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【2025年9月最新】名古屋市のビジネスホテルを徹底分析!”リニア開業が拓く新ステージ”

投稿日 : 2025.10.01

愛知県

ホテル統計データ

名古屋市のビジネスホテル、分布状況

メトロエンジンリサーチによると、名古屋市のビジネスホテルの分布状況は以下の通り。

出典:メトロエンジンリサーチ

出典:メトロエンジンリサーチ

メトロエンジンリサーチによると、名古屋市のビジネスホテルは「名古屋駅(名駅)〜栄・伏見の都心軸」に高密度で集積している。名古屋駅の桜通口・太閤口の両側から名駅南・ささしまライブ方面にかけては、JR・新幹線結節の利便性と周辺オフィス・商業施設を背景に、中〜大規模のチェーン系ホテルが連続的に並ぶエリアが形成されている。

地図からも確認できるように、都心部では①名古屋駅周辺クラスター、②栄・伏見〜久屋大通のクラスターが二大ポイントだ。両エリアは地下鉄東山線・桜通線に沿って面状につながっており、丸の内・国際センター・新栄町まで分布が延びる。オフィス集積と飲食・商業の近接性が高く、ビジネス・レジャー双方の需要を取り込みやすいのが特徴だ。

一方で、副都心・乗換拠点にも一定の分布が見られる。JR・名鉄・地下鉄が交差する金山駅周辺、イベント施設の集まるささしまライブ、ナゴヤドームアクセスの大曽根〜千種・今池といった沿線拠点には、中規模クラスのホテルが点在しており、都心補完の受け皿として機能している。

また、市域南部や東部の郊外に進むと分布は点在的となり、幹線道路沿いや工業・物流エリア近接の実務需要を意識したロードサイド型の出店が中心だ。観光資源に近い名古屋城周辺や久屋大通公園の外縁部にも、観光・イベント需要を捉えるホテルが散見される。

このように名古屋市のビジネスホテルは、名駅・栄を核とする「都心集約型」と、金山・ささしま・今池・大曽根などの「副都心・沿線展開型」という二層構造を形成している点が大きな特徴といえる。

名古屋市のビジネスホテル、施設数の推移

安定成長から横ばい局面へ|新規開業と再編が交錯する名古屋市場

名古屋市におけるビジネスホテル・施設数の推移には以下の傾向が見られた。

出典:メトロエンジンリサーチ

名古屋市におけるビジネスホテルの供給は、2019年時点で約165施設からスタートし、その後は堅調な増加傾向を示してきた。2021年には一時的な増減を繰り返しながらも180施設前後まで拡大し、2023年以降は183〜185施設の水準で推移している。全体としては「増加基調を経た後の横ばい局面」に入ったといえる。

背景には、名古屋駅周辺や栄エリアでの新規開業が供給数を押し上げた一方、老舗施設の閉館やブランド再編も進んだことがある。特にコロナ禍を契機に、稼働率低迷で淘汰された施設が一定数存在する一方、大手チェーンによる進出や既存ホテルのリブランドが相次ぎ、施設数としてはプラスとマイナスが拮抗する形となった。

注目すべきは、施設数が横ばいでも市場全体の質的変化が進んでいる点だ。最新のビジネスホテルはワークスペース機能や宿泊+αの付加価値を強化しており、単なる宿泊から「働く・過ごす」までを包括した滞在スタイルにシフトしている。

考察

名古屋市のビジネスホテル市場は、量的拡大のフェーズを終え、ブランド再編や差別化競争が鮮明化している。今後はインバウンド需要の回復やリニア中央新幹線開業を見据えた都市戦略の中で、「どのような宿泊体験を提供するか」が競争力の源泉となるだろう。施設数の安定化は、次なる質的成長のステージを迎えていることを示している。

名古屋市のビジネスホテル、部屋数の推移

供給拡大から安定化へ|大型開発と再編が生み出す横ばい基調

名古屋市におけるビジネスホテル・部屋数の推移には以下の傾向が見られた。

出典:メトロエンジンリサーチ

名古屋市のビジネスホテルにおける客室数は、2019年時点で約23,000室からスタートし、2020年にかけて順調に増加した。その後、2021年には約27,000室に達するなど大幅な伸びを示したが、2022年以降は横ばいに転じ、直近(2025年)では27,200〜27,300室前後で推移している。

