地図から確認できる主な集中エリアは、①広島駅エリア、②紙屋町・八丁堀エリア、③平和大通り〜比治山周辺エリア、④宇品エリアの四つに大別できる。いずれも交通利便性や都市機能との近接性を背景に、ビジネス需要と観光需要の双方を取り込む立地条件を備えているエリアだ。
広島駅エリアでは、山陽新幹線や在来線が集まる交通結節点としての機能を背景に、シティーホテルが比較的高密度で立地。駅南口を中心に分布が広がり、近年の再開発の進展も相まって、広島市における「玄関口型」の宿泊エリアを形成している。
紙屋町・八丁堀エリアでは、商業施設やオフィスビルが集積する都心中枢という立地特性を活かし、シティーホテルが連続的に分布。路面電車やバス網が集中し、平和記念公園や原爆ドームといった主要観光資源へのアクセスも良好であることから、ビジネスと観光の中間的な需要を取り込むエリアとして機能している。
平和大通りから比治山周辺にかけては、中心部に隣接しつつも比較的ゆとりのある立地環境を活かしたシティーホテルが点在。宴会場やバンケット機能を備える施設も見られ、都市型イベントや婚礼需要など、多様な用途に対応するエリアといえる。
宇品エリアでは、港湾機能や大型商業施設を背景に、限定的ながらシティーホテルの立地が確認できる。中心部と比べると施設数は多くないものの、ウォーターフロント型の滞在ニーズやクルーズ関連需要を意識した立地特性を有している点が特徴的だ。
一方で、市北部や住宅地エリアではシティーホテルの立地は限定的であり、分布は都心部および主要交通結節点周辺に集約されている。
このように、広島市のシティーホテルは、市内全域に点在しながらも、広島駅と紙屋町・八丁堀を軸とした都心エリアに明確に集中する構造を形成している。都市規模に対して中心機能がコンパクトに集積している広島市の特性が、宿泊施設の立地分布にも反映されているといえるだろう。
広島市のシティーホテル、施設数の推移
横ばいから微減へ|量的拡大を伴わない広島市のシティーホテル市場
広島市におけるシティーホテル・施設数の推移には以下の傾向が見られた。

出典:メトロエンジンリサーチ
広島市におけるシティーホテル・施設数の推移には以下の傾向が見られた。
広島市におけるシティーホテルの施設数は、直近数年間において大きな増減は見られず、概ね15〜17施設のレンジで推移している。
2022年時点では16施設前後で推移していたが、2023年前後には一時的に17施設規模まで増加。その後は再び16施設水準へと戻り、2024年には15施設へと減少している。2025年から2026年にかけては、15施設で横ばいの状態が続いている。
増減幅は限定的、明確な拡大トレンドを描く市場とは異なり、広島市のシティーホテル市場は一定規模の中で小幅な増減を繰り返す安定的な構造を示している。
全体として、コロナ禍を経ても急減する局面は見られなかった一方で、インバウンド回復局面においても顕著な純増は確認されていない。施設数は概ね横ばい、直近ではやや減少傾向と読み取ることができる。
考察
広島市のシティーホテル市場は、都市規模に対して供給が過度に膨張していない点が特徴的だ。前章で確認した通り、立地は広島駅および紙屋町・八丁堀に集約されており、無秩序な郊外拡散は見られない。
その結果、施設数は大きく増えない一方で、大幅な淘汰も起きにくい、比較的安定した市場構造が形成されていると考えられる。
一方で、直近では15施設水準での横ばいが続いており、量的拡大による成長フェーズには入っていないことも明らかだ。建設コストの上昇や人材確保の難しさといった供給制約に加え、都市としての市場規模が限定的であることも、施設数の純増が進みにくい要因と推察される。
今後の広島市シティーホテル市場は、新規開業による施設数の積み上げよりも、既存施設のリニューアルやブランド転換、機能強化といった質的な更新を通じて競争力を高める局面に入っていく可能性が高いのではないか。
施設数の増減そのものよりも、立地・客室構成・価格帯・付帯機能といった中身の変化が、市場の方向性を左右する段階にあるといえるだろう。
広島市のシティーホテル、部屋数の推移
緩やかな右肩上がり|一定水準で推移する供給
広島市におけるシティーホテル・部屋数の推移には以下の傾向が見られた。

出典:メトロエンジンリサーチ
広島市におけるシティーホテルの部屋数は、3,500室台後半から3,900室台前半の範囲で推移している。
2021年から2022年前半にかけては3,500〜3,600室台で推移していたが、2022年後半には一時的に3,900室台前半まで増加。その後はやや減少に転じ、直近では3,700室台後半で推移。
グラフ上では緩やかな右肩上がりの傾向も確認できるものの、実数ベースでは一定のレンジ内での変動にとどまっており、持続的な供給拡大局面に入っているとは言い難い。
施設数が15〜17施設で横ばい傾向にあることを踏まえると、1施設あたりの客室規模が急拡大している構造でもない。全体としては、大きな純増を伴わない安定的な供給水準が維持されていると読み取ることができる。
考察
広島市のシティーホテル市場は、施設数と同様に、部屋数においても急激な拡大フェーズには入っていないと言えるだろう。
2022年後半に見られた一時的な増加は、大型施設の稼働開始や客室供給の再開などが影響した可能性があるが、その後は水準調整が進んでいる。結果として、市場全体の供給規模は安定圏内に収束している。
前回の分析記事で触れた大阪市のように部屋数が継続的に積み上がる市場とは異なり、広島市では規模に見合った供給量が維持されている構造といえる。
今後、需要が明確に拡大した場合には、既存施設の改装や高付加価値化によって対応が進む可能性が高く、現時点では大規模な供給拡張よりも、質的な最適化が市場のテーマとなる局面にあると考えられる。
広島市のシティーホテル、稼働率の推移
全国平均と同調しつつ上振れ|回復後は80%前後へ
広島市のシティーホテルの稼働率の推移を全国平均と比較して分析すると、以下のような傾向が見られた。

