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ホテル業を成長させる人材戦略としての外国人採用-4

投稿日 : 2025.03.24

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BEENOS HR Link株式会社代表取締役社長の岡﨑 陽介がホテル業界が抱える人材不足の課題解決につながる外国人材採用の具体的な方法について解説する本連載。前回は「外国人材雇用で活用できる様々な在留資格や制度」について紹介しました。第四回となる今回は外国人雇用において拡大している特定技能による外国人材の採用・雇用方法について解説します。

第4回:特定技能に注目した外国人材受け入れ

① 特定技能での雇用に関わる組織とは?

特定技能制度には、外国人材の送り出しや受け入れに関与する複数の機関が存在します。雇用・採用の具体的ステップの説明の前に、まずはこれらの機関について整理します。

特定技能外国人の母国側には、候補者の募集から日本語教育、出国などに関する手続きのサポートを行う「送り出し機関(※厳密には日本語学校と送り出し機関は別)」があります。日本では、特定技能外国人を雇用する受け入れ企業が中心となり、実際の雇用契約を結びます。さらに、受け入れ企業の委託を受け、特定技能外国人の就労や生活支援を専門的に行う登録支援機関が関与する場合もあります。

特定技能外国人を雇用したいと考えた時に、まずは募集・採用を行いますが、採用方法にはいくつかの選択肢があります。特に海外からの採用を考える場合、現地の送り出し機関を通じて募集をかけることが一般的ですが、特定技能では国によって異なりますが、必須でない場合もあります。日本国内で求職中の特定技能外国人を採用することも可能です。国によっては、日本国内での採用にも海外現地の送り出し機関が必須になるケースもあります。

受け入れ企業が直接送り出し機関にコンタクトを取ることもできますが、初めての場合は現地とのつながりを持つのは難しいため、採用の段階から登録支援機関や人材紹介に特化したエージェントを活用するのが一般的です。BEENOS HR Linkには、送り出し機関を紹介してほしいという依頼が来ることもあります。

② 特定技能で外国人材を受け入れるためには

ここでは、特定技能外国人の採用・雇用までをステップに分けて解説します。

<STEP1 .「特定技能所属機関」の要件の確認>

外国人材を特定技能制度で受け入れるためには、まず、自社が「特定技能所属機関」としての要件を満たしている必要があります。「特定技能所属機関」として必要な企業の要件は以下の通りです。

・適切な労働環境を提供できること
・過去に不法就労助長や外国人雇用違反がないこと
・外国人の支援体制を整えること(登録支援機関の活用または自社での対応)
・報酬額が日本人と同等以上であること
・各業界ごとの受入れ基準を満たすこと

まずは、こうした要件を自社が満たしているかを確認し、対応が必要な要件があれば登録支援機関などに相談しながら雇用できる体制を整備します。
BEENOS HR Linkには、こうした体制構築の相談が来ることもあります。

宿泊業に関する要件は、観光庁の下記のページから確認できます。例えば、宿泊施設内の業務全般に従事する必要がある(清掃のみなど、特定の単純作業だけの雇用はNG)等の要件があるため、特定技能雇用が、現時点の自社のニーズと合致するものなのかも含めて確認が必要です。(※1)

(※1)国土交通省観光庁 宿泊分野における外国人材受入れ(在留資格「特定技能」)https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kihonkeikaku/jizoku_kankochi/kankojinzai/ninaitekakuho/tokutei_gino.html

<STEP2. 募集・採用>

要件を満たす場合は、外国人の募集・採用に進みます。特定技能の雇用には、日本国内から採用する場合と、海外から採用する場合があります。

日本国内から採用する場合は、既に特定技能として働いている人や、技能実習修了者・留学生などから在留資格を変更の上、特定技能外国人を雇用することが可能です。海外から雇用する場合は、先述したように送り出し機関等と連携して募集をすることができます。

内定者が決まったら雇用契約を締結します。また、受け入れ企業は特定技能外国人に対する雇用中の支援の計画、いわゆる「支援計画」を策定する必要があります。この部分も含めて、登録支援機関に委託することも可能です。

