日本が推薦していた「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本県)について、ユネスコ世界文化遺産への登録が決定した。次に日本が登録を狙うのは、世界自然遺産への「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島、沖縄県)の登録である。奄美大島のホテル出店状況と登録に向けた課題を追った。
奄美大島の世界自然遺産への動き
2003年、環境省と林野庁による「世界自然遺産候補地に関する検討会」において、奄美群島を含む「琉球諸島」は、大陸との関係において独持の地史を有し極めて多様で固有性の高い亜熱帯生態系やサンゴ礁生態系を有している点、また優れた陸上、海中景観や絶滅危惧種の生息地となっている点が高く評価され、「知床」(2005年登録),「小笠原諸島」(2011年登録)とともに,世界遺産の登録基準を満たす可能性が高い地域として選定された。
2017年2月、政府は「奄美大島,徳之島,沖縄島北部及び西表島」の世界遺産登録推薦書をユネスコ世界遺産センターに提出した。
本年5月、ユネスコの諮問機関であるIUCN(世界自然保護連合)により、より綿密な調査や推薦書の本質的な改定が必要とされ世界遺産一覧表への「記載延期」が適当との勧告がなされた。これを受けて政府は一旦推薦を取り下げることを決定したが、2020年の登録に向けて再度見直しを行い推薦を行う予定となっている。
出典:鹿児島県
奄美市のホテル出店状況
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が世界自然遺産に登録されれば、数多くの観光客が訪れることは確実。その動向はまだ不確かだが、奄美大島は本年、NHK大河ドラマ「西郷どん」の舞台にもなっており、今後のユネスコ世界遺産への登録の動向と合わせて注目が高まっている。そこで奄美大島のホテル出店状況を確認してみよう。奄美大島は5市町村からなっており、その中心は奄美市である。
メトロエンジンリサーチによると、奄美市には現在宿泊施設が54、部屋数にして1,028が提供されており、新設予定のホテルは確認できなかった。
提供されているホテルは、ビジネスホテル(604室)で約6割、リゾートホテルやシティホテル(285室)で約3割の客室を占め、残り139室は旅館や簡易宿所によって占められている。
客室数トップ10は以下の通り。
出典:メトロエンジンリサーチ
奄美大島では8月2日-5日にかけて奄美まつりが開かれ花火大会や舟こぎ競争、相撲大会などが開催される予定。
出典:奄美市
ユネスコ世界自然遺産登録の鍵は
ユネスコの世界自然遺産は国内には下記の通り、4箇所が登録されており、知床、白神山地、小笠原諸島、屋久島となっている。
出典:環境省
「奄美大島,徳之島,沖縄島北部及び西表島」の推薦において政府は、大陸から分離し、小島嶼が成立する過程において、地史を反映した独自の生物進化がみられることや国際的にも希少な固有種に代表される生物多様性保全上重要な地域であるとしている。
ただし、これまで世界自然遺産に登録された知床ではヒグマに心無い観光客が餌をやることなどにより、人の生活圏にヒグマが接近し人身事故が発生したり、屋久島においても入山者の増加により屋久杉が傷つけられるなどの被害が発生しており、自然環境が十分保全できているとは言い難いのも事実だ。
出典:知床財団
世界自然遺産の登録にあたっては、地元住民の理解や協力を得ながら、観光開発により自然環境が負の影響を受けないことを担保できるかどうかが「奄美大島,徳之島,沖縄島北部及び西表島」の今後において鍵となりそうだ。
【関連記事】
「環境省が国立公園への訪日客誘致で官民パートナーシップー霧島錦江湾国立公園、鹿児島市ホテル出店状況」
「長崎と天草「潜伏キリシタン」世界遺産登録へ」
「藤田観光が長崎五島に北欧ビレッジを本年8月オープンー五島列島の観光トレンド」