※価格は2名1室利用時の1室あたり料金(税込)。データはOTA等の公開価格を集計したもの。
2026年のゴールデンウィーク(4月25日〜5月6日)における北海道の宿泊価格を分析した結果、道内全体の平均宿泊価格は前年同期比+7.7%の¥35,700となった。なかでも倶知安町(ニセコエリア中心部)ではGW期間平均で前年同期比+29.1%、ピーク日(5月2日)には+35.2%と突出した上昇を記録している。インバウンド需要の春シーズンへの波及、高級リゾートの新規開業ラッシュ、そして売切率の急上昇が背景にある。本記事では、N=1,703,077件のプラン価格データをもとに、エリア別・施設タイプ別の価格動向を読み解く。
北海道全体のGW価格推移 ― 日別に見る需給の波
2026年GW期間(4月25日〜5月6日)の北海道全体の宿泊価格を日別に見ると、需要のピークは5月2日(金)の¥47,000であり、前年同日の¥34,500から+36.3%と大幅に上昇した。一方で、GW後半の5月5日以降は¥36,300→¥30,200と急速に下落しており、ピーク日との価格差は最大で¥16,800に達する。加えて、2026年は全日程で売切率が20%を超えており、特にピーク日の5月3日には41.5%と、供給が大幅に逼迫している状況が確認できる。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(N=1,703,077)
2025年のGW期間は売切率がほぼ0%であったのに対し、2026年は平均27.5%まで上昇しており、需給バランスが大きく変化したことがわかる。つまり、価格上昇の主因は単なる「値上げ」ではなく、実需の増加による在庫逼迫と考えられる。
エリア別に見る価格変動 ― 倶知安町が+29%で突出
道内主要エリアのGW期間平均価格を前年同期比で比較すると、最も上昇が顕著だったのは倶知安町(ニセコエリア中心部)の+29.1%であった。¥43,900から¥56,700へと大幅に上昇しており、もはやリゾート価格帯に完全にシフトしたといえる。それに次ぐのが小樽市の+19.5%、釧路市の+19.3%であり、観光地としての知名度向上と交通アクセス改善が寄与していると考えられる。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
しかしながら、すべてのエリアが上昇したわけではない。富良野市は前年同期比-10.9%と道内で最も下落しており、旭川市も-5.2%、ニセコ町(倶知安町の隣接エリア)も-5.5%と下落している。富良野市やニセコ町の下落は、高価格帯施設の一部が改装中であることや、倶知安町への需要集中によるエリア内での需要シフトが影響している可能性がある。
| エリア | 2025年GW | 2026年GW | 前年比 | 売切率(2026) | サンプル数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 洞爺湖町 | ¥65,700 | ¥66,900 | +1.7% | 46.5% | N=18,271 |
| 登別市 | ¥62,900 | ¥64,900 | +3.2% | 38.1% | N=34,151 |
| 倶知安町(ニセコ) | ¥43,900 | ¥56,700 | +29.1% | 19.0% | N=34,476 |
| ニセコ町 | ¥48,500 | ¥45,800 | -5.5% | 22.6% | N=18,499 |
| 函館市 | ¥39,900 | ¥42,900 | +7.6% | 35.4% | N=203,826 |
| 小樽市 | ¥34,300 | ¥40,900 | +19.5% | 25.5% | N=64,723 |
| 釧路市 | ¥33,900 | ¥40,500 | +19.3% | 27.9% | N=57,693 |
| 富良野市 | ¥38,300 | ¥34,100 | -10.9% | 24.3% | N=32,450 |
| 札幌市 | ¥28,500 | ¥30,200 | +5.9% | 33.1% | N=622,828 |
