“ムスリムが食と礼拝の不安なく、旅を楽しめる宿泊施設”をコンセプトにした「Jesly Villa Tokyo」が2019年9月12日(木)に千葉県木更津市に開業を予定。運営するJY Global社代表取締役の飯塚義典氏と同社取締役 兼 Jesly Villa Tokyo 支配人のモハマド ジャリール モハマド ジェスリ氏に話を聞いた。
ムスリムなら誰でも利用できる男女別の礼拝室を無料提供
同施設は支配人のジェスリ氏自身もムスリムであることから、自身の経験と人脈を活かしムスリム 200人にヒアリング調査を実施。心から安心して快適に過ごせる空間づくりを徹底した。
日本にはムスリムにとって欠かせない礼拝ができるホテルが乏しい。また礼拝の部屋はあるが、一つの部屋として用意されていて、男女別での礼拝をするのが困難という施設が大半となっている。
同施設では、男女別で礼拝室を用意し、ムスリムが安心して礼拝ができる環境を用意する。
また宿泊者はもちろん、近くに来ているムスリムは誰でも無料で利用できるという。
(女性用)
(男性用)
(男女別で「洗い場」も用意)
代表の飯塚氏は語る。
「ムスリムにとって礼拝を行うことは我々日本人がトイレに行くように当たり前の感覚で行うことです。他の施設では500円などと有料で使用可能とする施設もあるようですが、日本人がトイレを使うのに有料であることに違和感を感じるのと同じような違和感をムスリムに与えます。そこで当施設では無料で、かつムスリムが宿泊者でなくても誰でも自由に使えるように開放をいたしました」
ムスリムのシェフが作るハラール料理だからこそ安心
宿泊施設内に併設して100%ハラールレストラン「パプリカ」を合わせて開業。
スリランカ出身のジェスリ氏だけでなく、シェフもマレーシアのムスリム。それ以外のスタッフもインドネシアやネパール、フィリピンなどから来日したムスリムだ。
ムスリムだからこそわかる、気を使うべきハラールについて安心して提供することが可能だという。
ジェスリ氏は語る。
「ハラール認証のような制度もありますが、複数の認証が乱立しており、認証を得ているからといって安心できるというものではありません。どこかで誤って提供すればその認証掲示自体が不安を呼ぶものとなります。
やはり、ムスリムの旅行者にとって本当に安心できるのは作っているシェフやスタッフ自体がムスリムであることです。ムスリムが確認して提供できると判断するものだからこそ、安心して食べることができるでしょう。」
近年、ハラール料理は健康志向な人々にも人気を集めており、本格的なマレーシア料理は日本人にとっても魅力的だ。
家族向けに多人数での宿泊、ムスリムとの交流、関西展開も
最大5名で泊まれる和室・洋室全11部屋。一部屋ごとに、壁紙・フロアカーペットのデザインが異なる。ムスリムが快適に過ごせるデザインをこだわって選んだという。
宿泊可能人数を増やしたのは、インドネシアやマレーシアなどのムスリム旅行者の多くは家族連れで旅行しているためで、日本のように少子化していないことから大人数の宿泊を想定してこれに対応できるように配慮した。
スイートルームにはアイランドキッチンとバルコニーを用意。自身で食事を作ったり、シェフを呼び料理をしてもらうなど、家族や友人達と特別な時間を過ごすことができる。
飯塚氏は今後の展望に関して以下のように述べた。
「2020年には東京オリンピック・パラリンピックも控えていることから、今後ますますインバウンドのお客様が増加することが見込まれており、当社ではムスリムをはじめとした旅行者が食事や礼拝を心から安心して行い、日本を楽しめるよう宿泊施設・レストランを展開していきたいと考えています。
日本ではあまり馴染みのないムスリムの人々と多少外国人へ偏見も残る地域社会とが交流するきっかけのようなものになることも当施設を開業することの意義と捉えています。
今後は関東だけではなく、関西への展開も目指しており、ハブホテルとして日本での旅行を点から線へとつないでいければ良いと考えています。」
【Jesly Villa Tokyo 概要】
場所:千葉県木更津市金田東1-20-20(羽田空港よりアクアラインで車20分)
面積:約294m2(延べ面積842m2)
設備 全15部屋(スイートルーム2部屋、シェアルーム2部屋(男女別)、洋室10部屋、和室1部屋):プレイヤールーム、ハラールレストラン「パプリカ」
その他:3階建て、エレベーター有、無料シャトルバス、6カ国語対応スタッフ
メトロエンジンリサーチによると、千葉県木更津市には宿泊施設が34、部屋数にして2,091室が提供されている。
同施設から徒歩10分ほどには国内最大規模のアウトレットである三井アウトレットパーク木更津も所在していることから、ムスリム旅行者の帰国の前のショッピングにも役立ちそうだ。
羽田空港までアクアライン利用で片道20分の木更津金田の立地を活かし無料シャトルバスを計4便、毎日運行、品川方面までの送迎も行う。
また、国内通話・通信無料のスマートフォンも無料で貸し出しする。
訪日ムスリム旅行客は今後の日本の訪日旅行市場における潜在的成長市場と言えるが、日本にとって馴染みの薄い分、ハラール対応や礼拝室などまだまだ課題もあるのも実情だ。受け皿としての同社のような取り組みが今後全国的に広がることも期待される。
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