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ホテル客室稼働率、2026年7月は全国60.8% — OTA在庫ベース83.5%との差22.7ptを4要因で分解

投稿日 : 2026.09.29

東京都

福岡県

ホテル客室稼働率、2026年7月は全国60.8% — OTA在庫ベース83.5%との差22.7ptを4要因で分解

ホテルの客室稼働率は、2026年7月に全国60.8%だった(観光庁「宿泊旅行統計調査」第1次速報)。同じ7月を、メトロエンジンリサーチがOTA等の掲載在庫の消化状況から推定すると、全国で83.5%になる。差は22.7ポイントあるが、どちらかが誤っているわけではない。数え方が違い、答えている問いも違う。本稿では、この差を「母集団」「分母」「人手の制約による販売客室の絞り込み」「OTA以外の販売」の4つに分解し、予算策定と日々の在庫判断でどちらの数字を使うべきかを整理する。

本記事における指標の定義

  • 客室稼働率(観光庁):観光庁「宿泊旅行統計調査」の公表値。利用客室数を施設の客室数で割った値で、旅館・リゾートホテル・ビジネスホテル・シティホテル・簡易宿所・会社団体の宿泊所を含む全施設タイプが対象です。2026年7月分は第1次速報値です。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。本記事では「稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)」と表記します。算出式は「100 − 100 × OTA掲載残室数 ÷ 総客室数」で、OTAに掲載されていない客室は販売済み側に数えます。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なり、実稼働率より高めに出ます。
  • 集計対象:総客室数の30%以上をOTA等に掲載している施設で構成した固定の施設集合(宿泊日ごとに同じ施設)。対象施設数と客室数は各表・各図に併記します。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ、観光庁「宿泊旅行統計調査」
Key Takeaways
  • — 60.8%と83.5%:2026年7月の客室稼働率は観光庁(第1次速報)で全国60.8%、OTA掲載在庫ベースの推定(11,938施設)で83.5%。差は22.7ポイント。
  • — 業態で差が違う:ビジネスホテルは+11.0ポイント、旅館は+36.5ポイント。業態をそろえても差は消えない。
  • — 4要因:母集団、掲載外の客室を消化済みとみなす分子の定義、人員に合わせた販売見合わせ、OTA以外の販売枠の売れ残り。
  • — 地域差は+12.3〜+46.2ポイント:2026年6月の47都道府県比較では、観光庁の値が低い県ほど差が大きい(相関係数−0.8)。
  • — 使い分け:予算・投資の稼働前提には観光庁の統計値、日々の在庫判断にはOTA掲載在庫ベースの相対変化を使う。

2026年7月の客室稼働率 — 観光庁の公表値

観光庁は2026年8月31日、宿泊旅行統計調査の2026年7月分(第1次速報)を公表した。客室稼働率は全体で60.8%で、前年同月比は0.4ポイント低下、前月(6月・第2次速報57.2%)からは3.6ポイント上昇している。延べ宿泊者数は5,467万人泊(前年同月比−3.5%)で、うち外国人は1,358万人泊(同−4.6%)だった。

施設タイプ別では、ビジネスホテルが74.2%で最も高く、シティホテルが71.9%で続く。リゾートホテルは59.6%、旅館は40.6%、簡易宿所は30.9%、会社・団体の宿泊所は32.7%である。都道府県別の値は第1次速報では公表されず、9月30日公表予定の第2次速報で示される。直近の6月分(第2次速報)では、東京都が75.4%で全国で最も高く、福岡県は70.3%だった。なお観光庁は、2026年1月分から標本設計の層化基準を「従業者数」から「客室数」に変更しており、前年同月比には見直しの影響が含まれうると注記している。

表1 施設タイプ別の客室稼働率(観光庁、2026年7月・第1次速報)
施設タイプ 客室稼働率(2026年7月) 利用客室数
全体60.8%31,930,050室
ビジネスホテル74.2%16,640,130室
シティホテル71.9%4,852,300室
リゾートホテル59.6%3,192,420室
旅館40.6%3,281,170室
会社・団体の宿泊所32.7%288,220室
簡易宿所30.9%1,311,890室

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2026年7月・第1次速報(集計結果 第3表・第5表)。利用客室数の全体には施設タイプ不詳を含む

同じ7月、OTA掲載在庫ベースの稼働率は83.5%

メトロエンジンリサーチの稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)で同じ2026年7月を見ると、全国(47都道府県の日次残室を合算)は83.5%だった。対象は11,938施設/761,558室(主要予約サイト掲載ベース)である。業態別に並べると、ビジネスホテル85.2%(3,719施設/448,539室)、シティホテル84.9%(421施設/77,004室)、リゾートホテル81.9%(857施設/69,131室)、旅館77.1%(3,300施設/93,823室)となった。

