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ドンキ/ホテル開発でインバウンド需要の囲い込みへ【前編】

投稿日 : 2018.10.16

大阪府

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インバウンド需要で好調なドンキが今期1兆円小売業の仲間入りを果たす見通しだが、この大手小売チェーンがホテル事業への新規参入を発表、ホテル大規模開発に乗り出した。この背景にはどんな戦略があり、狙いはどこにあるのか?前編と後編に分けてお送りする。

訪日客は何をどこで消費しているのか

はじめに、訪日外国人の旅行消費額を見てみよう。

■訪日外国人旅行消費額(費目別構成比)

出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査 2017」

【消費ランキング TOP3】

1位 買物代 ・・・37.1%(16,398億円)

2位 宿泊料金 ・・・28.2%(12,451億円)

3位 飲食費 ・・・20.1%(8,857億円)

インバウンド需要の恩恵を受けている業界は1位が小売業、2位が宿泊業、3位が飲食業で、この3つだけで85.4%を占めている。

つぎに、訪日外国人の購入商品・買い物場所を見てみる。

■費目別購入率および購入単価 (主要国籍・地域別、複数回答可)

出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査 2017」

■買い物場所 (全国籍・地域、複数回答可)

出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査 2017」

【購入商品ランキング TOP3】

1位 菓子類 ・・・67.5%

2位 その他食料品、飲料、酒、たばこ ・・・63.1%

3位 医薬品、健康グッズ、トイレタリー ・・・53.0%

【買い物場所ランキング TOP3】

1位 コンビニ ・・・71.3%

2位 ドラッグストア ・・・68.3%

3位 空港の免税店 ・・・65.5%

購入商品は加工食品や日雑品が多く食品メーカーや日雑品メーカーがインバウンド需要の恩恵を受けており、買い物場所もこういった生活必需品がホテル周辺で身近に手に入りそうな小売業態が多い。

急成長のドンキ、インバウンドで成功

訪日外国人のこういったトレンドの取り込みに早くから成功している小売業がある。

総合ディスカウントストア及び総合スーパーのドン・キホーテグループだ。

ドンキホーテは国内だけで384店舗(2018年8月31日現在)を展開する大手小売チェーンで、今期(2019年6月期)の売上高が1兆円に達する見通しもあり好調だ。

日本の小売業で売上高1兆円を超えているのは6社のみで、達成すれば7社目の1兆円小売業となる。

また、創業以来29期連続増収増益というのも偉業だ。

■ドンキホーテの売上高・営業利益

出典:ドンキホーテHD

ドン・キホーテが好調な理由は徹底したインバウンド需要への戦略だが、その戦略は小売業界の中でも群を抜いている。

インバウンド需要への戦略の1つとして重要なのが免税制度だが、ドン・キホーテは免税対応店舗数が322店舗(2018年6月25日現在)と日本一で、免税客単価・客数・売上高構成比のどれをとっても高い。

■免税客単価・客数の推移(客単価:橙、客数:緑)

出典:ドンキホーテHD

■免税客単価(国籍別)

出典:ドンキホーテHD

■免税売上高構成比(上位10店)

出典:ドンキホーテHD

ドン・キホーテは2014年10月以降の新免税制度による対象品目拡大(食品・飲料・化粧品・薬品が加わる)で客数が伸び、2016年5月以降の免税購入下限額の引き下げ効果で現在まで客数が伸び続けている。

免税客単価も国内平均の4.6倍と高水準で、免税売上高構成比上位10店の免税売上高構成比平均も51.2%と、実に売上高の半分以上が免税売上高となっており、インバウンド需要への戦略として免税制度が重要なのはこれを見てわかる。

免税制度は訪日外国人を対象に各種手続きが必要となるが、ドン・キホーテはタブレットを介したネイティブスタッフによる免税アドバイザーサポートもあり安心だ。

ほかにも、多言語対応や無料Wi-Fi整備、24時間営業、コインロッカー整備、店舗から空港へ直接配送サービス、訪日外国人向けECサービス(帰国後も各国の自宅へ配送)などサポート面も非常に充実しており、これらが免税売上高の伸長に貢献しインバウンド需要の拡大に成功している。

ドンキ周辺のホテル需要、道頓堀御堂筋店

訪日外国人の買い物場所は、ホテル周辺で生活必需品が身近に手に入りそうな小売店が多いことは前述のとおりだが、インバウンド需要獲得のためドン・キホーテはこの立地への戦略もすごい。

ここで、免税売上高構成比1位の「ドン・キホーテ道頓堀御堂筋店」(大阪市中央区)の半径2km圏内には、宿泊施設がどのくらいあり、訪日外国人の宿泊客国籍構成比がどのくらいなのかについて調査してみた。

メトロエンジンリサーチによると、「ドン・キホーテ道頓堀御堂筋店」の半径2km圏内には、既存の宿泊施設が386施設(31,404部屋)、新規開業予定の宿泊施設が60施設(推定8,861部屋)ある(民泊を除く、2018年8月末現在)。

全国で1㎢あたりの部屋数が最も多いエリアはこの大阪市中央区でもある。

また、半径2km圏内にあるいくつかのホテル(調査対象は300室以上)の訪日外国人の宿泊客国籍構成比(レビュー投稿をもとに調査)TOP3を調査(対象期間2017年7月1日〜2018年6月30日)したところ、1位は香港、2位は台湾、韓国が同順位、4位は中国だった。

■「ドン・キホーテ道頓堀御堂筋店」半径2km圏内の宿泊施設情報MAP

(紫のハウスマークは新規出店予定、緑青色サークルは既存店で大小は部屋数を示す、赤い斑点は民泊物件)

出典:メトロエンジンリサーチ

■「ドン・キホーテ道頓堀御堂筋店」周辺の宿泊客国籍構成比(一例)

出典:メトロエンジンリサーチ

「ドン・キホーテ道頓堀御堂筋店」の周囲にはこれだけのホテルがあり、これらホテルの訪日外国人の宿泊客国籍構成比TOP3と免税客単価(国籍別)上位国が一致しているところを鑑みると、この店舗立地は周囲のホテルのインバウンド需要獲得に大きく貢献しており土地への戦略が成功しているといえる。

免税売上高構成比(上位10店)TOP3のうち、「ドン・キホーテ道頓堀店」と「ドン・キホーテなんば千日前店」も実は大阪市中央区に位置する店舗で、このことからも、ドン・キホーテの立地への戦略は非常に徹底していることが伺える。

前編ではインバウンド需要で好調なドン・キホーテの戦略と大阪市中央区の宿泊市場概況との関連性についてお届けした。

後編ではドン・キホーテのさらなるインバンド需要への戦略であるホテル事業への参入とその見通し、小売業のインバウンド需要囲い込み戦略についてお届けしたい。

 

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