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東日本大震災に学ぶ”震災関連死”を防ぐために必要なこと

投稿日 : 2020.04.06

福島県

新型コロナウイルス関連

東日本大震災における震災関連死の死者数は、復興庁によると1都9県で3,739人(2019年9月30日現在)。特に福島県では2,286人が災害が起きた時には助かったものの、避難生活を続ける中で体調を崩して亡くなった。その教訓をウイルスとの戦いの今、我々はどう生かせばいいのか。

震災関連死 3,739人、66歳以上の高齢者が9割

復興庁の調べによると、2019年9月30日現在の東日本大震災の際に災害が起きた時には助かったものの、避難生活を続ける中で体調を崩すなどして亡くなった災害との因果関係があると認定された「震災関連死」の数は以下の通りとなっている。

出典:復興庁


年齢別ではおよそ9割の3,313人が66歳以上の高齢者となっており、圧倒的な割合を占めている。

高齢者の場合、環境が大きく変化するとその変化に身体がついていかないことが背景にあるとされている。

また時期としては、災害から一週間までが472人、それ以降1ヶ月までが741人、それ以降3ヶ月までが682人となっており、全体の75%が震災発生から1年以内に死亡した。

都道府県別では福島県が2,286人と圧倒的に多く、ついで宮城県が928人、岩手県が469人となっている。

市区町村別で最も多いのは津波に襲われ、かつ原発事故により社会的なつながりを断ち切られ厳しい避難生活を強いられた福島県の沿岸部のエリアである。最大は南相馬市で516人、続いて富岡町440人、浪江町435人となった。

地震に津波、環境の激変と終わりの見えない原発事故が大きな心身への負担となったことがわかる。

心身のケアと生活再建、障がい者・外国人・妊婦への目配りも

復興庁の2012年8月の調査報告によれば、避難所などでの厳しい生活や避難中の移動による疲労、病院の機能停止による持病の悪化などが震災関連死の原因として指摘されている。

早期の対策としてはライフラインの環境を整えることや心のケアについて見守り・相談が必要であるとされている。

また、長期的な対応としては震災関連死を防止するには「生活再建が大きな課題」であるとされた。

さらに、障がい者、高齢者、外国人、妊産婦等の災害時要援護者について、情報提供、避難、避難生活等様々な場面で対応が不十分な場面があったことも指摘されている。

災害と感染症では性格がもちろん異なるものの、今回の新型コロナウイルスにおいても類似した点については対策として学ぶべきところがあるのではないだろうか。

社会とのつながりを断つ外出自粛・イベント自粛にはリスクも

現在の新型コロナウイルスにおいては、健康な成人であっても長期にわたる自宅でのテレワークや週末の外出自粛によって強いストレスを感じる人も数多くいるだろう。

特に高齢者においては、重症化のリスクが高いため、家に閉じこもっている人が多く、それにより心身に健康を害する危険性も高まっている。

新型コロナウイルスへの感染を避けるために持病の治療で病院に通うことをやめる高齢者も増加しているという。

他方で、東日本大震災の際にもイベントの自粛は発生していたものの、今回の感染症においてはイベントや集会の開催自体が感染を拡大するリスクを有しているとして多く中止された。また、心身のケアに関して、子供や孫が祖父・祖母に会いに来訪することすら、感染を生むリスクがあるとして敬遠されがちとなっている。

内閣府の調査によれば、65歳以上の高齢者について子供との同居率をみると、1980年にほぼ7割であったものが、2015年には39.0%となっており、子と同居の割合は大幅に減少している。

単独世帯又は夫婦のみの者については、1980年には合わせて3割弱であったものが、2015年には56.9%まで増加している。単身世帯も急速に増加しており、2015年には18.0%となっている。

家族形態別に見た65歳以上の高齢者の割合

出典:内閣府

この点において高齢者の孤立化のリスクは2011年の震災時よりさらに高まっていると言える。

想起すべきなのは、災害に遭い、それに生き延びたとしても環境の変化によって多くの死者を生んでしまった東日本大震災の震災関連死の経験ではないだろうか。

震災関連死においては、地域のコミュニティにおいて、高齢者を孤立させないよう積極的に声がけをするなど、きめ細かな支援をすべきことが教訓として挙げられている。

感染を拡大させないように万全をつくすことはもちろん大切なことであるが、それによって別のより大きな新たなリスクを発生させないように、十分な注意を周囲の関係する人々が払うことが必要だろう。

このことは高齢者に限らない。都市がロックダウンされたフランスではストレスによりDVが激増していることが報じられている。感染症との戦いにおいて、「三つの密」や社会的な距離を保つなどの対策をしつつ、コミュニティーとして多くの日本人があのとき学んだ「絆」の大切さについて、あらためて思いを馳せる必要があるのではないだろうか。

また長期には感染症が収束してからの「生活再建」のため大規模な経済対策による経済のV字回復が「新型コロナ関連死」を防ぐためにも求められていると言えるだろう。

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