観光庁の公表値と並べると、差はビジネスホテルで11.0ポイント、シティホテルで13.0ポイント、リゾートホテルで22.3ポイント、旅館で36.5ポイントになる。全体では22.7ポイントの差である。業態によって差の幅が大きく違う点が、この先の分解の手がかりになる。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2026年7月・第1次速報/メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(全国11,938施設/761,558室、主要予約サイト掲載ベース・推定)

エリア別でも傾向は同じだ。観光庁の都道府県別値は7月分が未公表のため、6月分(第2次速報)で同じ月同士を比べると、東京都は観光庁75.4%に対し、OTA掲載在庫ベースは90.5%(780施設/103,314室)で、差は15.1ポイント。福岡県は観光庁70.3%に対し87.8%(381施設/28,992室)で、差は17.5ポイントだった。7月のOTA掲載在庫ベースは東京都91.1%(804施設/104,099室)、福岡県88.4%(380施設/28,979室)である。

表2 観光庁の客室稼働率とOTA掲載在庫ベース稼働率(推定)の比較
区分(2026年7月) 観光庁 客室稼働率 OTA掲載在庫ベース(推定) 差 推定の対象
全国・全体60.8%83.5%+22.7pt11,938施設/761,558室
全国・ビジネスホテル74.2%85.2%+11.0pt3,719施設/448,539室
全国・シティホテル71.9%84.9%+13.0pt421施設/77,004室
全国・リゾートホテル59.6%81.9%+22.3pt857施設/69,131室
全国・旅館40.6%77.1%+36.5pt3,300施設/93,823室
東京都・全体(2026年6月)75.4%90.5%+15.1pt780施設/103,314室
福岡県・全体(2026年6月)70.3%87.8%+17.5pt381施設/28,992室

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2026年7月・第1次速報/メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(OTA掲載在庫ベース・推定、主要予約サイト掲載ベース。全国値は47都道府県の日次残室合算による当社集計。東京都・福岡県は観光庁の都道府県別値が7月分未公表のため、2026年6月・第2次速報とOTA掲載在庫ベースの6月値で比較)

47都道府県で見ると — 公式値が低い県ほど差が広がる(2026年6月)

東京都・福岡県の2県だけでは、差の大きさが地域でどう違うかは分からない。観光庁の都道府県別値が出ている直近月の2026年6月(第2次速報)で、47都道府県すべてを同じ月同士で比べた。OTA掲載在庫ベースは全国で81.2%(12,041施設/762,484室)、観光庁は57.2%で、差は24.0ポイントだった。都道府県別の差は、最も小さい大阪府の+12.3ポイントから、最も大きい長野県の+46.2ポイントまで開き、中央値は+26.3ポイントである。

目立つのは、観光庁の値が低い県ほど差が大きいことだ。観光庁の稼働率と差の相関係数は−0.8で、観光庁の値は34.7%(長野県)〜75.4%(東京都)と40.7ポイントの幅があるのに対し、OTA掲載在庫ベースは63.0%(鹿児島県)〜90.5%(東京都)の27.5ポイントに収まる。OTA掲載在庫ベースは、掲載外の客室や販売を見合わせた客室を「消化済み」に数えるため、実稼働の低い地域ほど水準を持ち上げ、地域差を縮めて見せる。地域間の比較でも、この指標は順位や変化の方向を見るのに使い、水準の差をそのまま読まないほうがよい。

表3 観光庁とOTA掲載在庫ベースの差が小さい5府県・大きい5県(2026年6月)
都道府県 観光庁 客室稼働率 OTA掲載在庫ベース(推定) 差 推定の対象
大阪府65.3%77.6%+12.3pt405施設/59,272室
富山県57.2%71.8%+14.6pt101施設/7,299室
東京都75.4%90.5%+15.1pt780施設/103,314室
神奈川県64.4%80.2%+15.8pt390施設/30,735室
福岡県70.3%87.8%+17.5pt381施設/28,992室
(中略・差の中央値 +26.3pt)
長野県34.7%80.9%+46.2pt502施設/18,467室
新潟県42.5%82.9%+40.4pt231施設/10,755室
山梨県37.1%74.3%+37.2pt260施設/8,692室
福井県47.0%79.3%+32.3pt135施設/4,902室
福島県50.8%83.0%+32.2pt217施設/11,521室

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2026年6月・第2次速報(都道府県別宿泊施設タイプ別客室稼働率)/メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(OTA掲載在庫ベース・推定、主要予約サイト掲載ベース、2026年6月)

