(出典:株式会社おてつたび)
株式会社おてつたびは、滋賀県との連携を開始し、県北部地域における「お手伝い」を通じた関係人口の創出に向けた取り組みを進めている。関係人口とは、移住した定住人口でもなく、観光に訪れた交流人口でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々を指す概念であり、総務省が提唱している。
滋賀県では、県北部3市(長浜市、高島市、米原市)を対象に、「北の近江振興プロジェクト」に取り組んでいる。このプロジェクトでは、地域のさらなる振興を目指し、関係人口の創出を主要な目標に掲げている。一方、地域では人口減少と高齢化が進み、特に人手不足が喫緊の課題であることから、関係人口の創出と人手不足の解消を目的に今回の連携に至った。
(出典:株式会社おてつたび)
取り組みの内容としては、滋賀県北部地域の事業者が「おてつたび」のサービスを活用することを県が支援し、人手不足を抱える事業者と、地方での観光や就業、暮らし体験に関心を持つ都市部の若年層をマッチングするものである。特に、訪問への関心がありながらも、きっかけの不足や交通費・宿泊費の負担といった障壁により実現できていない層を主な対象としており、農家や旅館など地域事業者とマッチングさせることで、報酬を得ながら地域に滞在し、観光や地域交流の機会を提供する。これにより短期的な人手不足への対応にとどまらず、地域への愛着を醸成し、息の長い関係人口の創出を図る。
「おてつたび」は、短期アルバイトと旅行を組み合わせた人材マッチングサービスであり、旅行者は交通費を自己負担する一方、現地での労働により報酬を得て旅行費用を抑えられる。これにより地域の文化や暮らしに触れながら滞在でき、受け入れ側も全国からの人材確保が可能になる。滞在者が空き時間に観光を楽しんだり、SNS等で地域の魅力を発信することで、地域経済への波及効果も期待されている。平均滞在期間は約2週間であり、その間に地元住民との交流を通じて再訪や関係人口の創出につながる。
参加者アンケートによると、「おてつたびがなければ訪れる予定はなかった地域に滞在した」と回答した人は81%にのぼり、「滞在するまでその地域を知らなかった」人は49%、「初訪問だった」という人は70%を占めた。また、86%が「いつかまた訪れたい」と答えており、取り組みが新たな関係人口の創出に寄与していることがうかがえる。
さらに、このサービスをきっかけに、就職、二地域居住、移住・定住、さらには起業に至った事例も報告されている。参加者はZ世代が約半数を占めるが、近年ではセカンドキャリアを模索するシニア層からの関心も高まりつつある。受け入れ先は全国で2,000箇所以上に広がり、宿泊業や農業・漁業などの一次産業を中心に、ゲストハウス、キャンプ場、酒造会社、飲食店など多様な業種での活用が進んでいる。