Googleは2019年5月に「Google Travel」のサービス提供を開始。ホテル比較・検索サイト、航空券比較・予約サイト、マップなどを統合、旅行分野での一括サービスの強化を図る。検索サイトとして圧倒的シェアを誇るGoogleは既存OTAへの大きな脅威となっており、その規制が政治問題へと発展した。
旅行予約の方法が一変する可能性
Googleは、スマホアプリとして提供していた旅行プランニングツールの「Google Trips」を 2019年8月5日をもって終了。ホテル比較・検索サイトの「Googleホテル検索」、航空券比較・予約サイトの「Googleフライト」、「Googleマップ」などと統合した「Google Travel」のサービス提供を強化する方針だ。
Googleの旅行業参入が本格化するにつれて、ユーザーにとって旅行の計画を検索サイトからはじめ、実際に予約するまで全てワンストップで対応が可能となるため、より便利になることが見込まれる。
これまで多くのユーザーが複数の旅行サイトやホテル予約サイトを比較するなどして、情報収集し、予約してきた従来のプロセスがより簡潔になるなど、旅行予約に大きな変革が訪れつつある。
ホテルの直接予約強化には朗報か
また、Googleの旅行業参画は、ユーザーだけでなくホテルにとってもチャンスとなりうる。
これまで、ホテルは10%ほどの手数料をOTAに支払ってきたが、ユーザーのアクセスを分析し自らのサイトに直接誘導するために、大手ホテルチェーンはサイト開発、会員割引の提供や公式サイトからの予約による最安値保証など直接予約を強化、OTA(オンライン旅行代理店)手数料の削減を打ち出している。
Googleとの連携を図ることは、さらなるOTA手数料の削減と直接予約の機会を開くものと期待されている。
競争法、GAFA規制の動向に注目
他方で、OTA側も黙ってはいないだろう。
このように検索から予約までGoogleで全てが完結するようになることは、多額の広告費用をGoogleに支払い、SEO施策を行ってきた旅行会社やOTAにとっては大きな脅威となる。
世界最大のOTA・エクスペディアの会長を務めるバリー・ディラー氏は、同社が年35億USドルをGoogleに支払い、Googleが旅行事業に乗り出していることに不満を示し、米反トラスト法当局に規制を求めている。
同氏は昨年10月、会長を務めるエクスペディアグループが年35億USドルをGoogleの広告料に支払っていることを明かした上で、Googleがホテルや航空券などの旅行事業に直接的に乗り出すことにより、広告料を支払う顧客でもある旅行会社の商品よりも、競合する自らの商品をより強調することが可能な立場にあり、平等な競争条件を確保できなくなっていることを指摘している。
Google、Amazon、FaceBook、Appleの頭文字を取る「GAFA(ガーファ)」と呼ばれる巨大IT企業が、音声や写真、動画、通信記録など、大容量のビッグデータをプラットフォームとして所有している。GAFAは、利用者の購入や傾向などのデータを吸収して、AIで分析し、マーケティングを自社に有利に立てることができることから、競争上不公平との意見は多方面で高まっている。
こうした中で、GAFAに対する規制の動きは、欧州や米国だけではなく、日本においても政治的な問題となりつつあり、不当な取引を防ぐために規制を強める新法案を、2020年にも通常国会に提出する動きが政府で成長戦略を議論している未来投資会議でも出ている。
こうした背景には、IT業界における課税逃れの問題とともに、検索サイトから一括サービスへと対象を広げることなどにより、新たな参入を受ける業界からの反発とロビー活動があると言えるだろう。
政策決定のプロセスを巡り、こうした利害関係を有する企業集団のロビー活動や省庁間の主導権争いも激しくなっている。規制の動向いかんによってホテルを含めた旅行業界の予約方法も大きな影響を受けるだけに、その動向は業界にとって大きな注目を集めるものとなる。
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