神奈川県湯河原町で温泉旅館を経営する「合名会社高杉旅館」は、2020年末頃に事業を停止したことが明らかになった。
同社運営の「ゆ宿高すぎ」は、業歴90年を超える老舗温泉旅館。素泊まり専門の温泉宿として知られ、源泉かけ流しの良質な温泉とリーズナブルな料金を求める旅行客から支持を受け、リピート客を中心に営業を展開していた。近年はインターネットを通じた予約で集客し、2019年7月期には年収入高約3700万円を計上した。
しかし、施設の老朽化に加え近隣旅館との競合などもあり、業績の低迷が続いていた。2020年に入り、新型コロナウイルスの感染が拡大し、湯河原地域の観光客が急減。源泉の使用料を滞納するほど資金繰りが逼迫した状況に陥り、これ以上の事業継続は困難と判断したという。
同年7月から始まった国の観光需要喚起策「Go To トラベル」開始後も、利用客は高級旅館に集中したため、比較的安価な宿泊施設への集客効果は限定的だったと見られている。
負債額は不明。帝国データバンク横浜支店によると、湯河原温泉のホテル・旅館では初の新型コロナ関連倒産で、神奈川県内では52社目となる。