来年8月に迫る東京五輪だが、IOC(国際オリンピック委員会)よりマラソン会場が暑さを避けるためとの理由で東京から札幌に変更になる案が突如として提起。候補会場という札幌ドーム周辺のホテル展開状況と2020年とその後を睨むホテルの戦略に与える影響とはー
マラソン競技の札幌開催案が急浮上
IOC(国際オリンピック委員会)が札幌へのマラソンと競歩の会場の変更を求めたことが突如として明らかとなり、準備を進めていた東京都や大会関係者、東京でのマラソン観戦を楽しみにした人々をはじめとして、列島に大きな衝撃を与えている。
1年を切った段階での札幌開催案の実施には、チケットの払い戻しや既に募集したボランティアの問題や、札幌での開催準備など大きな混乱が予想されるが、同時に五輪の目玉競技と言えるマラソンが札幌で開催されれば、多くの観客がそこに押し寄せることが予測される。
発着会場の有力候補地という札幌ドームのホテル展開状況はどうだろうか。
札幌ドーム周辺ホテル展開状況
出典:札幌ドーム
札幌ドームは、北海道札幌市豊平区羊ケ丘1に立地している。
札幌市豊平区にはメトロエンジンリサーチによると、宿泊施設が21、部屋数にして583室となっている。
札幌ドームは41,566席が収容可能で当日は満席になることは確実だ。
さっぽろ駅から、福住駅まで約13分、福住駅からは徒歩約10分で札幌ドームに到着する。
また沿道での観戦が大半を占めることになり、開催される場合のマラソンのルートは定かではないものの、札幌市全体になることが想定される。
札幌市内には宿泊施設が351、部屋数にして34,274室が提供されており、豊平区自体の占める割合はわずかとなっている。
札幌での冬季五輪開催の実績や日本有数の観光都市の一つであることを踏まえれば、訪日外国人を含めた観光客が訪れるには不十分なほど小さい受け皿とは言えないだろう。
札幌五輪に!?2020Tokyo戦略見直しか、2030札幌も視野に
出典:東京マラソン2019
他方で、開催都市である東京都からすれば、「寝耳に水」のIOCの意思決定には強い批判も起きている。
特に、既に販売されたオリンピックの観戦チケットは高い倍率でなかなか手に入らないプラチナチケットとなっており、マラソンは唯一、「誰でも楽しめるオリンピック競技」として待ち望まれていた。
札幌に移ることで観戦が難しくなる人々の失望は大きなものがあるだろう。
何年もかけて準備を進め、開催を心待ちにしていた人々の中には、目玉種目のマラソンが札幌に移れば、「東京五輪ではなく札幌五輪だ」「急に気温が上がったわけではないのになぜ今なのか」との批判も渦巻いている。
それだけではない。開催地で観客を受け入れる準備を進めるホテルを含む観光業界にとっても大きな衝撃だ。
大会本番のテストを兼ねた9月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)では、50万人以上が詰めかけた。また東京誘致への都民の支持を引き上げ機運を高めたとされる毎年2月に開催される東京マラソンの沿道観戦者数は約100万人を超えている。
本番となる東京オリンピックのマラソン競技でははるかにそれを上回る沿道の観客が見込まれていた。
これらが札幌に移ることによって生じる経済的な影響は絶大となるだろう。
10月30日から始まるIOC調整委員会で小池都知事は東京開催を主張する姿勢を見せており、今後の展開は予断を許さない。
他方で、移転先として札幌市で実施が実現すれば、市が目指している2030年冬季五輪招致の後押しになるとの見方も出ている。
この動向いかんで、ホテル業界は、2020Tokyo、さらにはその先を見据えた戦略の見直しを迫られることになりそうだ。
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