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東京の新規ホテル開業:人材育成・確保の新たな展望と戦略

投稿日 : 2023.06.15

新規ホテル情報

ホテル統計データ

2023年6月最新の東京23区の新規開業ホテル情報と、新規ホテルの傾向からうかがえる、必要な人材の育成・確保についての考察をお伝えする。

東京23区の新規ホテル開業の状況

メトロエンジンリサーチによると、東京23区では2023年6月から2040年5月までの期間に70施設・15,099室の新規ホテルの開業が予定されている。

新規ホテル開業は港区・中央区に集中

港区・中央区には、東京23区新規ホテル開業の約46%を占める32施設が集中している。

順位

東京23区 施設数 割合

1位

港区

20 施設

28.6 %

2位

中央区 12 施設 17.1 %

3位

渋谷区 8 施設 11.4 %

4位

千代田区

7 施設 10.0 %

台東区

7 施設 10.0 %

6位

大田区 4 施設 5.7 %

7位

北区 3 施設 4.3 %

8位

品川区

2 施設 2.9 %

新宿区

2 施設 2.9 %

9位

板橋区 1 施設 1.4 %
江戸川区 1 施設 1.4 %
豊島区 1 施設 1.4 %
江東区 1 施設 1.4 %
中野区 1 施設 1.4 %

合計

70 施設

出典:メトロエンジンリサーチ

新規開業ホテルを一部紹介

JWマリオット・ホテル東京

「JWマリオット・ホテル東京」は、計5棟の複合棟のうち、高輪ゲートウェイ駅前に誕生する高層ビルの23階から30階に2025年3月にオープン予定だ。

客室は、ラグジュアリーなスイートルームを含めた約200室を備え、セミオープンキッチンや寿司バー、ライブクッキングステーション、ビュッフェカウンターを備えたオールデイダイニング、本格的なフレンチなど各国料理を楽しめるスペシャリティレストラン、ロビーラウンジ併設のクロワッサンバー、エグゼクティブラウンジなどの提供も計画されている。

内装デザインには、「ザ・ロンドン・エディション」など世界のマリオットホテルでもデザイン実績のあるヤブ・プッシェルバーグを起用し、日本の「禅(ぜん)」から着想した深い藍色をアクセントカラーとした、訪日外国人を視野に入れた空間が作り上げられる。

フェアモント東京

 「フェアモント東京」は、東京港から東京都心のパノラマビューが広がる上層階に位置し、スイートを含む全219室のゲストルーム、3つのレストランとバー、スパ、フィットネスセンター、プール、バンケット、カンファレンス、チャペルを備え、2025年12月にオープン予定だ。

「フェアモント」は欧州最大手のホテルグループであるアコーのラグジュアリーホテルブランド。1907年の創業以来、世界に80を超えるホテルを展開しており、歴史と伝統を持ち地域から敬愛されるホテルとして知られているが、日本へは今回初進出となる。

インテリアデザインには、世界各国で数多くのラグジュアリーホテルを手掛けるBAR Studio(本社:オーストラリア・メルボルン)を起用し、東京の新たなアイコンとなるラグジュアリーホテルを創り上げることで、国際観光都市としての東京の価値を高め、さらなる賑わいの創出と国際競争力の向上が期待されている。

ウォルドーフ・アストリア東京日本橋

「ウォルドーフ・アストリア東京日本橋」は、オフィス、商業店舗、サービスアパートメント等の複合施設の39階~47階まで9フロアに60㎡以上のゆったりとしたキングルーム含め全197室の客室と、3つのレストランとウォルドーフ・アストリアの象徴ともいえるラウンジ&バー「ピーコック・アレー」、屋内プール、スパ、フィットネスセンター、宴会場、チャペルを備え2026年12月にオープン予定だ。

ウォルドーフ・アストリアは、今回日本初進出となるヒルトンの最上級ラグジュアリーブランド。1893年に米国ニューヨークでの開業以来、世界のランドマークとなる場所で、現在32軒を展開しており、ブランドの象徴であるお客様一人ひとりに合わせたきめの細かいサービスを提供し、生涯忘れられない体験を届けている。

羽田空港から約20kmの距離に位置し、東京駅から徒歩圏内にあることに加え東京メトロ銀座線および東西線、都営浅草線「日本橋駅」直結、様々な観光スポットへのアクセスに便利な立地となっており、江戸時代に五街道の起点として文化・経済・商業の発信地として栄えた「日本橋」において、都市機能の多様化と賑わいづくりが期待されている。

目立つ、海外ラグジュアリーホテルブランドの進出

港区・中央区を中心とした、東京23区の新規開業ホテルの傾向は、訪日外国人をターゲットにした「海外ラグジュアリーホテルブランドの進出」が非常に目立っている。近年、都市再開発プロジェクトが多数進行している東京では、海外ラグジュアリーホテルブランドが進出する複合施設の建設が相次いでいる。

東京はすでに訪日外国人に人気の都市ではあるが、海外の富裕層が求める水準のホテル供給不足は長年指摘されていたところだ。近年の海外ラグジュアリーホテルブランドの進出は、東京を訪れる訪日外国人富裕層にとって、世界標準のサービスを受けることができる安心感につながることは間違いなく、国際観光都市・東京の価値がさらに高まることが期待されている。

人材育成・確保の新たな展望と戦略

多言語対応のトレーニングプログラムの導入

訪日外国人の受け入れには、多言語対応が必要不可欠。ホテルのスタッフに対して、主要な外国語(英語、中国語、韓国語など)を学ぶ機会を提供するトレーニングプログラムを導入が必要になるだろう。多忙を極めるホテル現場を考慮すると、隙間時間に学習できるオンラインプラットフォームの活用が現実的ではないだろうか。

外国人労働者の採用と育成

現地言語や文化に精通した外国人労働者の積極的な採用を行い育成することも重要な戦略だ。同時に、文化の違う外国人労働者を雇用することは、従来の日本人スタッフとのミスコミュニケーションが起こりやすくなることも想定される。そのためにも、外国人労働者との交流を促進するために、文化交流プログラムやイベントを開催するなど、スタッフ同士の相互理解を深める努力も必要になるだろう。

インバウンドマーケットに特化した採用戦略の策定

言語の側面からみた採用活動ももちろん重要だが、外国人旅行者のニーズや文化的背景に理解のあるスタッフを採用することも重要だ。海外での採用活動、留学生との連携、外国人留学生向けのインターンシッププログラムの実施など、インバウンドマーケットに特化した採用戦略を策定することも、視野に入れる必要があるだろう。

まとめ

東京23区の2023年6月から2040年5月の新規開業ホテルの傾向を考察する中で、インバウンド(訪日外国人)への対応は避けては通れないだろう。理由は、東京を中心に海外ラグジュアリーホテルブランドの進出が相次ぐことで、必然的に注目が集まり、そのシャワー効果で様々なエリア・ホテルに訪日外国人が訪れることが予測されているからだ。

ホテル業界にとって厳しい時期が続いたコロナ禍に終わりが見えはじめ、今後の訪日外国人の増加は非常に大きなチャンスとなる。そのためにも、短期・中期に向けたインバウンド対応人材の育成・確保が非常に重要な戦略となってくるだろう。

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