東京都がユニークベニューを推進するため2018年度支援事業を実施する。ユニークベニューにはホテルとの競争の側面もある。
東京都ユニークベニュー施設助成事業
公益財団法人東京観光財団(TCVB)が4月25日に発表した内容によると、東京都とTCVBは、ユニークベニューの会場となる施設の機能強化に向けて施設の所有者等が行う設備導入等の取組(設備の導入、設置工事等)を支援する。
ユニークベニューとは、歴史的建造物、文化施設や公的空間等で、会議・レセプションを開催することで特別感や地域特性を演出できる会場のことを指し、近年MICEの中でも特に注目されている取り組みである。
公募対象は、都内に所在するユニークベニューの会場となる施設の所有者・管理運営事業者等で、歴史的建造物、文化施設、庭園、アミューズメント施設等 (神社・仏閣を除く)を主な対象とする。
条件としては、ホテル内の宴会場等、会議・レセプション等での利用を前提としている施設は除き、また、50名以上が立食できるスペースを有していることなどがある。
助成上限額は、1施設当たり500万円を上限として助成し、助成率は2分の1。
助成対象経費としては、機器/備品購入費、設置工事費(レンタル機器に係る経費を除く)、機器の設置に伴う改修費、制作費、印刷製本費、翻訳費などとなっている。
詳細は、TCVBサイトを参照のこと。
歴史的施設の保護と好循環も
ユニークベニューはイギリスで提唱された概念で、西欧や北欧、オーストラリアなどで盛んに取り組まれており、古き歴史ある城の庭園でのスポーツ大会や美術館内でのカクテルパーティ、宮殿内でのディナーなどイベントも各種多様であり、「ユニーク」なものとなっている。
参加者には歴史建造物や美術品などへのリスペクトが求められ、その保存には大きな注意を必要とするが、そうした施設内でのイベントの開催は主催者にとっては名声につながるものであり、参加者にとってはVIP感を高めることで、非常に高価な料金を設定することが可能である。そうした料金の一部は施設の保存のための予算にも使用されうることから、好循環が期待されている。
日本では京都がユニークベニューの先進都市として知られているが、今後都内でもこうした取り組みが広がるかどうか、2020年東京五輪に向けて大規模なスポンサー企業のパーティなども多数予定されることから、活用に道を開けるか注目される。
ホテルの宴会場との競争も
企業のパーティなどは、ホテルの宴会場が活用されることが従来多かったため、既存のシティホテルやリゾートホテルにとってはユニークベニューは競合とも捉えられる。
他方で歴史的・文化的な価値がある建造物の宿泊施設についてはユニークベニューとも位置付けられることから、その助成対象となることも可能だ。
ユニークベニュー推進の背景には紋切り型のイベントへの飽きを嫌う傾向があるため、ホテル側が趣向を凝らしたコンテンツでユニークさを出せれば、これに対抗することも可能と言えるだろう。