宇都宮地裁大田原支部は23日、千葉県の男女3人にキャンセル料などの損害賠償を求めた訴訟で、予約を行った男性2人に対し総額約280万円の支払いを命じた。
事件の発端は、2019年1月、同一名義人による宿泊予約の無断キャンセルが相次いだことである。千葉県柏市でスナックを経営する女性が男性従業員2人に慰安旅行の計画を指示。男性らは同年8~11月、栃木県の那須塩原市と日光市、那須町のあわせて8つの旅館やホテルで露天風呂がついた部屋などに8人から10人が宿泊するという内容の予約を入れたが、いずれも無断でキャンセルした。
無断キャンセルされた宿泊予約は、男性の同一名義で7施設、この男性と同じグループとみられる別の男性名義で1施設あった。被害は消費税分を除いた約250万円。
被害に遭った8施設は、弁護士を通じて予約した男性や男性が勤務していた飲食店の女性経営者と交渉していたが難航。被害8施設が原告となって男性2人と女性経営者を提訴し、損害賠償を求めていた。
23日の訴訟の判決で、渡辺力裁判官は原告の主張を認め、男性2人に原告の請求通り計約280万円の支払いを命じた。
渡辺裁判官は「(男性2人は)口頭弁論期日に出頭しないなど、請求原因事実を争わないものと認め、これを自白したとみなす」と判断。賠償額については、7施設に予約した男性が244万6400円、1施設に予約した別の男性が33万9900円とした。
女性経営者は責任を認めて支払う意思を示しているものの、数年単位の分割払いでの和解を申し入れており、近く協議が始まる。
無断キャンセル問題は、「No show」(店に予約キャンセルの連絡をしない、店からの連絡を無視して来店しないなど)と呼ばれ、宿泊施設や飲食店において以前から問題になっている。しかし事業者側にとってはその対応に割くコストや時間が負担となることから、無断キャンセルが行われても厳しい措置を取ることは難しいとされてきた。しかし今回のように、無断キャンセルの態様が悪質、損失額が大きいとなれば、事業者側も本格的に支払いを求めたり刑事事件化することも十分考えられる。