乖離の要因1:母集団の違い — 統計は全施設、推定はOTA掲載施設

1つ目の違いは、そもそも数えている施設の集合である。観光庁の調査は、2026年1月1日時点の宿泊施設を母集団として拡大推計しており、OTA等にほとんど掲載していない旅館・簡易宿所・会社団体の宿泊所も含む。7月分の公表値から逆算すると(利用客室数÷客室稼働率÷31日、当社試算)、統計が対象とする客室は1日あたり約169万室になる。施設タイプが分かる分のうち、旅館が約16.9%、簡易宿所が約8.9%、会社・団体の宿泊所が約1.8%を占める。稼働率が30〜41%台のこの3タイプが、全体の60.8%を押し下げている。

一方、OTA掲載在庫ベースの推定は、総客室数の30%以上をOTA等に掲載している施設に絞っている。この条件を満たして7月の集計に入ったのは、全国で11,938施設/761,558室、東京都で804施設/104,099室である。OTAでの販売比重が高い施設ほど集計に入りやすく、OTAを使わずに満室にできる人気施設や、逆に販売にOTAをほとんど使わない小規模施設は入りにくい。

ただし、母集団の違いだけでは全体の差を説明しきれない。前節の表のとおり、ビジネスホテル同士で比べても11.0ポイント、旅館同士では36.5ポイントの差が残る。業態の構成比をそろえても差が消えないということは、次に見る「分母」の違いがより大きく効いていると考えられる。

乖離の要因2:分母の違い — 総客室数と、OTAに出ている客室

観光庁の客室稼働率は「実際に利用された客室」を「施設の客室数」で割る。OTA掲載在庫ベースの推定は、「総客室数からOTA上の残室を引いたもの」を総客室数で割る。分母はどちらも総客室数だが、分子の意味が違う。推定のほうは、OTAに残っていない客室をすべて「消化済み」とみなす。実際に売れた客室だけでなく、OTAに最初から出していない客室や、途中で掲載を取り下げた客室も分子に入る。

数値例で確認する。以下は説明用の仮設例で、特定の施設の実績ではない。100室のホテルがある宿泊日に、OTA等に50室を掲載して40室を販売し、残りは10室だったとする。直販・団体・法人契約向けに30室を確保して20室を販売し、残る20室は人員配置の都合で販売を見合わせたとする。このとき実際の稼働率は(40+20)÷100で60%だ。一方、OTA上の残室は10室なので、OTA掲載在庫ベースは100−10で90%になる。差の30ポイントは、販売を見合わせた20室(20ポイント)と、OTA以外で確保して売れ残った10室(10ポイント)でちょうど説明できる。

出典:ホテルバンク編集部作成(100室の仮設例。数値は説明用)

この関係は一般化できる。OTAに出していない客室(直販・団体・法人の枠と、販売を見合わせた客室の合計)が総客室に占める割合を「OTA外の比率」、そのうち実際には使われなかった割合を「OTA外の未利用率」とすると、2つの指標の差はおおむね「OTA外の比率×OTA外の未利用率」になる。上の仮設例は、OTA外の比率50%・未利用率60%で差30ポイントのケースにあたる(表中の太字)。

表4 差の感度(OTA外の比率×OTA外の未利用率、仮設計算)
OTA外の比率 \ 未利用率 10%20%40%60%
10%+1pt+2pt+4pt+6pt
20%+2pt+4pt+8pt+12pt
30%+3pt+6pt+12pt+18pt
50%+5pt+10pt+20pt+30pt
70%+7pt+14pt+28pt+42pt

出典:ホテルバンク編集部作成(仮設計算。OTA掲載分の残室はOTA上に表れるため差に含めない)

表の読み方の例として、ビジネスホテルの実測差11.0ポイントは「OTA外30%・未利用率40%」(12ポイント)前後、旅館の36.5ポイントは「OTA外70%・未利用率60%」(42ポイント)と「OTA外50%・未利用率60%」(30ポイント)の間の組み合わせに相当する。実際の比率は施設ごとに異なり、この表から個別施設の配分を逆算することはできないが、差が数ポイントの業態と30ポイントを超える業態が並ぶことは、この掛け算の構造で説明がつく。

この構造から、2つのことが言える。第一に、OTA掲載在庫ベースの推定は、実稼働率を下回ることはほぼなく、構造的に高めに出る。第二に、差の大きさは「OTAに出していない客室がどれだけあり、それがどれだけ売れ残ったか」で決まる。旅館で差が36.5ポイントと大きいのは、団体・旅行会社経由の販売比重や、日によって販売する部屋数を調整する運用が、ビジネスホテルより一般的なためと考えられる。

