JNTOは2020年2月の訪日外客数が前年同月比58.3%減の108万5千人となったことを発表した。2019年2月の260万4千人を約152万人下回り、5か月連続で前年同月を下回った。インバウンドの過去の推移とともに今後の展望と関連業界が今なすべきことを考える。
中国市場87.9%減少、韓国市場79.9%減少
昨年は2月であった春節が今年は1月になったことの反動減に加え、新型コロナウイルス感染症が流行し、団体ツアー等の販売が禁止されたため中国市場が減速(前年同月比87.9%減)、韓国市場でも折からの日韓関係の悪化に加えて今般の感染症の拡大により79.9%減少。東アジア市場全体において訪日外客数が前年同月を大幅に下回った(東アジア4市場計で71.9%減)。
また、東南アジア市場や欧米豪市場でも前年同月比20%以上減少した国があったことが、訪日外客数全体が前年同月を大幅に下回る要因となった。
新型コロナウイルスの感染が拡大し、インバウンドに影響が生じ始めたのは1月後半からであり、訪日外客数の減少自体は日韓関係の悪化の影響により、韓国人観光客が激減しており、2019年12月までも3か月連続で前年同月を下回っていた。
国境規制の拡大により、訪日外客数は3月にはさらに落ち込む模様だ。
V字回復へ、短期の急減に耐え、反転攻勢へ準備を
新型コロナウィルス感染症が日本国内にそして世界的に蔓延が続いており、インバウンドも甚大な影響を受けている。厳しい試練にさらされている観光業界・ホテル業界だが、過去にも試練はあった。2009年のリーマンショックと2011年の東日本大震災である。
JNTO発表の値から2005年から2019年までの訪日外国人客数の推移をまとめたのが以下のグラフである。
リーマンショックの影響を受けた2009年には前年の2008年の835万人から679万人に156万人減少したが、その後2010年には861万人へとV字回復した。
また、2011年には東日本大震災の影響により、621万人へと240万人減少し大幅に落ち込んだ。
しかし、2012年には836万人と2010年の状態にほぼ戻り、翌年の2013年には大台の1,000万人の突破を果たし、その後は急激な上昇カーブを辿り、2018年2019年には3,000万人を超える客数を記録した。
今回の新型コロナウイルスの影響により、2020年の1-3月は半減ないし半減以下となることが見込まれる。また、イベント等の自粛により、より巨大な国内観光市場の縮小はさらに大きなインパクトを観光業界・ホテル業界に与えるだろう。
しかし、短期的な売上の急減は避けられないものの、感染症の終息後には災害とは異なり物理的な設備等への損害が生じているわけではないことや、経済の構造的な問題に起因する不況ではないため、楽観視はできないものの急激な回復を見通すことも可能であろう。
必要によっては政府や自治体等の支援を仰ぎつつ(今は耐えるとき、政府・民間の新型コロナウイルス支援・対策(3月16日更新))、不可抗力の感染症に耐え、終息後の反転攻勢へ向けて、これを機として最新テックやイノベーションを含めて検討を進めるなど組織の基盤強化を図ることが今は肝心と言えるのではないだろうか。
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