増加局面をけん引したのは、名古屋駅周辺や栄エリアにおける大型ホテルの新規開業である。これにより、施設数の増加とともに総客室数も大きく押し上げられた。一方で、2022年以降は老舗ホテルの閉館や改装工事に伴う一時的な供給減少も見られ、供給曲線は落ち着きを取り戻している。

施設数の推移と同様に、1施設あたりの平均客室数は概ね横ばいで推移しており、量的な拡張から「安定的な維持」へとシフトした状況がうかがえる。また、新規開業ホテルでは客室数を抑えつつ、ワークスペースやラウンジなど付加価値空間を備える事例が増えており、単なる客室供給から「体験の多様化」へと戦略の軸足が移りつつある。

考察

名古屋市のビジネスホテル市場における客室供給は、量的拡大の段階を終え、今後は質的進化とサービスの差別化が焦点になると考えられる。リニア中央新幹線開業を控える中で、供給の大幅増加は見込まれにくい一方、需要構造の変化に対応した柔軟な商品設計が求められる局面に入っている。

名古屋市のビジネスホテル、稼働率の推移

急落からの回復と横ばい安定化|全国平均とほぼ同水準で推移

名古屋市のビジネスホテルの稼働率の推移を全国平均と比較して分析すると、以下のような傾向が見られた。

出典:メトロエンジンリサーチ

名古屋市のビジネスホテル稼働率は、全国平均と同様に2020年のコロナ禍で急落した。2019年には70〜80%台で推移していた稼働が、2020年前半には20%を割り込む水準まで下がり、市場に大きな打撃を与えた。

その後は段階的に回復し、2021年以降は40〜60%台で上下を繰り返しながら持ち直した。2023年以降は70%前後を中心に安定推移しており、直近(2024〜2025年)には繁忙期で80%に迫る月も見られるなど、全国平均とほぼ同水準の回復を示している。

全国比較では、愛知県を含む名古屋市の稼働は概ね全国の動きと連動しているが、ビジネス需要の厚みを背景に、局面によっては全国平均をやや上回る月も確認できる。特に2024年には大型イベントや展示会の開催時期に稼働が底上げされる傾向が見られた。

考察

名古屋市のビジネスホテル市場は、急落からの急回復を経て、70%前後の安定帯を形成している。供給数が横ばいで推移するなか、稼働率が高水準で維持されていることは、需要の底堅さを示すものだ。今後はリニア中央新幹線開業を控えた長期的な需要増や、インバウンド需要の取り込みが加わることで、安定帯をさらに上積みできるかが注目点となるだろう。

名古屋市のビジネスホテル市場の今後の展望

リニア開業が拓く新ステージ|国際都市・名古屋のビジネスホテル市場

足元の数値を見ると、施設数・客室数は横ばい傾向にあり、稼働率は70%前後で安定している。一方で、名古屋市は「リニア中央新幹線開業を控える国際都市」「中部圏の産業・観光ハブ」という独自の強みを持ち、将来的な需要拡大のポテンシャルは大きい。全国有数のMICE都市として展示会・国際会議の開催実績も豊富で、ビジネス・観光の両面から持続的な集客が期待できる点は他都市にない魅力だ。

需要面では、インバウンド回復に加え、国内では出張・観光の複合利用や長期滞在ニーズが拡大している。特に「観光+仕事」「都市滞在+近郊観光」といった複合的な目的の宿泊が広がりつつあり、ビジネスホテルも従来の“泊まるだけ”から“過ごす拠点”へと役割を拡張していくだろう。

供給面では、単なる新規開業よりも、既存施設のリブランドや機能強化が中心になる見通しだ。ワークスペースやラウンジを備えた多機能型ホテル、環境配慮型の施設など、差別化要素を打ち出すことで価格競争から脱却し、持続的な収益基盤を築く動きが進んでいる。

名古屋市の次の成長フェーズは、“量から質”への転換の深化にある。リニア開業を契機に国内外からの来訪者が増える中で、都市機能と宿泊体験をつなげる新しい価値提案をできるホテルが、市場をリードしていくことになるだろう。派手な拡大よりも、既存資産の活用と体験価値の磨き上げを通じた着実な成長が見込まれる。

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