| 旭川市 | ¥21,000 | ¥19,900 | -5.2% | 23.1% | N=92,447 |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成 ※GW期間=4月25日〜5月6日の12日間平均
ニセコエリアの構造変化 ― 高級化と供給制約
倶知安町のGW価格が前年同期比+29.1%と突出して上昇した背景には、エリア全体の構造的な変化がある。2025年から2026年にかけて、ニセコエリアでは高級ホテルの開業が相次いでいる。2025年にはニッコースタイルニセコHANAZONO、HOTEL LOGIN NISEKO、カッシーア・比羅夫ニセコが開業し、2026年にはシックスセンシズニセコ(IHG系列・76室)、カペラニセコといった超高級ブランドの開業が予定されている。
一方で、OTA等で販売されるプラン数はむしろ減少している。倶知安町のGW期間のサンプル数は2025年のN=41,262からN=34,476へと16.4%減少した。これは、高級施設がOTA等への販売依存度を下げ、自社サイトや富裕層向けチャネルに販売を集中させていることを示唆している。供給が絞られた中で需要が増加すれば、価格は当然上昇する。なぜなら、ダイナミックプライシングの基本原理として、在庫減少は価格上昇圧力に直結するからである。
加えて、ニセコビレッジ内の3施設(カサラ・ニセコビレッジ・タウンハウス、ヒノデヒルズ・ニセコビレッジ、ザ・グリーンリーフ・ニセコビレッジ)がヒルトン系列にリブランドされたことで、国際的な認知度が向上し、海外からの直接予約が増加したと考えられる。
施設タイプ別の価格変動 ― コンドミニアムが急騰
施設タイプ別にGW期間の平均価格を比較すると、最も高額だったのはコンドミニアム(¥60,500)であり、前年同期の¥38,500から+57.2%と急騰している。これはニセコエリアにおけるコンドミニアム型高級宿泊施設の増加を反映したものだろう。旅館は¥55,300(前年比+1.6%)と比較的安定しており、価格の絶対値では高水準を維持しつつも上昇率は穏やかである。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
ホテルカテゴリは¥28,400(前年比+5.1%)と堅調な上昇であり、売切率30.0%と最も需給が逼迫している。ただし、ペンション(¥26,200、+9.8%)やユースホステル(¥17,100、+25.2%)など中低価格帯にも価格上昇が波及しており、北海道全体の宿泊需要が幅広い施設タイプに及んでいることが確認できる。
インバウンド需要の春シーズンへの波及
北海道のインバウンド需要はこれまで冬季(12月〜2月)のスキーシーズンに集中していた。しかしながら、近年はその波及範囲が拡大している。国土交通省北海道運輸局の観光基礎データ(2026年3月)によれば、北海道の外国人延べ宿泊者数は2025年度を通じて過去最高水準を更新し続けており、特に春季(4〜5月)の伸びが顕著である。
REIT各社の月次運営データからもその傾向は裏付けられる。インヴィンシブル投資法人(8963)が保有する札幌エリアの7施設は、2026年2月時点でADR ¥18,600〜¥28,100、稼働率93〜96%と極めて高い水準にあり、冬季の高需要がそのまま春季に持ち越されている。加えて、霞ヶ関ホテルリート投資法人(401A)のfav函館はADR ¥25,400、稼働率74.4%と函館エリアの需要拡大を反映している。
春の北海道は桜の開花が本州より1〜2カ月遅いことに加え、残雪と新緑が同時に楽しめるという独自の魅力がある。海外旅行者にとって、冬季に続く「オフピーク」の北海道は割安感があり、GW期間と海外からの春季需要が重なることで、宿泊市場に強い上昇圧力が生じたと考えられる。
売切率の急上昇が示す需給逼迫
2026年GW期間で最も注目すべき変化は、売切率の大幅な上昇である。北海道全体の2025年GW期間の売切率は0.0%であったのに対し、2026年は平均27.5%と急上昇した。エリア別に見ると、洞爺湖町(46.5%)、登別市(38.1%)、函館市(35.4%)、札幌市(33.1%)の順に高く、温泉地と都市部で在庫が特に逼迫している。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
