北海道の命名から150年目となる2018年。節目を迎えた北海道における、地域・都市ごとのホテル事情に迫ってゆきたい。連載第5回は最北の街、稚内市のホテル宿泊事情について、観光宿泊需要と宿泊施設供給の観点から分析レポートする。
最北の街、稚内市
稚内市は北海道宗谷総合振興局の所在地で、人口は約3万4千人の都市である。日本海、宗谷海峡、オホーツク海に囲まれ、2つの丘陵性山地の中間に発達する低地帯に市街地が広がっている。東側に形成された周氷河期地形「宗谷丘陵」は北海道遺産に選定され、また西側の丘陵帯と低地帯は「利尻礼文サロベツ国立公園」の一部に指定された、自然豊かな地である。
出典:稚内市
観光需要は減少後、横ばい傾向
稚内市の観光入込客数の推移を示したのが以下の表である。
出典:北海道
稚内市の観光客数は2008年度の約569万人より減少が続き、2011年度を底に持ち直しの傾向がみられたものの、近年ではほぼ横ばいとなっている。10年で約1割減である。道外客は増加しているが、道内客が10年で約6割と大きく落ち込んだことが影響している。
宿泊延数は微減、訪日客比率は上昇
観光入込客数の横ばいが続く稚内市では、宿泊延数は減少傾向にある。以下の表は苫小牧市の延べ宿泊数の推移である。
出典:北海道
稚内市の延べ宿泊数は2008年度の約39.5万泊より、東日本大震災の影響が見られる2011年を底に、2012年度でいったん増加に転じたものの、再び減少傾向が続き、2017年度には約37.3万泊、10年で約5%減となった。
一方で、訪日客は2008年度の約0.7万泊から2017年度は約2万泊とほぼ3倍に、構成比は1.7%から19.7%へ大幅に上昇している。
宿泊供給は10年で9%増加、災害に伴う経営難も
メトロエンジンリサーチによると、稚内市内には2019年1月時点で45の宿泊施設が展開しており、部屋数にして1,389室が提供されている。2009年1月時点の41施設1,277室と比較すると9%の供給の増加である。
他方で上記の通り、稚内市全体の宿泊需要が減少傾向で、10年で5%減になっていることから、市内の宿泊施設の業績にとっては、厳しい環境が続いていると考えられる。
北海道胆振東部地震の影響も出ている。2018年9月に発生した北海道胆振東部地震の影響で宿泊予約のキャンセルが相次いだ事などにより、2018年11月には市内で6番目の規模であった稚内サンホテル(客室数70室)が自己破産を申請した。
【合わせて読みたい】