西武ホールディングス(HD)傘下の西武鉄道とプリンスホテルが計800億円規模の優先株の発行による第三者割当増資を検討していることが15日、分かった。資本基盤を強化し、長期化が懸念されるコロナ禍を乗り切りたい考え。
西武鉄道とプリンスホテルは主要取引銀行であるみずほ銀行と日本政策投資銀行に引き受けを要請。両行とも要請に応じる構えで、発行される優先株を半分ずつ引き受ける見通しだ。
優先株は普通株より高い配当を得ることができたり、会社解散時の財産配分で優遇されたりする株式だ。議決権に一定の制限が設けられているが、発行企業は経営の自由度を維持したまま資金調達できる利点がある。資本金として計上されるため、財務基盤の強化にもつながる。
西武ホールディングスは鉄道や路線バスなどの都市交通・沿線事業のほか、数多くのホテルを国内外に展開。さらに、ゴルフ場・スキー場などのレジャー・スポーツ施設も各地で運営している。売上高のうち、コロナ以前は鉄道や路線バスなどの都市交通・沿線事業が全体の3割、ゴルフ場を含むホテル・レジャー事業が4割を占めていた。
しかし新型コロナウイルスの感染拡大によって鉄道やホテル事業が低迷。政府の観光支援策「Go Toトラベル」効果によって国内客は回復傾向にあるものの、2割強を占めていたインバウンド需要が戻る見込みは立っていない。
2021年3月期の連結業績は630億円の最終赤字に転落する見通し。最終赤字は12年ぶりで赤字幅も過去最大になるとされ、事業環境の悪化の長期化も懸念されている。
プリンスホテルは西武グループの中核会社であり、日本のホテル・レジャー業界で最大級の事業規模を誇っている。都内の一部ホテルではワゴンサービスなどを活用した新たな宴会スタイルを実施、さらには宴会場を持たない宿泊特化型の施設運営も始めた。優先株の発行による増資で資本基盤を強化し、この難局を乗り切りたい考えだ。