宮城県大崎市の東鳴子温泉で旅館を経営する「旅館紅せん」は3日までに事業を停止し、自己破産申請の準備に入った。負債額は約3500万円の見通し。
「旅館紅せん」は1979年に設立され、和室15室の旅館を経営していた。旬の素材を使った料理や自家源泉を強みに営業し、平成27年には6000万円の売り上げがあった。しかしながら鳴子温泉に全国チェーンの温泉旅館が参入して以来、近隣旅館との競合が激化。さらに、去年春からは新型コロナウイルスの影響もあり、2020年3月期の売上高は約4500万円まで落ち込んだ。
去年秋には、観光需要喚起策「Go Toトラベル」の効果で宿泊客が一時的に増えたものの、全国一斉に停止することが決まった後は予約のキャンセルが相次いだ。先行きの見通しが立たなくなったことから、近く自己破産を申請することを決めた。営業はすでに終了している。
帝国データバンク仙台支店によると、宮城県内の旅館業が新型コロナの影響で自己破産するのは2例目。また、鳴子温泉郷観光協会(大崎市)に加盟する53の宿泊施設のうち、新型コロナ発生後に事業を停止するのは初めてという。