浅草や押上にほど近い東京・墨田区本所で、一般賃貸では活用が難しかった90平米のメゾネットが、インバウンド向けのアパートメントホテル『間-HAZAMA-』として再生された。手がけたのは、ホテルやシェアハウスの企画・運営を行う株式会社Livmo。
収益性を求めて客室を詰め込むのではなく、定員をあえて6名に絞り、和モダンの設えとゆとりある滞在体験を設計した。建物の資産価値を高めながら、歴史ある下町の魅力を世界へ届けるこのプロジェクトは、どのように形づくられていったのか。Livmoに、その背景を聞いた。
――一般賃貸では活用が難しかった90平米のメゾネットを、宿泊施設として再生するにあたり、最初にどのような可能性を感じられましたか。

まず、本所吾妻橋駅から徒歩5分という抜群の立地に、大きな魅力を感じました。
都心の宿泊施設は、40平米未満のコンパクトな空間が多い傾向にあります。その中で、90平米もの広さを持つメゾネットという構造は非常に希少です。
この圧倒的なゆとりがあれば、大人数のグループやご家族でも窮屈さを感じることなく、より「自分の家のように、暮らすような旅」の体験を提供できるのではないかと考えました。
一般賃貸としては活用が難しくても、特別な滞在価値を生み出す宿泊施設としてなら、大きな可能性があると感じました。
――オーナー様の「建物の価値を次世代へ繋ぎたい」という想いを、企画や運営方針にはどのように反映されたのでしょうか。

実は、相続した不動産の多くが「資産」ではなく、「負債」として扱われてしまう現実があります。
収益性の低い建物は、所有しているだけで固定資産税や維持費がかかり続けます。その結果、次の世代の手によって売却されたり、空き家化していったりするケースを、私たちは数多く見てきました。
オーナー様の「建物の価値を次世代へ繋ぎたい」という想いを本当に実現するためには、まずこの構造自体を変える必要があると考えました。

そこで企画の根幹として、一般賃貸の1.3倍となる借上家賃をご提案し、建物の収益力、そしてそれに連動する資産価値、つまりバリュエーションを現在よりも高めることに着手しました。
収益力が上がれば、建物は「持っているだけでコストがかかる資産」から、「持ち続けることに経済的合理性のある資産」へと変わります。
次世代が「売らずに持ち続けたい」と思える状態をつくること。それこそが、本当の意味での承継支援だと考えました。

また、運営面でも大きな転換を図っています。これまで「暮らす人」だけが使っていたこの空間に、「暮らすように旅をする世界中のゲスト」を呼び込む仕組みを構築しました。
建物は単なる収益物件ではなく、地域と世界がつながる場所へと昇華していく。次世代が誇りを持って引き継ぎたくなる、新たな価値を持つ存在へと変わりつつあります。
――90平米という広さを活かすうえで、あえて宿泊定員を6名に絞った判断の背景を教えてください。

「暮らすように旅をする」というコンセプトをもとに、「90平米の家なら、何人が快適に暮らせるのか」をチームで議論しました。その結果として導き出したのが、「最大6名」という定員です。
単に泊まるだけであれば、ベッドを並べてより多くの人数を受け入れることもできます。ただ、日常として暮らすのであれば、リビングでの団らんや、充実したキッチン、バスルームの快適性が欠かせません。
1人あたりの可処分床面積をしっかり確保し、ゆとりある贅沢な時間を過ごしていただくこと。それこそが、本物の「暮らす旅」の実現につながると判断しました。
――『間-HAZAMA-』という名称には、「中庸の美」や「狭間」という考え方が込められているそうですね。空間デザインや宿泊体験の中では、どのように表現されていますか。

「中庸の美」や「狭間」という概念は、空間、ロゴ、そして宿泊体験の各要素で具体的に表現しています。
まず空間デザインでは、小上がりの畳スペースや特注の造作障子を配し、伝統と現代が調和する美しい和モダンの空間を演出しました。
ロゴには、品格のある行書体と洗練された英字を採用しています。また、その狭間に、2つの価値をつなぐ「橋」のモチーフをあしらいました。
こうした意匠を空間全体に散りばめることで、日常と非日常の狭間で、自分自身との心地よい“間(ま)”を取り戻せるような宿泊体験を目指しています。
――最後に、『間-HAZAMA-』に宿泊されるゲストの皆様に、どのような時間を過ごしていただきたいとお考えでしょうか。

90平米のゆとりある空間を活かし、大切な人と「暮らすように旅をする」贅沢な時間を過ごしていただきたいです。
都会の喧騒から少し離れた美しい和モダンの空間で、ご家族やご友人との絆を深めたり、日常から離れてご自身とゆっくり向き合ったりしていただければと思っています。
伝統と現代、日常と非日常の「狭間」だからこそ得られる、心地よい安心感。その中で、世界中から訪れるゲストの皆様が、心身ともに豊かになれる“間(ま)”を取り戻し、特別な思い出を持ち帰っていただければ、これ以上の喜びはありません。
■施設概要
施設名:間-HAZAMA-
所在地:東京都墨田区本所1丁目20-5 ルミネックス本所
部屋数:全2室
構成:メゾネット
予約サイト:
・Booking.com
・Airbnb