出典:メトロエンジンリサーチ
広島市のシティーホテル稼働率は、全国平均と同様に2020年初頭のコロナ禍において急落し、一時は10%台前半まで低下している。この局面では全国平均も大きく落ち込んでおり、広島市の稼働率は全国水準と概ね同調した動きとなっている。
2021年にかけては段階的な回復が見られたものの、30%台から40%台を中心とした不安定な推移が続き、全国平均との差は小さい状態が続いており、回復初期段階では、全国とほぼ同じペースでの推移となっている。
2022年以降は回復基調が明確となり、広島市の稼働率は全国平均に並ぶ、あるいは上回る月が増加。2023年から2024年にかけては60%台後半から70%台で推移する月が多く、全国平均との差が徐々に拡大する傾向が確認できる。
直近では80%前後で推移する月も見られ、全国平均が70%台前半で推移するなかで、広島市は相対的に高い水準を維持している。特にピーク月では全国を明確に上回る局面が続いている点が特徴だ。
全体を通してみると、コロナ禍での急落を経た後、全国と同調しながら回復し、その後はやや上振れする構造へと移行していることが読み取れる。
考察
広島市のシティーホテル市場は、供給規模がコンパクトであるにもかかわらず、回復局面では全国平均を上回る稼働率を確保している点が特徴的だ。
前章までで確認した通り、施設数・部屋数ともに大きな拡大は見られていない。供給が急増していない環境下で需要が回復したことで、稼働率は比較的スムーズに上昇したと考えられる。
大規模都市と比較すると絶対的な供給量は小さいが、その分、需給バランスが崩れにくく、回復後の稼働水準が安定しやすい構造を持っているといえる。
今後は、稼働率そのものをさらに大きく押し上げるというよりも、80%前後の水準を維持しながら、客室単価や商品構成によって収益性を高める段階に入っていく可能性が推察できる。
広島市のシティーホテル市場は、量的拡大ではなく、安定した需給バランスを背景とした「質的成長」へと軸足を移している局面にあると考えられる。
広島市のシティーホテル市場の今後の展望
安定した需給構造を土台とした「質的進化」へ
足元のデータを見ると、広島市のシティーホテル市場は、施設数・部屋数ともに大きな拡大を伴わない一方で、稼働率は全国平均を捉え、直近ではそれを上回る水準で推移している。量的な成長が先行する市場とは異なり、需給バランスが安定した状態で回復を遂げてきた点が特徴的だ。
分布章で確認した通り、シティーホテルは広島駅および紙屋町・八丁堀を中心とした都心部に集約されている。都市機能と交通利便性がコンパクトにまとまる広島市の構造は、宿泊需要を効率的に取り込みやすい基盤を形成しており、過度な供給競争に陥りにくい市場環境を生み出している。
施設数の推移からは、無制限な新規参入が続く局面ではなく、既存施設を前提とした安定運営の段階に入っている様子がうかがえる。部屋数も一定水準で推移しており、都市規模に見合った供給体制が維持されているといえるだろう。
稼働率の動きに目を向けると、コロナ禍からの回復後は全国平均を上回る月が増え、直近では80%前後の水準を確保している。供給が急増していない環境下で需要が戻ったことで、需給バランスは良好な状態にあると考えられる。
展望
今後の広島市のシティーホテル市場は、施設数や部屋数といった量的拡大を追う段階ではなく、安定した稼働を前提に価値を積み上げていくフェーズへと進んでいくと考えられる。
稼働率が一定水準に達している市場では、価格設定、商品設計、付帯機能の強化、ターゲット需要の明確化といった要素が収益性を左右する。広島市は平和記念公園をはじめとする国際的な観光資源を有し、ビジネス需要と観光需要をバランスよく内包する都市であることから、多様な滞在ニーズに対応できる余地は大きいと考えられる。
また、インバウンド需要の定着やMICE関連需要の回復が進むなかで、立地特性を活かした高付加価値化や客室単価の最適化が進めば、市場全体の収益水準はさらに底上げされていく可能性があるだろう。
広島市のシティーホテル市場の現状は、「急拡大する市場」ではないが、安定した需給構造を土台に、着実に質を高めていく市場といっていいだろう。量に依存しない持続的な成長モデルを描きながら、国内外からの多様な宿泊需要を受け止める都市型宿泊市場として、今後も堅実な発展が期待されている。
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