三重県・伊勢志摩の英虞湾に、自然共生型ホテル「allbeans ISESHIMA」が3月13日に開業した。真珠養殖のいかだが浮かぶ穏やかな海と深い森が接する“里海”を舞台に、1日2組限定のタイニーハウスで滞在を提供する。
自然公園法に配慮した設計に加え、太陽光発電や雨水利用、災害時の自立運用も視野に入れた点が特徴だ。観光と環境保全、防災機能をどう両立させるのか。宿泊施設の新しいあり方を映す試みとして注目される。
本記事では、「allbeans ISESHIMA」開業の経緯やそのこだわりなどについて、運営を行う株式会社allbeansに取材した。
公式サイト:https://allbeans.jp
―――伊勢志摩・英虞湾の「里海」の風景に出会ったとき、開業地としてこの場所を選ぶ決め手となった点を、あらためてお聞かせいただけますか。

決め手となったのは、リアス海岸が生み出した「ありのままの自然」と、そこで真珠やアオサを育てる「人々の営み」が、隣り合って存在している風景でした。
この2つは、一見すると対立しているようにも見えるかもしれません。しかし英虞湾では、長い時間をかけて自然と人の営みが混ざり合い、美しい「里海」が育まれてきました。
その境界に身を置くことで、日常の中で閉じかけていた感性が、そっと開いていく。そうした体験を届けるには、これ以上ない場所だと感じました。


―――今回の「国立公園モデル」は、自然公園法に準拠しながら滞在価値を高める設計とのことですが、景観との調和と宿泊体験の魅力を両立するうえで、特に重視されたポイントは何でしょうか。

建物が風景を妨げるのではなく、この地の営みの一部として溶け込むことを大切にしました。
たとえば、屋根の形は国立公園のルールに沿った「切妻屋根」にしていますし、外装の木材も、周囲のトーンになじむナチュラルな色合いに整えました。
法律を単なる制約として受け止めるのではなく、自然を守りながら、その中に身を置いて過ごすための「よい循環」を生み出す指針として捉えたいと考えました。そうした思想を、デザインにも反映しています。
―――災害時にはオフグリッドシステムへ移行し、一時的な避難場所としての活用も想定されているとのことですが、宿泊施設にこうした防災機能を持たせる意義をどのようにお考えでしょうか。
私たちは、宿を単なる宿泊施設ではなく、地域を支える「インフラ」のひとつにしたいと考えています。

普段から電気や水を自給する仕組み(オフグリッド)を整えておくことで、もしもの時には地域の方々が安心して身を寄せられる「シェルター」のような役割を果たせます。
地域とのつながりを大切にするallbeansとして、普段の心地よさがそのまま地域の安心にもつながるハブ(拠点)になれることに、大きな意義を感じています。
――― allbeans ISESHIMAでは、真珠養殖いかだや小舟が見える「人の営み」も含めて風景として捉えている点が印象的でした。この土地ならではの滞在体験として、宿泊者にどのような気づきや時間を届けたいとお考えですか。

窓の外に広がる養殖いかだや、水面を漂う小さな舟。それらは、自然の恵みを受けながら人々が歩んできた、美しい共生の証だと考えています。
そうした「人の営み」を静かに眺めながら、自然のリズムに心身を委ねる。そのような穏やかなリトリートの時間を過ごしていただきたいと思っています。
そのひとときを通して、ご自身の日々の暮らしの中にも、自然とともにあることの心地よさを見つけるきっかけになれば嬉しく思います。
―――最後に、allbeans ISESHIMAを通じて実現したいこと、そして今後のallbeans全体の展開において目指している姿について、お聞かせいただけますか。

私たちが実現したいのは、「地球とつながる喜び」を、もっと当たり前のものにしていくことです。
allbeans ISESHIMAをきっかけに、自然を大切にしながら地域の役にも立てる新しい仕組みを、全国へ広げていきたいと考えています。
都会で忙しく暮らす人には「自然の近くにある居場所」を、地方には「新しいエネルギーの形」を届ける。その両方をつなぐ「次世代のローカルインフラ」をつくっていくことが、私たちの目標です。
■「allbeans ISESHIMA」概要
公式サイト:https://allbeans.jp
所在地:三重県志摩市阿児町神明2085-19
設備:プライベートデッキ、焚き火台、エアコン、キッチン、シャワー、トイレ完備
定員:1棟につき2名、1日2組限定