株式会社帝国データバンクは、帝国データバンクが保有する企業信用調査報告書ファイル「CCR」に基づき、「旅館・ホテル」業界の企業931社における業況について調査・分析を行った。
(出典:株式会社帝国データバンク)
5月時点までの各社業績推移・業績予想に基づいた2023年度通期の旅館・ホテル市場は4.9兆円前後となる見込みとなり、旅館・ホテル市場はコロナ前水準に回復してきた。2023年度の市場規模は、国内旅行需要の増加と合わせ、卒業旅行シーズンなども追い風となったが、能登半島地震の影響もあり、過去最高水準の5兆円には届かなかった。しかし、2022年度の4兆円からは1.2倍の規模で推移するとみられ、訪日外国人による宿泊需要が高かった19年度並みの水準での着地となる。
(出典:株式会社帝国データバンク)
帝国データバンクが調査した旅館・ホテル業者931社の業況については、52.6%の企業が増収を記録している。しかし、1年前の2023年4月の60.8%と比べると増収企業の割合は減少し、横ばいの結果を示す企業が44.5%に増加した。また、減収企業の割合は2.9%で、1年前の2.6%からほぼ横ばいで推移している。コロナ禍の2021年4月には75.7%が減収を記録していたことから、大幅な改善が見られる。
2023年5月から新型コロナウイルスの分類が5類に移行したことにより、国内観光需要が回復し、インバウンド需要も急増したことで、多くの企業が大幅な増収を見込んでいる。特に都市部のビジネスホテル業態では、前年度比20%以上の増収を予測する企業も目立っている。ただし、増収企業の割合は1年前より減少しており、市場は急回復局面から安定期へと移行しつつある。
(出典:株式会社帝国データバンク)
都道府県別に見ると、増収基調が最も高かったのは広島県で、84.0%の企業が増収を記録した。和歌山県や沖縄県でも8割を超える企業が増収となっており、アジアからのビジネス客・訪日客の存在感が目立つ福岡県や草津温泉などの関東有数の温泉を保有する群馬県でも増収企業が7割を超えている。
観光庁によれば、2024年4月に国内のホテルや旅館に泊まった日本人・外国人の総数は前年同月比10.1%増の延べ約5190万人泊に達した。特に外国人の宿泊数は46.9%増の約1450万人泊に上り、円安が日本旅行の魅力を高めていることからも、市場は今後も好調を維持し、2024年度には5兆円を超える可能性がある。
しかし、宿泊施設の現場では人手不足が依然として深刻であり、フロントや調理スタッフの確保が困難な状況が続いている。宿泊予約や客室稼働に制限を設けるなど、需要を十分に取り込めないケースも多い。帝国データバンクの調査では、旅館・ホテル業界の人手不足は正規・非正規を問わず6割を超えており、外国人材の活用や自動化投資が必要となっている。このため、人手不足への対応が2024年度の市場の成否を左右する重要なポイントとなると考えられる。