ビジネスホテルの新規開業が相次ぐ大阪では、サービスで競合との差別化を図ることが鍵を握ることとなっている。そんな中、特に訪日旅行客に独自のサービスで人気を集める宿泊施設を紹介したい。今回は、「ザブリッジホテル心斎橋」の取り組みを取り上げる。
コモディティ化するビジネスホテル、差別化困難に
メトロエンジンリサーチによると、大阪府の新規開業施設数は、105施設、18,392室で、既存の1,440施設、97,966室から、18.8%の増加が見込まれ、開業ラッシュが続く見込み。
カテゴリー別既存施設の部屋数は、1位がビジネスホテル50,908室で、2位のシティホテル20,127室を大きく引き離している。
宿泊に特化したビジネスホテルでは、客室面積がシティホテルと比べると狭いものの、必要な基本サービスは過不足なく提供されており、部屋の内装やアメニティ等にもこだわったビジネスホテルのハイクラス化も進み、かつそれが標準装備になりつつある。
このため、ビジネスホテルのコモディティ化が発生し、競合施設との差別化が困難になっててきている。そんな中、訪日客が激増する大阪において、訪日客に評価されている施設とはどのような特徴があるのだろうか。
レビュースコアトップ、ザブリッジホテル心斎橋
今回注目したのは大阪市中央区西心斎橋に展開する「The Bridge Hotel(ザブリッジホテル心斎橋)」(207室)だ。
同ホテルは2016年11月に開業したビジネスホテルで、シングル一泊15,000円ほどのビジネスホテルとしてはアッパークラスに位置するホテルで、心斎橋駅や四ツ橋駅から徒歩3分の好立地となっている。
各種OTAサイトに投稿されたレビュー評価を基にした、メトロエンジンリサーチのレビュー分析によると、大阪市中央区にある宿泊施設は288あるが、同ホテルは同区の平均スコアの3.72点を大きく上回り、4.55点で全国トップクラスのレビュー評価となった。
特に同ホテルのサービス、設備、客室、立地への評価が高くなっている。
同ホテル周辺1キロ圏内の地図は以下の通り。
出典:メトロエンジンリサーチ
同ホテルが赤ピン、新規開業予定のホテルは紫色ハウスマーク、既存ホテルが青緑マークで大小は部屋数規模を示す。同圏内の新規出店は実に35軒にのぼり、大阪・日本で最も新規出店が激しい地域である。
競合から一歩抜け出した、とりわけ高いレビュー評価を誇る同ホテルのサービスとはどのようなものなのか。
20種類以上の無料サービス、訪日客向け時間帯に配慮
同ホテルの最大の人気の秘密は、20種類以上の無料サービスを提供していることであり、この豊富な無料サービスが宿泊者の満足度に大きな影響を与えている。
同ホテルの無料サービスには、マッサージチェアや国際電話5分無料、ポケットWi-fi貸し出し、PC貸し出し、自転車貸し出しなどの特徴的なサービスが揃っている。
特に多くの韓国人が訪れる大阪では、訪日客の中でも韓国人の獲得が重要となるが、同ホテルには韓国人からの高いレビュー評価が多く集まっており、その中でも、夜10時から11時の1時間の限定で日替わり自家製ラーメンやアルコールを含むドリンクを無料で毎日提供するイベントが大人気となっている。
昼間から夕方に行われるイベントよりも、観光から戻ってきて小腹の空きだした夜10時−11時という時間帯のサービス提供も韓国人を含む訪日客からの評価が高い理由の一つだ。
訪日客の渡航動機としても日本食は第一に挙げられるが、朝食での日本食提供が可能な宿泊施設は多いもののの深夜時間帯に日本食の提供をしている施設は稀と言えるだろう。
また、同ホテルは日本文化体験イベントとして、着付け体験、たこ焼き作り体験、お祭り体験、うちわ作り体験などの各種体験型イベントも多数用意している。
サービスの内容の充実に加え、その提供時間帯にまで配慮した取り組みが他のビジネスホテルとの差別化要因となり、訪日客からの高い評価につながっているようだ。
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