70.9%、LT1で94.1%に達した一方、連休明けの通常の土曜日である9月26日は対象16施設・848室でLT45の44.7%から57.5%までしか上がらなかった。平日の85%に対して通常の土曜が58%という形は、観光地では見られない「平日が主、週末が従」の需要構造を端的に示している。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(対象15〜16施設/客室784〜848室、主要予約サイト掲載ベース。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります)
月単位で近隣2市と並べても、諫早市の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は2026年6月75.7%、7月75.7%、8月72.0%、9月73.4%(対象13〜14施設・969〜970室)と、夏の観光ピークで跳ねずに70%台前半〜半ばを保っている。長崎市は8月79.4%・9月79.0%(対象49〜53施設・3,474〜3,614室)と夏に向けて上がり、大村市は9月77.0%(対象10〜11施設・390〜506室)と空港前泊で秋に強い。観光庁の宿泊旅行統計調査では2026年7月の全国ビジネスホテル稼働率が74.2%(第1次速報)、長崎県の延べ宿泊者数は2026年6月に499,340人泊(前年同月比+0.6%、外国人比率10.6%)であり、諫早市の水準は全国のビジネスホテル平均と同じ帯にある。
| 月(2026年) | 諫早市 | 大村市 | 長崎市 |
|---|---|---|---|
| 6月 | 75.7% | 70.3% | 75.4% |
| 7月 | 75.7% | 76.1% | 76.4% |
| 8月 | 72.0% | 74.0% | 79.4% |
| 9月 | 73.4% | 77.0% | 79.0% |
| 対象(主要予約サイト掲載ベース) | 13〜14施設/969〜970室 | 10〜11施設/390〜506室 | 45〜53施設/3,420〜3,614室 |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値)
鉄道の利用も平日型の回復を裏づける。JR九州の駅別乗車人員によれば、諫早駅の1日平均乗車人員は2019年度の5,134人から2020年度に3,990人まで落ち込み、新幹線開業後の2022年度4,542人、2023年度4,845人を経て、2024年度には5,127人とコロナ前の水準(99.9%)へ戻った。西九州新幹線全体でも、JR九州の発表として報じられた開業3年目(2024年9月23日〜2025年9月22日)の利用者は262万4,000人・1日平均約7,200人で前年比103%と、開業特需のあとも微増が続いている。
立地評価 — 駅前商業地は7〜8万円/㎡、想定最大規模の浸水は0.5〜3.0m
開発用地としての条件を国土交通省のデータで確認する。令和8年の地価公示(1月1日時点)と都道府県地価調査(7月1日時点)のうち、諫早駅周辺の商業地は駅前の永昌町1571番(駅から1m)が70,900円/㎡(前年比+3.2%)、永昌東町105番8外(180m)が81,500円/㎡(+3.4%)、天満町234番2(600m)が73,600円/㎡(+2.6%)で、本町・栄町のアーケード側も69,000〜77,900円/㎡と、2km圏の商業地はほぼ7〜8万円/㎡の帯に収まる。住宅地は駅徒歩10分圏の永昌町・栄田町で47,100〜48,800円/㎡(+3.3〜3.8%)、半導体工場のある津久葉町の工業地は17,400円/㎡(+4.2%)である。駅前商業地(+1.2〜3.4%)より住宅地(+3.3〜3.8%)・工業地(+4.2%)の上昇率がやや高いのは、工場関連の雇用が住宅需要を押し上げている構図と読める。
| 地点(所在) | 区分 | 駅距離 | 価格(円/㎡) | 前年比 | 基準日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 永昌町1571番 | 商業地 | 1m | 70,900 | +3.2% | 令和8年7月1日(地価調査) |
| 永昌東町105番8外 | 商業地 | 180m | 81,500 | +3.4% | 令和8年7月1日(地価調査) |
| 天満町234番2 | 商業地 | 600m | 73,600 | +2.6% | 令和8年1月1日(地価公示) |
| 八坂町133番1外 | 商業地 | 2,000m | 77,900 | +2.6% | 令和8年7月1日(地価調査) |
| 栄町8番 | 商業地 | 2,000m | 76,000 | +1.2% | 令和8年1月1日(地価公示) |
| 東本町38番1外 | 商業地 | 1,900m | 69,000 | +1.8% | 令和8年1月1日(地価公示) |
| 永昌町467番1 | 住宅地 | 700m | 48,800 | +3.8% | 令和8年7月1日(地価調査) |
