(出典:観光庁)
観光庁は宿泊業界の人材不足解消に向けた新たな支援策「観光地・観光産業における人材不足対策事業」を開始する。観光需要が急速に回復しつつある中、特に宿泊分野では限られた人手で高品質なサービスを維持することが喫緊の課題となっている。同事業は、宿泊業が抱えている人手不足を解消するための設備投資やサービスの導入に関わる経費の一部を支援するものである。補助率は1/2、1施設あたりの補助上限額は500万円とされており、金銭的負担をおさえつつ人材不足解消を図れる点が大きな魅力となるものだ。
(観光庁の資料を基にホテルバンク作成)
本補助金は、人手不足が深刻な宿泊業に焦点を当て、宿泊施設での業務省力化・効率化につながる設備やシステム導入を支援するものである 。フロント業務や清掃・接客業務の一部を機械やデジタル技術で代替・簡素化することで、スタッフが本来注力すべきサービス提供に専念できる環境づくりを目指す取り組みだ。例えば、セルフチェックイン・チェックアウト端末の設置や、配膳・清掃ロボット、AIチャットボットの導入、予約・宿泊管理システム(PMS)の導入など、宿泊施設の様々な場面で人手を補完・代替するソリューションが補助対象として想定されている。
補助対象となるのは、旅館業法に基づく営業許可を受けているホテル・旅館等の宿泊事業者である。その上で、観光庁の「宿泊業の高付加価値化」認定を受けた(または申請中である)か、もしくは金融商品取引法に基づく有価証券報告書を提出している企業グループであって「観光施設における心のバリアフリー認定制度」の認定を取得済み(または1年以内に取得予定)であること、そして地域ぐるみで求人活動など具体的な人手不足対策に取り組んでいること、という追加条件を満たす必要がある。
補助金額は、採択された計画に要する経費の2分の1相当である 。1施設あたりの補助上限額は500万円で、1事業者につき最大3施設まで申請できる。ただし補助対象外となる経費も存在し、交付決定前に発注・購入した費用などは認められない点に注意が必要だ。
(出典:観光庁)
申請手続きはオンラインで完結する。まず特設ウェブサイト上で参加申込(アカウント登録)を行い、続いて同サイトの申請フォームから事業計画書等の必要書類を提出する流れとなっている 。令和7年(2025年)度第一次公募の受付期間は2025年3月24日(月)13時から5月30日(金)17時までであり、5月23日(金)17時までに参加申込を済ませた上で5月30日(金)17時までに計画申請を完了させる必要がある。
本事業を利用した設備投資により各宿泊施設の人手不足が緩和され、少ない人員でのサービス水準を維持・向上が期待される。省力化された業務の分、人材を本来的に力を注ぐべき接客や付加価値創出の業務に集中させることで生産性が向上し、それが従業員の賃上げやサービス品質の向上にもつながると政府は見込んでいる 。また、宿泊事業者の受け入れ態勢が強化されることは、増加する観光需要を着実に受け止めて地域への旅行者数増加や旅行消費額の拡大といったインバウンド経済効果を最大限に高める上でも重要である。本事業の活用により、日常業務の負担を減らすことで限られた人員をより付加価値の高い業務に振り分ける好機となるだろう。