株式会社JTB総合研究所は、2024年3月に実施した「旅行に対する今の気持ち:国内旅行・海外旅行への意識調査」の結果を発表した。2023年5月の新型コロナウイルス感染症に関する水際対策緩和以降、多くの訪日外国人旅行者が日本を訪れ、インバウンド旅行は順調に回復している。しかし、日本政府観光局(JNTO)の推計によると、2024年4月の日本発の海外旅行者数は2019年比で46.7%減少しており、コロナ前の水準には戻っていない。また国内旅行についても、旅行支援制度の減少や物価高、リベンジ旅行の一巡などにより、一旦落ち着きを見せている。
(出典:株式会社JTB総合研究所)
調査結果によると、30~50代の女性のうち56~58%が「生活に余裕がない」と感じており、全体的に消費は節約モードにある。物価高の中、2024年4月の家計調査では勤労者世帯の実質実収入が19か月連続でマイナスとなり、「家計に余裕はない」が48.4%と最も高く、趣味や旅行も含めて節約する傾向が強まっている。
(出典:株式会社JTB総合研究所)
年内に国内旅行を計画している人は全体の約半数で、旅行の最大の目的は「食事、地域の味覚を味わう」が42.4%であった。多くの旅行者にとって、旅行先の味覚を味わうことが旅の重要な要素となっていることがうかがえる。
(出典:株式会社JTB総合研究所)
また、インバウンドの増加に伴うホテル価格の上昇や観光地の混雑の影響が国内旅行者にどの程度影響しているかについては、ホテル価格の上昇はファミリー層が多いと考えられる女性30代、観光地の混雑は60歳以上の熟年層に特に大きく影響している。
2024年3月に北陸新幹線の金沢-敦賀間が開業し、東京や大阪からの所要時間が短縮された。延伸した北陸新幹線を利用した旅行を希望する人は全体の12.1%であった。特に富山県、福井県、埼玉県、神奈川県、長野県の居住者の利用意向が高く、東日本の旅行者の意向が高い傾向が見られる。さらに、年内に海外旅行を計画している人は全体の8.7%で、20代が15.5%と高い割合を示している。年間の平均旅行回数はコロナ前と比較して減少しているが、20代ではやや増加傾向が見られる。最も旅行回数が減少したのは60歳以上の男性であった。
(出典:株式会社JTB総合研究所)
今後、海外旅行へ行くきっかけになりそうなこととしては、「円高が進めば」や「休みが取れれば」が上位を占め、熟年層に関しては「テロなど治安への不安がなければ」や「良いプランや宿泊施設が取れれば」などが挙げられる。20代では、同行者の存在や手続きの簡便さが旅行の後押しになる可能性があるとされる。旅行手続きの簡単さを求める傾向も強く、スマホ利用が中心の20代にとって、簡単な手続きが旅行意欲を高める鍵となりそうである。