AIやIoT機器の導入・普及により変貌を遂げるホテル業界の2019年。「ガイドブックを超える体験の発信」をコンセプトに、AI活用スマホチャットのBebot(ビーボット) を提供するビースポーク社。そのサービスの特徴や今後の展開について同社代表の綱川明美氏と執行役員の長野資正氏にお話を伺った。
「ガイドブックを超える体験」を世界に発信
日本を訪れる外国人旅行者は2018年には3,000万人を突破、近年ではいわゆるゴールデンルートと呼ばれる東京から京都、大阪にいたる大都市圏を中心とした観光から、個人旅行者による地方観光へとその多様性も増してきている。
世界から日本に集まる多国籍の旅行者の抱える多様なニーズに対して応えるためにまず障壁となるのが、 “言葉の壁” だろう。
ビースポークは、現・代表取締役社長の綱川明美氏 が、「ガイドブックを超える体験の発信」をコンセプトに、国内外の優秀な外国人エンジニアを集めて、多言語対応のAIチャットによるコンシェルジュサービスの開発に着手。2016年夏にBebotをスタート。現在は26名のスタッフのうち、日本人スタッフは4名のみという国際色あふれる企業だ。
少子高齢化にともなう労働不足のなかで 、枯渇する多言語人材に代わり、 AIを使って「辞めずに」「休まず」外国人旅行者の問い合わせに答えるコンシェルジュサービス「Bebot」が宿泊施設や公共交通機関、自治体などに急速にその導入先を広げ、訪日客の各種の問い合わせに、24時間自動応答している。
利用者は、スマートフォンで専用サイトにアクセスし、チャットで質問するだけで、すぐに返事が返ってくる。アプリのダウンロードなども必要ない。対応言語は、英語と中国語。中国語は繁体字と簡体字のどちらも使える。
同社執行役員の長野資正氏によれば、「Bebotと会話している訪日外国人は、一日平均で約3.5万人、延べ数で年間1,000万人超の人々が利用しています。訪日客へのリーチ率、そして、ユーザーエンゲージメントの高さが特徴です。
導入施設の特徴としては、第一にインバウンド(訪日客)の占める顧客比率の高い施設、第二に、ハイシーズンに限りインバウンド比率が高くなるため、常備の多言語人材を置く余裕のない施設、第三に、今後訪日客の取り込みを狙っていこうとする潜在性の高い施設です。
利用した外国人旅行者の評判は上々で、ウェブサイト上の口コミなどの評価によってサービスの向上に伴う、導入施設のレピューテーションの構築にも役立っています」とのこと。
導入の用途は、ホテルから交通機関、自治体、そして世界へ
また、導入の用途はかつてはホテルニューオータニ、ソフィテルホテル、ホリデイ・イン、ロイヤルパークホテルズ、サンルートホテルなどホテルが中心だったが、現在ではホテルに加えて、JR東京駅や成田国際空港などの公共交通機関から地方の観光都市の自治体においても広がりだした。
成田国際空港での導入では、施設内のFAQ(頻繁に尋ねられる質問)にAIチャットボットが回答することで、大幅な利便性の向上や窓口混雑の緩和が実現、加えて、空港利用者の隠れたニーズの把握にも貢献。
株式会社ジェイアール東日本企画との業務提携では、東日本エリアおよび全国における地方自治体、DMOなどの様々な観光関係事業者等のインバウンド受入環境整備を支援し、外国人観光客受入における課題の解消、サービスの向上によるリピート来訪や新規来訪促進、および訪日外国人の「Bebot」利用データを将来的にDMP(Data Management Platform)へ蓄積し、デジタルマーケティングを推進することを狙う。
代表取締役社長の綱川明美氏に、同社の2019年と今後の展開について聞いた。
「訪日外国人観光客の皆さんに、また日本に来たい、このホテルに泊まりたいと思ってもらえるのがビーボットの目的。彼らの心をつかむ温かいコミュニケーションが出来る人工知能としてもっと成長させていきたい。国内では、導入施設を地道に増やし、点から線、そして面として広げ、Wi-Fiのようなインフラを目指します。(詳細はお伝え出来ませんが)並行して、海外展開も仕込んでいきます」
政府は2020年4,000万人、2030年には6,000万人の訪日外国人観光客の来日を目指している。多くの日本人にとって外国語は不得手だが、技術によるソリューションは日本らしい解とも言える。国際色豊かなスタッフ構成で、同社がAIによる温かいコミュニケーションを提供する。
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