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中国人訪日客の消費スタイルに変化:買い物支出は維持、内容に変化

投稿日 : 2025.06.25

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調査

インバウンド

(出典:株式会社unbot

中華圏向けにデジタルマーケティングを展開する株式会社unbotは、コロナ禍を経て回復基調にあるインバウンド市場において注目される、中国人訪日客の最新消費動向を発表した。

(出典:株式会社unbot

消費総額とその内訳の変化に着目すると、2019年と2024年を比較した際、中国人訪日客の一人当たり旅行支出額は212,810円から276,604円へと約30%増加している。支出項目の中で買い物が最も大きな割合を占める点には変わりがないが、宿泊、飲食、娯楽といった体験型支出も着実に増加しており、旅行全体の過ごし方が多様化している傾向が読み取れる。

(出典:株式会社unbot

買い物内容にも顕著な変化が見られる。2019年には「化粧品・香水」の購入率が81.9%と最も高かったが、2024年には「菓子類」が75.3%と最も多く購入される品目となり、化粧品は54.0%まで減少した。この変化の背景には、中国国内や越境ECにおいて化粧品や医薬品が容易に入手可能となったことに加え、中国ローカル企業の台頭や日系商品の販売チャネルの多様化が影響していると考えられる。

また、SNS、特に小紅書の影響により、「日本限定」「地域限定」「季節限定」といったキーワードに敏感な消費者が増加しており、「その場でしか買えない」商品への関心が高まっていることが特徴的である。(出典:株式会社unbot

さらに、買い物をする場所にも変化が見られる。2019年には「ドラッグストア」の利用率が88.7%と圧倒的に高かったのに対し、2024年には「コンビニ」が85.7%で最も高い利用率となり、ドラッグストアは74.7%まで低下している。コンビニは、限定菓子や飲料、手軽なお土産を購入できる場として再評価されており、滞在中の小規模な買い物や土産調達の場として選ばれていると考えられる。

しばしば語られる「モノからコトへ」という消費スタイルの転換については、今回のデータからは一概にそうとは言い切れない側面も見えてくる。宿泊費が61.8%上昇している点については、インバウンド需要の回復に伴う宿泊施設の価格上昇といった外的要因の影響が大きいと考えられる。

一方で注目すべきは、飲食費が35.7%増、娯楽サービス費が79.0%増と大幅に伸びている点である。これらは旅行者自身の選択に基づく「体験」の支出であり、「食を楽しみたい」「娯楽を体験したい」といった意識の高まりが反映されている。現在の中国人訪日客の消費スタイルは、「モノからコトへ」と単純に言い表せるものではなく、「選び抜いたモノ」と「自ら体験するコト」の両立を求める形に変化しているのである。

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