日別に見ると、売切率のピークは5月3日(土)の41.5%であり、GWのメインピーク日に供給が大幅に不足していたことがわかる。これはすなわち、宿泊したくても予約が取れなかった潜在需要がかなりの規模で存在していたことを意味する。この潜在需要は、周辺エリアへの宿泊分散や日帰り旅行への切り替えとして吸収されたと推測される。
REITデータに見る北海道宿泊市場の底堅さ
ホテル特化型REITの月次運営データからも、北海道の宿泊市場の好調さが確認できる。2026年2月時点のデータを見ると、インヴィンシブル投資法人の札幌・小樽エリアの物件は軒並み高稼働を維持しており、ホテルマイステイズ札幌アスペンはADR ¥28,100・稼働率96.1%、ホテルソニア小樽はADR ¥24,400・稼働率94.0%といずれも極めて高い水準である。
| REIT / 物件名 | ADR | 稼働率 | RevPAR |
|---|---|---|---|
| インヴィンシブル投資法人(8963) | |||
| ホテルマイステイズ札幌アスペン | ¥28,100 | 96.1% | ¥27,000 |
| ホテルマイステイズ札幌駅北口 | ¥24,200 | 96.1% | ¥23,200 |
| ホテルソニア小樽 | ¥24,400 | 94.0% | ¥23,000 |
| ホテルノルド小樽 | ¥23,900 | 96.0% | ¥22,900 |
| ホテルマイステイズプレミア札幌パーク | ¥18,800 | 93.1% | ¥17,500 |
| アートホテル旭川 | ¥16,500 | 88.3% | ¥14,600 |
| 函館国際ホテル | ¥12,700 | 72.0% | ¥9,100 |
| 霞ヶ関ホテルリート投資法人(401A) | |||
| fav 函館 | ¥25,400 | 74.4% | ¥18,900 |
| いちごホテルリート投資法人(3463) | |||
| コンフォートホテル 釧路 | ¥7,900 | 85.7% | ¥6,700 |
| 星野リゾート・リート投資法人(3287) | |||
| ホテルWBFグランデ旭川 | ¥16,300 | 90.4% | ¥14,700 |
出典:各社REIT月次運営データよりホテルバンク編集部作成(2026年2月実績)
札幌市内のホテルが軒並み90%超の稼働率を維持している点は特筆に値する。通常、2月は冬季観光のピークであるが、この水準がGW期間にも継続していることは、札幌市の2026年GW売切率33.1%という数字と整合する。REITの物件別データは月次ベースの公開値であるため、GW期間のスポットデータは含まれていないが、構造的な高需要トレンドを裏付ける補完的なデータとして有用である。
まとめ ― 北海道GW市場は「量」から「質」への転換点
2026年GWの北海道宿泊市場は、全体として前年同期比+7.7%の堅調な上昇を示した。しかし、その内実はエリアによって大きく異なる。倶知安町(ニセコ中心部)の+29.1%、小樽市の+19.5%、釧路市の+19.3%といった二桁上昇のエリアがある一方、富良野市(-10.9%)や旭川市(-5.2%)のように下落したエリアもある。
この二極化の背景には、インバウンド需要の春シーズンへの波及と、高級リゾートの新規開業による価格帯の押し上げがある。特にニセコエリアでは、シックスセンシズやカペラといった国際的なラグジュアリーブランドの参入が進んでおり、エリア全体のADRを構造的に引き上げている。一方で、需要が集中しないエリアでは価格が下落しており、北海道内での「需要の偏在」が鮮明になりつつある。
売切率の急上昇(2025年の0%から2026年の27.5%へ)は、供給不足が顕在化していることを示しており、今後の新規開業ラッシュが需給バランスをどう変えるかが注目される。北海道の宿泊市場は「量の拡大」から「質の向上」へと転換期を迎えているといえるだろう。