| 栄田町1323番34 | 住宅地 | 850m | 47,100 | +3.3% | 令和8年7月1日(地価調査) |
| 津久葉町1883番43 | 工業地 | (西諫早駅2,300m) | 17,400 | +4.2% | 令和8年1月1日(地価公示) |
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示・都道府県地価調査)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。駅距離は各地点の最寄駅からの道路距離
用途地域は、諫早駅の駅前から本明川左岸の中心市街地にかけてが商業地域(容積率400%・建蔽率80%)で、16施設中12施設がこの中に立つ。駅の北東側は第2種住居地域、南側の住宅地は第1種住居地域(いずれも容積率200%・建蔽率60%)で、スーパーホテルが立つ福田町は準工業地域(200%・60%)である。150室級の宿泊特化型を建てるには延床4,000㎡強が必要で、商業地域なら敷地1,100㎡程度、住居系の200%地域では2,100㎡程度が目安となり、駅前で成立するのは商業地域に限られる。
水害リスクは本明川の流域という地勢上、避けて通れない。国土数値情報の洪水浸水想定区域(想定最大規模、九州地方整備局・長崎県指定)を各施設の地点で照合すると、諫早駅と駅前商業地域の大半は浸水深0.5〜3.0m未満の区域に入り、本明川寄りの一部地点では3.0〜5.0m未満となる。16施設のうち8施設が0.5〜3.0m未満、1施設が3.0〜5.0m未満の区域内に立地し、残る7施設(スーパーホテルを含む)は区域外である。想定最大規模は年超過確率1/1000程度の降雨を前提とした最も厳しい想定であり、駅前立地を否定するものではないが、新築の計画では1階を駐車場・ロビーに充てて客室を2階以上に置く、受変電・非常用発電設備を上層階に配置する、といった設計上の対応が投資判断の前提になる。
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(直近3か月に販売観測のある16施設)
宿泊特化型150室の簡易GOP試算 — 推定成約6,623円±10%で利回り3.9〜5.2%
最後に、この市場で新たに宿泊特化型150室を建てた場合の採算を簡易に試算する。前提は、客室面積18㎡・客室部分比率65%で延床約4,150㎡(約1,257坪)、建築費は国土交通省の建築着工統計に基づく2025年の全構造平均217.4万円/坪・RC造202.6万円/坪を踏まえて坪200万円とし、建設費25.1億円(1室あたり約1,675万円)を置いた。さらに建設期間中の資材・労務費上昇をTurner & Townsendの予測(2026年+5.3%、2027年+5.0%)に沿って年5%で1.5年分織り込むと27.0億円になる。用地は駅前商業地域の81,500円/㎡で1,100㎡(0.9億円)とし、総投資額は26.0億円〜27.9億円である。売上は客室売上のみ(150室×ADR×稼働率(前提)75%×365日)、GOP率はインヴィンシブル投資法人が開示する運営91物件の実績38.9%(2024年12月期)を参考に、料飲部門の負担が小さい宿泊特化型である点を踏まえてやや高めの45%とした。稼働率(前提)75%は、諫早市の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)が掲載外の客室を消化済み側に数えるため高めに出ることを踏まえ、全国ビジネスホテル平均(74.2%)と同じ水準に置いたものである。
| シナリオ | ADR(税抜相当) | 稼働率 | 客室売上 | GOP(45%) | GOP利回り(現行建設費) | 同(建設費上昇後) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ADR −10% | ¥5,961 | 75% | 2.4億円 | 1.1億円 | 4.2% | 3.9% |
| ADR −10% | ¥5,961 | 70% | 2.3億円 | 1.0億円 | 3.9% | 3.7% |
| ADR 基準 | ¥6,623 | 75% | 2.7億円 | 1.2億円 | 4.7% | 4.4% |
| ADR 基準 | ¥6,623 | 70% | 2.5億円 | 1.1億円 | 4.4% | 4.1% |
| ADR +10% | ¥7,285 | 75% | 3.0億円 | 1.3億円 | 5.2% | 4.8% |
| ADR +10% | ¥7,285 | 70% | 2.8億円 | 1.3億円 | 4.8% | 4.5% |
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。建設費は国土交通省 建築着工統計(2025年)、インフレ率はTurner & Townsend、GOP率はインヴィンシブル投資法人 決算説明資料を参照。土地・建物の取得関連費用、FF&E、金利は含まない簡易試算
2軸感度 — GOP利回り5%を超えるのはADR+10%×稼働80%以上
