神戸市のビジネスホテル、分布状況
メトロエンジンリサーチによると、神戸市のビジネスホテルの分布状況は以下の通り。

出典:メトロエンジンリサーチ

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メトロエンジンリサーチによると、神戸市のビジネスホテルは「三宮〜元町〜新神戸」の都心軸を中心に高密度で集積。特に三宮駅周辺は、JR・阪急・阪神・地下鉄が集中する交通結節点であり、オフィス街・商業施設・観光拠点へのアクセス性の高さから、中〜大規模のホテルが連続的に立地するエリアを形成している。
地図からも確認できるように、主な集積エリアは①三宮・元町エリア、②ハーバーランド〜みなと元町周辺、③新神戸駅周辺の三つに大別できる。三宮〜元町ではチェーン系ホテルが軸となり、ビジネス・観光双方の需要をカバー。新神戸では新幹線アクセスを背景に出張利用を中心とした中規模ホテルが集まり、都心補完の役割を担っている。一方、ハーバーランドやみなと元町周辺では、ウォーターフロント再開発と連動した滞在型のホテルが増加傾向にある。
また、市域西部の兵庫・長田エリアや、東部の六甲アイランドなどの副都心・臨海エリアにも一定数の分布が見られる。これらは製造業や物流拠点に近接し、業務需要を意識したロードサイド型・ビジネス特化型の施設が中心だ。加えて、神戸空港アクセスを意識したポートアイランド周辺では、出張者・イベント利用者の滞在ニーズを捉える動きも見られる。
このように、神戸市のビジネスホテルは「三宮・元町を核とした都心集中型」と、「新神戸・ハーバーランド・六甲アイランドなどの副都心・臨海展開型」という二層構造を形成しており、都市型・観光型・業務型が共存する多面的な分布が特徴といえる。
神戸市のビジネスホテル、施設数の推移
緩やかな拡大から安定局面へ|再編と需要回復が交錯する神戸市場
神戸市におけるビジネスホテル・施設数の推移には以下の傾向が見られた。

出典:メトロエンジンリサーチ
神戸市のビジネスホテル数は、2019年時点で約46施設からスタートし、2021年にかけて一時的な増減を挟みつつも55施設前後まで増加した。その後は微減傾向を経て、2023年以降は52〜54施設の範囲で横ばい推移している。全体としては「新規開業期を経た後の安定局面」に入ったといえる。
背景には、三宮・元町エリアを中心とした再開発による新規開業が供給を押し上げた一方で、コロナ禍を契機とした老舗ホテルの閉館やブランド再編が進んだことがある。特に2021〜2022年にかけては、一時的に新規供給が集中したが、その後は稼働回復を見据えた既存施設のリニューアルやブランド転換が中心となっている。
注目すべきは、施設数の増減が落ち着いた今も、市場全体の質的変化が進んでいる点だ。最近では、ワーケーションや観光需要を意識した滞在型のビジネスホテルが増加しており、従来の「出張利用」に加えて、「働く+滞在する」というハイブリッド需要への対応が顕著となっている。
考察
神戸市のビジネスホテル市場は、量的拡大の段階を終え、再編と質的転換のフェーズに入っている。今後は都心再開発やポートアイランド再整備、国際会議・展示会(MICE)需要の回復などを背景に、施設数の安定化を維持しつつ、付加価値競争が一層加速すると見込まれる。
神戸市のビジネスホテル、部屋数の推移
供給拡大から安定化へ|中規模ホテルの増加と再編がもたらす均衡
神戸市におけるビジネスホテル・部屋数の推移には以下の傾向が見られた。

