バリューマネジメントグループの風のヘリテージ株式会社が、歴史的建造物の保存・利活用を軸にした新ホテルブランドシリーズ「Kazeno Heritage(風のヘリテージ)」を始動した。旅を「消費」から「回復と再生」へ捉え直し、滞在そのものを文化継承への参加につなげる「リジェネラティブ」なモデルを掲げる。
第一弾は国指定重要文化財を一日3組限定の宿へ再生する北海道函館の「旧相馬家 Kazeno Heritage」で、2026年3月1日開業、2月4日から予約を開始。さらに重要伝統的建造物群保存地区のまちなみで知られる、鳥取県倉吉市を舞台にした分散型ホテル「風の 倉吉」も2026年内の開業を予定し、地域の文化に触れ癒される体験として届ける構想を打ち出した。
本記事では、新ホテルブランドシリーズの本記事では、新ホテルブランドシリーズの特徴やこだわりなどについて、風のヘリテージ株式会社に取材した。
▷ Kazeno Heritage公式サイト:http://www.kazenoheritage.jp
―――新ブランドシリーズを「Kazeno Heritage」と「風の」の2カテゴリに分けた狙いを教えてください。お客様に届けたい価値や滞在の位置づけは、それぞれどのように異なりますか。

新ブランドシリーズでは、対象となる歴史的建造物の特性と、お客様にご提供する滞在体験(位置づけ)の違いから2つのカテゴリに分けております。
まず「Kazeno Heritage」 は、城郭や神社仏閣、国指定重要文化財級の屋敷・邸宅など、その土地のシンボルであり「地域の象徴資産」と呼べる希少な建築や史跡等を、独占的に貸し切って滞在いただくカテゴリです。歴史物語の主人公になったかのような没入感のあるエンターテイメント体験や、まさに「日本の宝」の中で暮らすような、優美で個別化されたラグジュアリー体験をご提供します。

一方で「風の」は、「風の+[地名]」として展開する、まち全体を楽しむ「分散型リトリートホテル」という位置づけです。フロントや客室がまちの中に点在していて、武家屋敷や商家、庭園など地域に残る歴史資産を巡りながら、酒造りやお祭りといった風物詩、土地の風情を味わい、地域の人ともふれあっていただきます。土地の文化に触れることで心身がほどけるような癒しを得る——そんなヒーリング・ラグジュアリーな滞在(リトリート)をご提供します。

―――「回復と再生のための滞在」を形にするために、滞在中の過ごし方やサービスで特に力を入れている工夫を教えてください。
「回復と再生」を形にするため、日常生活で閉ざしがちな五感を解放し、その人らしさを取り戻すような「治療のような時間」の設計に力を入れています。お客様が癒しを得ることがそのまま地域の再生に編み込まれる構造を目指しており、具体的には以下のような体験をご提案しています。
たとえば、地域文化との深い接続です(例:風の 倉吉)。ゲスト一人ひとりのご要望に合わせて、歴史ある寺院や庭園での「瞑想」、数百年続く湯処での「湯めぐり」、地域の恵みを活かした滋味深い食体験などを通して、心身のメンテナンスと明日への活力を養うリトリート体験をご用意していく方針です。


もうひとつは、建物やその地に蓄積された「圧倒的な美」に浸る体験設計です(旧相馬家 Kazeno Heritage)。重要文化財に指定されている旧相馬家住宅では、明治時代の建築技術や美的感覚が凝縮された空間を、朝も夜も「占有して味わえる」こと自体が、ホテル滞在ならではの価値になります。客室だけでなく主屋の空間も愉しんでいただけるよう、滞在体験そのものを設計しています。
なかでも主座(しゅざ)でのラウンジ体験では、函館の港を一望する抜群の景観を、屋敷に設えられた大正ガラス越しに眺めながら、オリジナルのモクテルや北海道ワインを愉しんでいただきます。きらめく夜景や、朝日に照らされた函館港の景観に浸る——その建物、その土地だからこそ出会える圧倒的な美しさに癒される。そうした過ごし方がかなうサービスを提供していきます。


