2017年の欧州へのホテル投資額は217億ユーロと前年比22%増となった。中でも最も活発に取引が行われたのは、現在好況にわく「あの国」だった。2018年の欧州ホテル市場の注目は。
活発な欧州ホテル市場
欧州ホテル取引報告書(European Hotel Transactions report (HVS社、2018年3月))によると、2017年の欧州ホテル投資額は217億ユーロ(約2.8兆円(1ユーロ=130円換算))で前年比22%増となった。
イギリスのロンドン、オランダのアムステルダム、スペインのバルセロナ・マドリードなどの大都市及び南ヨーロッパのリゾート地において、ホテルの業績が大幅に改善されたことから、欧州域内に加えて北米の投資家からの取引が高まったのが要因。
国別はイギリス、都市別でもロンドンがトップ
2017年の欧州のホテル投資額では、2016年トップであったドイツに代わり、イギリスが2016年の2位から2017年トップに返り咲いた。イギリスは2016年36億ユーロ(約4,680億円)から、2017年は54億ユーロ(約7,000億円)となり、前年比で50%もの伸長を見せた。イギリスはEU離脱「Brexit」を控え、今後政治、経済的な混乱が予想されているものの、ホテル取引の状況からは、好調なイギリス経済に対する投資家の関心は非常に高いと言える。
また都市別でも首都・ロンドンは依然として欧州を代表するホテル・金融都市としての実力を見せつけ、約25億ユーロ(約3,250億円)の投資額でトップとなり、2位のアムステルダムの約13億ユーロ(約1,690億円)、3位パリの7.7億ユーロ(約1,001億円)を圧倒し2位以下の都市に大差をつけた。
また、スペインが2016年から投資額を倍増させ、2017年49億ユーロ(約6,370億円)でイギリスに迫る2位となり、ドイツはミュンヘンやベルリンで依然堅調なものの、ポートフォリオ投資の減少が響き、3位に転落した。
イギリスはBrexitを国民投票で決めた2016年には長年のトップの座をドイツに明け渡したが、2017年にはロンドンやマンチェスターでのテロによる混乱にも関わらず、経済が依然好調で主役の座を奪還した形。その中心はやはりロンドンであり、イギリスホテル投資の実に半分近くを占めた。
2018年関心は中東欧へ
2008年の世界金融危機、いわゆる「リーマンショック」においては、欧州ホテル市場にも大きな負の影響が見られたが、2014年までには同水準に回復し、ホテルのRevPAR(販売可能な客室1室あたりの収益)も現在は大きく改善しており、株価上昇や景気の好転を背景に、2017年欧州ホテル市場は堅調に推移した。
2018年は金利の上昇やホテルの人件費増が取引市場に負の影響を与える懸念が出てきており、2017年欧州ホテル市場を牽引したイギリスも、2019年3月に予定されている正式なBrexitによる政治経済的混乱が懸念されており、その交渉次第で不確実性がある。
こうした状況の中で、新たに投資家の関心が西欧から南欧、中東欧などの未開拓の「第二の欧州市場」に集まってきている。特に関心を集めているのは、クロアチアのアドリア海沿岸地域やチェコのプラハ、ハンガリーのブタペストなどであり、2018年の注目株となりそうだ。