出典:メトロエンジンリサーチ
神戸市のビジネスホテルにおける客室数は、2019年時点で約5,500室からスタートし、2021年にかけて7,500室前後まで急増。その後は微減を経て、2023年以降は7,000室前後の水準で推移している。全体としては「急速な増加期を経た安定局面」に入ったといえる。
増加をけん引したのは、三宮・元町エリアや新神戸駅周辺における中規模チェーンホテルの新規開業である。再開発エリアを中心に、新ブランドやリブランド案件が相次いだことで、2020〜2021年にかけて客室供給が一気に拡大した。一方で、コロナ禍を背景とした一部施設の休業・閉館や改装期間の供給減もあり、2022年以降はやや調整局面を迎えた。
1施設あたりの平均客室数は概ね130室前後で推移しており、名古屋や大阪のような大型供給よりも「中規模・高効率型」の出店が主流となっている。これは、観光・出張の両需要を柔軟に取り込み、エリア特性に即した運営モデルが選好されていることを示している。
考察
神戸市のビジネスホテル市場における客室供給は、量的拡大の段階を終え、今後は需要回復と施設リニューアルを軸にした質的成長フェーズへ移行している。再開発の進展により、三宮・ハーバーランド・新神戸を結ぶ都市軸での供給は引き続き底堅く、MICEやインバウンド需要の取り込みを視野に、客室機能の高度化が進むことが期待される。
神戸市のビジネスホテル、稼働率の推移
急落からの回復と安定化|全国平均を上回る底堅い推移
神戸市のビジネスホテルの稼働率の推移を全国平均と比較して分析すると、以下のような傾向が見られた。

出典:メトロエンジンリサーチ
神戸市のビジネスホテル稼働率は、全国平均と同様に2020年初頭のコロナ禍で急落し、25%前後まで低下した。その後は段階的に回復し、2021年には40〜60%台を推移。2022年以降は全国水準をわずかに上回るペースで改善し、2023年以降は70%前後の安定帯に到達した。直近(2024〜2025年)では繁忙期に80%台を記録する月も見られ、堅調な回復基調を維持している。
特徴的なのは、兵庫県全体の稼働が全国平均とほぼ連動しながらも、神戸市が県内平均をけん引する形で推移している点だ。ビジネス・観光・MICEといった複合需要が重なり、全国的にも回復速度が早いエリアの一つとなっている。特に2023年以降は、三宮再開発や神戸空港の国際化方針といった都市インフラの動きが追い風となり、稼働率の下支えに寄与したと考えられる。
考察
神戸市のビジネスホテル市場は、急落後の回復フェーズを経て、70〜80%の安定帯を形成している。供給が横ばいで推移する中、稼働が全国平均を上回っていることは、都市としてのブランド力と需要の分散構造が機能している証左といえる。今後はインバウンド回復や港湾エリア再開発、MICE需要の拡大が加わり、稼働率の上振れ余地が期待される。
神戸市のビジネスホテル市場の今後の展望
再開発と空港強化が導く新局面|都市と海がつなぐ滞在価値の進化
足元のデータを見ると、神戸市のビジネスホテル市場は施設数・客室数ともに横ばいで推移し、稼働率は全国平均を上回る70〜80%台の安定帯を維持している。一見すると落ち着いた局面にあるように見えるが、その内側では“質の変化”が静かに進行している。
再開発が進む三宮エリアを中心に、街の機能再編とともにホテルの役割も変化している。ビジネス特化型から、ワーケーション・長期滞在・観光複合型へと多様化が進み、単なる宿泊拠点から“都市体験の一部”として位置づけられるホテルが増えている。ハーバーランドやポートアイランドではウォーターフロントの再整備が進み、海を望むロケーションを活かした新しい滞在価値の創出が期待される。
また、神戸空港の国際線化や関西圏全体のインバウンド回復も大きな追い風となる。大阪・京都との回遊需要が高まる中で、神戸は「港町としての独自の魅力」と「ビジネス拠点としての利便性」を併せ持つ都市として、国内外のビジネス客・観光客の双方を惹きつけるポジションを強化していくだろう。
展望
神戸市のビジネスホテル市場は、量的成長から質的深化の段階へと移行している。
再開発・空港国際化・観光資源の再評価という三つの軸が重なり合うことで、“都市と海が共鳴する滞在都市・神戸”の姿がより鮮明になるだろう。派手な新規開発以外の選択肢として、既存ストックの磨き上げと体験価値の向上を通じて、神戸は再び「選ばれる滞在都市」としての地位を確立していくことが期待されている。
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