中国本土へのインバウンド需要の増加は、アジア太平洋地域のホテル業界にも波及効果をもたらしている。日本、韓国、香港のホテル予約数や検索数が急増し、国際旅行市場の復活が示唆されている。特に、中国政府がゼロコロナ政策を取り下げたことで、中国本土への旅行予約が加速している。これにより、アジア太平洋地域全体でホテル業界が徐々に回復しつつあることがわかる。
Trip.comの調査によると日本では、2022年10月に水際対策が大幅に緩和されたことを受け、ホテル予約数や検索数が増加している。2023年3月15日から6月30日までの日本でのホテル予約数は、前年同期比約3.4倍(237%増)となっており、最も需要の高い航空路線はロンドンから東京、およびパリから東京である。日本国内の人気旅行先トップ3は、東京、大阪、京都となっている。
韓国でも同様の傾向が見られ、2023年3月15日から6月30日までの韓国でのホテル予約数は前年同期比約5.6倍(456%増)である。最も需要の高い航空路線はロンドンからソウル、およびパリからソウルであり、都市別ではソウルが最も人気が高く、済州島が続いている。
香港もホテル予約数が前年同期比13%増加しており、欧州からのフライト予約も2023年は約14.6倍(前年比1362%増)と大幅に増加している。特に、英国とドイツからのフライトの需要が高く、香港にとってのトップ5市場は、中国本土、シンガポール、英国、米国、カナダである。
しかし、ホテル業界の回復に伴い、宿泊施設の逼迫や料金高騰が問題となっている。業界の回復に伴い宿泊業の8割以上が人手不足に直面しており、ビジネスホテルや旅館などの料金が上昇している。また、観光地域では宿泊施設の供給が不足し、旅行者は予約が困難な状況に直面している。政府や関連団体は、人手不足や宿泊施設の逼迫を緩和するための施策を講じる必要がある。
さらに、ホテル業界の急速な回復に伴って、持続可能な観光開発の重要性が再びクローズアップされている。過去にはオーバーツーリズムが問題となった地域もあり、今後のホテル業界の成長は、環境や地域社会に配慮した持続可能な形であることが求められる。各国政府やホテル業界は、環境保護や地域社会との協働、観光資源の適切な管理など、持続可能な観光開発に取り組むべきだろう。
このような状況を踏まえ、アジア太平洋地域の国々は、観光需要の急増に対応しつつ、持続可能なホテル業界の発展を目指すべく、施策や取り組みを検討していくことが重要である。具体的には、観光インフラの整備、人材育成や雇用の創出、環境への配慮や地域社会との協働などが挙げられる。
アジア太平洋地域全体でホテル業界が回復しつつあることは喜ばしいことであるが、同時にホテル業界の成長が持続可能であることが求められるようになった。今後、各国は協力し、ホテル業界が環境や地域社会と調和しながら発展していくことを目指して取り組んでいくことが期待される。