乖離の要因3:人員配置に合わせた販売客室の絞り込み

3つ目は、清掃・接客の人員に合わせて販売する客室数を絞る運用である。営業はしていても、清掃が間に合う範囲にとどめるため一部の客室をOTA等に出さない、いわゆる部屋止めだ。統計ではこうした客室は分母に残ったまま「未利用」になり、稼働率を下げる方向に働く。OTA掲載在庫ベースではOTA上の残室に現れないため「消化済み」とみなされ、推定を上げる方向に働く。同じ運用が、2つの指標を逆方向に動かすわけだ。

帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」では、旅館・ホテルの非正社員で人手不足を感じている企業の割合は38.5%となり、2022年2月以来4年2カ月ぶりに3割台へ下がった。改善は進んでいるが、調査全体の非正社員の割合(2026年7月調査で28.8%)と比べるとなお高めの水準にあり、販売客室を人員に合わせて調整する運用は、とくに旅館やリゾートで当面残るとみられる。業態別の差が旅館・リゾートで大きく、ビジネスホテルで小さいという並びは、この運用の広がりの違いとも整合する。宿泊業の人手と客室生産性の関係は宿泊業の人手不足感38.5%まで低下、生産性は全産業比79.6%で詳しく扱っている。

乖離の要因4:OTA以外の販売 — 直販・団体・法人契約

4つ目は、公式サイト直販、旅行会社・団体、法人契約といったOTA以外の販売枠である。集計対象は総客室の30%以上をOTA等に掲載する施設だが、裏を返せば、最大で7割の客室がOTA以外に配分されていても集計に入る。OTA以外の枠が満室になれば両指標とも上がるが、売れ残った場合は統計では未利用、OTA掲載在庫ベースでは消化済みとして扱われる。数値例の10ポイント分がこれにあたる。

OTA以外の枠の配分は、施設ごとの販売戦略そのものである。法人契約の多い都心のビジネスホテル、団体比重の高い観光地の旅館、公式サイトでの会員販売を伸ばしているホテルなど、配分は施設によって大きく違う。そのためOTA掲載在庫ベースの数値は、個別の施設に当てはめると誤差が大きくなる。同じ「在庫データ由来の指標と成約実態のずれ」は価格側にもあり、掲載価格÷成約単価は1.7〜2.9倍で都道府県別に整理した。本稿がこの指標を都道府県・全国単位でのみ示しているのはそのためだ。エリアで集計すれば、施設ごとの配分の違いはある程度ならされる。

月平均では見えない日次の振れ — 東京都の7月

OTA掲載在庫ベースの推定が得意なのは、水準そのものより日ごとの動きをとらえることだ。東京都(804施設/104,099室、主要予約サイト掲載ベース)の7月を日次で見ると、最も高かったのは7月4日(土)の96.8%、最も低かったのは海の日の7月20日(月)の82.2%で、14.6ポイントの幅があった。曜日別の平均では、土曜95.1%、木曜93.0%に対し、月曜は86.5%、日曜は88.8%である。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(東京都804施設/104,099室、主要予約サイト掲載ベース・推定)/参照線は観光庁「宿泊旅行統計調査」2026年6月・第2次速報の東京都値

観光庁の月次統計は、月全体の利用客室数を集計した値なので、こうした日ごとの濃淡は表に出ない。しかも公表は翌月末の第1次速報まで待つ必要がある。一方、OTA掲載在庫ベースは宿泊日の前から毎日観測でき、週末と連休明けの差、特定日の急な消化といった変化をすぐにつかめる。水準は実稼働率より高めに出るが、日と日、週と週の相対比較には使いやすい。

どちらが正しいかではなく、用途が違う

ここまでの分解をまとめると、2つの数字は互いの誤りを示しているのではなく、別の問いに答えている。観光庁の客室稼働率は「エリアや業態の客室が、実際にどれだけ使われたか」を全施設ベースで示す。OTA掲載在庫ベースの推定は「OTA上に出ている在庫が、どれだけ早く、どれだけ消化されているか」を示す。用途に応じて使い分けるのが実務的である。

表5 2つの稼働率の使い分け
観点 観光庁 客室稼働率 OTA掲載在庫ベース稼働率(推定)
対象全施設タイプ・全客室(拡大推計)OTA等に総客室の30%以上を掲載する施設
分子実際に利用された客室総客室数−OTA上の残室(掲載外の客室を含む)
水準実稼働に近い実稼働率より高めに出る
粒度・鮮度月次・翌月末に第1次速報日次・宿泊日前から毎日
向いている用途年間予算・事業計画、投資判断の稼働前提、前年比の検証日々の在庫判断、価格改定のタイミング、曜日・イベント日の需要比較
使うときの注意速報値は改定されうる。2026年から層化基準変更絶対水準を実稼働率として読まない。エリア単位で使う