上の表を稼働率の前提にも振って2軸に広げると、5%ラインの位置がはっきりする。建設費上昇後の総投資27.9億円を分母に、推定成約ADRを±20%、稼働率(前提)を65〜85%で動かしたのが次の表である。GOP利回りが5%を超えるのは「ADR+10%×稼働80%以上」と「ADR+20%×稼働75%以上」に限られ、市中央値のADRのままでは稼働85%でも4.97%と5%に届かない。単価1割の上積みは稼働約7.5ポイントの上積みと同じ効果を持つが、平日のLT1時点がすでに85%前後に達している業務需要型の市場で、年間を通じた稼働をさらに7〜8ポイント積むのは平日の上限に近く容易ではない。付帯価値による単価の上積みが採算を左右するという本文の読みは、2軸で見ても変わらない。
| ADR(税抜相当)\稼働率(前提) | 65% | 70% | 75% | 80% | 85% |
|---|---|---|---|---|---|
| ADR -20%(¥5,298) | 3.04% | 3.27% | 3.51% | 3.74% | 3.98% |
| ADR -10%(¥5,961) | 3.42% | 3.68% | 3.95% | 4.21% | 4.47% |
| ADR 基準(¥6,623) | 3.80% | 4.09% | 4.39% | 4.68% | 4.97% |
| ADR +10%(¥7,285) | 4.18% | 4.50% | 4.82% | 5.15% | 5.47% |
| ADR +20%(¥7,948) | 4.56% | 4.91% | 5.26% | 5.61% | 5.97% |
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(前提は上表と同じ)。緑=5.0%以上、赤=4.0%未満。土地・建物の取得関連費用、FF&E、金利は含まない簡易試算
結果を読むと、現在の市中央値6,600円・稼働75%ではGOP利回りが4.7%(建設費上昇後4.4%)、ADRが10%下がれば4.2%(同3.9%)、10%上がれば5.2%(同4.8%)という帯に収まる。これを逆算すると、建設費上昇後の総投資27.9億円に対してGOP利回り5%を確保するには推定成約ADRで約¥7,600、6%には約¥9,100(現行建設費なら約¥8,500)が必要になる。興味深いのは、2026年に開業したスーパーホテルの推定成約ADR(7,200〜8,100円)がちょうどこの5%ラインと6%ラインの間にあることで、温泉・朝食の付帯で市の標準より1,000円以上高い単価を取れるかどうかが、諫早で新築の宿泊特化型が成立するかの分かれ目だと試算は示している。既存ストックの中心価格帯(6,300〜7,300円)だけを前提にした新築は、現在の建設費のもとでは利回りが4%台にとどまるため、新規参入の追加余地は限定的であり、裏を返せば2026年の+216室を吸収したあとの既存施設にとって供給圧が緩い環境が続くとも読める。
埋まっている領域
6,000〜7,300円 × 40〜100室
駅前商業地域に12施設。平日の業務需要を分け合う中心帯で、新築の採算は4%台。
伸びしろ① 付帯価値で+1,000円
7,500〜8,500円 × 100〜150室
温泉・朝食・ラウンジの付帯で市中央値+15〜25%。新築が5〜6%に乗る帯で、2026年開業の152室が実証中。
伸びしろ② 長期滞在の受け皿
6,000〜6,500円 × 50〜70室・キッチン付き
工場・事業所への通い滞在を週〜月単位で確保。清掃・人件費を抑えたGOP率の高い運営が成立する帯。
まとめ — 業務需要型の乗換駅都市で、+216室はどう受け止められるか
ここまでを整理すると、諫早駅2km圏の客室ストックは2019年の857室から2026年の1,142室へ+33%、うち2026年だけで+216室(+23.3%)という大きな一段を踏んだ。その受け皿となる需要は、半径2kmに1.7万人の従業者を抱え、さらに圏外の半導体工場などへ通う平日の業務客が主体で、推定成約ADRは12か月を通じて6,300〜7,300円の狭い帯に収まり、前年同期比でも+1.7%と新規供給を受けながら崩れていない。ブッキングカーブは平日85%・5連休初日94%に対して通常の土曜58%と、観光地とは逆の形を描く。
運営者にとっての示唆は三つある。第一に、この市場では繁忙期の高値よりも平日の稼働を厚く保つ運用が収益の軸になり、連休・くんち・修学旅行期といった限られた日に上乗せを乗せる設計が有効といえる。第二に、新規2軒が示したように、温泉・朝食・キッチンといった付帯で市の中央値より1,000円上の帯を取ることが、既存ストックとの正面衝突を避けながら単価を伸ばす現実的な道になる。第三に、新築の宿泊特化型は現在の建設費では推定成約ADR8,500〜9,000円が成立ラインで、既存の中心価格帯では利回りが4%台にとどまるため、追加供給の圧力は当面緩く、2026年の+216室を吸収する時間は十分にあると見てよい。諫早駅は長崎市と大村市の間に立つ乗換駅であり続けるが、駅前の商業地域と工場群に支えられた平日需要が、この都市のホテル市場に長崎市とは別の、振れ幅の小さい安定した収益の形を与えている。
