(出典:株式会社おてつたび)
株式会社おてつたびは、短期的な地域就労と旅を組み合わせた人材マッチングサービス「おてつたび」の参加者に対しアンケート調査を実施し、その結果を公表した。調査は、同サービスに参加した4,210名を対象として行われたものである。
「おてつたび」は、「お手伝い(短期アルバイト)」と「旅」を組み合わせた人材マッチングサービスである。旅行者は交通費を自己負担するが、滞在先で働いて報酬を得られるため、旅費を抑えつつ地域の文化や暮らしを体験することができる。事業者は全国から労働力を募ることができ、人手不足の解消が期待される。さらに、旅行者による観光や情報発信は地域経済の活性化にも寄与し、約2週間の滞在を通じて関係人口の創出にもつながっている。
(出典:株式会社おてつたび)
2025年5月時点での登録ユーザー数は7.8万人に達し、そのうち実際の参加者の約半数はZ世代である。近年では、「移住先を探したい」と考える30代以上の会社員やフリーランス、中高年層の利用も増加しており、今後のキャリアや人生そのものを見つめ直す契機としても活用されている。
近年は、物価の上昇や将来への不安、さらにはデジタルコンテンツの普及などの影響により、特に若年層の間で旅に出る機会が減少しているといえる。こうした社会状況の中にあっても、旅によって得られる非日常の出会いや体験は、人生に新たな視点や選択肢をもたらす貴重な機会とされている。
(出典:株式会社おてつたび)
実際に、参加者からは「価値観が変わった」「人生の転機となった」といった声が多数寄せられている。アンケートにおいて、「今回のおてつたびの経験が、今後のキャリアや人生に影響を与えると思いますか?」との問いに対し、「思う」と回答した人が60.5%、「どちらかと言えば思う」が31.1%を占め、全体の90%以上が何らかの形で人生やキャリアに影響があったと認識していることが判明した。
別途実施されたアンケートでは、参加者の具体的な体験談が数多く寄せられている。たとえば、東京から地方への移住を決断した30代女性は、地域に長期滞在することで地域の魅力や人々の思いに触れた経験が人生観に大きく影響したと述べている。また、まちおこしへの関心から未経験で農業に携わるようになったという30代男性もおり、初めて訪れた地域を何度も再訪しているという。
就労形態への意識変化も報告されている。20代女性は、おてつたびを通じてフリーランスや起業といった働き方の選択肢に気づいたと述べており、有名観光地よりも「無名の地域」への関心が高まったとも語っている。30代女性は、多様な価値観を持つ人々との出会いが挑戦心を喚起したと述べている。
一方で、60代男性の声からは、裏方業務の大変さや若者との交流による新たな気づきが伝わってくる。また、40代女性は移住者の話を聞く中で自身の将来を考える契機となったと語り、20代女性は一歩を踏み出す勇気が行動範囲の拡大につながったと振り返っている。
人生の転機となる出来事として「おてつたび」を挙げる参加者も多い。10代男性は、新たな環境と人との関わりの中で自己の課題や価値観に向き合い、自らの理想に近づく過程を楽しめるようになったと述べている。50代女性は、地域おこし協力隊という選択肢を現実的に考えるようになり、二拠点生活に憧れを抱くようになったという。
また、20代男性は、離島での「おてつたび」経験で受け取った言葉が社会人生活の支えとなっていると語り、20代女性は旅行への関心が一層高まったと答えている。観光業やホテル業への関心を深め、卒業後の進路につなげた事例も報告されており、「おてつたび」参加後の進路選択に具体的な変化があったこともうかがえる。