出典:ホテルバンク編集部作成

予算策定や投資の稼働前提には、全施設ベースで実稼働に近い観光庁の統計値を使うのが適している。たとえば東京都のビジネスホテルの予算を立てるなら、OTA掲載在庫ベースの90%台ではなく、統計の水準を出発点にするほうが、売上計画が実態から離れにくい。速報値の改定幅については宿泊旅行統計調査の速報値はどれだけ改定されるかで検証している。

一方、日々の在庫判断には在庫消化の速さを示すOTA掲載在庫ベースの指標が向いている。エリアの消化率が前週より早く上がっていれば、自施設の価格を据え置く・引き上げる余地があるサインになる。先の日程の消化の進み方をリードタイム別に追う方法は、長野の三連休、最終日の推定OCCは69.1%で具体例を示した。絶対水準ではなく、前週比・前日比・曜日間の差といった相対的な変化で読むのがこの指標の生かし方である。

よくある質問

Q. 客室稼働率と定員稼働率はどう違うのか。
客室稼働率は客室単位、定員稼働率は宿泊者の人数単位で見た稼働率である。観光庁は両方を公表しており、本稿で扱ったのは客室稼働率だ。

Q. OTA掲載在庫ベースの稼働率を自施設の実稼働率と比べてよいか。
そのまま比べるのは避けたい。掲載外の客室を消化済みとみなすため、エリアの数値は実稼働率より高めに出る。自施設との比較は、同じ定義で自施設のOTA在庫の消化状況を計算し、前週比や曜日差などの動きで比べるのがよい。

Q. 7月の差22.7ポイントは毎月同じか。
同じではない。差はOTA以外の販売枠の売れ残りと販売見合わせ客室の量で決まるため、団体需要や人員配置の季節変動によって月ごとに変わる。本稿の数値は2026年7月時点のものである。

まとめ

2026年7月の客室稼働率は、観光庁の公表値で全国60.8%、ビジネスホテル74.2%だった(都道府県別は6月・第2次速報で東京都75.4%、福岡県70.3%)。同じ7月のOTA掲載在庫ベースの推定は、全国83.5%、ビジネスホテル85.2%、東京都91.1%、福岡県88.4%である。差は、(1)全施設かOTA掲載施設かという母集団、(2)掲載外の客室を消化済みとみなす分子の定義、(3)人員に合わせて販売を見合わせる客室、(4)OTA以外の販売枠の売れ残り、の4つで説明できる。業態同士でも差が残り、旅館・リゾートで大きいことから、(2)〜(4)の影響が大きいと考えられる。

どちらが正しいかではなく、用途が違う。予算策定や投資判断の稼働前提には観光庁の統計値、日々の在庫判断や値付けのタイミングには在庫消化の動きを示すOTA掲載在庫ベースの指標、という使い分けが実務では扱いやすい。後者は実稼働率より高めに出る推定値であることを前提に、相対的な変化として読むのがよい。

注記:本記事の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は、OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。OTAに掲載されていない客室を消化済みとみなすため、実稼働率より高く出ます。観光庁の2026年7月分は第1次速報値であり、第2次速報・確定値で改定される場合があります。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

観光庁「宿泊旅行統計調査」2026年7月・第1次速報(全国・施設タイプ別)および2026年6月・第2次速報(都道府県別)。メトロエンジンリサーチの稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は、主要予約サイトの日次残室を宿泊日ごとに観測し、47都道府県ごとに集計した値を合算した。

■ 試算前提

OTA掲載在庫ベース稼働率=100−100×OTA掲載残室数÷総客室数。集計対象は総客室数の30%以上をOTA等に掲載する施設の固定集合。全国値は都道府県別の日次残室と総客室数を合算して算出(2026年7月:11,938施設/761,558室、2026年6月:12,041施設/762,484室)。統計側の1日あたり客室数は「利用客室数÷客室稼働率÷31日」による当社試算。感度表は「OTA外の比率×OTA外の未利用率」による仮設計算。

■ 限界・留意点

2026年7月の観光庁値は第1次速報で、2026年9月30日公表予定の第2次速報で改定されうる。都道府県別の7月値は未公表のため、地域比較は6月値で行った。OTA掲載在庫ベースは掲載外の客室を消化済みとみなすため実稼働率より高く出る推定値で、個別施設の実稼働率の代替にはならない。対象施設数が少ない県・業態の値は振れやすい。

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