<STEP3. 出入国在留管理庁への在留資格申請>

宿泊業の特定技能外国人を雇用するには、「特定技能1号」の在留資格を取得する必要があります。

この在留資格の申請は、受け入れ企業が地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書交付(または変更許可)申請を行います。この申請の際に、雇用契約書、支援計画書など複数の書類作成および提出が必要になります。また、雇用する外国人の特定技能試験の合格証明書や日本語能力試験合格証明書等の提出も必要です。

審査期間は1~3か月程度です。※申請時期や地域、申請内容・状況によって期間は異なります。

<STEP4. 許可取得・在留資格変更>

在留資格証明書が交付されたら、次のステップに進みます。

日本国内で技能実習や留学生等の別の在留資格で在留している外国籍人材の場合は、入管に対し「在留資格変更許可申請」を行います。海外在住の外国籍人材の場合は、現地に在留資格認定証明書を送付し、本人が自国の日本大使館でビザを申請後、日本に入国します。こうした手続きは国によって細かい対応内容が異なります。

在留資格の許可が降りると、就労開始が可能になります。

次は、入国後に必要な対応について解説します。

③ 入国後の対応

ここまで雇用のための手続きについて紹介してきましたが、これらの手続きが完了し雇用が始まる前後に必要となるのが外国人材への支援になります。

特定技能1号の外国人材を受け入れるにあたり、企業には雇用した外国人が日本で安定して就労し、生活できるよう支援を行う義務があります。

業務上のオリエンテーションだけではなく、住民登録や社会保険、労働保険の手続き、銀行口座の開設、生活に関するレクチャー等の実施やサポートです。

また、入社当初のサポートだけではなく、定期的な対応や入管への報告・提出が必要な書類等もあります。

もしこうした支援をすべて自社で実施することが難しい場合は、登録支援機関への委託も可能です。

登録支援機関は、特定技能外国人の就労支援を専門に行う機関であり、協同組合や人材関連事業者、行政書士や弁護士などが運営していることが多く、外国人材の受け入れから就労後のフォローアップまで幅広く対応しています。登録支援機関を利用することで、受け入れ企業は支援業務の負担を軽減し、円滑な雇用環境を整えることができます。

2019年に特定技能制度が開始されてから、登録支援機関の数は年々増加しています。登録支援機関を活用することで、雇用企業は専門的な支援業務を委託することができ、特定技能外国人にとっても安心して働ける環境が整えられるため、双方にとって大きなメリットがあります。

一方で、登録支援機関を利用せずに自社で支援を行う企業もありますが、外部委託と比べて対応業務は増えるため、業務負担を軽減するために専用の支援業務管理ツールを活用するケースが増えています。特定技能外国人の受け入れにおいては、企業ごとの状況に応じた支援体制の構築が重要であり、登録支援機関の活用やITツールの導入などを適切に組み合わせることが、持続的な雇用・支援環境の整備につながります。

今回は、特定技能雇用の大まかな流れと必要な手続きについて解説しました。

次回は、人材定着のための支援を含んだ取り組みの部分にスポットをあて、必要な対応やその方法について解説していきます。

著者

BEENOS HR Link株式会社
代表取締役社長 岡崎陽介

2015年BEENOSグループ入社。2019年よりインキュベーション部門に転籍し、2020年7月に「Linkus」のサービス提供を開始。2020年12月にBEENOS HR Link株式会社を設立、代表取締役社長に就任。特定技能雇用の課題をテクノロジーで解決するBEENOS HR Link代表取締役社長として、事業構築からサービス企画・コンサルティングなどを統括。特定技能制度の開始当初から、海外人財、送り出し機関、支援団体、受け入れ企業といった、特定技能雇用に関わる全ての方の課題解決を支援。支援業務の内製化や、自社が登録支援機関となりグループ内の支援の一本化を希望される雇用企業様に対するコンサルティングも行う。
2021年7月~2022年3月国際協力機構(JICA)課題アドバイザー兼任。
◆ 「Linkus」URL:https://linku-s.com/

◆第一回記事
ホテル業を成長させる人材戦略としての外国人採用
◆第二回記事
ホテル業を成長させる人材戦略としての外国人採用-2
◆第三回記事
ホテル業を成長させる人材戦略としての外国人採用-3

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