茨城県那珂市の県立植物園が、「泊まる」「癒される」「食べる」「遊ぶ」を一体化した日本初の“泊まれる植物園”として生まれ変わった。名称は「THE BOTANICAL RESORT 林音(リンネ)」。2025年11月29日にグランドオープンし、熱帯植物館の夜間ライトアップや森に囲まれた宿泊施設、県産木材を使った温浴施設、県産食材のレストランなどを備える。
有料だった植物園エリアは無料開放され、朝夕の散策も気軽に楽しめるようになった。ビジョンに掲げるのは「“自然と”笑顔になれる場所」。植物や木の香り、風や光を感じながら過ごす時間が、観光客だけでなく地元住民の暮らしにもどのような変化をもたらすのか注目される。
本記事では、“泊まれる植物園”となった経緯やこだわりなどについて、THE BOTANICAL RESORT 林音に取材した。
▷公式サイト:https://rinne-resort.jp/
―――「日本初の“泊まれる植物園”」という形態を採用された経緯と、どのようなニーズに応える施設を目指されたのか、お聞かせいただけますでしょうか。

茨城県植物園は長く地域に親しまれてきた一方、近年は利用者数の減少や施設の老朽化が課題でした。そこで茨城県が現状を踏まえ、植物園としての価値を活かしながら、県内外から人が訪れたくなる魅力的な施設へと再生するため、公募型プロポーザルで事業者を募集しました。
そのなかで私たちは、この豊かな自然環境を“滞在して味わっていただける場”にすることで、より大きな体験価値が生まれると考え、「泊まれる植物園」というアイデアを企画・提案しました。宿泊することで、これまで見られなかった朝や夜の植物の姿に触れられますし、これまで植物園にはあまり足を運ばなかったご家族やカップル、ご友人、教育機関など、多様な方々に来ていただける。そんな場を目指しました。


―――掲げられているビジョン『“自然と”笑顔になれる場所』は、施設づくりや体験設計にどのように反映されているのか、具体的に教えていただけますか。

具体的には、以下のようなかたちで反映しています。
・これまで有料入園だった植物園を無料化
・県産木材を使用した木造建築による木のぬくもりも感じられる自然と調和した建屋
・自家農園で栽培したハーブを使った薬草湯やハーバルサウナ、ワークショップを開催
・県民の森の自然を活かした大人も子どもも楽しめるアクティビティ
・ファミリー層が安心して利用できる設備を用意(授乳室、キッズルーム、キッズメニュー等)
・愛犬との滞在も考慮した設備を用意(ドギーコテージ、散策路、ドッグラン)
・校外学習にも利用可能
こうした工夫を通じて、“自然と笑顔になれる”体験をさまざまな世代に届けられるように意識しています。

―――植物園を無料開放とされた理由と、それによって想定される来園者層の広がりについて伺えますでしょうか。

植物園を無料開放することで、県内外、多くの方がより気軽に足を運べる“開かれた場”にしたいという思いがあります。
これまでの植物園は近隣住民の方々のご利用がメインだったと思いますが、今回この「泊まれる植物園」へのリニューアルによって県内の方の日帰り利用はもちろん、県外からのファミリー層、ご友人同士、カップルやご夫婦のご利用が見込めると考えております。
―――宿泊棟をはじめ、温浴・飲食施設において県産木材や県産食材を積極的に取り入れておられますが、地域資源を活用するうえで大切にされた点を教えていただけますでしょうか。

建築において大切にしたのは植物園のもつ自然と調和する設計や、廃材も有効活用するサステナブルな取り組み、料理においては地元の農家さんや生産者の方々が育てた食材を彩り豊かに、そしてシンプルに仕上げ素材の良さを引き立てることを大切にしています。


―――「りんね・ぼうけんの森」に代表されるアクティビティについて、自然環境を生かしながら魅力ある体験に仕上げるうえで意識されたポイントを伺えますでしょうか。

アクティビティ設計では、県民の森がもつ自然環境を最大限に活かすことを重視しました。
・自然の地形を生かした設計
・五感を使う体験(風、木漏れ日、土の感触、陽の光、音など)
こうした点を大事にしています。たとえば、森の中を駆け抜けるジップラインや、木と同じ高さに接するツリーアドベンチャーは、自然を感じながら遊ぶことができます。

ARシューティング「ジュラシックハンター」、「芝すべり」においても、県民の森の地形をそのまま生かしています。

―――今回のオープンを経て、林音として今後さらに強化していきたい取り組みや、描いておられる将来的な展望があればお聞かせください。

まずはオープン後のお客様満足度をしっかり高めていくことが第一ですが、そのうえで今後は以下のような展望を考えています。
・季節ごとの体験価値の拡充
花の見頃や樹々の変化を生かしたイベントなどを検討しています。
・学びのコンテンツの深化
校外学習や団体利用受け入れなど、教育機関との連携を考えています。
・地域連携の拡大
地元企業・クリエイターとの協業、特産品の活用など、地域活性にも貢献できる取り組みができたらいいなと考えています。
・植物園×ウェディングの創造
森の前の結婚式「森前式」など、オリジナリティの高いウェディングプランを創出できたらいいなと考えております。
こうした取り組みを通じて、「林音」が地域の皆さんとともに育っていく場所になり、訪れた方それぞれの思い出に、そっと寄り添える存在になれたら嬉しく思います。
■施設概要

所在地:〒311-0122 茨城県那珂市戸4369-1
公式サイト:https://rinne-resort.jp/
アクセス:
・常磐自動車道「那珂IC」より約15分
・JR常磐線「水戸駅」より車で約30分
・JR水郡線「上菅谷駅」より車で約10分
■各施設詳細・営業時間
おふろcafé りんねの湯:7:00~23:00(最終受付22:00)
りんね食堂(りんねの湯内):11:00~22:00(ラストオーダー21:00)
りんね・ぼうけんの森(アクティビティ):10:00~16:00(最終受付15:00)
熱帯植物館:9:30〜16:00
バニラドームカフェ(熱帯植物館内):11:00~16:00(ラストオーダー15:30)
RINNE CAFE:
・モーニング 7:00~10:00(宿泊者のみ)
・ランチ 11:00~16:00(ラストオーダー15:00)
・ディナー 17:00~21:00(土日祝のみ営業、ラストオーダー20:00)
・テイクアウト 11:00~16:00
THE FOREST BBQ(日帰りBBQ):10:00~17:00(予約制、最終受付15:00)
ドッグラン:9:00〜17:00
駐車場営業時間:7:00〜23:00※温浴施設の営業時間に準ずる