世界有数の温泉地・箱根強羅に、全14室すべてにかけ流し温泉を備えた「KÚON 箱根強羅」が誕生した。コンセプトは「お茶と和菓子で五感をひらく、唯一無二のデザイナーズホテル」。お茶と和菓子を軸に、チェックインから宵の時間までの体験が組み込まれている。
チェックイン時の和菓子とお茶のマリアージュ体験やティーペアリングなど、お茶と和菓子の体験、飲食などはオールインクルーシブで用意する。かつての大浴場をティーラウンジに再構築し、「現代を立ち止まり、モダンな空間で自分時間を過ごす」場を目指した。オープンハウスグループ初の直営ホテルとして、既存施設の再生と観光地の価値向上の両立を図る。
本記事では、ホテルの魅力やこだわりなどについて、運営を担う株式会社オープンハウス・ホテルズ&リゾーツに取材した。
▷ホテル公式HP:https://ohhr.openhouse-group.com/kuon-gora/
―――ホテルのコンセプト「お茶と和菓子で五感をひらく、唯一無二のデザイナーズホテル」は、どのような背景や課題意識から着想されたのでしょうか。

このコンセプトは、強羅エリアが持つ「既存のイメージ」と「潜在的な価値」のギャップから着想しています。強羅はハイクラスな宿泊施設が集積し「成熟した大人が訪れる高級リゾート地」というイメージが定着しています。同時に、豊かな自然観光資源や文化観光資源に恵まれており、都心では得られないリラックスと知的体験に満ちた場所でもあります。
私たちは、この強羅の魅力を「いつか訪れる場所」としてだけでなく、「本物を知り、感性が磨かれる過程」で訪れてほしい場所だと考えています。そのための鍵として選んだのが【お茶】と【和菓子】です。これらは日本文化を象徴し、日常生活において身近でありながら、その奥深さや背景は意外と知られていません。

「知っているようで知らない世界」を、五感を使いながら深く知る体験は、知的好奇心を刺激し、視野を広げるきっかけとなると考えています。当ホテルではお茶と和菓子をきっかけに、モダンで洗練された体験を通して「昨日より少し感性が豊かになった(きのうより少し大人になった)」と感じていただきたいと考え、このコンセプトを掲げました。
そして、この取り組みが既存の強羅のイメージに新たな価値と顧客を生み出すことを期待しております。
―――既存の大浴場を「tea lounge」として再構築された意図と、滞在価値にどのような変化をもたらすと考えているかお聞かせください。

14室というホテルの規模を「制約」ではなく「強み」と捉え、広範な集客を目指すのではなく、特定のニーズを持つお客様と深く永続的な関係性(ロイヤリティ)を築くことを集客戦略としました。
ターゲットにとっての提供価値の最大化と事業の持続的発展を両立させる手段としてお茶や和菓子をコンセプトに据えています。この戦略に基づき、「選択と集中」を行いました。
既存の「大浴場」は、強豪ひしめく箱根・強羅エリアにおいて、温泉機能だけで競合優位性を確立するのは困難であると判断し、あえて温泉という機能に固執する選択を捨て、その空間を当ホテルのコンセプトを最も色濃く体現するシグネチャーエリア、「tea lounge」へとコンバージョンしました。

この「tea lounge」は、単なるラウンジではなく、温泉旅館において滞在客が何度も足を運ぶ「大浴場」のように、お客様が繰り返し訪れたくなる場所としてデザインするため、現在も試行錯誤を重ねています。
訪れるたびに新たな「気づき」「発見」「本質的な愉しみ」が生まれるユニークな空間となるよう、具体的には、チェックイン時の和菓子とお茶のマリアージュ体験から、宵のバータイムに至るまで、【お茶】や【和菓子】の既存の固定概念に縛られない、モダンで洗練された体験を提供しています。

―――チェックイン後すぐに体験する和菓子とお茶のマリアージュ体験において、和菓子作家・坂本紫穗氏と協働された経緯や、滞在全体に与える効果についてどのように考えていらっしゃいますか。
きっかけは、グループ内に坂本紫穗氏とご縁のあるスタッフがいたことです。そのスタッフを通じてご相談させていただいたことから、今回の協働が始まりました。
お茶や和菓子などの普遍的な価値を現代の人へ届けるためには、伝統に囚われ過ぎない演出が重要だと考えています。坂本氏は和菓子の本質を捉えた上で、現代の人々に訴えかける新たな和菓子を生み出していると感じております。
和菓子とお茶のマリアージュ体験以外にも、tea loungeフリースペースで自由に楽しめる干菓子や、バータイムのおやすみの和菓子を監修していただいています。


―――多様な体験をオールインクルーシブとして提供する料金体系を採用した理由と、宿泊者の滞在行動や価値認識にどのような変化を期待しているか伺えますでしょうか。
オールインクルーシブを採用したのは、それが「お得だから」という理由ではなく、ホテルが提供したいコンセプト体験の“純度”を最大限に高めるためです。
一般的なオールインクルーシブは、時に「選択の自由度を奪う」側面や、「元を取る」という発想を生む可能性があります。

当ホテルでは、提供するサービスや体験の一つひとつに、コンセプトを体現する仕掛けを組み込んでいます。料金を気にせず、心の赴くままに過ごしていただいた結果として、単なる”モノ”の贅沢や表面的な満足ではなく、「昨日より感性が豊かになった」と感じていただけるような、本質的な充足感を得ていただくことが私たちの採用したオールインクルーシブのねらいです。


―――今後、KÚONブランドおよびオープンハウス・ホテルズ&リゾーツとして、宿泊・リゾート領域でどのような価値提供を目指しているのか、今後の展望をお聞かせください。


オープンハウス・ホテルズ&リゾーツのVisionは『Hospitality Innovator』。その場所や建物が持つ価値を見出し、現代の人のニーズを捉え、宿泊を通して価値提供してまいります。
観光産業が真に日本の主力産業になれるよう貢献していきたいと考えております。
■施設概要
施設名 :KÚON 箱根強羅
所在地 :神奈川県足柄下郡箱根町強羅1322-32
アクセス :東京駅から公共交通機関で約100分
都内から自動車で約90分
客室数 :14室
付帯施設 :フロント、客室、ダイニングレストラン、ティーラウンジ、駐車場(地下駐車場有)
延床面積 :1108.51㎡(335.91坪)
宿泊料金 :42,000円/人~
公式HP:https://ohhr.openhouse-group.com/kuon-gora/
公式Instagram:https://www.instagram.com/kuon_hakone?igsh=YTR6NWozcXlpaHF3