2017年を振り返ると、米国のホテル業界も日本同様、大変好調で稼働率6割以上と記録的な数字を残した。しかしながら、視点によってその現状評価や2018年の見通しは異なる。「Hotel News Now」による、米国ホテル業界の現状と今後の見通しを要因ごとにまとめた。
プラスになりそうな要因
2017年における米国内のホテル稼働率は65.9%と、ホテル業界データのプロバイダー、STR社が1987年に調査開始して以来、最も高く記録的な数字を残した。
管理費や営業外収益、必要経費などを含む利用可能な客室ごとの営業総利益(GOPPAR)を見ると、2016年は2009年の約7割増となる26,520米ドル(約290万円)だった。事業用不動産企業のCBREは、2017年を3%増、2018年を1.8%増と見込む。さらに、客室ごとの収益(RevPAR)も2018年は増加の見通しで、それが実現されれば9年連続の成長となる。
連邦準備金制度(FR)は2017年に3回、計0.75%の利上げを実施したものの、依然として金利は歴史的な低さで、開発事業や企業買収などの資金調達環境は極めて良い。セントルイス連邦準備銀行の米連合準備理事会(FRB)は、目標範囲とするフェデラルファンド金利の中間点を2018年は2.1%、19年は2.7%、2020年は3.1%に設定。1990年以来、フェデラルファンドの利率は8.25%まで上昇している。
2017年12月時点で、建築中や計画段階のものを含む契約客室数は58万8,645室。17年7月の59万1,865室の0.5%減で、2012年1月の0.8%増と堅調に開発が進んでいるのもプラス要因と言える。
マイナスとなる要因
大型開発はホテルチェーンやデベロッパーにとって有益な反面、経営中のホテルにとっては利用者が奪われる可能性もあり、諸刃の剣となっている。
開発は堅調なものの、建築中のものを含む契約客室数の成長率は2016年9月以降、下降気味。客室建築数は年々増加しているが、2017年10月には2011年後半以来、初めて前年比減、12月には建築中の客室が前年比3.7%減となった。
さらに販売可能な客室1室あたりの売上(RevPAR)の成長率は、2014年以来減少傾向にあり、2018年も同様に減少傾向にあると見込まれている。
最新の調査によると、米国を訪れた外国人は前年比で2016年は2.1%減、2017年7月時点では4%減だった。2016年以前で前年比を割ったのは、5%減だった2009年以来。これはトランプ大統領によるイスラム教徒への渡航禁止令や違法移民の取り締まり強化によるものと、業界では考えている。
脅威となる要因
新ブランドの立ち上げは新たなビジネスチャンスとなる一方で、既存のホテルとの競合にもなる。顧客ベースを細分化することで、これまで既存ホテルがターゲットとしていたグループに適合しなくなる可能性もある。
また、最低賃金の引き上げも注視が必要だ。2017年には21州が最低賃金を引き上げ、2018年には18州もこれに続く。最低賃金の引上げは、業務の効率化を図り、結果、従業員の削減につながることもある。モバイルデバイスによるチェックインなどに加え、ロボットを利用したルームサービスやコンシェルジュを始めているホテルもある。
Morgan Stanleyによると、2017年はAirbnbによるホテルのカニバリゼーション(共食い現象)は51%で、2018年には54%に増加すると見込まれる。ただし、プラットフォームの選択成長率は縮小していると考えられ、2018年では31%、2019年では37%、2020年では43%と見込んでいた成長率をそれぞれ、28%、30%、31%と下方修正している。
チャンスになりそうな要因
オンライン旅行代理店との手数料交渉、ベンダーとの経済規模の拡大、ロイヤリティー・プログラムへの参加者の増加など、業界再編がホテル業者に好影響を与え、チャンスとなり得る。
2017年11月のAmerican Hotel &Lodging Association向けの調査によると、税政改革の影響で、ホテルの宿泊客がホテルや周辺エリアで費やす金額が次の5年間で570億米ドル(約6兆2,600億円)に増加し、2018年のGDPを3%押し上げるという。
また、ホテル業者は、業務の改善や宿泊客の快適な滞在などに結びつく技術の導入を模索している。デジタルキーをはじめ、室温や照明、テレビなどのコントロールをスマホでできるシステム、ヒルトンの「Connected Room」、マリオットの「Internet of Things」などが今年からスタートする予定となっている。
2017年には、ヒルトンの「Tapestry Collection」やベスト・ウェスタンの「Signature Collection」、インターコンチネンタルの「Avid」など、複数のホテル企業が新しいブランドをローンチ。既存のホテルと異なるターゲットを狙った新ブランドを展開している。
既存ホテルチェーンの新ブランド立ち上げも注目すべきだろう。
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