あわせて読みたい
- 長崎ホテル投資マップ2026 — 市町ADR3.2倍差、用地費は総投資の3.8〜9.2%
- 長崎のホテル相場2026 — 20市町の推定成約ADRを3層で比較
- 長崎くんち直前、中日10/8はビジネス推定OCC 88.8% — 3夜の埋まり方と在庫設計
- 長岡駅前のホテル客室+435室は吸収できるか — ADR+9.8%・平日稼働9割の受け皿余地を検証
- 郡山のホテル、2027年に2棟441室増 — 客室ストック+11.6%の吸収力
- 駅から100mでホテル単価-2.7% — 効くのは大都市だけ、全国4,089軒の距離勾配
- 長崎県の新規供給は2026年23軒・521室で前年の2.6倍 — それでもビジネスホテルの推定成約ADRは確定7ヶ月連続で前年超
- ホテル単価が県都を上回る第2都市は5市 — 浜松+29%・松本+20%、16市の供給密度2026
参考資料・出典一覧
■ データソース
客室ストックはメトロエンジンリサーチの施設マスター(諫早駅から半径2km・44登録行)を閉館除外・客室数0除外・同一施設の重複登録統合で再集計した25施設1,142室。推定成約ADRは諫早市・大村市・長崎市の月次エリア中央値(2名1室・税抜相当、2025年10月〜2026年9月の確定月)。稼働率とブッキングカーブは総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する施設の固定コホートによるOTA掲載在庫ベースの推定。需要側は経済センサス-活動調査(2021年)と国土数値情報の250mメッシュ将来推計人口、立地は不動産情報ライブラリの地価公示・地価調査(令和8年)・用途地域・洪水浸水想定区域(想定最大規模)。
■ 試算前提
宿泊特化型150室・客室18㎡・客室部分比率65%で延床約4,150㎡(約1,257坪)。建築費は坪200万円(建築着工統計2025年の全構造平均217.4万円・RC造202.6万円を参照)で25.1億円、建設期間1.5年に年5%の上昇を織り込むと27.0億円。用地は商業地81,500円/㎡×1,100㎡で0.9億円。売上は客室売上のみ(稼働率(前提)75%×365日)、GOP率45%。感度はADR±10%(2軸表は±20%)と稼働率(前提)65〜85%。
■ 限界・留意点
推定成約ADRはOTA公開価格からの推定で、REIT開示実績との誤差中央値は約7%。月ごとの算定対象施設は17〜21軒で、2026年の値には新規2軒を含む構成の変化が入る。客室ストックは各年に現在の客室数を当てはめるため増築は反映されず、開業年不明の9施設(129室)は既存扱い。稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は掲載外の客室を消化済み側に数えるため実稼働より高めに出る。GOP試算は付帯売上・FF&E・取得関連費用・金利・公租公課を含まない粗利回りで、投資判断には個別の事業計画による検証が必要。
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 客室ストック(施設マスター再集計・N=25施設)、推定成約ADR(諫早市N=17〜21、大村市N=15〜16、長崎市N=62〜63施設/月)、稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)、ブッキングカーブ(対象15〜16施設)
■ 政府統計・公的データ
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ — 地価公示・都道府県地価調査(令和8年)、用途地域、洪水浸水想定区域(想定最大規模)
- 国土交通省 国土数値情報 — 250mメッシュ別将来推計人口(R6国政局推計)、洪水浸水想定区域データ
- 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査(2021年)」 — 小地域別の事業所数・従業者数(境界は国勢調査2020)
- 観光庁「宿泊旅行統計調査(2026年7月・第1次速報、2026年6月・第2次速報)」(2026年8月31日公表)
- 国土交通省「建築着工統計調査」 — 2025年 構造別坪単価
- 経済産業省「半導体関連の立地動向」資料(2024年3月) — ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング長崎テクノロジーセンターの量産棟増設
- 九州旅客鉄道「駅別乗車人員上位300駅(2024年度)」 — 諫早駅の1日平均乗車人員
■ REIT・業界レポート
- インヴィンシブル投資法人「2024年12月期 決算説明資料」 — 運営91物件のGOP率38.9%
- リロホテルソリューションズ「ホテルのGOPとは」 — 業態別GOP率の傾向
- Turner & Townsend 建設コスト予測 — 日本の建設費上昇率見通し
■ ニュース・プレスリリース