―――「ゲストの滞在が文化財の維持・修復につながる」とありますが、具体的には宿泊収益のどの部分が、どのような形で保存・修復に充てられる想定でしょうか。
国指定重要文化財級の希少な文化資産を持続可能に運営する上で、お客様の宿泊や特別な体験を通じた対価(収益)の一部を、地域の有形無形の文化財の保存修繕や保護活動に充てる仕組みを構築しています。
第一号施設となる旧相馬家 Kazeno Heritageでは、再生の一翼を担われたことを記した「宿泊証明書」をご用意する予定です。一つひとつが異なる表情を持つユニークな客室、この地にしかない景観。その稀少な価値を守り、旅の記憶を、文化を未来へ託した「継承の証」として、誇りとともにお持ち帰りいただけます。


―――文化財級の建物をホテルとして使い続けるにあたり、保存と宿泊運営を両立させるために、日々の運営で特に気をつけていることは何ですか。
建物の価値は、意匠や技巧だけでなく、そこに蓄積された「時間や記憶」にあると考えています。そのため、日々の運営では特に次の点を大切にしています。
まず、修復と保存を徹底的に重視することです。いわゆるリノベーションという選択を排し、壊せば二度と手に入らない建築材を極力残し、柱の傷や壁についた煤は残して、お客様にご覧いただくなど、滞在体験・ストーリーに活かしています。

次に、文化財ならではの制約をクリアする工夫です。文化財は火気厳禁などの制約が厳しいため、たとえばキッチン設備を敷地内の別の場所(増築棟など)に移すなど、建物を守りながらお客様の滞在収益性を確保する工夫を行っています。
また、そもそも宿泊・滞在を前提に建てられた建物ではないことに加えて、築年が古い(当社が扱う建物のほとんどは江戸中期~昭和初期以前の建築物)ため、現代の生活様式から見ると段差が多い、急な階段があるなど構造的な特徴があります。ご理解のうえお越しいただけるようご旅行前からカスタマーサポート(CS)がメゾネットや段差の有無といったお部屋の特徴を丁寧にご説明し、場合によってはお客様のご希望やご事情にあわせて別の部屋を提案することもございます。現地でもチェックインの際にお部屋のもつストーリーを丁寧にお伝えし、建物の個性を味わい愉しんでいただけるよう、コミュニケーションを行っています。
そして、地域との協働も欠かせません。お客様に建物だけではなく、地域に残る風習や風情などから、その土地の文化に触れ、癒しや喜びを得ていただけるよう、地域のDMO(観光地域づくり法人)や事業者と協働して、宿泊者様限定の体験を開発します。

―――新ブランドシリーズが目指す「回復と再生」「文化継承への参加」を、今後も広げていく上で、特に大切にしたい成果は何ですか。

私たちが実現したい最大の成果は、「税金に依存しない歴史的建造物の保存・利活用モデル」を確立し、持続可能なまちづくりと文化継承を実現することです。
建物という「器」を残すだけでは文化の継承には不十分です。そこに人が集い、雇用が生まれ、経済が回ることで、お祭りや食、地域の生業といった固有の無形文化も後世に残すことができます。
私たちは施設単体の運営にとどまらず、まちづくり全体をデザインすることで、お客様を単なる「消費者」から、滞在を通じて地域文化継承に参加する「共創者」へと進化させていくこと。そして、その土地固有の「風(風景、風習、風情など)」を未来へと手渡していくことこそが、私たちが守り、実現したい成果です。
■新ホテルブランドシリーズ:Kazeno Heritage
公式サイト:http://www.kazenoheritage.jp
■北海道函館市・国指定重要文化財「旧相馬家 Kazeno Heritage」
開業日:2026年3月1日
住所:北海道函館市元町33-2
公式サイト:https://www.kazenoheritage.jp/hotels/old-soma-residence/
公式Instagram:https://www.instagram.com/kazenoheritage.soma/
■鳥取県倉吉市・分散型ホテル「風の 倉吉」
開業日:2026年内を予定
住所:鳥取県倉吉市河原町1969(フロント棟)
公式サイト:https://www.kazenoheritage.jp/hotels/kurayoshi/
公式Instagram:https://www.instagram.com/kazeno.kurayoshi/
公式Instagram:https://www.instagram.com/kazeno.hotels/