AIやIoT機器の普及により変貌を遂げるホテル業界の2019年。観光地やホテル、旅行会社といった旅行業のほか多方面で活躍するアクティバリューズ社の外国語対応の接客支援チャットボット「talkappi」について、そのサービスの特徴や今後の展開について、同社代表取締役社長の陳 適氏にお話を伺った。
普段使い慣れたLINE等のアプリ対応が最大の強み
2016年6月に設立された同社は、当初はレストランや体験系美容サロンの訪日客向け接客アプリからスタートした。中国出身で同社代表取締役社長の陳 適氏が「日本の有する美容などの高い技術が言語の壁によって外国人が利用できないことを解決したい」と考えたのがきっかけだ。
その後、2018年初めに旅行分野に特化した多言語AIチャットボットtalkappi(トーカッピ)をスタートしてから1年。現在は主にホテルなどの宿泊施設向けにサービスを提供しており、自治体や観光協会などの広域連携、旅行会社、レンタカーへとその用途を広げている。
競合他社のチャットボットサービス開始からは半年から10ヶ月ほど遅れての新規参入となったが、LINE、FB Messenger、微信(WeChat)などのメッセージアプリとの連携が他社にない同社の最大の強みとなっている。
FAQ(頻繁に聞かれる質問)への対応、施設・周辺案内・リクエスト受け付け・回答から予約・直販できることに加えて、エンドユーザーと継続可能なSNSでのやりとりにより「タビ前」から「タビ中」、「タビ後」までの全てのフェーズでエンドユーザーとの接点を保つことで、ユーザー蓄積が可能となっている。
最大18言語対応、AI開発に専念、定額でコスパを発揮
また、多言語対応も強みとなっており、日本、英語、中国(繁体・簡体)、韓国語など最大18言語の対応を行なっている。talkappiのコミュニケーション齟齬のチューニングについては、自然言語処理で対応している。自動翻訳ではなく、外国語に対応した回答エンジンで対応するので、誤訳の心配はないという。
使用される主な言語は、大阪は中国(簡体)、沖縄は台湾(繁体)、温泉地などでは日本語での利用も活発であったりと、訪日客に限らず地域によって様々だ。
同社は外国語対応のオペレーターを有しておらず、talkappiのやりとりで解決しない場合には利用する施設側が有人での割り込みで対応を行うことも可能。利用施設のオペレーターに直接つなげることで、FAQ(頻繁に聞かれる質問)以外の固有のやりとりの対処を行う仕組みだ。
もっとも、talkappiは既に9割以上の返答率を誇っており、同社はAIでの自動応答の精度をさらに上げることで、自動返答率を上げていく考えだ。陳氏は「9割以上の返答率をチャットボットで実現できなければ意味がない」と断言する。
また、オペレーター対応を同社が行わないことは、サービス価格を低く抑えることにもなり、定額でのコストパフォーマンスの発揮につながっているという。
地域一帯のサービス、幅広い業種で外国人向けサービス展開
陳氏に同社の2019年と今後の展開について聞いた。
「talkappiを宿泊施設から飲食・アクティビティまで全てにつなげたいと考えています。SNS連携を最大の強みとしており、エンドユーザーとの接点を有することから、地域一帯のチャットボットによる地域周遊のコンシェルジュには競合他社にはない差別化が可能です。
また、今後はチャットボットに加えてAIスピーカーの開発、さらには旅行業以外の在日外国人向けのサービス展開、例えば日本語学校や移住支援などにも力を入れていきたいと考えています。」
同氏は2005年来日、日本の大手電機メーカーに勤務後、同社を起業した。
外国人向けのサービスは、ホテルや飲食、アクティビティなどの旅行業にとどまらず、当初より実施している美容サロンへの展開、さらには日本語学校、移住支援など幅広い業種へ視座を向ける。同社のサービスは、日本が外国人を受け入れるための強力なサポートとなりそうだ。
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