アスコットジャパンは、2020年1月20日(月)に大阪・なんばにサービスレジデンス(滞在型ホテル)「シタディーンなんば大阪」をグランドオープン。開業にあたり、同社代表取締役のタン・ライ・セン氏、同社社長のフィリップス・マックス氏らに話を聞いた。
デパートとホテルのコラボ「デパートメントホテル」
シタディーンなんば大阪は、大阪南部に広がる繁華街への玄関口となる難波に新たに誕生したサービスレジデンス。国の有形文化財である髙島屋東別館をリノベーションし開業した同ホテルは、外観や館内の1階ロビーなどに昭和初期から残るアールデコ調の装飾が施されており、格式ある華やかな雰囲気で顧客を迎える。
同ホテルの5つのテナントに加え、髙島屋東別館内には髙島屋史料館もあり、滞在する顧客のみならず、地域の人々にも親しまれる新たなローカルアイコンとしての役割を担うことも目指しているという。
その一方、各客室は、建物を活かし大きな窓を設け、部屋いっぱいに光が差し込む、シタディーンブランドらしい洗練された木のぬくもりを感じるモダンなデザインの空間が広がる。
コンセプトである「デパートメントホテル」にふさわしい、デパートとホテルのコラボを体感できるという。例えば、髙島屋で購入したものをホテルに届けてくれるサービスや、宿泊者向けに髙島屋の割引カードなどが用意される他、今後様々なコラボレーションを進める予定とのこと。
同ホテルの運営は、コク・ヨウ・ヤップ氏を総支配人として、株式会社アスコットジャパンが行う。
313の客室の他、ジム(24時間)、ミーティングルーム、レジデンスラウンジ、キッズルームなどの施設があり、一部客室にはキッチンやランドリーも備える。
1泊から長期の滞在、ビジネスやファミリー利用など多用途において機能的で利便性の高いサービスレジデンス。建物は、国の有形文化財に登録されている髙島屋東別館(大阪市浪速区)を活用し、昭和初期の歴史ある雰囲気と、シタディーン(citadines)のモダンな魅力が生かされているという。
【同ホテル 概要】
所在地:大阪府大阪市浪速区日本橋3丁目5−25
客室数:313室
テナント数:5店舗
その他施設:ジム、ミーティングルーム、レジデンスラウンジ、キッズルーム、コインランドリー他
オープニングセレモニー及び内覧会が開催
1月20日のグランドオープンに際し、同ホテルにてオープニングセレモニー及び内覧会が開催された。
同セレモニーには(写真左から)東神開発株式会社 代表取締役社長 倉本 真祐氏、浪速区長 榊 正文氏、アスコット社 CEO ケビン・ゴー氏、株式会社髙島屋 代表取締役社長 村田 善郎氏、ピーター・タン シンガポール大使館 駐日大使、キャピタランド グループCEO リー・チー・クン氏、浪速区商店会連合会 会長 木村 次郎氏、アスコットジャパン代表取締役 兼 キャピタランドジャパン代表取締役 タン・ライ・セン氏、日本橋連合振興町会 会長 宇野 正也氏らが出席した。
来賓を代表し、ピーター・タン シンガポール大使館 シンガポール駐日大使が以下のように祝辞を述べた。
「サービスレジデンス業界において世界各地で定評のあるアスコットと、歴史的な百貨店である髙島屋の協力の元、この地にシタディーンなんば大阪がオープンしたことを心よりお祝い申し上げます。日本の重要な商業都市の1つである大阪に、シンガポールブランドの素晴らしいホテルが新しく生まれたことを嬉しく思います。」
長期滞在、髙島屋とシナジー、文化財のリノベに強み
(写真左から)同社副社長兼アスコット丸の内東京総支配人 越川慎一氏、同社代表取締役 タン・ライ・セン氏、同社社長 フィリップス・マックス氏、シタディーンなんば大阪総支配人 コク・ヨウ・ヤップ氏。
同社代表取締役のタン・ライ・セン氏、同社社長のフィリップス・マックス氏らに話を聞いた。
フィリップス・マックス氏は同ホテルの特徴とターゲットとする顧客層について以下のように述べた。
「当ホテルは歴史的な建造物のリノベーションにより、デパートメントとコラボしたデザインが特徴となっています。ロビーをはじめ各所に昭和初期のアールデコ調の装飾が施されています。
短期滞在に加えて長期滞在にも対応をしており、キッチン付きの客室やキッズルーム、コネクティングルームなどの多くのファシリティを有し、ファミリーや多人数のグループ旅行にも適したホテルとなっています。
インバウンド、若者に人気の高い大阪の中心地にあり、シタディーンの持つ海外ブランドの知名度により多くの訪日外国人旅行客の利用が期待されます。抹茶カフェなどレストランでの日本の食文化体験も提供します。
また、インバウンドに加えて今回、日本で強いブランド力を有する髙島屋さんと協力し、ショッピングとのシナジーを生むことで、国内客の利用の拡大にも期待をしています。」
また、タン・ライ・セン氏は国の有形文化財のリノベーションについて以下のように語った。
「有形文化財(建造物)の髙島屋東別館をリノベーションするにあたっては、多くの困難を伴いました。
建築からは90年の時を経ており、天井やエレベーターホール、ロビーなど可能な限りデザインにもその歴史的な印象を残すように心がけました。
また、同時にホテルとして新たにリノベーションする観点からモダンとの共存やホテル機能との調和ということにも大きな配慮が必要でした。
歴史的建造物を生かすため、同じ間取りや設備の配置がされた客室をつくることがとても難しく、大変苦労しました。もちろん、耐火基準などを含めた現在の法規制にも適合する設計へと改装が行われています。
リノベーションにあたっては大きな困難の連続でしたが、当社はこうした歴史的文化的建造物のホテルへのリノベーションについて、シンガポールやフランス、タイ、イギリスなど世界中で多くの実績とノウハウがあり、このような取り組みを強みとしています。」
また、今後の同社のホテル展開についてタン・ライ・セン氏は以下のように語った。
「来日される訪日客のお客様には東京だけではなく、ぜひ日本の他の都市にも合わせて訪問してもらいたいです。当社はこれまで東京を中心に出店していましたが、京都・大阪での出店に加えて、今年秋には福岡へ、そして今後は横浜での開業も予定しています。
これにより、全国回遊型の観光を後押ししていきます。」
大阪市浪速区・周辺ホテル展開状況
メトロエンジンリサーチによると、大阪市浪速区には宿泊施設が174、部屋数にして8,599室が提供されている。新規開業予定は20施設、部屋数にして2,935室が新たに供給される見込み。
注目の新規開業としては同ホテルの他に、「フェアフィールド・バイ・マリオット大阪難波」が2020年夏に300室で開業を予定。
「アパホテル<なんば南 恵美須町駅>」が2020年5月に256室で開業を予定するなど新規開業の激戦地となっている。
同ホテルの周辺半径1キロ圏内のホテル展開マップは以下の通り。
(青緑のサークルは既存の施設、大小のサイズは客室数を示す。紫色ハウスマークは新規開業予定)
出典:メトロエンジンリサーチ
同ホテルの周辺半径1キロ圏内には宿泊施設が296展開しており、客室数にして19,415室が確認された(同圏内には大阪市中央区が含まれる)。
また、同圏内の新規開業予定は22施設、部屋数にして3,394室が新たに供給される見込み。
ホテル最激戦地での開業となるが、同ホテルが文化財活用や髙島屋とのシナジー、長期滞在型、福岡や横浜を含む新規開業などでどのような差別化と展開を見せるのか、今後も注目していきたい。
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